大地から溢れ出るソーマによって成り立つ世界、グルメプラネット。
無限に湧き出すソーマは、あらゆる食材に変質し、時にそれらは溢れる生命エネルギーを躍動させて生物の形をとるとも言う。
不思議な魔法食材ソーマを巡り、飽きぬ食への探求が、人々を世界へと旅立たせた。
そこは、そんなグルメな世界によくある街の、人気のカフェレストランであった。
大地から無限に生命の如く湧いて出る食材がある上に、その食材をいかにおいしく食べることができるのかと、長年向き合ってきたのである。
飲食店の競争率は、とても高い。
生半可な料理人では、生きてはゆかれぬ世の中で……いや、少なくとも食うには困らないが……とにかく、人気のカフェとして栄えているならば、まず間違いなく値千金の優良店であるのは言うまでもないだろう。
緩やかな山間の、その緩やかな山肌に構えた店舗は、古美術店の二階に構えており、広いバルコニーをオープンカフェとして開放している。
そこから一望できる、山間に注ぐ湖の眺望もまた、店の評価を上げているという。
そんなレストラン人気をやっかんでか、最近では妙な噂が流れている。
レストランに雇われたシェフが、たびたび姿を消すというのだ。
有名店の厨房は、それはもう狭き門。それなりの技術を求められるものならば、入れ替わりが激しいのも頷けるかもしれないが……それでも、黒い噂は絶えない。
絶えないが、味を落とすことはないためか、人気が衰える兆しがないのが救いであろうか。
しかしながら、どうやらその噂は間違いではなかった。
『いけねぇなぁ……最近はぁ、骨のねぇ料理人ばかりで、困っちまうぜェ……』
薄暗い、表の明るく華やかな店構えとは裏腹に、無機的で色味の無い厨房の中で、古美術店のオーナーも兼ねる料理長は、その裂けたような口元に舌を這わす。
おおよそ料理人には似つかわしくない隆起した筋肉をぱんぱんのコックコートに抑え込んで、その身に抱える様にしながらゆっくりと研ぎあげるのは、身の丈を超える程の巨大包丁であった。
そして、彼の周囲に散らばる、恐ろしく鋭利な刃物で捌かれたであろう、かつてコックであったものの部品たち。
今ではそれらは、彼の食材へとなり果てている。
闇料理人……彼にかかれば、ソーマに限らず、あらゆる生物・無機物が食材と化す。
『おっといけねェ……こいつばかりは、表に出しちまうと、バレちまうからなァ……』
その生き血を絞り、臓腑を適切に処理し、瞬く間にテリーヌやパテにしてしまえば、もはや何の肉かはほとんど関係なくなるというが、料理人はそれをうまそうに口にする。
当たり前だ。
彼にとって、料理の知識や経験は、その血肉に生きるという信奉がある以上、闇料理の道からは逃れられなかった。
また、至高の料理のための血肉となる凄腕の料理人を募らねばならない。
お客様に、最高の料理を味わってもらうために……。
「いやはや、世の中、広いもので……ついこないだ、あちこちをコンコンと鳴らせばお料理が出てくる世界があったと思えば……今度は、大地から無限に食材が湧いて出る世界が見つかったとか!
皆さん、グルメプラネットにはもう足を運ばれましたか?」
グリモアベースはその一角、矢絣模様のお仕着せに身を包んだ給仕の疋田菊月は、猟兵たちに紅茶を供しながら、やや興奮気味に、自らの見た予知の話をする。
グルメプラネットは、大地から無限に湧いてくる魔法食材ソーマが、様々な形をとり、凶悪なモンスターや有毒の植物となって溢れ返っているという。
それらは、必ず食べられるようになっており、適切な処理……つまり、調理することで、そこに住まう者たちの糧となっている。
住人たちはすっかり美食の虜となっており、いかなる危険を伴っていようとも、未知なる美食の探求を止めることは出来ないようだ。
「長々と語ってしまいましたが、つまり、今回のお話は、そこが舞台となっております。
より細かなお話をしますと……とある街、とあるお店にまつわる噂ですよね。
我々はもう予知で見てしまいましたが、そちらのオーナーは、恐らく、闇料理人なのでしょう」
闇料理人……かの世界における、食の異端児である。
多岐にわたるバリエーション。それこそ、無数にあるソーマには飽き足らず、人やそれに類する知的生命すらも食材と見出し、見境なく調理してしまう、人としてのモラルに欠いた闇の料理に手を出した者たちである。
「お店はとても繁盛しておりますし、大前提として、彼の経営するお店に闇の料理は出てこないようですが、しかしその代わり……そこで働く料理人がたびたび、彼の毒牙にかかってしまうようですねー。
このままその方の凶行が続いてしまえば、そのうちこの世界から料理人は消えてしまう事でしょう。
料理への拘りは人それぞれ。しかし、人に許される範囲と言うものを越えてしまうのは、いかがなものかと思われます」
さくっと行って、とっちめてもらうべきでしょう。
と、自らも料理を嗜む給仕は、ぐっと拳を握る。
「とはいえですねー。
相手も古い時代を生き抜いた、古のオブリビオン。そして狂暴なグルメモンスターを自ら狩れるほどの腕前の持ち主です。
戦いの勘も人並み以上なのは言うまでもありません。
もしかしたら、我々の介入にすぐに感づいて、逃走を図るかもしれませんよ。
ですので、まずはお客さんとして、普通に溶け込んでみるのはいかがでしょう?」
幸いにして、かの料理人は、客に出すモノには絶対的な自信を持っているため、間違えても裏レシピを用いた裏料理を出してくるわけではないようだ。
前評判通りの料理を振る舞ってくれることだろう。
まずは気軽に、かの世界を堪能してから、戦いに臨んでみてもいいかもしれない。
「随分呑気じゃないかって?
えへへ、でも、気になりません? だって、グルメの世界なんですよー?」
粗方の説明を終える頃には、菊月は結局のところ、ワクワクを抑えきれない様子ではにかみつつ、猟兵たちを送り出す準備を始めるのだった。
みろりじ
どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
新しい世界。うまいもんたちが呼んでるぜ……のような世界ですよ。
菊ちゃんも嬉しそうですね。
そんな感じのお話となっております。
このシナリオの進行は、日常→集団戦→ボス戦という構成のフレームとなっております。
普段から飯の描写に関しては、変な方向にこだわっている自負があるので、このシナリオにおいても、変な方向に間延びする事は予想されるかと思います。
皆さんにとって、美味しそうなイメージを含めていただけると、それなりに幸せになれるんじゃないでしょうか。たぶん……。
プレイングに関しまして、オープニング公開から常に受け付けております。
クリアに必須の勝利数に到達しない限りは、書ける範囲でやっていこうと思います。
いわゆる一章前の断章は書かず、章が展開する時に、たまに開設程度の物をご用意させていただきますが、別に無くても、いつでもお送りくださって大丈夫です。
それでは、皆さんと一緒に、楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
第1章 日常
『カフェでほっと一息』
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POW : オムライスやナポリタンなどの食事メニューを頼む
SPD : サンドイッチやトーストなどの軽食を頼む
WIZ : ケーキやパフェなどのスイーツを頼む
イラスト:みささぎ かなめ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
緋月・透乃
美味しい食べ物いっぱいなんて、私にとっては嬉しい世界だね!どんな食べ物との出会いがあるのかなー?
そんな世界で料理人を調理するって、料理研究もできてライバルも減らせて一石二鳥なのかなー?
色々なもの食べてきたけど、流石に人肉はいらないなー。人じゃない料理人の肉ならまあ……
私が飲食店に来たらやることはひとつ!この店の料理全種類持ってきて!特に好きなのはにんじん料理としょっぱい系和食だけど、全部食べられる胃袋してるのだから、全部もらえばいいよね!誰とも競ってないし、じっくり味わって食べよう!
さてさて、この世界のソーマの味とか料理人の腕前はどんなものなのかなー?楽しみだね!
山々の連なる稜線が、緑のギザギザを描いて空と陸とを隔てる。
広い視界を隔てるそれらが閉鎖的に思えないのは、この山間の町を形成する曲線が緩やかであるからだろう。
盆地のような、そういうほど広くないような、なんともちょうどいい下り坂の向こう側には、大きな湖が広がっていて、自然と生活圏との兼ね合いが居心地の良さを演出している。
ほのかに緑を感じさせる空気を胸いっぱいに吸い込むと、始めてくる場所なのに故郷を感じるかのような気分にもなる。
なによりも、あちらこちらから漂ってくるおいしそうな匂いである。
話には聞いていたけど、実際に体験してみると、欲求というのは肉体と直結している。
緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は、この町に足を踏み入れてから、口の中が潤うのを感じる。
だって、そこら中からいい匂いがするのだ。
美食の世界やいかにと喜び勇んで飛び込んでみたが、はやくも大きな胸が高鳴る。
「美味しい食べ物いっぱいなんて、私にとっては嬉しい世界だね! どんな食べ物との出会いがあるのかなー?」
戦う事大好き、食べる事大好き。そんな蛮族めいた透乃の欲求を、この世界はすべて満たしてくれるような気がする。
ただ、懸念することがあるとすれば、やはり今回の相手となるオブリビオンの存在だろう。
向かう先の料理長らしい。
闇料理人ということで、人肉すらも調理してしまうのは、気がかりだ。
「色々なもの食べてきたけど、流石に人肉はいらないなー。人じゃない料理人の肉ならまあ……」
件のカフェレストランは、それなりに大きな店構え。
乳白色の二階建ての、その二階部分がレストランで、一階は古美術を扱っているとか。
ちらっと窓越しに覗いてみるが、うーんといった感じ。イマイチ興味は向かない。
そんな事よりも、はやく客席に通してくれ。と言わんばかりに店員さんに招かれるまま、オープンカフェのテラス席まで浮ついた足取りをも隠さず、すちゃっと位置につく。
革の装丁のオサレなメニューをワクワク顔で開く顔は、童心に帰ったかのようだ。
厚みのあるメニューから既に期待はしていたが、まず間違いなく目移りしてしまう。
あー、だめだめ。選んでいたらお腹が減り過ぎてしまう。
迷う事も贅沢な時間だが、彼女が飲食店に足を踏み入れる時には、迷わなくてもいいようやることを決めている。
すぱーんと勢いよくメニューを閉じて、それを返却しがてら、
「この店の料理全種類持ってきて!」
笑顔で挑むその表情からは、やいやいお腹が減っているんだから、最高の品を頼むよ。という感情が透けているかのようだった。
挑まれたからには、店員さんも恭しくそれに了承し、細かいことは言わずさっと引っ込んでいく。
そうしてワクワクとした表情のままテーブルに顎肘をついて待っている時間ができると、すこしだけ考える余裕ができる。
「料理人を調理するって、料理研究もできてライバルも減らせて一石二鳥なのかなー?」
その探求心に脱帽するべきなのか。呆れるべきなのか。
それとも、もしかして、料理人すらも、美味しい食材ことソーマで出来上がって出現する事もあるのだろうか。
会話の出来る相手が美味しい自身を差し出してくるなんて、奇妙な話だ。
……いや、そういうヒーローも居るらしいが。
どう転んだところで話が美味しい方向に転がっていく、透乃の頭の中はもう食への期待でいっぱいである。
何が来る。ニンジンを使った料理が大好きだが、しょっぱい系の和食も引けを取らずに大好きだし、ある程度の粗食であろうとも気にせず満足を得られはする。
未知なるソーマの味とは、いかに。
「お待たせいたしました。これより、順次ご用意いたしますので、並べてまいります」
「おおー! ありがとー!」
どかどかと配膳カートに乗せられて出てくる料理の数々がテーブルに並べられると、それまでの小難しい考えなどすべて些事になる。
些事よりも、匙を持て。食事の時間だ。
「いっただきまーす!」
彩り、芳香、それらを形容するよりも、何よりも、食欲に忠実となったフードファイターは、ただ純粋に今の食を楽しむべく、手近な皿にありつく。
最初に手を付けたのは、最もシンプルに食欲をそそるナポリタンやオムライスといった、いわゆるわんぱくメニュー。
サムライエンパイアは駿河の国出身であるからには、和食が得意ではあるが、洋食のパワーを感じるメニューも捨てがたい。
バターの風味のするつるりとした卵の表層を突き崩せば、ケチャップライスの紅潮した層が顔を出して湯気が上がり、それがスプーンから崩壊するよりも前に口に運ぶと、ふんわりとした卵と刺激的なケチャップとが交互に押し寄せて、噛み締める程に鶏肉のしっかりとした味わい、脂が、確かな満足感を与えてくれる。
もっと、もっと食べたい。
いや、あっつい。舌が火傷しちゃう。
でも、この後引く味が、匙を口に運ぶのを止めてくれない。
「はふっ、はふぅ!」
食わされている。いや、食らっているのはあくまでも、こちらだ!
