バトル・オブ・オリンピア⑮〜Grand sorcier
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ネオ巌流島――。
そこは嘗て武蔵と小次郎が決闘した場所とはちょっと違って、目の覚めるような青が足元に広がる――厳しい国際標準をクリアしたプロ仕様のテニスコートのようだった。というか、テニスコートであった。
何の因果か、サムライエンパイアで没した後にアスリートアースで蘇った剣聖『宮本・武蔵』は、生前に追求した剣の道をちょっと変えて、刀をラケットに持ち替えたみたいだった。マジで持ち替えていた。
『猟兵よ。腕に覚えのある者は、我に挑みに來るが良い……!』
更に言えば、彼は伝説の剣豪から究極の大魔道士へとジョブチェンジもしたらしい。
これによって彼が求め続けた「武」は、大魔術詠唱儀式「テニス」へと昇華し、二刀を用いる二天一流兵法はラケットの両手持ちに、霊巌洞で記された「五輪書」は此たび全身に刻まれ、遂に刺青型のユーベルコードとなって完成したと云う。
『呉々も嘗ての我に囚われる事勿れ。我は刀を手にしていた時より、遥かに強い……!』
そして、この自信――。
武蔵も武の極致に至ったと手応えを感じているのか、彼はテニスを習得して完成を迎えた「二天一流」及び「五輪書」を今こそ示さんと闘気を迸る。
而してこの「テニスの武蔵様」の超絶華麗な試合を見るべく、客席には多くの観客が集まっていた。
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「垢抜けたみたい」
アスリートアースの好環境が伝説の剣豪を進化させたのだ、と――。
死後のエンジョイぶりにニッコリと頬笑むは、ニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)。
エンパイアに伝わる彼は生涯に六十余度の勝負を挑んだそうだが、アスリートアースでも強者を求めていると説明を足した彼女は、是非、彼が待つ「ネオ巌流島」に行って欲しいと願い出る。
「テニス・フォーミュラを相手に真ッ向勝負よ!」
究極の大魔道士となった武蔵は、変幻自在の「二天一流テニス」を操る。
刀でなくラケットの二刀流から繰り出すショットは凄まじい球威で、その一本一本に都市破壊級の魔術が籠められており、無策で挑めば敗北は必至。
彼に挑戦する者は、この圧倒的破壊力に何とか耐え、更に彼を上回る威力のユーベルコードをショットに籠めぬ限り、ゲームを制することは不可能だ。
然し、この超威力の魔術に対抗できる者を知るニコリネは、ぱちんとウインクするや眼前に立つ猟兵を光に導く。
「然う。――あなたなら、きっと」
花屋が咲んで須臾。
精鋭の一人が戦場に送られた。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ユーカリ)こあらと申します。
こちらは『バトル・オブ・オリンピア』第十五の戦場、テニス・フォーミュラ『宮本・武蔵』と戦う、一章で完結する戦争シナリオ(難易度:普通)です。
●戦場の情報
アスリートアースに現れた古代バトリンピア遺跡のテニスコート「ネオ巌流島」。
遺跡でありながら、高い耐久性とプレー性を維持できる高品質なデコターフのハードコートで、アスファルトを多層コーティングする特殊な化学樹脂が好プレーを保証します。
●敵の情報:『宮本・武蔵』(ボス戦)
サムライエンパイアの伝説の剣豪「宮本・武蔵」は、なぜか死後アスリートアースで蘇りました。大魔術詠唱儀式「テニス」を極め、流派「二天一流」と全身の刺青型ユーベルコード「五輪書」により敵に勝利します。
●プレイングボーナス:『「二天一流テニス」から繰り出される超威力の魔術に対抗する』
このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
二名様以上は【グループ名】を冒頭に記載願います。この場合も呼称があると大変助かります。
また、このシナリオに導入の文章はありません。
成功度の高い方から数名程度の採用とし、サポートも採用しつつ早期の完結に努めます。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 ボス戦
『宮本・武蔵』
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POW : 二天一流「燕返し殺し」
【ふたつのラケットの間に生じる超魔力球】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD : 二天一流「ホーミングファントム」
【二振りのテニスラケット】から発射した【無数のテニスボール】を、レベル回まで跳弾できる。跳弾回数に比例して命中率・致死率が向上。
WIZ : 二天一流「五輪の極み」
【刺青型ユーベルコード「五輪書」】に封じた【地水火空風の5属性の都市破壊級魔術】と合体し、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になる。ただし解除時にダメージを全て受ける。
イラスト:紙乙
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
仇死原・アンナ
ダークセイヴァー出身の処刑人です。
普段はぼんやりですが敵には冷酷な処刑人と化します。
鉄塊剣振るい怪力で攻撃したり妖刀で斬り付け串刺したりします。
鎖の鞭や拷問具で敵の行動を阻害し、肉体より生じる地獄の炎を操り範囲攻撃で敵を燃したりします。
口調(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
敵には(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
クロムキャバリア出身のスゴ腕パイロットのハイカラさんです。
騎士道物語に憧れ騎士道を目指しています。腕は確かですがお調子者です。俗にいう残念なイケメンです。
キャバリアに乗って闘ったりします。キャバリアに乗らなくても戦いますが生身ではそんなに強くないですがそこは知恵を振り絞って頑張ります。
口調 (私、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)
ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)は「テニス」なるスポーツを知っている。
裕福な家に生まれた彼なら、かの球技が|貴族の遊戯《jeu de paume》として発展した優雅なイメージを持っているだろう。
また、これまで幾度とエンパイアを訪れた仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)ならば、市井の間に「宮本武蔵」なる剣豪の名を聞いたに違いない。彼の武勇伝は既に多くの人の心を摑んでいた。
――だが然し。
ネオ嚴流島で挑戰者を待ち受ける男は、二人が知る「テニス」でも「宮本武蔵」でも無かった。
「……慥かに本人の云う通り……侍の國に伝わる嘗ての男と思わぬ方が良い、のかな……」
「えぇと。ネオ嚴流島より、本人が『ネオ宮本・武蔵』と名乗るべきでは?」
成程、大剣豪とテニスとの融合。いや全く理解らない。
唯だ、ネットを隔てた向こう側に立つ男の炎々烈々たるエネルギーの迸出を前にした二人は、その殺氣にも似た鬪志に觸れるやラケットを構える。幾度と激戰を潜った経験と勘が、自ずと臨戰態勢を取らせるのだ。
『――ほう、ダブルスで挑むと』
畢竟、ラケットの二本持ちなど付け焼き刃。『二天一流』を極めた者には敵うまい。
ならば二人掛りで挑むべしと、眼眦に流した|眴《めくばせ》ひとつで戰術を共有した二人は、後方に据わったアンナのサーブから天地開闢の儀式を――テニスを始めるのだった。
†
武蔵は「殺し合わず、競い合う」この世界に是を示したが、彼と鬪り合うなら死は兎も角、負傷や流血は覺悟せねばなるまい。――而してアンナは躊躇わず、最初から自分で流して見せよう。
我が腕に牙ッと齒を立てた彼女は、傷口より紅蓮に輝く『地獄の炎』を噴出させると、赫々しく流れる猛焰をボールに流し込んでトス。蒼穹を躍る炎球めがけ、ラケットを思い切り振り抜いたッ!
