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バトル・オブ・オリンピアの裏側で~妖怪スノボレース~

#カクリヨファンタズム #グリモアエフェクト #決闘ごっこ

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#決闘ごっこ


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 ここはカクリヨファンタズム。
 その中でも冬の、白銀煌めく雪の山。
「ふっ!」
 一人の妖怪が氷のスノーボードで華麗にトリックを決め、ゴール地点に着地。
 対戦相手の妖怪は声も出せずに氷漬けとなって雪の地面にどしゃりと落下した。
「つ、つええ……」
「この白銀山もあのシッケンケンが一番だ。牛耳っちまったぜ!」

 スノーボーダーのような姿をしている上記の女性はシッケンケンという妖怪。
 1本足の雪女で、氷雪と紐を自在に操る能力を持つ。
 ――巧みに隠しているが、その右足はスノーボードに雪駄と足袋が乗っているだけで存在していない。ズボンから途切れるように透けている。

「他愛もないわ。」
 クールなそぶりと表情でゴーグルを上げて、寒空の中一息つくシッケンケン。
 最早そんじょそこらの妖怪ではこのシッケンケンにかなう者はいなかった。
「この調子で私はカクリヨファンタズムの全ての雪山のトップレーサーになってやるわ。その暁にはカタストロフを起こしてあげる。」
 そう、彼女はオブリビオン『影朧』に憑りつかれていた。
「カタストロフを起こして……」
 彼女の目的は。
「この世の全ての勝負をスポーツで決める、スポーツに満ちた世界にしてあげるわ。」


「たいへん!カクリヨファンタズムがアスリートアースになっちゃいそうなの!」
 そのアスリートアースで『バトル・オブ・オリンピア』とかいう戦争が起きている真っ最中にグリモアベースに猟兵を集めたグリモア猟兵がいた。
 ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)である。
「えっとね、どこから説明しよっか……カクリヨファンタズムっていう妖怪の世界で、今雪山の滑走レースが流行ってるの。」
 グリモアベースに雪山の映像を映す。
「そのレースで今勝ちに勝ってる『シッケンケン』っていう妖怪さんが、勝負に勝っては力を溜めてカタストロフを起こして、世界を変えてしまいそうなの。
『この世の戦いを全部スポーツで決めるスポーツに満ちた世界への改変』を!」

 レースに勝ってどうやってカタストロフを起こす力を溜められているのかは謎だが、兎に角妖怪だらけの世界がスポーツの世界になるのは止め……。
 ……止めて良いのだろうか?それはそれで平和にならないだろうか?
 やや熟考する猟兵はいるかと思われるが、既にそういう世界はアスリートアースでお腹いっぱいなのと、妖怪には体構造的にスポーツに得手不得手もある事をどうか思い出し留まって欲しい。

「そのシッケンケンさんはオブリビオン……『影朧』に憑りつかれてて、それ以来一度も負けた事が無いんだって。
 勝負に勝って負かしてしまえば、それで影朧も負けたと感じて消滅、カタストロフを阻止できそうなの!」
 そう、今回の話にはちゃんとオブリビオンが関わっている。

「というわけでみんなはこれからカクリヨファンタズムの雪山に転送するから、絶賛勝負相手お探し中のシッケンケンさんに|決闘ごっこ《カクリヨバトリズム》を申し込んで、雪山レースに勝ってほしいのよ!」
 ただし、ルールの取り決めも甘いカクリヨファンタズムの突発勝負故、「妖怪のみんなでやるタイプの|決闘ごっこ《カクリヨバトリズム》になるかも、とポーラは付け加えながら、雪だるま型のグリモアを展開し、猟兵達をカクリヨファンタズムに送っていく。

「あっちもこっちもスポーツな新年になったの!あけましておめでとう!熱いくらいが寒い冬を過ごすにはちょうどいいかと思うので、がんば!」


古塔
●古塔と申します。
 このシナリオはアスリートアース……でなく、カクリヨファンタズムでのウィンタースポーツ勝負依頼となります。
 宜しくお願いします。

●ルール
 カクリヨファンタズムの妖怪ひしめく雪山で、滑走レース勝負となります。
 ボス敵であるシッケンケンはスノーボードを使うスノーボーダーですが、滑れるものなら何を使っても構いません。
 スキーやそり、ボブスレーなど。でも飛行や浮遊はルール違反。
 妨害や攻撃、ユーベルコード等の攻撃行為の一切は禁止されていません。
 ルールの範囲内で存分に全力で暴れてください。