いちいち感動を覚えるのも忘れて、ナポリタンもズビズバーっとあっという間に平らげつつ、お冷を片手間にぐいーっと行くと、全身から汗が湧き出ると共にアドレナリンが溢れ出るかの如く快感が訪れる。
思わずかっ食らってしまったが、誰とも競っているわけでもない。
だがきっと、こういうわんぱくメニューは、そういう風に食べるのが一番うまい気がする。
断じて、美味しくて手が止まらないとか、そんなんじゃないんだからね。
誰にとられるわけでも、フートファイトをしているわけでもないんだから、これからは、じっくり味わって食べればいいのだ。
そうして、次に運ばれてきたチキンステーキを切り分け、かかっているトマトソースと共に口に運んでいく。
「うん、さっぱりしておいしい!」
付け合わせのニンジンのグラッセやポテトも、素朴なようで、得難い存在だ。
と、気づいたら、また一皿消えてきた。おかしい。さっき一口目を食べたばかりではなかったろうか。
「これは、事件ですよー? もっと、調査の必要があるねー」
そういえばそうだったとばかり。
ナイフを入れたハンバーグから溢れ出る肉汁が、熱した鉄皿の上で泡立つように沸き立ってデミグラスソースと混ざり合う様を、うっとりと眺めながら、透乃は至福のひと時を満喫するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
ここがグルメプラネットか!
話には聞いていたけど、おいしいものが食べられるところだそうだな。
アタシのザナドゥ世界で鍛えられたバカ舌でもわかるぐらいにおいしい料理だといいな。楽しみだ。
これは気合も入るというもの。食うぞ!
まずは待機して飯食ってこいということだから、肉料理から試して行こうか。
焼き方とか味付けはお任せで。どんどん持って来てよ。
これはいくらでも食べられるな。うまい。
盆地というにはちょっとだけ小さく、山間というには緩やかで、その町はなんとも言い難い地形であった。
山から注ぐ湖に向かうようにして成る町を囲う山々の稜線は、さながらに巨獣の下顎のようでもあるが、剣呑なたとえをしたところで、自然と融和したかのような緩い雰囲気は、なんだか拍子抜けだ。
こんな平和そうな場所だが、グルメプラネットには狂暴な食材たちが溢れているという。
食材が狂暴というのも妙な話だが、この世界の大地から溢れ出るソーマという魔法食材は、時に命を吹き込まれて襲い掛かって来るというのだ。
そんなワイルドな世界を想像していたシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は、どこか牧歌的ですらある空気に肩透かしを食らったようだった。
ただ、あちらこちらから漂ってくるおいしそうな匂いは、なんとも心躍るものがある。
「ここがグルメプラネットか! 匂いだけで、いい場所だって感じだ」
シモーヌの価値観は、面白いかどうかというのが最初に来てしまうが、飯のうまい場所はだいたいいい場所だ。
食に好き嫌いはない。ただ、うまいに越したことはないし、腹が膨れるならなんだって感謝だ。
テキトー極まる、といっては失礼だが、細かいことにあまりこだわらないさっぱりとした性格なだけに、この世で口にできるものに対して、そうそう拒否感を抱いたことはなかった。
期待と、そして不安。
倫理的にどうもおかしいいらしいサイバーザナドゥでの暮らしが長かったのか、それとも食えればだいたいオーケーな寛容な味覚は、美食に対応できるのだろうか。
たとえば、ちょっと工業用グリスめいた変な匂いのするジャンクフードでも、シモーヌならおいしく食べてしまえる。
目玉が飛び出るほど値の張る食材の満足度に、匹敵するのかどうなのか。
目当ての店のは、なるほど、おしゃれらしい。
乳白色の大理石にも似た清潔感のある外装に、一階はグルメモンスターに関する古美術品を扱っているらしいが、今は関係ない。
二階のカフェレストランは、オープンテラスの眺望が美しい、なかなかのロケーションだ。
どうでもいいが、雨降った時はどうするんだろう。
ついつい事故や有事の際の位置取りを考えてしまうのは、戦う者の職業病のようなものだったが、ここは隙を晒すのを許されないサイバーザナドゥのスラムなどとは治安のレベルが違う。
敵は、どうやらこの店の店主らしいのだが、食事に関して人を害するつもりはないという。
異常な者ほど、世間ではその爪を隠して常識的に振る舞うというが、そいつが尻尾を出すまで、せいぜい、この世界の食を堪能するとしよう。
「うーん……色々あるけど、まあ、そうだなぁ。肉料理から頼もうかな」
メニューを流し見、わんぱくなものから、こじゃれたものまで、実に様々あるものから、細かく考えるのをやめて、店員さんに返却する。
「焼き方とか、味付けとかはお任せするよ。どんどん持ってきて」
我ながら、かなり大雑把だとは思うが、きっと店主が自身を以て提供するものに間違いはない。
注文を決めてしまうと、考える時間できてしまう。
緑の匂いを含んだ風が心地よい。
雪風を思わせるような銀髪を揺らして、ややアンニュイにも見えるふうに目を細める姿は、きっと誰もが目を留めるかもしれない。
ただ、シモーヌが考えているのは、敵の事。
この店の店主、オブリビオンは、料理人を調理して食うのだという。
そんな事をしても、料理の腕や知識が蓄えられる保証はない。ただの信仰だろう。
人肉料理。さすがにそれは……。
ただ、聞かない話ではない。
人の組成に極めて近い、遺伝子操作された何かの食肉は、吸収率がとてもいいのだとか。
現に、豚の組成は、人のそれによく似ているという話もあり、一時期は、臓器や皮膚の移植にも有用という話もあったという。
ホラー映画のフェイクにも使われる事が多いのは、豚肉である。
「はあ、余計な事を考えると、食欲が無くなるな。よそう……お、きたきた」
ややダークな考察は、運ばれてきた料理の香りで、すぐに飛んでしまった。
肉の焼いた独特の食をそそる香り。香辛料や香味野菜の幾重にも混じった、馥郁たる幸せの香気が思考をかき乱すかのようだった。
これはもしかして、危険な策なのでは? とすら思うほど、暴力的な食欲が喉を鳴らす。
「……よし、食うぞ!」
細かな事は、後から考える。
今はとにかく、食。
色々と肉料理が並ぶ中で、一番インパクトの大きな、骨付き肉を豪快に焼いたトマホークステーキにナイフを入れる。
じわりと溢れる透明な肉汁が、得も言われぬ欲求を掻き立てる。
即ち、これに食いつかずに居られるかというそれは、肉の欲。
大きく切り分けた肉片からはまだ湯気が上がっているが、そんなものには構わず口に頬張って噛み締める。
乾いた様なざらつきを覚える焼き面に歯が通ると、肉繊維の弾力と、それらを噛み切る小気味の良さが返って来る。
それと共に、出血したかのように溢れ出る、旨味、肉汁。
それらが、よくすり込まれた香辛料、ソースと混じり合い、言葉にできない満足感を生み出しては、飲み下していく。
「うま」
噛むのがうれしい。そして、飲み物のように口いっぱいになる旨味が喉を通るたびに、満足感が湧き上がってくるようだった。
それを熱気と共に口の端に上る言葉にするなら、そんなものだった。
少女の顔ほどもある肉料理の数々は、明らかに量が多いのだが、それを感じさせない。
「これはいくらでも食べられるな。うまい」
しかし、まさかこれは……おいしい料理で、うやむやにする闇料理人の策では?
心のどこかで、かなりどうでもいい懸念が立つくらいには、しばしの時間、シモーヌは食の世界に没頭するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鐘射寺・大殺
ここが新世界、グルメプラネットであるか。大地のエネルギーが食材に形を変えるとは、なんとも奇妙な世界よのう。魔王ビストログルメが作りし迷宮、リストランテ・ハロウィンを思い出すのう!
さて、まずは何かワルな事を企んでおる闇料理人とやらを炙り出さねばならぬ。魔王自らお忍びで入店し、調査してやろう。
宮廷に比べれば狭苦しい店だが、まあよい。 自慢のランチとやらを見せてみろ!
ふむ、魔界の料理と比べればどのメニューも普通の見た目だのう。悪魔のセンスは良くも悪くも独創的だからのう。
(パクっ)
こ…これは!!
(もぐもぐ)
全身の細胞が活性化していく!
これが……ソーマの力かァァァ!!