「見るがいい……地獄の炎にはこういう使い方もある……!」
(『――來る!』)
刹那、カッと活眼した武蔵の烱瞳に迫るは、フラットサーブ【ゲヘナ・フレイム】!
かの男を「絶対に仕留める!」という覺悟を火力に變えたアンナは、|最大球速《トップスピード》14,900km/hの超サーブを一閃!
ボールに強い回転を掛けぬ代わり、火球の如き直線的な軌道で武蔵のコートを攻めた――ッ!
「お前がアスリートアースで新たな境地に至った樣に、私も異世界の|勇者《ヒーロー》達に學びを得た……其がこの球だ……!」
『見事な火の玉サーブ! だが「二天一流」なら返せる!!』
即座に反應した武蔵は、二本のラケットで炎の巨塊を挟み込むと、躯ごと一回転して返球!!
アンナが宿した地獄の炎に膨大な魔力を乗算させると、流星の如きスーパーボールを打ち込んだ――ッ!
「へぇあっ!? アンナさんの地獄の炎が、武蔵の超魔術で増幅された……これを? わたしが!?」
この超絶怒涛のハイブリッドボールに蒼褪めたのは、ベルト。
目下、麗人の藍瞳いっぱいに映るはボールで無し――宇宙の彼方より堕つ巨大惑星に他ならぬと生唾を飲んだ彼は、【|カリスマど阿呆大暴れ《キシドウオトコオオアバレノマキ》】!! ハイパーカリスマオーラを最大出力し、コート一帯を白ませた。
「こんの~!! こうなりゃ|自棄《ヤケ》だ!」
「……ベルト、壞れたか……?」
「ベルト・ラムバルドは男だ! いっちょ暴れてやる~! ど~なっても知らんからな!?」
餘りの眩しさにアンナが双瞳を眇めて見る中、ベルトは一際の燦然を纏って吶喊!
失敗すれば身ごとコート外へ吹ッ飛ばされる豪速球に向かって走り、掬い上げるようにラケットを差し出す――!
「どぉぉおりゃぁあああーーーッ!!!」
『|豈夫《まさか》、拾うと……!?』
ボールに追い縋るベルトの速度は740km/h。コート内なら十分すぎる反射力だ。
そして彼のオーラを纏ったラケットは、觸れたモノを“使用不能”に――地獄の炎を滾らせる超魔術の結晶を「ただのテニスボール」にして返球する。
「でぇいッ!」
その球威はイケメン騎士にしてはちょっぴり残念なものであったが、まさか返されるとは思ってもなかった武蔵の度肝を抜くに相應しい、立派なカウンターに違いなかった。
大成功
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別府・トモエ
私は別府・トモエ
テニスの猟兵様よ
何処までも真正面からテニスでかかってこんかい!
この私に相対したからには誇り高きテニスルールに従ってもらうぜ。
ボールは1個
施設を故意に壊しちゃだめ
故意に怪我させちゃだめ
つまり
「テニスしようぜってことだよ武蔵ちゃん」
打つ
返ってくる
駆け寄って
打つ
繰り返すラリー 弾ける汗
何故にアース世界の一般的ウィンブルドンが異能合戦にならないかと言うとこういうこと
結局は最後は普通にテニス上手いほうが勝つ
ステップ、ダッシュ、スピンを知ってるかな武蔵ちゃん
魔術で身体が無敵でもボールが二回跳ねればこっちポイント
「武の極致に至った? つまりテニスプレーヤーとしては――まだまだだね」
ぽよんっとネットを越えてくるボールを手で摑み、一旦、仕切り直す。
二本のラケットで何度かボールをV字に彈ませた『宮本・武蔵』は、続いてコートに現れた挑戰者に烱眼を射た。
「次の相手は、私……別府・トモエ。テニスの猟兵樣よ」
爽やかな小鳥の聲を囀るは、別府・トモエ(ミステニス・f16217)。
哺乳瓶より先にラケットを握ったという筋金入りの彼女は、競技に対するリスペクトも本物で、我が剱とも云うべきテニスラケットをスッと掲げると、周囲の觀客にも聞えるよう聲を張った。
「この私と相対したからには、テニス・フォーミュラだろうと誇り高きテニスルールに從って貰うぜ」
|上流階級の遊戯《jeu de paume》として嗜まれてきた歴史と伝統のあるテニスには、コートに立つ者を戒めるルールがあると、逆の手が指折り数えながら説明する。
一、使用するボールは一個。
一、施設を故意に壊しちゃだめ。
一、故意に怪我させちゃだめ。
「ほう。改めて定義するその意味は」
「テニスしようぜってことだよ武蔵ちゃん」
ステップ、ダッシュ、スピン――。
ネット越しにボールを打ち合うには、武と魔術の精髄に先んじた「テニス」の知識と経験が必要であると、蘇芳色の瞳に武蔵を映したなら、彼は不敵に笑みつつラケットを振りかぶった。
『無論、唯の一歩も飛び越さずして學び得たテニス。その極致を見た我の球を受けてみよ!』
「さぁ來い! 何處までも眞正面から、テニスでかかってこんかい!」
刹那、武蔵が「五輪書」を記した刺靑を煌々と光らせ、墨に封じた五属性の魔術をテニスボールに籠める。
蒼穹を躍った五彩の球を迎えるように打ち放たれた豪速サーブは、忽ちトモエのコートを脅かすが、彼女は直ぐさま駆け寄って返球ッ! インパクトの瞬間に回転量や方向を調整し、武蔵に搖さぶりを掛けた――!
「打って、返して、また打ち返して! 其を繰り返した果て、ボールが二回跳ねればポイントだよ!」
『汝ほどの手練が随分と基本的な事を云う』
「テニスってそういう事!」
何故に一般的な世界大会が異能合戰にならないか。
畢竟、最後は普通にテニス上手いほうが勝つからだ!!!
彈ける汗を玉のように輝かせてコートを駆けたトモエは、全きテニスの世界で、誇り高きテニスプレイヤーとして、誠心誠意の全力全開ッ! コースを衝く精緻なショットで武蔵を意の儘に走らせる――!
「武の極致に至った? つまりテニスプレーヤーとしては――“まだまだだね”」
『ッ、ッッ!』
息を亂し始めた武蔵が吃ッと烱眼を射る先、花顏が小気味よく|咲《わら》っていた。
大成功
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東・御星
夕狩こあらマスターにおまかせします。かっこいい東・御星をお願いします!