 雪質は普通。結構様々な障害物がひしめき入り組んだ、やや急斜面のコースです。
 巨大な雪山の頂上から麓の雪小屋まで妖怪達で一気に滑り降り、先に麓に着いた者が勝利。
 しかし、レースはシッケンケンだけでなく、妖怪達全員で行います。

●1章
 レース開始と同時にシッケンケンが先行して見えなくなるので、追いつく為に他の妖怪達との滑走レースとなります。
 妖怪達は攻撃だけでなく、びっくりするものに化けて驚かして妨害してきたり、コースに化けて進行ルートを惑わしてきたりします(分かれ道で壁や崖、割れる氷池に誘導してきたりなど。)

●2章
 シッケンケンに追いつきます。レースバトルの本番です。
 シッケンケンは神業的なスノーボードテクニックに加え、凍てつく氷の紐を指から出す、影朧の力を使う(該当章で少し説明)等で妨害してきます。
 どれだけ攻撃してもレースに勝利しなければ倒す事はできません。強敵かもしれません。

 それでは、もし宜しければ。
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第1章 冒険 『カクリヨ異変』

POW   :    異変を力でねじ伏せる

SPD   :    異変を素早く回避する

WIZ   :    異変に対処し突き進む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「勝負?いいわよ。」
 ここはカクリヨファンタズム。妖怪達がひしめく世界。
 その一角、富雪山の山頂に、君達猟兵と妖怪達は居た。
 今、声を発したのは、今回の話の目的のスノーボーダー。
 この妖怪の世界をスポーツバトルで染めようとしている妖怪シッケンケンの美女だ。
 どういうわけか、その気がない者でさえ一目見ただけで魅了にかかってしまいそうな程美しく見える。

 あなた達は彼女、シッケンケンにスポーツ勝負を持ちかけ、そして今承諾されたわけなのだ。
「この辺りの妖怪達じゃ話にならないから。私を溶かせるくらい熱くて強い相手のプライドをへし折れば、それだけカタストロフに近づく事になる。単純よ。」
「今何つったてめぇ!」
 その話に反抗をしてきたのは住人である妖怪達だ。
「さっきは負けたけどまだまだ俺達は戦い足りねぇぜ!話にしてやる!」
「そうよ!もう一度勝負なさいよ!」
 彼らの中には完全に敗北して氷漬けになっている妖怪達もいた。

 紐でマニアックな感じに縛られたまま氷漬けになっていたり、巨大な雪玉に巻き込まれたような状態となって動かなくなっていたり、氷のスキージャンプ台の中に閉じ込められている(氷に滑り跡が見える事からそのまま利用された様だ)――者達が、他の妖怪達が持ってきた熱湯入りヤカンによって今か今かと解凍を順番待ちにされている状態であった。

「はぁ……みんな凍って頭が冷えないと分からないようね。いいわ。相手は猟兵だけのつもりだったけど、もう一度みんなで勝負しましょう。それで誰が……この|妖怪世界《カクリヨファンタズム》で最強のスノーボーダーか分からせてあげるわ。」
「そう来なくっちゃ!」
 妖怪達が沸き立つ。
「|決闘ごっこ《カクリヨバトリズム》の始まりだ!」


 富雪山、山頂、スタート地点。
 猟兵達の隣に各々の滑走具を用意した妖怪達が並ぶ。
 スキー板、スノーボード、そり、ぬりかべ、一反木綿、スケート靴に改造した刃物、船、ぞうきん、骨、氷、雪の塊、土下座したゴーレムなど、個性豊かだ。
「それじゃあ決闘開始ね。行くわよ!」
 そう言ってシッケンケンは飛び出した。
 ……合図は無い!勝負はもう始まっていた!
 ここは墓場の運動会ではないのでピストルもジャッジもいない。
「お先!」「だよー!」
 ぬかったか。猟兵達はシッケンケンに続いて飛び出す多種多様な妖怪達を見届けてからのスタートとなる。
 ここから先は彼らを全員追い抜いて、シッケンケンより先に麓のゴールに着くしかない。