(身体から稲妻が迸りはじめる)
胸が空くほどのいい天気。
青い空から視界を下げていくと、下あごのように緑の山々が稜線を描く景色が、なんとも情緒がある。
緩やかな山肌に人が集まってできたような町の光景は、窪地というにはやや狭く、谷というには緩やかで、山々から注ぐ湖を望むロケーションが、自然の豊かさを感じるいい場所のようだ。
しかしながら、油断してはいけない。
「ここが新世界、グルメプラネットであるか。大地のエネルギーが食材に形を変えるとは、なんとも奇妙な世界よのう。魔王ビストログルメが作りし迷宮、リストランテ・ハロウィンを思い出すのう!」
そんな人の生活圏と自然との融和が眩しい町中を、鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)は、大股で歩いていた。
魔王である彼の足取りに迷いはなく、大きな器を持っているが故に、未知にも果敢に挑んで受け入れるだけの度量があるのだろう。
故郷とは異なる世界の法則。しかし、彼の記憶を辿れば、そういった変わった特性を持つダンジョンのエピソードもあったようだ。
ついでに勇者と戦ったような気もするが、そいつはまた別のお話。
期待に胸躍らせる大殺は、まさしく悪魔的な笑みを浮かべ、真面目に件のお店を目指す。
今回の仕事は容易い。なんといっても、犯人が割れているとのことで、店に乗り込んでやれば逃がすことはあるまい。
だがしかし、予知という他に知り得ぬ、言ってしまえば物証の無い罪を突き付けたとて、容易に尻尾を出さない可能性がある。
「まずは何かワルな事を企んでおる闇料理人とやらを炙り出さねばならぬ。魔王自らお忍びで入店し、調査してやろう」
よく通る大きな声で店に向かう姿は、たぶん奇矯な人物と思われたかもしれないが、生憎とこの世界もグルメの為に色々と奇抜なモンスターを狩る者が多いという特性上、変な人は多いのであろう。
清々しいまでに自信満々な魔王の行進を咎める者は居ない。
この時点でお忍びではない気もするが、なに、気にすることはない。
件のカフェレストランは、古美術を取り扱う店に併設されているらしく、風合いを感じさせる乳白色の外装が小綺麗で、ちょっと鼻につくところはあったものの、調度品の趣味は悪くないように思えた。
いや、美術品として飾られているものは、いずれもソーマによって生まれた特殊なモンスターの剥製や化石、武器と言ったもので、ちょっぴりダークな雰囲気だったからかもしれないが。
そこに少しばかり興味を引かれつつも、本命は二階にあるレストランの方だ。
他店よりもやや視界の広いオープンカフェは、この町のロケーションを活かした作りのようだ。
「宮廷に比べれば狭苦しい店だが、まあよい。 自慢のランチとやらを見せてみろ!」
デビルキングワールド出身の魔王様は、ちょっと価値観が変わっているが、それでも努力の形跡の見られるものには、素直に賛辞を贈る。
何しろ、かの世界の悪魔たちは真面目なのだ。
多少、横柄に聞こえるかもしれないが、今やこの場所は敵地。
闇料理人? そんなものは関係ない。
これは、客と、店との、真剣勝負なのだ。
豪快な笑みを浮かべながらも、大殺の目つきは既にぎらついている。
ひとまず注文したのは、たっぷりオムハヤシ。
カレーなんて、誰が作ったってまあおいしい。だが、ハヤシライスはどうだ。
たっぷりという文言に、若さが出てしまったのは魔王の勇み足だったかもしれないが、ハヤシライスのバランスの難しさは、あまり知られていない。
トマトの酸味を利かせすぎても、野菜のコクを出し過ぎても、ご飯にピッタリの塩梅にするのは難しいのだ。
それに──、タマネギ状のコブを持つ甘味と旨味の凝縮されたオニオンオックスという聞いたこともない牛肉を使っているのも気になる。
恐らくは、シェフの腕前を精査するに、この上ないメニューに違いない筈だ。
テーブルに肘をつき、絡めた手元に顔を預けつつ、大殺は静かに注文の品が出来上がるのを待った。
さあ、来るか、たっぷりオムハヤシ!
やがて、香ばしさに鼻が反応すると、目の前にでんっと置かれた大皿に、思わず鼻が鳴る。
軽んじているわけではない。が、
「ふむ、魔界の料理と比べればどのメニューも普通の見た目だのう。悪魔のセンスは良くも悪くも独創的だからのう」
見た目ではわからない。というのが所感であった。
ライスは見えない。黄色く花開いたような半熟卵に覆われ、その上にマグマの如くたっぷりかけられたハヤシのルウは、辛うじて具材が形を成しているくらいで、濃く焦げ目を映しこまれたかのようなルウの中で今にも崩れてしまいそうだった。
そして、仕上げに注がれた生クリームの辿る下り坂が、さながらに白い川のようだ。
だが、言ってしまえば、そんなものは、ありふれた姿でもあった。
UDCアース辺りの洋食屋さんに足を踏み入れれば、容易に似たような姿を拝めるだろう。
肝心なのは、味。
スプーンを手に取り、その牙城に挑まんと卵の柔肌を削り取り、口に運ぶ。
(ぱくっ)
「むっ! こ、これは……!!」
どこかのバトル漫画で見たことがある。
優れたカレーは、一口の内に、一瞬のうちに、たくさんの情報を見ると。
高名なドライバーは、こういう事も口にしていた。
いい車は乗った瞬間に分かる。美味しいチョコケーキが、食べた瞬間に分かるのと同じさ。
(もぐもぐ)
咀嚼する程に、煮詰めたトマトと野菜、牛肉の、酸味、甘味、旨味、塩味……よく火の通った香ばしさ、後引くコクの深さ。
そんなものが、ひと噛みごとに押し寄せ、脳髄をまるで、電気が奔ったように突き抜けて、全身を駆け巡る。
「これが……これが、ソーマの力かァァァっ!!?」
なによりも、混沌とした味の濁流を纏め上げるオムの部分、それらのバランスの秀逸なる事。
ありふれた、ともすればわんぱくな若者向けのメニューだとしても、一切の妥協がない完成度である。
比喩ではなく、椅子を鳴らして立ち上がる大殺に電流走る。
【魔王の雷】が迸った。
それははからずとも、厨房の中からも異様を感じさせたかもしれない。
だがしかし、今は、この味に酔いしれたっていい。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『フルコースツリー』
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POW : フルコースの実
自身の【枝】から、戦場の仲間が受けた【食欲】に比例した威力と攻撃範囲の【フルコースの実】を放つ。
SPD : 走れフルコース
【根を地面から現した】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【空腹】の状態異常を与える。
WIZ : 終わらないメインメニュー
【カレーライスの詰まった実】【海鮮丼の詰まった実】【ラーメンの詰まった実】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
イラスト:yuga
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『ヌウウッ!! なんだぁ、今日の客は、ちょっと様子が違うじゃねぇかァ……』
カフェレストランの厨房。その料理長を務める闇料理人は、どうにも客席に不穏な気配を察する。
ただの客としてやって来るにしては、その雰囲気が異様だった。
妙な客は、いつだってやってくる。
この世界はそれほど安全ではないし、中には物騒な客だってやってくることもあるのだ。
難癖をつけてくる客には、いつだって味で黙らせてきた。
だが、幾度もの凶行に及んでなお、その正体を隠しおおせてきたからこそ、闇料理人の勘は異様に冴えていた。
レストランで提供するメニューに、客を害するようなものを出すのは、料理人の矜持が許さない。
だが、どうにも、嫌な予感が、彼の胸に込み上げてくる。
このままこの店で大人しく料理を供していたら、間違いなく捕まる。
最強最高の料理を目指すには、まだまだ料理人の知識と経験を喰らわねばならない。
『チッ、この店もそろそろ潮時かねェ……ちょいと、時間を稼いでもらうぜ』
長大な包丁を背負い、貯蔵庫に足を踏み入れたかと思えば、そのすぐ後に、厨房は凄まじい混乱に陥る事となった。
皿が割れる音、盆がひっくり返る音、そして何かがめりめりと押しのける音。
それらが轟音を伴って、厨房を飛び出してくる。
あちこちから悲鳴が上がる。
その渦中には、自走するヤシの木が何本も生えていた。
陽の光のあるオープンテラスへ向かって集団で飛び出してくるヤシの木めいたモンスター、『フルコースツリー』は、やはりソーマによって生まれた魔法食材であった。
「な、なんで、パーティーメニュー用のフルコースツリーが!? 冷やして眠らせていたのに!」
都合よく事態を説明してくれる料理人の一人が、尻餅をつきながらあとずさる。
どうやら、闇料理人逃亡の為に、食材保管庫からモンスターを解き放ったらしい。
恐ろしいモンスター、いや……恐ろしいほどにうまそうな匂いを振り撒きながら、フルコースツリーは、今まさに日光を浴びて、その身の中にたっぷりと蓄えた料理の数々が、そう、今まさに芳醇の時を迎えるのであった。
その匂いはすさまじい。誰もが空腹を感じるほどに。今しがた、食ったばかりなのに!
闇料理人を追いかける前に、まずはこの場を納めなくてはなるまい。
緋月・透乃
料理人の美味しい料理堪能したところに、今度はソーマが料理持ってやってくるなんて、ずいぶんサービスがいいお店だね!ボス戦前にもっと腹ごしらえしておけってことなのかなー?希望通りご馳走になっちゃおう!
さっきいっぱい食べたし【もぐもぐアイドル きゃろっ☆とうの】に変身!そして近づいて斧で斬る!食欲を全開にして斬る!本来斧は木を切る道具だけどソーマでできた木にも効果高かったりするのかな?
敵のフルコースの実は食べるために受け止めるよ!防御力あるはずだから多分いけるはず!
流石に全部食べながら戦うのは大変そうなので、適当に口にいれながら攻撃して、残りは倒した後のお楽しみにしておこう!
静かで雰囲気のいいオープンカフェテラスを、突如として轟音が襲う。
爆発音ではない。
恐らくは厨房のあるらしい場所から、お皿や窓やらをドスンとひしゃげさせて何かが無理矢理に飛び出してくる。
「んぐんぐ……あれ、なんかの演出かな?」
怒号と悲鳴が騒音とないまぜになって平穏を突き破る中でも、緋月透乃は、テーブルにずらりと並んだ料理を堪能する手を止めることはなかった。
食べることは勝負である事と同時に、食べることは人生の多くを占める楽しみの一つである。
美味しい料理を、時間を掛けて楽しむことは、きっと何よりも贅沢な時間だ。
そうと決めたからには、多少のトラブルがあったとしても、透乃は食べる手を止めることはないだろう。
しかし──、
「うわぁ、貯蔵庫のフルコースツリーが暴走してるぞぉー!!」
「ふん?」
店舗の方から悲鳴と共に姿を現す巨大なヤシの木めいた怪物が、根っこを足のようにして這い出して来る。
ソーマによる生ける食材。
そういえば、本来の目的は、闇料理人を退治する事であった。
ともすれば、そのモンスターたちは、闇料理人が解き放ったものであろうか。
ゆっくり食事をしている贅沢な時間は、ここでおしまいなのかもしれない。
だが、彼女の口元にがっかりしたものはなかった。
「美味しい料理に続いて、今度はソーマが料理持ってやってくるなんて、ずいぶんサービスのいいお店だね!」
テーブルの上を急ぎめに片付けて、喉がパンパンになったところを、葡萄酒をボトルから直接ぐびぐびっと飲み下すと、透乃はようやく席を立ち、傍らに立てかけていた鉞のようなバトルアックスを肩に担ぐ。
明らかに彼女の体格以上の料理が詰め込まれたらしいその体躯に、ポッコリお腹が膨れた様子はない。
そう、フードファイターでもある透乃の胃袋は、きっと宇宙にも匹敵する。
コキコキと首を鳴らし、溢れ出てくるフルコースツリーたちの真ん前へと敢然と立ちふさがると、バトルアックス一つでその前進を押し留めて見せる。
「ふんんっ!! いいね。ちょうど、運動する時間かなって思ってたところだよ」
みしみしと床板を軋ませながら、透乃の全身から蒸気のようなエネルギーが湧き上がる。
今しがた食した料理の数々の発するエネルギー。否、それを消化し、自らの血肉へと書き換えんとするそれはまさに、食い気!