雪女の寵姫×ワールドハッカー、20歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、負傷した仲間には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
テニスコートの広さは、195.63㎡。
約59坪と聞けば広く感じるが、伝説の剣豪から究極の大魔道士となった『宮本・武蔵』が立ち開かれば、其も忽ち狭く感じよう。コートに踏み入った瞬間、まるで檻に投げ込まれた獲物の気分になる。
而してネット越しに見る武蔵は、獲物を屠らんと研ぎ澄ます狩猟者の表情をしていた。
『次に我が極致を見るは汝か』
「……前を向かなきゃ。どんな球が來ようとも、拾って、打ち返すよ」
武蔵は転生して猶も武の道を求めた樣だが、自分だって貫きたいものがある――。
傷つき、迷走した涯に辿り着いた、大切な人と想いを守りたいと凛然を兆した東・御星(紅塵の魔女・f41665)は、テニスラケットを握って深呼吸ひとつ。片手で彈ませたボールをそと花唇に寄せ、|接吻《キス》を捧げた。
(「……伝えや伝え、我が想い……其が総てを駆け巡らん……」)
ボールに籠めるは、自らの想いと愛情。
生まれながらにして持ち、大切な人達と日々を歩むことで育んだ異能をチカラと變えた御星は、ふんわりスカートの裾を搖らしながらトロフィーポーズ! 眞直ぐ空へとトスしたボールを光り輝かせつつ、テイクバックを取って利き手を後ろに、沈み脚を戻すと同時にラケット面でボールをミートさせた!
「この瞳に明日の景色を映す爲に――!」
『ッ! ボールが纏う残光がショットの軌跡を描く……なんと美しい球筋!』
スライスして飛び込む光の球に、思わず感嘆を零す武蔵。或いはその美しさにゾクリと武者震いしたろう。
純心な【想ヒ伝ヘテ】飛び込む其を、二本のラケットで彈道ごと挟み込むように捕らえた彼は、そこに超魔術を乗算して返さんとするも、ボールは大きくネットを飛び越えて――アウト!!
御星の眞直ぐな想いとは相容れなかったか、ポーンと彈んで觀客席に吸い込まれるボールを瞳に追った武蔵は、武に組み伏せるだけが勝利で無しと、新しい境地を見る思いがした。
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
戦国の世で磨き抜かれた武技を、泰平の世では技芸に転じる……いい思い切りですね
できるなら何のしがらみもなく、純粋に試合をしてみたかったです
体操服に赤いブルマでコートに入り、こちらも聖槍をラケットに持ち替える
ボールをトスして……【怪力】サーブ!!!
二刀流から放たれる無数のテニスボールを【心眼】で【見切り】、必死に喰らい付くいて【カウンター】ショット!
それを可能にするのは【気合い】と【根性】、【負けん気】による【因果超越・永劫の勇士】――そして何より、無心にテニスを楽しむ気持ち!
天衣無縫の心こそ、最もスポーツを熱くさせる!
まッだまだぁあああ!!!
これまで只管に朱殷の闇を駆けてきたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、武を極めるに暴虐に堕つ邪を幾人もその瞳に映してきた故に、この男の變貌は悪くない。
殺し合わず競い合う、アスリートアースの氣風に是を示した『宮本・武蔵』の前、体操服に赤いブルマという純然な|運動着《スポーツウェア》で現れた修道女は、ネット越しに待つサムライに烱瞳を結んだ。
「戰國の世で磨き抜いた武技を、泰平の世で技藝に転じる……いい思い切りですね」
『紀昌は弓を極めて弓を忘れたが、我は剱を極めてテニスに至った事を、これより其の身に受けて貰う』
「――叶うなら何の|笧《しがらみ》もなく、純粋に試合をしてみたかったのですが」
彼が新生フィールド・オブ・ナインでなければ……と、零れそうになる言は噤んで。
いつもの聖槍に代わってラケットを手にしたオリヴィアは、ベースラインで靜かにトス。
カッ! と神々しいトロフィーポーズをキメるや膂力いっぱい振り抜き、大気を震わす波動サーブを繰り出した!
「いざ勝負!」
『――參る!』
彈丸のように迫るボールを、二振りのラケットを重ねて受け止めた武蔵は、半回転して球威を往なしつつ返球!
究極の大魔術によって分身させた球を、鋭く跳彈させて打ち返したッ!!
『汝、槍をラケットに持ち替えた事を後悔するが良い』
「まさか! 死合わぬとはいえ、その程度の覺悟で|戰場《コート》に立った|心意《つもり》は無い!」
無数のボールが眼路に迫る中、オリヴィアは交睫もせず心・眼・覺・醒!!
裂帛の氣合! 泥臭いまでの根性! そして絶対に負けないという精神を鋼とした佳人は、【|因果超越・永劫の勇士《アセンション・エインフェリア》】――己の限界を超えた者のみが辿り着く事の出来る「無我の疆域」へと踏み込んでフォアハンドスライス!!
『ッ、大魔術の核を見切った……!?』
「相手のチャンスボールになるリスクを踏み越え、勝機を摑む!!」
『我を射るその瞳、極限の緊張の中で美しく輝いている……!』
然う、オリヴィアの胸に燃ゆるは「無心にテニスを樂しむ気持ち」!!
天衣無縫の心こそ、最もスポーツを熱くさせる! と微咲すら湛えた聖女は、これを見事に返球した!
「まッだまだぁあああ!!!」
『ぬぅぉぉおお雄雄をっ!!』
天地鳴動! 丁々閃々の華麗なるラリー!
ネットを挟んだ兩者の表情は鬪志に燃えて明々と、宛ら魂の会話を愉しむようであった。
大成功
🔵🔵🔵
アナスタシア・ムスハルト
あらあら、まぁまぁ
奇しくも同じ構え、ってやつかしらぁ?
テニスラケットで「秘剣・二天一流」
世界を越えても同じ|結論《構え》に到るってことは、私のやり方は間違ってなかったのねぇ
一手御指南お願いするわぁ
テニスでだいぶ変質してるけど、同じ構えから放たれる技、私なら「心眼」で「見切れる」と思うわぁ
超魔力球を「怪力」で受け止めて打ち返すわぁ
力持ちだもの、そう簡単に吹き飛ばされないわよぉ
剣を極めた果てに、そんな魔法が使えるようになったの? 面白いわねぇ
私もテニス覚えてみようかしらぁ
そのためにも、バトル・オブ・オリンピアを勝って終わらせないとねぇ
生まれはアックス&ウィザーズ、刀鍛冶の隱れ里。
而して鍛つより振る方に才があると送り出されたアナスタシア・ムスハルト(小さな大剣豪・f24499)は、里の者の期待通り、いや期待以上の武技を身につけて世界を界渡りゆくが、此度彼女の道に立ち開かった男――『宮本・武蔵』の構えは、佳人に一つの解を與えたようだった。
「あらあら、まぁまぁ……奇しくも同じ構え、ってやつかしらぁ?」
『この構えに覺えが?』
「それはもう、ねぇ」
云って、彼と同じく二振りのラケットを構えて見せる。宛ら鏡の如く。
右を順手に、左を逆手に、半身半立。テニスで二刀流を体現するに、世界を越えても同じ|結論《構え》に到るとは、己が窮めんとする道は間違ってなかった、と――花唇に咲みを湛えた佳人は、片方のラケットでトスを上げ、もう片方でサーブッ! 挨拶代わりの豪速球を繰り出した!!
「一手御指南お願いするわぁ。よろしくねぇ」
佳唇を零れる鈴音は柔かく間延びしているが、コートを攻めるボールは火球の如く。
『成程、可憐なる一輪花とは思うまい』
これに口角を持ち上げた武蔵は、二天一流【燕返し殺し】ッ!