 猟兵達は遅れて白銀の世界へと飛び出した。
 そして妖怪達の滑走レースを垣間見る事となる。

「どけどけーぃ!」
 スノーボードに乗って大量のおじいさんを入れた籠を背負った鬼が先を滑る妖怪達におじいさんを投げつけていく。
 おじいさんが命中した妖怪は即座におじいさんに抱き着かれ、雪の地面に沈んでいく。
 投げているおじいさんは子泣きじじいだ!
「しゃあっ!」
 刃のスケート靴を履いたかまいたちが前方を斬りつけると、どういう事か、斬られた雪のコースがねじれ、宙に飛び出るらせん状の3次元コースへと姿を変えた。
 かまいたちはその中を跳ね回るようにして風の如く滑走する。
「ふうっ――」
 スキーで滑る雪女はコースに吐息を吹きかけると、たちまちコースがアイスバーンと化して妖怪達を滑らせ、自分だけの道を創る。
「あっははは!ざぁこ妖怪!豚になって道を譲りなさい!」
 土下座ゴーレムに乗った西洋妖怪の魔女が豚に変身させるポーションを投げつけながらゴーレムの力強さで無理矢理障害物をなぎ倒しながら進む。
「道を譲るのはそっちだよ!おらぁ!」
 そこにろくろ首のスノーボーダーが横回転ジャンプトリックを決めながら自分の首を横なぎに降って魔女のどてっぱらにきつい一撃を与えて吹き飛ばす!
 ゴーレムは泣く泣く立ち上がり飛んでいった魔女の回収に勤しんでいった。
「こっちだこっち!ほら引っかかった!馬鹿め!」
 ぴょんぴょん跳び跳ねてスキーの真似をする自力走法の玉兎はどろんバケラ―の妖狐が化けた偽の『←』看板に騙されて林に突っ込み、雪の積もった木に激突。
「前方岩っぽいな!たぬちゃん!おねが!っ!?」
 妖狐は先に滑らせた化け狸をスキージャンプ台に化けさせ、岩を飛び越えようとしたが、突如水入りの落とし穴に嵌ってしまう。
 妖怪『びしゃがつく』が、びしゃびしゃした水たまりの落とし穴を作り出して後ろから滑らせてぶつけたものだ。
 水入り落とし穴から引き揚げられた妖狐は雪山の寒さでたちまち凍って、氷像のまま化けスキージャンプ台を飛んだ後、動きを制御できずに明後日の方へ滑って行ってしまう。
「うわーっ!」「助けて!」
 ぞうきんやぬりかべをそり代わりにして滑る一つ目小僧と座敷童は隣に並走している、スキー板に改造された朧車の中から飛んでくる石化光線を頑張って躱しながら滑っている。
「やっぱこういう乗り物乗ってると楽だわ。……先頭にいるシッケンケンはまだかしら!っと!」
 朧車の中にいるのは西洋妖怪メデューサだ。石化光線を乱射して妨害を行っている!
 当たって石化しなくても地面から岩の塊が生えてきて走行を邪魔してくる。かなり厄介だ!
「おらっ、邪魔だー!」
 その間を潜り抜けて高速で走行する妖怪がいる。火輪車こと、輪入道だ!
 炎を纏った車輪である彼が通り抜けた場所は雪が溶けてハゲた地面となって滑り辛くなってしまっている。

 この様に多種多様な妖怪が猟兵達の前に立ち塞がっている。
 果たして猟兵達はこの混沌とした妖怪達のレースを突破し……そんな妖怪達を全て対処して依然トップに躍り出ているシッケンケンを出し抜く事が出来るのか。
 健闘を期待する!

 ※どのような妖怪の、どの様な妨害に、どの様に対処しながら滑っているなどありましたらリプレイが描きやすいです。(なくても適当に妖怪をチョイスします。)
シモーヌ・イルネージュ
えーと、ここはカクリヨだよな?
アスリートアースじゃないんだよな??