食べれば食べるほど元気になる、そのパワーを変身エネルギーとして全身に着装し、今こそ透乃は【もぐもぐアイドル きゃろっ☆とうの】に変身する。
「たくさん食べて元気いっぱい!もぐもぐアイドル きゃろっ☆とうの!私の|フードファイト《ステージ》でみんなハッピー!」
がきぃん、と、踏ん張りの体勢からフルコースツリーの巨躯を押し返すと、可愛らしいポーズをとってから、透乃──いや、きゃろっ☆とうのは、雄たけびを上げてバトルアックスを振りかぶって突撃する。
そこへ、気を悪くしたのか、フルコースツリーは彼女を迎撃するように我が身に実ったフルコースの実を投げつけてくる。
「そんな大振りな攻撃──ハッ!?」
回避など容易い。そう判断した瞬間、言い知れぬ予感と嗅覚とが、回避という選択を選ばせなかった。
結果、剛速球めいた固そうな表皮に覆われた果実を、あろうことか透乃は顔面で受け止めることになってしまった。
さにあらん、その衝撃で亀裂の走る果実の中からは、刺激的なニンニクと豚骨の匂いが噴き出してきたのだ。
この匂いに誘われるがまま、いや、食物の匂いがしたからこそ、もったいなくて回避するという選択が消えたのだ。
生粋の食いしん坊、いやフードファイターであるからこそ、アイドルとして変身した今ならば、それを受け止める度量があった。
ぐらりと、その身が傾いたかに見えたが、次の瞬間には、割れた実の隙間から溢れ出るアツアツの豚骨ラーメンを、顔面で受けたままズゾゾゾっとものすごい勢いで吸い込む音が聞こえた。
「ブハァ! 変身で防御力マシマシ、じゃなかった上げておいてよかった。ボス戦前にもっと腹ごしらえしておけってことなのかなー? 希望通りご馳走になっちゃおう!」
大量のモヤシとチャーシューとぶっとい麺とで、テッカテカになった口元を荒く拭うと、改めてバトルアックスを振り下ろす。
戦うための戦斧ではあるが、斧は本来、木をこる為の道具であるはずだ。
果たして、アイドルの振るう戦斧は小気味のいい打撃音とともに、一撃でフルコースツリーを伐採せしめる。
まるで首でも刎ねられたかのように、ツリーの足元はそれきり動かなくなるが、しかし、めきめきと倒れてくるそれにぶら下がる果実を振り落とさぬよう、透乃はそれを受け止める。
「さすがに、全部いっぺんは難しいから、後でね。楽しみにとっておこう!」
戦う前にも、そして戦いながらも、あんな食っといてなお、透乃は元気いっぱいであった。
大成功
🔵🔵🔵
鐘射寺・大殺
ぬっ、何なのだこのヘンテコな木は!果実の中から料理が溢れ出しとる!まさにフルコースではないか!ぐぬぬ、倒したければすべて食らえということか!
これは如何に我輩といえどキャパオーバー。ならば…人海戦術だ!いでよ、わが砕魂魔王軍!!【炎の魔王軍】を呼び出し、《悪のカリスマ》《王者のカリスマ》で統率。
「皆の者、こいつを食い尽くせ!!」
魔王軍の中から、サイクロプスやミノタウロスといった屈強な体躯の大食漢共を選りすぐって156体選び出す。
「一番多く平らげた者には恩賞を与えるぞ!」とエサをちらつかせておくのも忘れない。
グワハハハ、存分に食らうがいい!腹ごしらえが済んだら、グルメプラネットの国盗り合戦だ!!
平穏な街々の風景、のどかでやや退屈にすら思えるお昼過ぎ。
そんな時間がゆっくり流れる様にすら思えるひとときに、夢中になってオムハヤシをかっ食らっていた少年は、ふと我に返る。
気が付けば、周囲に溢れ返る騒音。そして、怒号と悲鳴。
ハチャメチャが日常な生活に慣れていた魔界の住人である鐘射寺大殺は、実家に戻ったのかとも思ったが、どうやら違う。
もしや、潜入調査がバレてしまったのか。
まさかそんな。
いや、もしそうであるならば、腹ごしらえはこれくらいにして、そろそろシェフを呼ばねばなるまい。
美味しい料理とくれば、うまい! シェフを呼べぃ! からの、闇料理人をお縄に。……という流れが妥当と思っていたのだが、しかしどうやら、この混乱の最中でウェイターを呼ぶことは難しそうだ。
ふう、と少しばかり悩ましげに息をつくと、平らげたオムハヤシの空になったお皿を名残惜しげに眺めつつ、ナプキンで口元を拭い、大殺は席を立つ。
こうなれば、直接乗り込むほかあるまい。
お愛想がてら、キッチンへ向かい「ごちそうさん、うまかったよ!」これぞ、粋というものであろう。
「ぬっ!? 何なのだこのヘンテコな木は!」
だがしかし、またも大殺の行く先を阻むのは、なんかあちこち壊しながら店舗から這い出して来るヤシの木めいた自走するソーマの化身『フルコースツリー』の姿であった。
どうやら騒動の原因は、このモンスターの暴走らしかった。
なんでこんなところに、こんなものが。
時間稼ぎのつもりだろうか。
やはり、こちらの調査に感づかれた可能性が高いのか。
一考する大殺に隙ありとばかり、フルコースツリーがその身を撓らせて実った果実を投げつけてきた。
咄嗟にそれを剣で受けると、思ったよりも頑丈な表皮と、中身の詰まった質量感に思わず後ずさる。
そして、足元に落ちる果実がぱかっと割れると、中からおいしそうな匂いがするではないか。
それも一つや二つではない。
「果実の中から料理が溢れ出しとる! まさにフルコースではないか! ぐぬぬ、倒したければすべて食らえということか!」
普通に物理も通用しそうだが、何故かとてもまじめな悪魔である大殺は、出された料理を無下にはできない。
だがしかし、いかな魔王といえど、既にいい感じにお腹いっぱいである。
気分的にはもう、食後に身体に悪そうなコーラフロートでまったりしたいところであった。
怠惰を享受するには、まだ早い。魔王はそう簡単に参ったを言わせてもらえないのだ。
「ならば……人海戦術だ! いでよ、わが砕魂魔王軍!!」
暴力的に笑み、大殺は自らの率いる軍勢の軍旗を掲げ、それを足元に打ち付けると【炎の魔王軍】が次々と姿を現す。
それら軍勢の中でも、屈強で大食漢の種族を、156体。サイクロプスやミノタウロスといった、いずれも見た目には期待を持たせるメンツであった。
居並ぶそれらに大見得を切り、風になびくたびに金糸の煌く軍旗に負けないほどのカリスマを振り撒いて、大殺は命じる。
「皆の者、こいつを食い尽くせ!! 一番多く平らげた者には恩賞を与えるぞ!」
『オオオッ!!』
そうして、暴力的な笑みに扇動されるままに、モンスターたちは諸手を挙げて貪り付く。
炒めたモヤシとキャベツがこんもりと盛られたスタミナラーメンを、脂とスープの下たるチャーシューを、実にうまそうに啜るオーク。
こってりした欧風ビーフカレーとサフランライスに、ゆで卵とパパイヤのシャキシャキサラダの実を、恍惚の表情で交互に食べるミノタウロス。
キミ達、それ、共食いじゃないのかとか、そんな些細な突込みは置いといて、所狭しとぎゅうぎゅうになりながら、パーティー用に用意されていたというフルコースツリーを、次々と攻略していくモンスターたちの姿は、壮観……さながら、どこかの芋煮会のようでもあった。
どれも一様に、笑顔の絶えない状況に、大殺もご満悦であった。
しかし、部下たちが美味しそうに食っているのを見ると、とっくにいい感じに腹は膨れているにも拘らず、なんか摘まみたくなってくる。
いや、指揮官として、無様な姿を晒すわけにはいかない。ここは胸を張り、
「グワハハハ、存分に食らうがいい! 腹ごしらえが済んだら、グルメプラネットの国盗り合戦だ!!」
高らかに宣言し、部下の指揮を向上させるのが吉であろう。
まあ、たぶん、今はみんな、ご飯に夢中のようだったが。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
フルコースツリーっていうのか。
これはすごくいい匂いがするな。
さっき肉たくさん食べたばかりだけど、まだ食べられる気がしてくるよ。
でも、これ以上食べると動けなくなるから食べるわけにはいかないんだよな。
残念だ。本当に残念だな。
食べられないものを眼の前にぶら下げられるなんて、ある意味ひどい攻撃だよ。
黒槍『新月極光』で戦うよ。
UC【月華満天】を発動して速攻しよう。相手にすばやく接近して、幹に槍を叩き込んで切り倒していこう。
あぁ、やっぱりいい匂いだよな。もう食っちゃえ!