迫る球を二本のラケットが生み出す超魔術空間に引き込むや、円盤投げをするように回転して投擲!
レシーブした瞬間にコート外へ吹ッ飛ばす超魔力球を以て、アナスタシアを脅かした――!!
「テニスでだいぶ變質してるけど、同じ構えから放たれる技なら、勝手知ったるものよぉ?」
『な、に――ッ』
「こう見えても力持ちなの、そう簡單にトバされないわよぉ」
限りなく凝縮された|瞬間《とき》の中で、武蔵が見たのは塊麗の含笑。
逸らせば大地を鑿つ必殺ショットを掬い上げるようラケットを伸ばした佳人は、身を傾けながら拇指球を踏み込んで堪える! 耐えしのぐ!!
『無理だ! 受け止められる筈は――!』
「剱を極めた涯に、そんな魔法が使えるようになったの? ふふ、面白いわねぇ」
私もテニスを始めてみようかしら? ――なんて。
そんなユーモアさえ覗かせた彼女は、カウンターの【|秘剣・二天一流《デュアルブレイド》】――!
左のラケットで受け止めた球を右のラケットへ送りざま、一閃萬崩の流星ショットを撃ち出したッ!!
「その爲にもバトル・オブ・オリンピアを、先ずはこの試合を勝って終わらせないとねぇ」
『くっおぉ!!』
而して武蔵はラケットを届かせるも、返せず――!
大きな放物線を描いた球が觀客席に吸い込まれるのを、「わぁ」と額を翳して見るアナスタシア。その姿は正に「小さな大剣豪」であった。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
なんというか、死後をひたすらに楽しんでいるな……
ある意味では話に聞く宮本武蔵らしくもある……のか?いや、テニスだけは謎だが
さておき、この勝負。俺は一撃で都市を破壊できるようなユーベルコードなぞ持ち合わせていない
ならば、点滴石を穿つという言葉もある。何度でも繰り返していくしかないだろう
俺の左腕は神器、神刀の力を宿すもの。左腕の力と、受け流しとカウンターの要領でボールを打ち返しながら、壱の型【飛燕:重】を込めていく
単発の威力はそれほどでもないが、扱いやすいのが一番だ
敵が込めたUCは勿論、自身が込めたUCの重みも積み重なっていくが、負けるわけにはいかないだろう
ただひたすら、気合いで食らいつく
水を得た魚、という言葉がある。
殺し合わず、競い合う――それ故に命を危む事無く、老いて死すまで武の道を歩む事が出來るアスリートアースは、眼前の男にとって成程「良き場所」に違いなかった。
「なんというか、死後を只管に樂しんでいるな……面構えが違う……」
潔いまでの|転身《ジョブチェンジ》に納得する(させられる)は、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。
自身も剱の極致を求む身なれば、伝説の剣豪の武勇については聽き及んでいるのだが――、
「ある意味では、話に聞く宮本武蔵らしくもある……のか? ――いや、テニスだけは謎だが」
ど う し て こ う な っ た 、とは訊くより鬪うが良かろう。
相手はショット一撃で都市を破壞する大魔導剱士――其には及ばぬが、負ける訳にはいかぬとラケットを構えた鏡介は、パワフルな振り抜きでフラットサーブ! 長軀を活かしたスピードボールを撃ち放ッた!
「“点滴石を穿つ”という言葉もある。何度でも粘り強く一点を衝いていくしかないだろう」
『――眞直ぐに伸びる、良い球筋だ』
刹那、武蔵が口角を持ち上げる。
何せ彼の稟性を表したような入魂の|球撃《サーブ》だからだ。
今の一球を繰り出した力の源、鏡介の左腕は神刀の力を宿した「神器」――神腕【無涯】は的確なショットを打ち、また返る球には素早いストロークで喰らい付き、武蔵を相手にラリーの応酬をやってのける。
これに昂った武蔵は、二振りのラケットの間に超魔術空間を生成して全力一揮ッ!
『參る!』
刹那、二天一流の超魔球【燕返し殺し】が大氣を波打たせ、隕石の如き勢いで鏡介のコートに迫るが、彼は壱の型【飛燕:重】ッ! 下段から斬り上げるようにボールを捌き、同等の波動を乗せて返球した!!
『なん、と! 燕の行き返る――!』
「單發の威力は然程大きくないが、扱いやすいのが一番だ。これを繰り返す」
『……っっ、我と汝のユーベルコードが積み重なり……これ程までに重く……!』
まさかボールが返って來るとは思わなかったが、之に武蔵が腕を伸ばせば、ラケットには流星の衝撃!
其こそ正しく「点滴穿石」――初撃から真摯に打ち合った鏡介の戰法で、一滴一滴は小さくとも、集まれば雫は驟雨となって水中の魚を脅かす!!
「気合いで食らいつくしかない。唯、ひたすらに打ち合うのみだ」
『その氣概や良し!!』
大いなる波のうねりを浴びた魚は、ネット越しに見る剱士の耀きに烱眼を眇めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
サツキ・ウカガミ
エンパイアで何度も聞き及んだ二天一流、
その完成形と戦えるときがくるとはね。
いざ、尋常にテニス!
基本は状況を[見切り][軽業・ダッシュ]で移動。
球威を[吹き飛び耐性]で耐え、
[不意打ち・急所突き・死角攻撃]を意識した返球でラリーしていく。
一球一球がとんでもない威力!
でも、二天一流の神髄はここからでしょ?
【陽炎幻影・改】で14人の分身を出して、大技を誘ってみる。
さぁ、もっと魅せてよ!
同時に、分身と全員で【瞳術『忍夜皐曲者』・鏡魔眼】。
15人の忍術重ねがけで、ボールの跳弾先を武蔵自身に向けさせる。
相手の技をも利用する、これが忍びのテニスだよ!
二天一流、聞きしに勝る強さ。
立ち会えて、本当に良かったよ!
霊峰天舞アマツカグラを郷とする忍者サツキ・ウカガミ(|忍夜皐曲者《しのびよるめいはくせもの》・f38892)は、猟兵に覺醒してからも更なる鍛錬と見聞をと、好奇心旺盛に三千世界を界渡り歩いている。
彼女程の情報通なら、エンパイアでは『宮本・武蔵』なる男の武勇を幾度と耳にした事だろう。
「名だたる剱豪を破った二天一流、その完成形と戰える刻がくるとはね」
此度は|不忍《しのばず》。靑海の如きコートに堂々と姿を現す。だって觀客も其を望んでいる!
手に馴染む白刃『月牙』をラケットに持ち替えたサツキは、ヘッドを差し向けて宣戰布告した。
「いざ、尋常にテニス!」
『手加減はせぬ。來い!』
大魔道剱士が「應」を叫べば、佳人は華麗にトロフィーポーズ。
靜かにトスアップした球をラケット面に迎えるやセンターへ、サーブ直後のショートクロスを防ぐ超回転サーブを繰り出した!