周りは妖怪だらけだから、やっぱりカクリヨなんだな……

勝負と言われたら、受けて立とう!
レースはスキーで。北国の生まれだから、スキーは得意なんだ。
妨害ありってことだから、片方のポールは黒槍『新月極光』を使おう。
重いけど。

妨害に対しては、サイバーアイで広角【視力】を選択。
視野を広げて、早めに対応できるようにしよう。
スピード勝負だしね。

もちろん、こちらも妨害は遠慮なくやろう。
レース相手が迫ってきたら、スキーで宙返りからのUC【鮮血旋風】を発動。
転倒を狙おう。




「えーと、ここはカクリヨだよな?」
 決闘開始前の事、立ち並ぶ妖怪達に目を配る。
 でかい顔の異形、鬼、二足歩行で立つ獣、木そのもの。
 中には一応人間型もいる。浮遊する日傘で光をさえぎってる吸血鬼とか。
「アスリートアースじゃないんだよな??」
 銀髪で髪を結わえた男勝りのような雰囲気をした|人狼《クルースニク》の少女、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は再三、今回の話がどこの世界で行われているかを確認した。
 周りにもう一度目を配る。
 UDCの様な異形とか、車輪に顔の生えた奴とか。小さな女の子(※座敷童)が生き物の様に動く壁の形をした生命体(※ぬりかべ)をスノーボードにしようとしていたりとか。
 あとなんかひたすらスピンして「自分、地に足付けて滑りますんで!違反する程度には飛ばないんで!」アピールしている、から傘お化けとか。
「あ、うん。妖怪だらけだから、やっぱりカクリヨなんだな……」

 シモーヌは気を取り直して、今回持参したスキー板セットを改めて背負いなおす。
「ま、勝負と言われたら、受けて立とう!アタシはスキーで!」
 シモーヌは北国の生まれで、スキーが得意なのだ。
 そして妖怪相手の準備も怠っていない。
 ユーベルコードはもちろん、左目のサイバーアイによって視野と視力も強化している。
「あとはこいつ、っと。重いな。」
 手に持つスキーポールの片方は愛用の黒槍『新月極光』を代わりに使う。
 重量バランスが崩れるというかなり滑走コンディションの悪い感じだが、そこは猟兵。なんとでもなるだろう。


「よし、行くか!」
 かくして|決闘《レース》が始まり、シモーヌもまたスキーで飛び出した。
 飛び出したシモーヌは閃光の如く素早い。
「スピード勝負だ!妨害は多い様だから、やっぱり黒槍を持ってきて正解だったみたいだなっ!」
 スキーによって、左右に飛び跳ねるようにして滑るシモーヌ。
 |滑り跡《シュプール》と雪飛沫をまき散らしながら、妖怪の世界の風に同化する様に滑走する。

 すると一部の滑り跡が凍って、中途半端なアイスバーンとなっている雪原に出た。
「やり辛いな。こいつも妖怪の仕業かよ。」
 その先に居たのは2体の妖怪グループ。
「うお!?西洋妖怪の……人狼の追い上げか!?食べられちまうぜ!」
「ひああ!追いつかれるべ!妨害、妨害……えと、お願い!ユキちゃん!」
 布団で滑走する枕返しの妖怪とそりに乗って滑る雪ん子である。
 雪ん子は滑った所を凍らせて悪路にしているだけでなく、今、その手から即席で雪だるまを作ると並走させる様に地面にばらまく。
 雪を吸収してみるみるうちに巨大化した雪だるまが障害物となってシモーヌに襲い掛かる。
「そら!」
 シモーヌは片手で黒槍を振るい、進行方向の雪だるまを切り刻みながら進む。
 その斬撃は闇夜を照らすオーロラの如き極彩色の残光を描いた。
「よーしここらで行ってみるか!相席の雪ん子しっかりつかまってな!そぉら『返れ!』」
 枕返しが布団の枕を返す。すると急に地面の雪が浮き上がる。
 この妖怪は枕を裏返す事により任意の重力を反転させる力を持つのだ!
「何でもアリか!?」
「カクリヨファンタズムにようこそ!お前はそのまま木にぶつかりな!」
「なら雪の代わりに風でいくか!」
 切り取られたように雪の消えた地面を、槍を通して放つ旋風の力で一瞬滑空するように浮き、重力反転の及ばない先の雪の地面へと着地しようとする。
 その時である。突如シモーヌの両横から大量の木々が押しつぶさんとばかりに寄ってきた!
「木にぶつかりなって言ってたけど、なるほど、待ち伏せか!」
 シモーヌの周囲があっという間に林と化し、最悪の悪路と化してしまう。
 滑走中の妖怪『樹木子』が木々を生やし、仲間を増やして妨害してきたのだ!
「だが残念だ。もう見えてるよ!」
 サイバーアイによる視力強化により、既にシモーヌはその妨害を察知していた。
 シモーヌは閃光の如きコース取りで、時に黒槍を振るって木々を斬り、いなす。
 サイバーアイによって発達した視力と視野が、樹木子達の行動予測と林の抜け道を分析、察知。
 即座に対応し、樹木子林の群れを突破する。
「~~~!!」
 何とか切り抜けてシモーヌは再び広い雪原に躍り出た。
「ちっくしょう!」
「ほわあ、あの人狼のお姉さ凄いべな!」
「感心してる場合か!はよ追いつくぞ!」
 その後ろを雪ん子と枕返しと樹木子の面々が追走する。