後のことは後で考えよう。
カフェレストランは、そのおよそ半分を占めるスペースがテラス席になってはいるのだが、屋内も充実しているようだ。
ガラス張りから覗く木目のフローリングが落ち着いていて、それでいて各所に設置された木組みの衝立や観葉植物が、なんとも異国情緒を感じさせつつもゆったりと過ごせる雰囲気づくりに貢献していると言ってもいいだろう。
とはいえ、それも今は、無残に押し倒されてひどい有様になってしまっているのだが。
「やれやれ、食事の時間はそろそろおしまいか」
キッチンの奥から、屋外の日の当たる場所まで、自走するヤシの木めいたソーマのモンスターが、我先にと這い出して来る。
人のために作られた動線など、異形の怪物たちに構ったものではない。
配膳台も、テーブルも、調度品の数々も、陽光を浴びるに邪魔となる障害物に過ぎぬとばかり、押しのけ追いやり太陽の元へとたどり着いたそれらは、元気いっぱいにその幹を伸ばして四方に出歩いていく。
「う、うわぁー! パーティー用のフルコースツリーが脱走したぁ!! どこかから陽が入ったってのか!?」
「ふうん、フルコースツリーっていうのか。ヤシの実ってことは、ココナツジュースがたっぷり入ってるとか?」
「いや、そんな一般的なヤシの木なら、足が生えて歩き回ったりはしないぜ! あいつらは、実の中に料理を溜め込むのさ。そりゃあもう、俺達料理人の渾身の料理を、いつかのパーティー用にな」
厨房から逃げおおせてきたらしい料理人を捕まえて話を聞いてみると、どうやら一筋縄ではいかなそうだ。
だいたい植物があんなスピードで歩き回るわけはないのだ。
逃げ惑う店舗スタッフおよびお客さんの中で、シモーヌ・イルネージュは槍を手に立ち向かう。
この世界にはグルメハンターも数多く存在するらしいが、生憎と調理済みのソーマを提供するレストランに、血気盛んなハンターは、今現在は居ないらしい。
たしかに、言われてみると、フルコースツリーに近づくほど、なんとも言い難い食欲をそそる匂いが漂ってくる。
これはただ、カフェレストランの厨房に近づいているからというだけではあるまい。
「これはすごくいい匂いがするな。
さっき肉たくさん食べたばかりだけど、まだ食べられる気がしてくるよ」
人狼のその胃袋は、とびきりうまい肉料理をたらふく詰め込んで、十分に満足している筈だった。
だというのに、異が躍動するのを感じる。空腹を刺激するかのように。
今にも、喉ではなく、胃袋がオオカミのように唸りをあげそうであった。
だが、これ以上、胃袋に食べ物を入れてしまえば、たぶん行動に支障がでる。
軍人は腹を満たさないという。腹八分どころか、腹六分ほどが適量とも言うほどだ。
何故なら、満腹状態で被弾した場合の死亡率は、空腹時よりも跳ね上がるのだ。
何よりも、お腹が重たくなって得意の近接戦闘のキレが鈍れば、それは死活問題であった。
「残念だ。本当に残念だな。
食べられないものを眼の前にぶら下げられるなんて、ある意味ひどい攻撃だよ」
奥歯を噛み締めるほどに、犬歯をむき出して眉根を寄せる。
戦いに存在意義を感じる以外は、ほぼほぼラフなスタイルを崩さないシモーヌは、おおよそ初めて感じる葛藤に心揺れていた。
まさか、食べることにここまで葛藤を覚えるとは。
食の欲。これほどとは。
心乱れるかと思いきや、手の中に感じる槍の重みを忘れずにいた事は幸運であろう。
一つ呼吸を整えて、腰を落とし気味に黒槍『新月極光』を構え、五感を研ぎ澄ます。
心の水面に映り込む月の輪郭が、ひとかけらも歪まぬほどの心意気。
【月華満天】を思わば、永遠にクドラクを狩り続ける者の血の騒ぎを思い起こす。
「悪いけど、手早く行かせてもらう──ハッ!」
しなやかな身体のバネを、前方に飛ぶようにして解き放つと、稲光のようにその身が躍る。
短い呼気と共に、槍を振りかぶれば、逞しくいきり立つヤシの幹を一息に両断せしめる。
「っ!?」
踏み込んだ足元が床板を鳴らせば、槍を薙いだその残心に吸い込まれるかのように、あらぬ方向からヤシの実が飛んでくるのを感じた。
反射的にそれを叩き落すと、硬質な表皮が割れて中身が露になった。
話の通り、実の中には料理が収まっているらしかった。
しかしそれを確認する前に、実を投げつけてきたもう一体のフルコースツリーへ肉薄し、その幹を断つ。
直後に、その背後で、今しがた叩き斬った実が落ちる固い音が聞こえる。
それが気になって見てしまった瞬間、しまったと心の中で舌打ちを漏らす。
「うっ」
鼻先にかすめた、醤油の匂い。
醤油ラーメン? 和風ソースのステーキ? いいや、これはもっと、プリミティブな醤油の香りだ。
速筋と遅筋のような紅白のコントラストは、ツートーンと呼ぶにはあまりに有機的な配列で模様を描いている。
切り身にされた、数々の魚介を、それは言ってしまえば丼に盛ったご飯に飾り付けただけに過ぎない。
海鮮丼。
肉は正義と信じてやまぬ、シモーヌからすれば、それほど魅力的に映らない筈だった。
だが、その身の持つ脂の光沢が、醤油の濃そうな色が、まるで魅了の魔術を帯びた宝石のように輝いて見えた。
そして、なにより、磯のような、饐えたような、香ばしくもしわがれたような醤油の匂い。
存在する筈のない胃の空腹を、訴えかけるのは、誰が嘘をついているのか。
「あぁ、やっぱりいい匂いだよな。もう食っちゃえ!」
芸術品のように飾られた海鮮丼に箸を突っ込む無遠慮など、食欲の前には無法であった。
自身を掻き立てる衝動に、逆らう疑問すら湧かない。
ただ暴力的に、米と一緒に、ぷりぷりと咬筋をはじき返すかのような海の幸をかっこんでいくほどに、
それを喉の奥へと嚥下する程に、言い知れぬ満足感が脳を駆け巡る。
うん、後の事は、後の自分が何とかする筈だ。
確実に胃の腑に重みを感じながらも、シモーヌは、目の前の満足を堪能するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)とカフェに……来るはずが大遅刻しちゃった!
扉を開けたらもう店内が大惨事!
美味しい匂いはしてるけど、ゆっくりメニューを楽しんでる場合じゃないよね
!あわわ、ティエルごめん!
パンケーキ食べてる場合じゃないみたい!!
都合よく事情を説明してくれた人のお話で状況はわかったから
お客さんが巻き込まれないように前に立ち塞がるよ!
楽器のオバケたちを呼び出して、厨房から出てこないように一斉にビブラート!衝撃ビリビリで怯んでるうちにみんな逃げて!
ティエルのフォローで繰り出される実を撃退できたら、ようやく一安心!
お腹が空く匂いをグッと我慢して、悪いコックを追跡しよう!
アドリブ・連携も歓迎だよ!
ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒に新世界に遊びにきたぞー☆
うーん、美味しそうな世界で目移りしちゃうね♪
けど、一緒に美味しいもの食べようと思ったら、もうお店の中がどったんばったん大騒ぎだよ!
むぅ、仕方ない! 美味しいご飯はお仕事が終わった後にお預けだ☆
カレーライスや海鮮丼、ラーメンの詰まった実を【フェアリーランド】でほいほいほいって回収しちゃうぞ☆
実を回収しきったら、ミフェットの攻撃でビリビリ怯んでるのをレイピアでぐさぐさぐさっと攻撃して食材にしていっちゃうね♪
アドリブ・連携も歓迎だよ!
ソーマという、魔法の食材がときに命の躍動で以て不思議な生物として溢れ出す、夢のようなグルメプラネット。
のどかな街並みに、件のカフェレストランは、子供の目線から見れば白亜の宮殿のようにも見えたかもしれない。
古美術を扱うお店の二階に構えたお店に向かう猟兵二人、お子様二名様は、少しばかり出遅れてしまったが、なに、予約を取っていたわけでもない。
急なお客様でも、きっと余裕をもって接客してくれるに違いない。
「ごめんね、すっかり準備に時間がかかっちゃった」
「もー、お腹ペコペコ。いい匂いで、我慢できないよー♪」
ミフェット・マザーグース(造り物の歌声・f09867)、そしてティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)の二人は、運悪くお店に足を運ぶのに少しばかり出遅れてしまったようだが、二人の顔つきはどうにも明るい。
お店に近づくほど、色々な食べ物の匂いが空腹を刺激するのだ。
いや、それにしたって、匂いが外に漏れ過ぎではないだろうか。
路上で売り出す屋台ならまだしも、飲食店ってこんなに匂いが外までするものだろうか。
ちょっとだけ違和感は覚えたものの、逸る気持ちを抑えきれず、なんだか騒がしい店のドアを開けてみると。
そこには既に惨状が広がっていた。
おしゃれな木目のフローリングに藤家具めいたつづれ織りの美しい衝立をはじめと空いた落ち着いた内装……は見る影もなく、巨大なヤシの木が、のっしのしと厨房と思しき奥の方から這い出してきては、配膳台などを踏み倒してガラス張りの窓を突き破り、オープンテラスへと陽の光を求めてゆく光景は、まるで南国の戦地か何かに近かった。
「わ、わぁ! びっくりド〇キーだ! メニューは何処かな♪」
「あわわ、ティエル、パンケーキを頼んでる場合じゃないみたい!」
熱帯雨林の如きもさもさ具合に、ティエルは猟兵らしく即座に順応しようとしたのだが、流石に無理があったようだ。
店内の混乱をスルーするのはいくらなんでも難しい。
「お、お客さん! 申し訳ないけど、厨房からパーティー用のフルコースツリーが脱走しちゃったんだ! 逃げるか、助けを呼んでくれーっ!」
都合よく状況を説明してくれるシェフの慌てふためく姿を見てしまっては、まったりするどころではない。
助けを呼ぶって?
自分たちが救援だ。
「フルコースツリー……じゃあ、美味しい匂いの正体は、この木たちなんだねっ☆
むぅ、仕方ない! 美味しいご飯はお仕事が終わった後にお預けだ☆」
「お客さんはこっちで守るよ。コックさんも急いで!」
ティエルはすきっ腹を戦意で誤魔化し、レイピアを抜き放つ。
ミフェットも並び立つように前に出て、髪の毛に相当する部位を巨大な腕のようにして立ちはだかる。
目の前を横切る歩くヤシの木たちが、倒してもいい相手であると判断すれば、ユーベルコード【楽器のオバケの演奏隊】を発現させ、ミフェットの周囲には壊れた楽器幽霊たちが一斉に音を奏で始める。
壊れた管楽器といえど、サキソフォンなどには壊しても問題ない部品もあるそうで、一部のプロはまず初めにそこを叩き壊すことから始めるという話もあるらしい。
そんな話は置いておいて、高い音域のビブラートは衝撃波となって、並み居るフルコースツリーたちの歩みを止めてしまう。
「今の内! はやくっ」
「す、すまない! この例は、きっととびきりのメシで返すからよっ!」
お客さんを連れて避難するコックさんたちを見送ると、その背後に敵意が向くのを感じる。
見れば、フルコースツリーはその身を撓らせて、たわわに実ったフルコースの実をぶん投げて来ていた。
岩石のように固い表皮を持つその果実は、丹精込めた料理を与えられたフルコースツリーがだいたい20年ほど保存できるとも言われているとか。
「そんな攻撃で、参ったりしないぞー♪ よ、ほ、てやーっ!」
迫る投擲。それらを、ティエルが受け持ち、レイピアで正確に突いては勢いを削いで跳ね上げる。
小さな体のティエルだが、速さを乗せた迎撃でぽーんと跳ねあがったそれらを、腰に下げた壺でキャッチする。
【フェアリーランド】に繋がっている妖精の壺に、フルコースの実は次々としまい込まれていく。
「ティエル、キャッチは任せて!」
「よーしっ、いくぞー☆」
一般人の避難がある程度終われば、ミフェットも改めてティエルのフォローに回る。
髪の腕を大きく広げれば、勢いのあるフルコースの実だってキャッチできる。
せっせかキャッチに徹していれば、ティエルは攻撃に転じることができる。
素早く羽ばたいて、レイピアを一閃。風が鳴る。
ずずんとフルコースツリーは倒れ伏して動かなくなっていく。
それを繰り返していくと、案外、早くそれらを鎮静化する事が出来たようだった。
どうにも、冷蔵貯蔵庫で冬眠状態だったらしく、数は多くとも野生の凶暴さは発揮できなかったのかもしれない。
「ふう、はやいところ、悪いやつを追いかけないとだねっ♪」
「うん、悪いコックを追跡しよう!」
顔を見合わせ、避難する一般人や料理人と、それとはまったく別の方向へ逃げていく人影を見かけた二人は、そちらの追跡に移ることにする。のだが、
ふと、受け止めたまま、手にしたままのフルコースの実が、どうやら受け止めた拍子に亀裂が入り、ぱかっと開いていた。
湯気と共にふわっともれる、スパイシーなカレーのにほひ!