「先ずはセオリー通りに攻めるよ!」
『鋭く迅い――成程、これが汝の球筋と』
刹那に球を見極める武蔵の表情は、好敵手見たりと烱々たるもの。
而して角度を違えば捌けぬ豪速球を、二振りのラケットで挟み込むよう迎え入れた武蔵は、ここに超魔術空間を形成して|分身追撃球彈《ホーミングファントム》ッ! 幾回も跳彈する無数のボールを繰り出し、サツキの眼路を脅かした!
「一球一球がとんでもない威力を持つのに、それが沢山……!」
『さぁ、我が大魔術詠唱儀式の窮極を見よ』
「……でも、二天一流の神髄はここからでしょ?」
『何――ッ』
サツキが佳顏に喫驚を兆したのは一瞬。
花唇に咲みを湛えるや【陽炎幻影・改】――忽ち14人の分身を現して跳彈を躱し、或は返球させたサツキは、ネットを超えた全ての球を武蔵の足元へ、スピンを掛けて煽った。
「さぁ、もっと魅せてよ! テニスの極致を!!」
『いいだろうッ!!』
勃ッと氣炎を噴き上げる武蔵を前に、分身と一緒に【瞳術『忍夜皐曲者』・鏡魔眼】を発起する。
其は猟兵に覺醒して新たに得た「見たものを操る」|忍術《ユーベルコード》で、紫彩の瞳は二対十五、つまり三十の鏡となって武蔵を映し出す。威力は半減しても、その数は効果を発揮させるに十分。
『いざや我……っっ、どわー!!』
「ふふっ、相手の技をも利用する、これが忍びのテニスだよ!」
自身が放った無数のボールが、跳彈を繰り返して手元に返ってくる――その凄まじさに武蔵が撞ッと倒れれば、サツキは塊麗の微笑をひとつ。
「二天一流、聞きしに勝る強さ。立ち会えて、本当に良かったよ!」
と、金絲雀の囀聲を澄み渡らせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
静峰・鈴
戦の誠、刃の境地に達するかの剣豪
私でも聞いたことのある武蔵の名は、此処では斯く形を取るのですね
憧れる程の波乱の物語は、強さへの求道
そして誇り高き士ならば、成る程とこのような姿へと成るのですね
ならばこのテニスとやらで、貴方を越える物語を私の道と致しましょう
ラケットの変わりに携えるは神器の刀、無明
居合の姿と刀身でボールを打ち返してご覧いれます
破滅を呼ぶ流星の如き一撃とて恐れることなく
UCによる私の奥義ともいうべき技能
その心眼での先読みが如く跳弾を捉え、跳弾するより速く迎え討ち
居合による瞬発力、神罰の一閃・一球にて返します
超魔術、圧倒的な武とて
ひとつの求道の想いからならば、私の想いとて劣りはしません
裏切りの跳彈に土を付けられた男の耳に、凛、と鈴音が掠める。
忽ち受身して起き上がった『宮本・武蔵』は、ネット越しに見ゆる芙蓉一花に烱眼を眇めた。
「――戰の誠、刃の境地に達した剱聖は、骸の海を潜りては斯く形を取られたのですね」
そと囁く佳聲の主は、静峰・鈴(夜帳の玲瓏・f31251)。
ラケットの代わりに顕明剣『無明』を携えた麗人は、武蔵の傍に轉がる|庭球《ボール》を睼って言い添えた。
「誇り高き士が行き詰めた求道の涯に、このテニスとやらがあったのなら。その波亂の物語に憧憬を抱いた者として、貴方を越える物語を私の道と致しましょう」
『汝、我に克てるか』
「貴方の在す|戰場《コート》に、やすい覺悟では參りません」
柳腰を落し込み、膝を緩めて構える。
六十餘度の勝負を制した武蔵なら、靜中に動ある居合の構と即座に理解ったろう。
成程、あくまで一刀を貫くかと口角に|微咲《えみ》を湛えた武蔵は、二振りのラケットの間に究極魔術空間を生成するや閃々一揮ッ! 頻りに跳彈する無数のテニスボールを繰り出した!!
『我が武の極致、「究極の大魔術詠唱儀式」テニスの眞髄を見るべし!』
「――承知。この無明が打ち返してご覧いれます」
この瞬間、美し夜帳の瞳いっぱいに幾筋の流星が映る。
其は一球一球が泯滅を齎す|凄撃《ショット》ながら、鈴は怯懦すまい。
濡羽色に縁取られる長い睫、その奧に祕めたる紫黑の虹彩を玲瓏と輝かせた佳人は、我が奥義と云うべき心眼を研ぎ澄まして煌々――テニスボールが跳彈するより迅く、黑鞘より靈刀を抜いて迎え撃ッた!!
「居合とは、人に斬られず人斬らず。唯だ今は球を斬らずして技を返しましょう」
鞘に祕するは夜の如く。
摑めぬは夜空の如く。
閃くは夜渡る星の樣を。
『ッ、なんと神氣に滿ちた刃鳴……ッッ!』
抜刀が放つ靈光に白皙を照らした鈴が、爆発的に漲溢した氣に黑髪を梳ったのは一瞬。
玉臂一閃して煌いた【神刃抜刀・夜渡】は、幾筋にも別れた彈道のすべてを手折るや悉く返球し、喫驚の色を差す武蔵の足元へレシーブの難しい球を集める。
「如何なる超魔術、圧倒的な武とて。ひとつの求道の想いからならば、私の想いとて劣りはしません」
『この球筋が汝の想いを描いたと云うなら、はは、|壮快《おもしろ》い!』
惜しくもリターンはかなわず、ボールの一つを後方に逸した武蔵は、鈴の見惚れるばかり太刀筋に小気味良く笑うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ミュー・ティフィア
えっとえっと、宮本武蔵、なんですよね?貴方の求めた武の終着点、本当にテニスで良かったんですか?いや、いいならいいんですけど。
でも強さは本物。だから出し惜しみはなしです!フィア!歌いましょう!
『本当にやるの?テニスだよ?!』
うん、テニスでも。全力でやらないと武蔵にはきっと勝てないから!
精霊転身・光と闇の歌姫!
これを使えば私の体感時間は狂うけれど、どんな因果も無視して私の求める結果を手繰り寄せることが出来る。
ボールが無数に増えても、どんなに破壊力を込めてても全部撃ち返せる。
代償は問題ない。覚悟はもうできてるから!
因果すら無視した絶対成功の概念。それがこのシュートに込める私のユーベルコードです!
『はは、汝ら|壮快《おもしろ》い戰いをする。殺し合わず競い合う此の世界で最高の好敵手となろう』
生前に勝利した六十餘度の決鬪より血が騷ぐ――!