二人の胃袋がきゅーっと悲鳴を上げて、口の中で唾液腺が暴れ出す勢いだった。
「ティエル、早くしまって! 我慢できなくなっちゃう!」
「蓋閉めてミフェット! 匂いでお腹減っちゃうよー!」
空腹で余裕のなくなり始めた二人がワチャワチャしながら、これらもまた壺の中にしまっていく。
しかし、一度その存在を五感で感じ取ってしまった二人は、つまみ食いせずに本件の目標である闇料理人追跡を行えるのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『闇料理人ザンジオウ』
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POW : 斬地
【巨大包丁】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を食材としておいしく調理し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 斬人
【巨大包丁】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【強化闇料理人】に変身する。
WIZ : 惨血
術者の血液に触れたあらゆる対象は、血液が除去されるまで、全ての知覚が【「非人道的料理」の幻影】で埋め尽くされる。
イラスト:白木とざくろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『チィ、連中なかなかやるな……フルコースツリーは、かなりの数を用意していた筈なんだがなァ……』
逃走のために解き放ったソーマのモンスターたちだったが、どうやら素早く処理されてしまった。
闇料理人『ザンジオウ』は、猟兵たちの思った以上の手並みに舌打ちを漏らしていた。
あまり時間稼ぎにならなかった。もはや、自分は逃げきれない事を悟る。
いいや、違うな。
『へっ、俺も焼きが回っちまったってのかァ? へへへっ』
洩らした舌打ちは、果たして思い通りに物事が進まなかった事へのいら立ちだったろうか?
かなりの数を用意していたフルコースツリーは、簡単な相手ではなかったはずだ。
少なくとも、ザンジオウが身をくらますには十分な時間稼ぎができると考えていた程度には。
だが、そいつらを容易く捌いて見せた手際には、料理人として興味が湧いていた。
『食い意地が張った奴らなのか、それとも……その手に自身のある奴なのか……血が騒いじまう』
駆けていたその足は、やがて速度を失い、止まる。
踵を返したその後ろには、この町のどこからでも目につくほどのスポット……山々から注ぐ湖があった。
『降参だ。もう逃げられやしない。そうだろう? ……ならよう』
背負った巨大包丁を、一息に抜き放つと、水面に半月の衝撃が走るとともに、泳いでいた魚……魚のようなソーマが、一瞬にして捌かれてしまう。
『どうだい、ここの池のタコワサドジョウは、なかなかのもんだぜェ? おっと、誤魔化すつもりはねぇよ』
手早く皿に盛られた、一見するとグロテスクなイボイボのあるドジョウは、泥抜きさえも一刀のもとに行われ、鮮烈な刺激とコリコリも生のまま味わえる珍味であるという。
彼にとってそれは、小手先の技術に過ぎないのかもしれないが、このタイミングでそれをわざわざ見せつけるという意味とは、即ち──、
『ククク、今更弁明の余地なんざねぇ……だがよう? 興味ねぇか? 闇料理人ザンジオウ、その|料理《人生》ってやつによォ?』
その戦いは、いかなるものになるのか。
腕に自信があれば、力による戦いも、その技による戦いも可能であろう。
とにかく、闇料理人の排除を為さねば、この町に平穏は返ってこないのだ。
鐘射寺・大殺
ほー、随分立派な包丁だのう。瞬時に魚を捌いた腕前も、見事。キサマがこの店のオーナーであるか?聞くところによると、闇料理人というのはなんでも見境なく食材にしてしまうらしいのう。なかなかのワルよのう!
だが魔界では、悪魔が悪魔を喰らうことは特に珍しいことではない。何せ自分の体を切り落として料理する奴がおるからのう!どうだ、我輩も料理してみるか?
フハハハハ、出来るものならのう!
【魂狩】で《武器に魔法を纏う》強化を施し、ザンジオウと真っ向から打ち合う。斬撃に《覇気》を込め、包丁ごと《叩き割り》《一刀両断》にしてくれるわ。ステーキはウェルダンが好みでのう!キサマの魂もこんがり焼き上げてくれる!!
磯に似た湿気を帯びたにおいは、店舗よりも湖に近づいたからだろう。
それとも、今しがた等身大ほどもある大包丁が、湖の波間を切り裂くような大技を見せたせいか。
それだけではない。
波を切る技は、そのまま湖に活けてあったソーマを瞬時に跳ね上げる技であり、そして精妙な包丁使いによって、瞬く間に活け造りにされてしまう。
グロテスクな淡水生物にも似たソーマが、斬られたことをも気づかずに薄造り、或はばらばらに切り裂かれて、空中に散ったかのようなそれらは、陶器の器に花を象るかのように着地し盛り付けが完了する。
なんという、妙技。
「ほー、随分立派な包丁だのう。瞬時に魚を捌いた腕前も、見事」
『ふん、料理を味わいもせず、その技の冴えを賞味するたぁ、変わった客も居たもんだねェ』
鐘射寺大殺は、その技の冴えを前に、思わず緩やかな拍手を贈る。
代々暗黒剣を受け継いできた悪魔の魔王であるからには、敵であれ、武器とそれを扱う技には、その重みを、存在感を覚える程に好奇心と敬意を抱かずにはいられない。
何者が現れようと、いかな名工の作であろうと、自らの手にする剣より優れたものなどある筈はないが、どのような武器にも歴史は存在する。
そして、優れた武器を、剣身一体と化すまで使いこなすものに巡り合えれば、それは即ち、好敵手という事である。
だがしかし、いや、だからこそ、大殺は尊大にふんぞり返る勢いで正対する。
「キサマがあの店のオーナーで相違ないな? 見事な料理に、我が配下の者共も、すっかり立ち往生よ」
『そいつは何より。だが、おたくは……帰り際に「ごっそさん」を言いに来たわけじゃあ、ねぇよなァ?』
ピリピリと空気が張り詰めていくのは、お互いとの間に空気の圧が高まっていくかのような錯覚があるからだろうか。
お互いが、前に出ようと意気込んでいるにもかかわらず、本能的に察する危機感がそれを許さない。
これ以上、一歩でも踏み込めば、かち合う。
意だけは既に、お互いを食らい合っている。
チュウンッ、と大殺の片頬を、不可視の殺意が掠めたような気がした。だがしかし、恐れることも気にすることもなく、獰猛に笑う。
「聞くところによると、闇料理人というのはなんでも見境なく食材にしてしまうらしいのう。なかなかのワルよのう!」
『ああ、この大地は幸福だ。ソーマがそこら中に湧いてるからなァ。だからこそ、野趣あふれる味わいってやつを、ついつい忘れちまうのさ。もったいねぇよなぁ』
「だが! 魔界では、悪魔が悪魔を喰らうことは特に珍しいことではない。何せ自分の体を切り落として料理する奴がおるからのう!」
『ほおう? そいつは、流石に試したことがない……おもしれぇ発想だ』
「どうだ、我輩も料理してみるか?」
『フフ、ククク……いいねぇ、おたくの言い分にゃあ、いちいち心惹かれる。世ン中にゃあ、まだまだおもしれぇもんがいっぱいだ。……いいぜ。俺も、俺の、|料理《人生》で応えようじゃねぇか!』
「フハハハハ、出来るものならのう!」
おおよそ包丁を構えるそれではない、巨大包丁を肩に担ぐ様な構えをとる闇料理人『ザンジオウ』と、
長大な刀身を持つ暗黒剣・オメガを担ぎ上げる大殺。
湖の傍に、吹き抜ける風すらもはじき返すかのような、強い圧がぶつかり合う。
呼吸すら困難になるような重苦しい緊張感の中で、腕を畳むようにして切っ先を向ける大殺の暗黒剣に火が灯る。
【秘術・魂狩】によって、地獄の炎を纏った暗黒剣が、赤黒く周囲の光景を歪ませる。
『──カァッ!』
破裂するような呼気。
動いたのはどちらが先か。
大物を担いだ者同士、空を裂く音も重く、打ち合う火花も直接的な衝撃はもとより、空間をひずませるような音が雷光のように轟く。
重く激しい衝撃音。まさしく、重い音響、ヘビィメタル。
笑い合って打ち合う刀身がそれぞれにそれて、地を抉る。
大殺の暗黒剣が地を焦がし、ザンジオウの包丁が周囲の街路樹を寸断し、奇妙な料理を瞬時に作り上げていく。
「こんな時にも料理か! 生粋の料理人よのう!」
『そいつが、俺の人生だからなァ! オルァァァ!!』
「よかろう、料理人! 一つ、吾輩も手料理を振る舞ってやろうではないか。ステーキはウェルダンが好みでのう! キサマの魂もこんがり焼き上げてくれる!!」
至近距離で爆弾がさく裂するかのような、打ち上げ花火の渦中に居るかのようなド派手な剣戟は、しかし、続けるにつれて優劣が明らかになって来る。
如何なソーマモンスターを相手取ってきた料理人ザンジオウとて、人と剣を競った経験はその戦歴ほどではあるまい。
剛力で振るうにせよ、大殺の剣には、それを扱う技が冴えている。
包丁とは、斬り合いをするものに非ず。
獲物を解体するためのものである。
それに対し、剣とは、相手を制するものである。
その戦技、メソッドが、相手の巨大包丁を跳ね上げた瞬間、胴ががら空きになる。
「獲った!」
『ヌウウッ!!』
一連の動きとして身体に叩きこんだような打ち上げからの胴払い。
それを受けて吹き飛ぶザンジオウ。
しかしながら、大殺の手に返ってきた感触は、コックコートを裂くよりも硬いものであった。
『クソォ……愛用の骨抜きが、折られちまったじゃねぇか……へへ、ゴブゥッ!?』
咄嗟に腰に差したサブの骨抜き包丁を抜きざまに受けたが、それすらも強烈な打撃でへし折られ、ザンジオウは毒づく。
その折に肉体の損傷と共に喉から漏れた血の塊は、マグマのように沸騰し、地獄の炎で蒸発していく。
魂をその身に残したまま焼かれるというのは、未知の苦痛であった。
『チキショォ……すげぇなぁ。こいつは、どんな料理に、使えんだろうなァ……』
その身を、魂を焼かれながら、ザンジオウは尚も立ち上がる。
傷つきながらも呟くその言葉に、不敵な笑みを返しながら、その業の深さに心中で感嘆する事も忘れない。
おぞましき料理への執念。
それはきっと、世界を壊してしまうほどのものになり得るのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
やっぱり海鮮丼はまずかったな。味は最高だったんだけど。
食べ過ぎた。
身体は重いし、キレがいまいちだし。さっきからつまらない傷ももらってるし。
これじゃ、アタシが料理されちゃうよ。
さっきの自分を全力で止めたい。
後悔先に立たずって言うんだよな。こういうの。
形勢を立て直すために、身体を絞ろう。
動きが大きくなる槍は一旦置いて、己の拳で戦うよ。
UC【拳撃狂詩】を発動。とにかく身体を動かそう。
相手の反撃も食らうだろうけど、それは死なない程度に受けたり避けたりして、パンチの嵐を叩き込もう。
キレが戻れば、相手の攻撃だってすり抜けられるはず。
闇料理人のタタキを作ってやるよ。
こは、いかなる策略か。
十重二十重の罠の先に宝物あれば、それも納得しよう。
しかしながら、シモーヌ・イルネージュの歩んだ道は、あまりにも娯楽という罠に溢れていた。
ただ食って、敵と殴り合える。夢のような仕事であるように思えたのは、腹の中身と上着に窮屈さを覚える時までであった。
儚げな雪のような白い髪によく似合うべく、いや、戦うに十二分な理想的な体型は常に維持しているつもりであり、戦うための最速と最良を己に課していた筈であった。
戦いを日常とするからには、いついかなるときでも、瞬時に最高最強を発揮できるのが理想だ。
だが! 欲に溺れたり、シモーヌ。
「んう……胃が、おもた……やっぱり海鮮丼はまずかったな。味は最高だったんだけど……」
意図せず、くぐもったような息が漏れる。
人によっては、それが繊細な女性のそれと聞き間違えてしまうかもしれないが、たらふく食った後に追加で丼ものを行ってしまった業の深さは、そのまま足枷……いや、胃の枷となって彼女のコンディションを落としてしまっていた。
『おいおい、そんなんで、まだ欲しいのかァ? 好きモノのお嬢ちゃんめ』
「食った後に、軽口を叩かれんのは、いい気がしないね……っ!」
びょおっと風が鳴る。
空を裂くシモーヌの槍と、相対する闇料理人ザンジオウの担いでいた巨大包丁とが目の前でかち合い、眩く火花を散らす。
広く柄を握るシモーヌが、長大とはいえ包丁の一撃を、技でいなして逸らすことなど造作もない。
しかしそれは、彼女が万全の状態であればこそだ。
「うぐっ」
出足の踏ん張りを利かせて前傾を維持して手首の返しをタイミングよく加えれば、相手の体勢すら崩せる。
連綿と繰り返した技が完全にはまればこそだが、しかし、踏み込んだ瞬間に腹筋を通じて全身の動きを阻害する腹の張り!
内臓を圧迫せんばかりの胃の容量が無駄な力みを生み出し、崩すはずが逆に崩されてしまう。
体格差をもある程度は無視できるほどの技の冴えが、今は見る影もなく、返す刀で振り抜かれる巨大包丁を危ういところで飛び退る。
しかし、ぬるりとした熱い感触が、脇腹を伝う。
躱しきれなかった。
「チッ、身体が重い」
『ん~、随分と、楽しんでもらったみてぇだなァ。うちの店でよォ?』
「おかげさんでね」
血の跡の残る包丁が怪しくきらめくのを、恨めしげに見る。
掠めただけで服ごとバックリいかれてしまったようだ。
滴る血液を舐め取るザンジオウの仕草はいかにも悪者のそれだが、裂けた口元で含んで味わう顔つきは、しかしいかにも料理人のテイスティングであった。
『お前さん、獣の味がするねぇ。オオカミかい? だったら、気を付けねぇとなァ。知ってるか、オオカミってのは、クマを狩るんだ。
集団で囲って、消耗させ、身体を、肉を、脳を、沸騰させて昏倒させる。ストレスで参っちまうのさ。賢いだろォ?』
「同じことをしてくれるってワケ? はっ、たしかに……このままじゃ、アタシが料理されちゃうな」
気が付けば、打ち合いに興じる程に、一手二手と、普段では貰わないような手傷を受けるようになる。
満腹状態での戦闘は、死亡率が跳ね上がる。確かそういう事も考えた気もする。
発汗も出血も、普段では考えられないほどに促されている。
もちろん、毒や薬物を盛られているわけではない。
寒気がするのは、手傷や出血のためではない。
目の前の相手の、その目つき。
薄ら笑いを浮かべてはいるが、その目の輝きは、どこか無感動で、爬虫類や昆虫のもののようにも見えた。
無機質なそれは、目の前の相手を、食材のように見ている。
本気でやる気のシェフとは、こうまで恐ろしい相手なのだろうか。
全身が粟立つような気配。
窮地であるほど、シモーヌという一匹の獣は、心が躍るものである。
もとより、万全である事など甘えだ。不調である時の立ち回りこそ肝要。
常在戦場とは、このことか。
『ん、どうしたァ? そろそろ、捌かれる気になったか?』
「いいや、夢中になるには、ちょっと今のアタシじゃ邪魔っけでね」
鎖骨と左腿に新たな痛みを覚えながら、距離が空いた時を使い、シモーヌは大きく息をついて槍を地に突き立てた。
発汗も手傷も、普段では考えられない程だが、それでもまだ自身の熱意は抜けきってはいない。
槍での大技が狙えない以上は、大振りは不利と考えたほうがいい。
ならば、無手にて、身体を細かく動かし、身体の順応を促す。
敢えて間合いを捨てるという、言ってみれば捨て鉢になったような行動だが、その思想は更に力業であった。
要は──、動いて胃の消化を促そうというのだ。
『おいおい、拳で俺の包丁と勝負するつもりってぇのか? 俺は、カンガルー肉も調理したことがあるんだぜ?』
「じゃあ、今日からカンガルーは世界二位だ」
『ハッ、来てみな、オオカミ一位!』
「でぇぇいっ!!」
『オルァッ!!』
肉薄する二人。
当然、等身大の巨大包丁にリーチで勝る術はなく、両手を畳むボクシングスタイルで突っ込むシモーヌの眼前に鋭い切っ先が迫る。
それは半ば賭けであった。
前頭部は、ボクサーの拳をも砕く頑健さをもつが、相手の大刀は頭蓋を両断するだろう。
だがしかし、ボクシングには喧嘩にはない受けの技術もまた存在する。
受けながら攻撃の筋を逸らす、リッピングスウェー。
それを高速で迫る刃を相手にするのは、あまりにもリスクが大きい。
前髪と額がえぐり取られる覚悟を以て、頭を前に突き出しつつ首が重たい刃を押しのける。
『なっ!?』
「シィッ!!」
視界の半分が赤く染まりながら、折り畳んだ左腕がバネのように弾けるのを本能で感じる。
思うよりも先に出る、|目にも留まらぬ小突き《フラッシュジャブ》を続けざまに放ちつつ、それが相手の顎下を捉えると拳の感触が伝達されるよりも先に、足がさらに間合いの内側へと体重を推移させていく。
身体に染みつくまで覚え込ませた連携は、考えるよりも先に足のフットワークを刻ませ、適切な間合いで以て最良のパンチを、固く握りしめたボックスを叩きこむようインプットされている。
【拳撃狂詩】とも言うべきコンボは、踏み入ってから既に次の攻撃に移っている。
体重移動に合わせて肩ごと身体を入れ込むハンマーのようなストレートが、相手の顔面を叩きつけると、体勢を崩すよりも先に、振り子のように右ストレートを引っ込めざま、死角からの渾身のアッパー。
かのボクサーが繰り出す必殺ブロー、ホワイトファングをそっくり逆にしたようなそれは、まさしく獣の牙の如く、ザンジオウに食らい付いた。
「うおおおっ!!」
『ぶえぁっ!!?』
水風船を叩き割ったかのように飛び散ったそれらは、果たしてシモーヌが自らまき散らした汗や血であったか。
それとも、打ち据えたザンジオウの折れた鼻骨から噴出したものであったか。
「ふうう……だいぶカンが戻ってきたかな? さあ、第二ラウンドだ。
来いよ、闇料理人のタタキを作ってやるよ」
『ぐ、ぐぶっ……や、野郎ォ……タタキってのはなァ、香味野菜とか、調味液をしみ込みやすくするときの工程の事だぜぇ。わかってんのかよォ……!』
顔をボコボコに腫らしながらも、包丁を担いで立ち上がって来る料理人の蘊蓄に、シモーヌは呆れを感じるものの、その闘志と矜持だけは、なんとも感心するものを覚えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
緋月・透乃
こいつの料理は美味しかったけど、こいつがいるともっと美味しい料理を作ってくれるかもしれない人がいなくなってもったいないから倒さないとね!こいつの人生に興味はないけど、どんな戦いができるのか、ってことには興味あるから、私達全員殺して生き延びるくらいの気合いでかかってきてほしいよね!
と思っていてもこっちから仕掛けるよ!重戦斧構えて突撃!力強く武器を振ったり、柄でいきなり打ったりして単調な攻めにならないようにしないとね!
敵の攻撃は武器で受ける!ユーベルコードもしっかり踏ん張って、[怪力]で武器を支えて受け止めるよ!
敵に隙ができたら【緋迅滅錘衝】で大ダメージを狙いたいね!
ティエル・ティエリエル
ようし、ミフェット(f09867)と一緒に悪いコックを追い詰めたぞー☆
むむむっ、たこわさ。大人の料理って聞いたことあるぞ!
どれどれ、ボクが一口味見あげるよ♪(残念、お子様のお口には合わなかったぞ☆)
よし、気を取り直して戦闘開始だ☆
よっ、はっ、とりゃーっと【スカイステッパー】のジャンプを交えて、
敵の巨大包丁の攻撃を見切り、避けていくよ♪
あんなのに当たったらボクなら丸ごと食べられちゃうからね!
そのまま悪いコックの周りを飛んで、ツンツンとレイピアで突きさしてダメージを与えていくぞー☆
これが終わったら、こっちの世界のパンケーキを食べに行くから、ぐずぐずしてらんないよ♪
アドリブ・連携も歓迎だよ!
ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と悪いコックさんを追いつめたよ!
えー、えっと ……たこわさ?
まさかの料理勝負?に困っちゃう
ミフェットにとってはあんまり興味がわかないメニューだし
ティエルはどう? たこわさ(人生)
ティエルに振ったりしつつ、最後はやっぱり戦わなきゃだよね?
ぞわわってする料理の幻覚を見せられたら
ミフェットはいつもの喫茶店、いつもの蜂蜜たっぷりのふわふわあったかパンケーキのイメージで打ち消すよ!
悪いコックさんにとってはすっごい料理かもしれないけど、安心できない料理は美味しいって思えないから、おことわり!
はやくティエルといっしょにこっちの世界のパンケーキを食べに行こう!
アドリブ・連携も歓迎だよ!