転生して良かったと確信するエンジョイ勢の『宮本・武蔵』の対面、ネット越しにトトトッと駆け寄った少女が、小首を傾げて訊ねた。
「えっとえっと、宮本武蔵、なんですよね?」
『無論』
「……あの。貴方の求めた武の終着点、本当にテニスで良かったんですか?」
小鳥の如き佳聲の語尾を持ち上げる、ミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)。
彩を違えた玉瞳がラケット二刀流を映したなら、大魔道士に|転身《ジョブチェンジ》した男は搖るぎない「是」を頷く。――マジだ。マジでか。
「……いや、いいならいいんですけど」
本人が斷言するなら良いのかな。多樣性の時代だし。
而して強さは|正眞《ほんもの》にて、生半可な兵法では太刀打ちできぬと凛然を兆したミューは、傍らで武蔵と己とを交互に見る闇の精靈へ、きゅっと拳を握って云った。
「フィア、力を貸して! 歌いましょう!」
『本当にやるの? テニスだよ?!』
「うん、テニスでも。全力で向き合わないと勝てないから!」
これだけの(突き抜けた)男を相手に出し惜しみは爲まい。
今こそ絆のチカラをと『絆証・トゥッティ』を翳した少女は、【|精霊転身・光と闇の歌姫《リンクエレメント・ルナディーヴァ》】――純白のドレスに花車を包み、光の翼を羽搏かせる美姫に變身した!!
『それじゃあいっくよー!』
「この手から時の概念が零れようと構わない! 覺悟はもうできてる!」
私の求める“結果”を手繰り寄せる爲に――!
決意の光を漲らせたオッドアイには、目下、二振りのラケットから無数のボールを|発射《サーブ》する武蔵がスローモーションで見えたろう。体感時間を異常なまでに狂わせたミューは、まるで刹那が幾星霜にも感じられる時空を光の翼で駆けると、美し七彩の音色にボールを抱き包む――!
数え切れぬ超魔術球、その全彈道を五線譜に乗せた歌姫は、ラケット面に迎えてステップイン!
ボールの軌跡を虹色に輝せる、スーパーショットを繰り出した!!
「相手がラケットを振り抜いた瞬間、因果すら無視した絶対成功の概念が“結果”を|嚮導《みちび》く……!」
『煌け、二天一流ホーミングファン……――とむぅうう!!』
撃ち放った全てのボールをその身に喰らった武蔵は、すってん、どしん!
交睫する間もなく襲い掛かった衝撃に、目を白黑させるばかりであった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
武蔵さんは知っているのですが…てにす…ですか?
そして武蔵さんが魔道士というのにピンときません。
魔法を操るというと黒衣の友人を思い浮かべますね。
…武蔵さんの姿は可愛らしくありませんけれど…。
てにすというものは初体験なので自信はありません。
とにかく基本的な規則を覚えて…が…頑張ります。
私も武蔵さんに倣って両手持ちで戦いましょうか♪
強敵なのでリミッター解除と限界突破で身体機能を。
腰を低く…開く足幅は肩幅くらいで…相手に集中……。
もし球が零れてもロベルタさんが補佐をしてくれます。
不慣れな私はなるべく球を返すことのみに集中します。
そして【神滅 壱之太刀『神退』】を打ち込むだけ。
徐々に慣れてきたら思いついたことを実践してみます。
例えばロベルタさんと私の立ち位置を替えてみるとか。
フェイントで打つふりをしてロベルタさんが打つとか。
武蔵さんの挙動で動きを予測して球を返してみるとか。
足裁きもいつものような動きだと迅速に対応できそう。
…てにす本来のものではないのでしょうけれど…。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
おー!武蔵にーちゃん凄くかっこいいねぃ♪
僕もテニスは全くできないけど問題ないじょ!
…え?僕ならできると思ってた?照れるじぇ♪
墨ねーに褒められて少し照れながら準備するよ。
パフォーマンスで身体機能上げて封印解いてから。
限界突破に多重詠唱しながら【雷神の大槌】だよ。
さあ。ラケットを持って武蔵にーちゃんと試合ッ。
始めは片手だったけど両手の方が良さそうだねぃ。
じゃあ僕も墨ねーと一緒で両手持ちにするじょ♪
「うぇーい♪ ボールは逃さないじぇシュート!」
【雷神】の能力維持に継戦能力使っててよかった。
どんな球でも返せる気がしてきたッ♪うえぇ~い。
あと墨ねーのフォローも十分できてるからよし♪
「今ッ! …見様見真似、二天武蔵スマッシュ!」
…あ♪簡単に返されたじぇ。流石武蔵にーだねぃ。
「…じゃあ、シンカー気味の…スマッシュっ!」
適当に球に回転をかけてそれっぽくするよ。
できなくて当然だから失敗は大笑いするじぇ♪
「やっぱりラケット使った回転は難しいじぇ~」
「でも懲りずにシンガースマッシュ~♪」
「……武蔵さん、は……知っているのですが……てにす……ですか?」
エンパイアに名を馳せた剱豪『宮本・武蔵』の事は、彼が繰り広げた数々の名勝負と共に知っている。
中でも有名な巌流島の決鬪は、関原役の後、德川の天下の定まりゆく頃合に行われた試合であったかと記憶を洗った浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、然し彼が持つ「らけっと」なるものには首を傾げた。
「……れは……無銘金重でも……和泉守藤原兼重でも……な、ような……」
「墨ねー、あれを振って黃色いボールを打つんだじょ」
テニスという競技は知っていると、基本を教えるはロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。
唯、己の知るテニスとはちょっと樣式が違うようだと、兩手にラケットを持つ武蔵を見た少女は、軀に刻む刺靑から溢れるオーラに玉瞳を煌々、その英姿に|微笑《えみ》を湛えた。
「おー! 武蔵にーちゃん凄くかっこいいねぃ♪」
目下、マント風に羽織ったジャージをはためかせるは、大魔術詠唱儀式(=テニス)を極めて漲溢した魔力。
この世界で蘇った後に大魔道士に|転身《ジョブチェンジ》したそうだが、こればかりはちょっと分からない。
「……武蔵さん、が……魔道士というのが……ピンときませんね……」
「う。僕達には魔法を巧みに操る友達がいるもんねい」
二人が思い浮かべるのは、繊麗の躯に膨大な魔力を祕めた黑衣の麗人。
凛とした空気を纏う彼女とは似ても似つかぬと武蔵を見た墨とロベルタは、ネットを挟んで対峙するや、彼と同じくラケットを構えて見せる。テニスの極致に至った男に、ダブルスで勝負する|意《つもり》だ。
『ほう、我が|戰場《コート》で鬪う覺悟が出來たか』
自身の愛剱や愛刀でも挑めたろうに、敵の土俵で戰うとは中々の心意気。
殺し合わず競い合う此の世界で、「ルール」という絶対存在に從う二人に好感を抱いた武蔵は、肌膚に刻んだ我が極意『五輪書』を煌かせながらトロフィーポーズ!
『――參る!』
刹那、カッと五彩を纏った男がラケットを振り抜き、都市破壞級超魔術球を打ち出した――!
「……腰を落として……重心を低く……開く足幅は……肩幅、くらいで……目の前の相手に集中……」
テニスが初体験の墨は、頭に叩き込んだ基礎を遵守するに一生懸命。
刀を握るのとは全く違うラケットの感触に戸惑うものの、初心者である事を理由に負けてはならぬと、武蔵が放った豪速球に烱瞳を結んだ彼女は、刹那の裡に身体能力を飛躍ッ!