戦いは最終局面。
なんだか大変なことになったレストランからちょっと道を外れ、この町のどこからでも見える様な湖を前にした、自然の姿を望む抜群のロケーションである。
もはや逃げられぬと察した闇料理人ザンジオウ。
だが、負けるつもりは毛頭ないらしく、なんでもかんでも料理にしてしまう怪物じみた価値観と発想力でもって、猟兵たちを調理してやろうという腹積もりのようだ。
そうはいかぬ、とばかり、春の風の生まれるような緩く心地よい、けどちょっとまだ肌寒いような屋外にも気にすることのない薄着で、そのわがままなスタイルを遺憾なく晒す緋月透乃は、追い詰めたとばかり鉞めいたバトルアックスの石突で地を打つ。
「てっきり、逃げる時間を稼ぐつもりだと思ってた。気変わりってワケ?」
『おたくら随分と、ソーマを狩るのが上手いらしいからな。試してみたくなったのよォ……おたくらの味と……俺の腕をよ』
「……正直、あんたの腕は確かだ。とても美味しかった。でもね、あんたが料理人を食っちまったら、もっとおいしい料理にありつけないかもしれないんだ。それって勿体ないよね?」
『俺が全て喰らってやりゃあ、いくらでもご馳走してやるぜぇ? ここで立ち止まるつもりはさらさらねぇからよ』
「ふ、あんたの人生になんか興味ないけど……戦いぶりには期待してるんだよね!」
『ついてるなぁ、おたく。とびきりの料理をその身で……いや、待て!』
透乃とザンジオウ、その二人の合間に陽炎の如き闘争心が揺らめく最中、それは唐突な制止の声で場が止まる。
何事かと目を見張る透乃。
と、その二人の合間に、すっと横切る子供が二人。
何の気なしに(・ワ・)みたいな顔で、対峙する二人を交互に見る小さな妖精の少女と、その後ろをおっかなびっくり申し訳なさそうに追いかけるブラックタールのやや黒ずんだ色合いの女の子。
ティエル・ティエリエルとミフェット・マザーグースは、この場においては完全に闖入者であったが、いやしかし、本来は同じようにザンジオウを追いかけてきたのではなかったろうか。
いや待て、しかし、妖精の少女ティエルの興味は、異様にかぐわしく、爽やかな香味野菜のようなにおいを風に乗せるテーブルにあった。
丸木を適当に削ったような足跡のテーブルの、綺麗なお皿に、殊更綺麗に、まるで牡丹の花のように飾り盛られたそれは、先ほど小手先を見せつけるかのようにザンジオウが捌いて見せたタコワサドジョウのお造りであった。
淡水でありながら、本来は泥臭いドジョウも、正確に素早く捌けば、その身に宿す刺激的な成分も手伝って生食可能であるという。
かなりの技巧が必要な、しかし、見た目が壊滅的にグロいのと、極めつけに玄人向けな、言ってしまえば酒の当てのようなソーマであるため、人を選ぶ珍味であるために、食材としての人気はそれほど高くはない。
だからこそ、だからこそ、好奇心旺盛なティエルは、タコワサドジョウのお造りから目が離せなかった。
「ティエル、なんかその、オジャマそうな雰囲気だよ?」
「むむむっ、たこわさだよ! 大人の味って、聞いたことあるよ! おじいさまが、これは子供には早いって」
「う、うーん……ミフェットにはちょっとわかんないや」
「そうだよねっ、どれどれ、ボクが一口味見あげるよ♪」
一触即発の雰囲気などどこへやら。
そんなものそっちのけで、興味のままに卓へ着くティエルの自由さに、思わず毒気が抜かれてしまう。
食べ物に偏見はない透乃ではあったが、しかし、お子様にたこわさはどうなのよ。という懸念は強い。
見てみなさいよ、ミフェットちゃんなんて、明らかに微妙そうな顔で見守ってるじゃないのさ。
『ふん、そいつに目を付けるとは、なかなか見所があるぜェ……だが、タコワサドジョウの深さを知るにゃあ、ちとお子様かも知れねぇな? 箸はあるか?』
「むむー! 食べてみなきゃ、わかんないよ! あ、マイフォーク持ってきてるよ♪」
自分の料理には絶対的な自信を持つが、食べる相手のことはあんまり考えていないらしいザンジオウだが、飯を食う相手は客扱いするのは律儀なところ。
一同が固唾をのんで見守る中、ティエルは薄造りのドジョウの身と、細切れにされた表皮のイボイボをまとめて掻っ攫ってパクリと口に運ぶ。
鮮度抜群のぬるりとまとわりつくようなキメの細かな薄造りは、溶ける様な食感で、本来のドジョウには存在しないイボイボの細切れは、爽やかな香りを伴い、鼻を抜ける様な強い辛みが稲妻のように突き抜け、こりっとした歯ごたえがたまらなく……。
「むぐぐっ!! はひーっ!!」
痺れる舌を出して涙目になるティエル。
どうやら、お子様の味覚には、まだまだ早い代物であったようだ。
「ミフェット、こいつ、かなりの強敵だぞっ☆」
「うん、気を付けよう!」
『っへへ、残念だけどよぅ、お子様がレディになる前に、ここであったが運の尽きってやつさ! お前らは、全員ここで俺の料理になっちまうんだぜぇ!』
誰一人、この状況にツッコミを入れる間もなく、結局は戦いになる流れのようだった。
何のためにたこわさにチャレンジしたのか、そんなことはもはや、どうでもいい。
「おこちゃまって、おつまみとか好きになりがちだよねー。まあ、あのたこわさは後でいただくとして、改めて戦いの雰囲気じゃない?
私達全員殺してでも生き延びるくらいの気合いでかかってきてほしいよね!」
『ハッハァ、それこそ朝飯前ってやつだァ!』
子供二人が、タコワサドジョウの回復用に緊急避難用はちみつドリンクをごくごくしている間、言うが早いか、透乃はかなりの重量を誇るであろうバトルアックスを手にすっ飛んでいく。
「ちぇりゃー!」
『オルァッ!!』
武器同士がかち合う激しい衝突音。
最大距離からのぶん回しを跳び上がりながら、ザンジオウは巨大包丁を振り下ろす。
それを戦斧の柄で受けると、飛び散る火花から香ばしくていい匂いがする。
まさか、この戦斧をも調理しようというのか。
「本当に、何でも調理するんだなぁ!」
『たっぷり血肉を吸ってるんだろォ? 匂いでわかるぜぇ?』
壮絶な鍔迫り合い。しかし、その合間を縫うかのように、風のような閃光が突き抜ける。
『うおっ!?』
「こっちも一応、戦う気だよ♪ 口の中はヒリヒリだけど、気を取り直して戦闘開始だ☆」
『チィ、お子様は座ってろォ!』
裂けた口元をさらに切り裂かれたザンジオウは、今しがたスゴいスピードでレイピアを振るいながら通り抜けていったティエルがそれをやったのだと知るや、飛び散る自らの血液を瞬時に調理し、エスプーマのごとく霧散させる。
「く、何を……ハッ、これは……イボイボドジョウ、いや、タコワサドジョウ!? |調理《ころ》されたんじゃ!?」
『へへ、トリックだよ』
血煙によって作り出される恐ろしい料理の幻。
しかし、グロテスクな敵の数々など、見慣れていると言えばそうである。
ただし、今しがた味わった者たちの、恐ろしげな見た目ともなると、いやが応にも口のヒリヒリが想起される。
「ティエル! 歌を聞いてっ!」
気圧されそうになるところを、ミフェットの歌声【田園を照らす暖かな陽の光の歌】がイメージの上書を図る。
優しくあったかで、ふわふわ甘い、はちみつたっぷりのパンケーキ。花のツンと来るようなはちみつと、淹れたての紅茶のイメージが、おっさんの酒の当てのイメージを打ち破る。
「やっぱり、ボクはそっちが好きだーっ♪」
『チィ! そこははちみつよりも、メープルシロップだろうがっ! 背を高くしたけりゃ、セルクルか、アルミホイルでって、そんな場合じゃねぇ! 叩き落してやるぜ!』
元気を取り戻したティエルが再びすごいスピードで突撃を掛けるが、流石にわかっていればザンジオウもそれを大刀で叩き落そうとする。
リーチの差は歴然。
スピードは速くとも、素早い相手でも包丁を持つシェフの技は正確だぞ。
しかし、直接的に見えたティエルの突撃は、正確に迎え撃つザンジオウの包丁の軌跡から、不自然に外れて軌道を変える。
「よっ、はっ! とりゃー!」
『な、なにぃ!? こんな動きをするのか、妖精ってのは!?』
【スカイステッパー】で空中でジャンプを繰り返すことにより、ティエルは飛翔中ですらも軌道変更が自在のようだった。
すっかり翻弄され、包丁を握る手元から、節々を次々と突き刺され、思わず愛用の包丁から手を放してしまう。
『う、うぐっ、しまった!?』
「体勢を崩したなぁ! 今だ、いっぱつでぶっこわーす! 【緋迅滅錘衝】!!」
相手が隙を見せたまさにその瞬間、透乃のバトルアックスが最大の威力を発揮する。
受けるもいなすも、躱すこともままならない。
フルスイングの横薙ぎを受けられる道具もないまま、ザンジオウは身体を引き千切られながら吹き飛んでいく。
「ぷふう……パンケーキ、それもいいな!」
振り抜いた姿勢のまま、息を吐き、清々しい面持ちで、透乃は胸いっぱいに、幻視した幸せのイメージを噛み締める。
しかしそれもやがて霧散する。
ザンジオウの気配はすでに巨大包丁と共に泡と消えてしまったらしかった。
気が付けば、ミフェットの歌声も、あの緩やかな午後のひと時のようなイメージも薄れて、牧歌的な湖の光景に戻っている。
「いつか、たこわさも美味しいって思えるようになるのかな」
「悪いコックさんにとってはすっごい料理かもしれないけど、安心できない料理は美味しいって思えないから、おことわり! でも、そうだね、いつか、ミフェットたちが大人になったら、そう思えるかも?」
「んんっ、結構いけるよ!」
なんか食ってる人が居る。
ともあれ、世間を騒がす闇料理人の脅威は、ひとまず去ったわけである。
そうとなれば、お子様二人の次なる行動は決まっていた。
「ティエル、食べそこなっちゃったパンケーキ、食べに行こうよ!」
「そだね! こっちの世界のパンケーキはどんなだろっ! ぐずぐずしてらんないよ♪」
戦いの気配が去ったと知るや否や、二人の行動は素早い。
それを見送りつつ、一人でタコワサドジョウを平らげてしまった透乃は、少しばかり自然のロケーションを堪能した後、
「そういや、私もデザートまだだったなぁ……行くかぁー!」
すぱーん、とお腹の辺りをひと叩き、次なる戦場へと向かう。
そうして、猟兵たちも戦いを終えて、それぞれの帰途へとつくのであった。
戦いと食の尽きないグルメプラネットでは、きっとこんな景色は日常なのかもしれないが、それでも、これより先、この町で料理人の失踪騒ぎは起きなくなるだろう。
ところで、フルコースツリーの暴れたあのお店は、パンケーキの提供にこぎつけるのだろうか?
大成功
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