小刻みに踏鳴して練り上げていた氣を爆発させるようにスプリット、即座に彈道を見切るやサイドステップで着彈点に回り込んでレシーブ! 己が速度限界を更に超え、轟ッと迫る魔球にラケットを差し出した――ッ!
「……届いて、も……返せる……か、は……っ!」
「うぇーい♪ こぼれ球は任せてねい♪」
すかさずフォローに入るはロベルタ。
墨のラケットを滑ったボールが再び宙を疾らんとすれば、その軌跡に割り込ませたラケットが援護!
忽ち手首や臂に圧し掛かる破壞のパワーを、自らの身体能力を引き上げる事で耐えたロベルタは、体幹を捻りながら返球に移りつつ、詠唱を重ねて【|雷神の大槌《ミョルニル・ハンマァー》】をボールに籠めたッ!
「Uccidi i nemici in orbita con l'aiuto del ruggito! 雷轟を哮るリターンショットだじょ♪」
『ッ、なんと眞直ぐな……!』
光矢の如き返球に武蔵も感嘆を零すが、閃光に照り上がる少女の橫顏を傍に見た墨は猶の事。
ショットと同時に吹き荒れた風に艶髪を巻き上げた佳人は、櫻唇にあわい咲みを湛えて云った。
「……補佐してくれる、と……信じて……ましたが……お流石です♪」
「う。僕もテニスはやった事なかったけど……えへへ、照れるじぇ♪」
墨に褒められ、嬉しそうに恥かむロベルタ。
この時、其々に武蔵の圧倒的パワーを感じた二人は、兩手でラケットを持つ通常スタイルから二刀流へ。
左右に一本ずつラケットを持ち、「二人で二天一流」――合計四本のラケットで次の攻撃を待ち構えた!
『……はは、「二天一流」はラケットを増やせば良いというものではないぞ』
面白い事をしてくれると、武蔵がネット越しに艶笑を置いたのはこの|瞬間《とき》。
然し見樣見眞似とはいえ、抜群の身体能力と反射速度でラリーの応酬をやってのける墨とロベルタには舌を巻こう。
可憐なる二輪の花は、華麗に立ち位置を變えながら、颯爽とフェイントを織り交ぜながら、いつもと變わらぬ阿吽の呼吸で武蔵と比肩して見せる。
「どんな球でも返せる気がしてきたッ♪ うえぇ~いっ!」
「……球を返すことのみ……集中、て……その爲には……武蔵さんの……挙動から進路を予測して……」
「うぇーい♪ ボールは逃さないじぇシュート!」
「……思い切……打って……さい……次瞬の反撃、は……私が……捌きま……!」
一球一球が超弩級の破壞力を持つ魔球ながら、必死に喰らい付く二人の集中力! 連携力!
墨は自身が知る武蔵ではないし、ロベルタも己が知る限りのテニスではないものの、ボールを打ち合う毎に大魔術詠唱儀式(=テニス)に慣れ、刻一刻と進化していく。
「球筋の伸びを感じる今ならできるッ! 即席、二天武蔵スマッシュ!」
『武蔵の名を冠するとは大胆な。而して本物が倒れる訳には行くまい!』
「あ♪ 簡單に返されたじぇ。流石武蔵にーだねぃ。それなら次はシンカー気味の……スマッシュでどうだっ!」
『重畳ッ!』
そんな二人に鬪爭心を煽られた武蔵は、まもなく迫った一撃に二天一流【燕返し殺し】ッ! 左右のラケットの間に超魔術空間を生成するや、魔力の奔流と共に超魔力球を放つ――!
安易に拾えばコート外に吹き飛ばされる凄絶な一撃だが、これを眞正面に迎えた墨は身を低く屈めながら、掬い上げるようにラケットを一揮ッ! 遠心力を籠めた【|神滅《カミゴロシ》 壱之太刀『|神退《カミビキ》』】を以て、ボールの芯を捉えた――!!
「……てにす本来、の……ものではない……でしょうけれど……れで、球威を殺しま……!」
『ッ、ッ返すつもりか――!』
まさか返球されるとは思ってなかった武蔵は、餘りの衝撃に筋肉が強張ったか、無難にリターンするに留まる。
而してチャンスボールを捉えたロベルタは、これなら|回転《スピン》を掛けられると大ジャンプッ! 重力の鎖を解き放つや、二本のラケットを重ねて一閃ッ! 宙空から彈丸めいた一撃を打ち、武蔵の足元を脅かした!!
「何度だって懲りずにやるじょ♪ いっけー、シンガースマッシュ~♪」
『おおお、なんという粘り強さだ……!』
出來なくて当然の超回転ショットは、外せば大笑いしようと思っていたが、力まなかった事が逆に奏功したか。
忽ち武蔵の眼眦を過ぎて得点となれば、ロベルタはこの時こそ大いに笑い、墨とハイタッチをキメるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
刀をらけっとに持ち変えて…うん
すみません
もう一回聞いてもいいですか?
競技のるーるは熟読して来たんですが
(庭球漫画やるーる本を事前に読んだ)
そも二本って良いんだっけか……
いや、まあ
そう言うこともあるかな!
世界が違えば!
真剣勝負とあらば全力を持って挑む
これだけだ
今日は僕も刀から持ち変え
らけっと君によろしく頼むよと声をかけ
武蔵さんに挑む
恐ろしいほどの力が込められた魔球
軌道を見切りたいが…
そのまま受ければ吹き飛ばされる
全力魔法と、相棒から借りた風の力を纏わせたらけっとで球の勢いを殺し
逆に、打ち返す際にかける回転に
風の力で後押しを
なんか…変な感じですか
こう言う戦いなら、楽しいかもですね
※アドリブ歓迎
『哈哈、汝等と鬪い續ければ、|大魔術詠唱儀式《テニス》は更なる窮極へ向かおう!』
多彩な技を魅せる猟兵と打ち合った武蔵はエキサイティンッ!
殺し合わず、競い合う――アスリートアースの世界理念に、猟兵なる好敵手を乗算して上り詰めんとする男『宮本・武蔵』は、時に、ネットの向こうから呼び掛ける靜穩の聲に熱を冷ました。
「すみません、武蔵さん。改めてお伺いしても?」
『む、我はテニスの眞髄を知る者。何でも訊ねるが宜しい』
「では、その……らけっとを二本持つのは良いんでしたっけ」
先達の寛容に感謝しつつ、基本の「き」を問うは冴島・類(公孫樹・f13398)。
武蔵に挑むに競技ルールや数々の庭球漫画を熟読していた彼は、いざ相對した「ラケット二刀流」に瞳をぱちぱち。彩を違えた双の虹彩、その兩方に奇態を映す。
而して武蔵は。
伝説の剱豪から大魔道士に|転身《ジョブチェンジ》した奇才は、ネット越しに己の眞正を示した。
『そうだが?』
「そうですか!」
いやぁああ……まぁああ……そう言うこともあるかな! 世界が違えば!!
本当はギリギリグレーどころか完全アウトだが、多様性を受け入れられる類(やさしい)は莞爾と咲みを一つ。
スン顏で確言する武蔵は眞剱にて、己も全力を尽すまでと凛然を兆すと、ベースライン後方で小刻みに踏鳴した。
「――よろしく頼むよ、らけっと君」
此度、馴染みの短刀に代わって供するはグラファイトのラケット。
共に鬪おうと一撫すれば【|多生の縁《インネンショウキ》】は結ばれて、これまでに邂逅った火精より加護を、森の友から祈りを、そして相棒の瓜江より風の魔力を授かった身が強化される。
然しこれでも二天一流は超えてくるだろうと、目下にサーブを繰り出す男に烱瞳を眇めた類は、轟ッと空間を抉って迫る魔球に向かってスプリット! 球に追い縋らんとする足の逆の爪先を蹴って着彈点へ――ラケットを差し出しざま風を紡いでレシーブしたッ!
『受ければコートの外まで吹き飛ぶ一撃! 返せるものか……!』
「ここが踏ん張りどころだ、らけっと君」
刹那、花唇を擦り抜けたのは自分達への激励。
身に祕める魔力を全開に、友の援護を増幅させた類は、ラケット面に螺旋の風を紡いでボールを留まらせると、引き寄せながら回転を掛けて超速旋回――! 華麗なドライブを返してみせる。
ラケットを振り抜いた瞬間、月白の髮を風に巻き上げた類は、花顏いっぱいに微咲を湛えて、
「こんな戰いなら、樂しいかもですね」
と、また返る豪速球に烱瞳を煌々、強敵とのラリーを愉しむのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
宮本武蔵――。
逝去の報は、江戸にはまだ届いておりませんでしたが。
真にあの二天の。
それがテニス。
………エー?
◆
とまれ、本人が言うなら是非もなし。
勝負と参りましょう――テニスにて。
流儀に則り、ラケットを二本拝借して対峙。
仮にもテニスなら、第一球は空に抛り、而して打つ筈。
ならば挑むはその瞬間。
打たれた魔球に勢いが乗り切る前に迎え撃ちます。
軌道を見切り、ネットの際にて球を打擲。
大海嘯を一身に受けるにも勝る衝撃、結界術を被せるようにしながら怪力で抑え込み、一瞬でも拮抗状態を。
その上で、もう一振りのラケットを担ぎ――ラケット越しに一閃。
鍔競りにて噛み合う刀の峰に、もう一刀を叩き付けて相手の剣を崩す二刀技――紅葉の打ち。
武蔵殿も得意とされたというそれを打ち込み、威力を削ぎつつ叩き返します。
二打目が返されても、既にその威は見切りました。
【打草驚蛇】にて魔球に適応し、ラリーにて勝負しましょう。
武蔵殿がこちらの手筋を見破るより迅く、されど焦らず、常の心にて――。
本当は剣で挑みたかったなど言いますまい。
エンパイアを郷とする鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は、かの男の名を幾度と耳にしていたろう。
――武の道を歩むなら、記憶に留まったのは猶の事。
おのず彼の剱に斃れた剱豪を腦裡に掠めた景正は、涼し麗顏に僅かな喫驚を滲ませていた。
「宮本武蔵――。逝去の報は、江戸にはまだ届いておりませんでしたが」
知らず裡に死んでいた剣豪は、知らず裡に異世界で大魔道士になっていた。嘘でしょう。
刀をラケットに持ち替えた男の|転身《イメチェン》ぶりに、彼は思わず確認を取る程であった。
「眞にあの二天の……」
『突き詰めた結果だ』
「それが、テニス」
『正しく。我が二天一流と五輪書は、|大魔術詠唱儀式《テニス》によって大成した』
云って、二振りのラケットが構えられる。
襟や袖にチラ見えする刺靑が、武蔵から溢れる魔力によって光輝くのを目の當りにした景正は、その圧倒的オーラに|慄毛《おぞけ》るで無し、
「………エー?」
長い睫を音がするほどぱちぱち。竜胆色の瞳をまるまる。
而してポッカリ開いた口から、気の抜けたような聲を零した。
『如何した、テニス・フォーミュラを前に足が竦むか』
「――|否《いいえ》。本人がそれで良いなら是非もなし」
可怪しな事だらけだが、百ある言葉の百を飲み込むのが景正。えらいぞ景正。
しかも流儀に則り、己も兩手にラケットを持って対峙した彼は、華麗にトロフィーポーズを決める男を鋭く射た。
『刮目せよ、これぞ大魔術詠唱儀式が奧義ッ!』
(「矢張り、第一球は空に抛って打つか」)
左のラケットでトスした球を右のラケットで打ち込むとは器用なものだが、とまれ、この瞬間はテニス。
魔力漲るラケットの正面に当てられた球が、破壞の悪魔へと變貌する――最も緊迫する刻にこそ踏み込んだ景正は、ネット際へ一気に駆け上がったッ!
「魔球に勢いが乗り切る前に――迎え撃つ」
腕の向きから彈道を見切り、その軌跡へラケットを伸ばす。受けるッ。
途端、軀の輪郭ごと消し飛ばされるような圧を感じるも、羅刹の怪力と鬼の神氣を全開にして逸球を拒んだ景正は、驒ッと前脚を踏み堪えつつ、もう一振りのラケットを担ぐ――!
「宛ら大海嘯を一身に受けるにも勝る衝撃……ッ、然し押し込まれる訳にはいきませぬ」
『なん、と……汝も二刀を振るか!』
胸騷ぎ、いや興奮して前に出た武蔵は、ネット際の攻防に生前の記憶が重なったろう。
鍔競りにて嚙み合う刀の峰に、もう一刀を叩き付けて相手の剱を崩す――「紅葉の打ち」なる二刀技は、五輪書にも記した己の得意。而して叩き返されたボールに、肌膚にも刻んだ言が添えられる。
「この打、鍛練すれバ、打落す事安し」
『能々稽古有べし――と!』
流れるように言を繼いだ武蔵は、不敵に笑みながら返球!
汝の鍛錬を見せよとばかり二天一流【燕返し殺し】を繰り出せば、景正はこれに大いに應えた。
「その威は見切りました」
――先じて解すれば勝つ。
嘗て武蔵は六十餘戰に勝利したが、生きてそれ以上の戰績を更新し続ける景正ならでは。初撃に球筋を見極めた彼は【打草驚蛇】ッ、既に魔球を攻略した事をショットで証明した!!
「己の手筋を見破られるより迅く。されど焦らず、常の心にて――」
『くっぉぉおお雄雄!!』
刀をラケットに變えた事も、兩手に持った事も。決して付焼刃でないとラリーの応酬で示した景正は、無限に行き交うと思われた球が、つと、後方へ逸れるのを見る。己の放った流星球が、遂に武蔵のラケットをブチ抜いたのだ。
『……ッ、見事也……!!』
ここに完全敗北を認めた武蔵は、淸々しい表情で景正ら猟兵を讃える。
然し、果して。
『眞に胸躍る合戰であった。何より、生きて之を見られるのが良かった』
「――私こそ、新たな境地を見せて戴きました」
なぁんて感謝は述べつつ。
本當は剱で挑みたかった、なんて。
ちょっぴりモヤモヤが残るくらい、景正が純な正剱遣いである事は間違いなかった。
大成功
🔵🔵🔵