 さらに加速して先頭に追い付こうとするシモーヌ。
 そこに合流する妖怪がいた。
「す、すみませんいい加減降りて頂けませんか……というか痛くないですか!?自分何か痛々しい背徳感にまみれてるんですけど!」
「この手袋には相手を傷つける為のやすり状の刃が入ってる。これを通してお前の足の傷から血を吸収している。ダメージはプラマイ0よ。そのまま続けなさい。」
「ってそれ自分めっちゃ傷ついてるじゃないですか!?何か痛み感じないんすけど!やだー!下見たくないー!」
 猛烈なスピンをしながらコマの様に雪山を滑っているから傘お化け。
 そのスピン軸足にしがみつきながら滑走をお供している吸血鬼の少女だ。

「何だそのコンビ」
「いやこの方、宙に浮く日よけ傘を開幕で風に飛ばされて無くしたらしくてですね!?」
「こうして掴まりたくもない妖怪に掴まって日除けを行っているという訳よ。」
「じゃあ離してくれません!?」
「あー、いや、茶番に付き合う程暇じゃないから行くな!」
「ま、待て!というかせめてここから助けてもらうだけでも!」
「じゃあお嬢ちゃん、悪いが」
 シモーヌは黒槍で吸血鬼の少女を弾こうとした。
 その時、突如サイバーアイが飛来するおじいちゃんを視覚に捉える。
「うわっ!」
 反対側に飛び退いて難を逃れるシモーヌ。
 おじいちゃんは雪の斜面に突き刺さると「ちっ」と舌打ちしてそのまま石化した。
「一体なん――」
 シモーヌが後ろを見ると、絶句した。
 そこには大量のおじいちゃんを背負った大柄のスノボ鬼が追いついてきそうになっていた。
「ぐははは!この勝負は俺達がもらい受けるぜーぃ!」
 そのおじいちゃんは全て、おぶった者の背で石化してとても重くなる妖怪『子泣き爺』。
 あの鬼はそれを投擲武器として扱っている。
 命中すれば最後、超重いおじいちゃんの力で雪に埋もれてしまう事だろう。

「はは、熱くなってきた!」
 だが逆にシモーヌはテンションを上げ、あの鬼へと対峙しに行く。
「追手が迫ってくるのなら、遠慮なく妨害も行える。」
「ぬかせーっ!」
 鬼はスピードを上げ、シモーヌの背後を取った。
「うわわわ、ああ言ってますけど自分達も助けて頂けると!もう既におぶってるようなものなんで!」
「今私の事婆って呼んだの?」
「呼んでませんけどーっ!」
 慌てるから傘達。だが災難は続く。
 目の前に大岩の障害物が現れたからだ。
「うおおおお!」
 それを鬼は、背負っている子泣き爺を合体させた巨大石化爺棍棒で目の前の相手ごと粉砕しようとする!
「こ、こうなったらヤケだ!飛ぶぞ!うおーっ!」
「待っていたよ。それを!」
 シモーヌはスピードを上げから傘コンビの前に出る。
 同時に意を決したから傘コンビが飛ぶ。
 シモーヌは大きく宙返りジャンプをかまし、宙に飛んだから傘お化けを踏み台にしてさらに跳躍。
「うおおおお!?」
 鬼の石化爺棍棒は飛んだ2組によって宙を切り、岩を砕くのみに至る。
 鬼の真上にシモーヌが陣取った!
『風の精霊よ。我が槍に力を授け給え。|鮮血旋風《ヴァンルージュ》!』
 黒槍から勢いよく旋風の斬撃波が放たれ、この場にいる全ての妖怪をを吹き飛ばす!
「うおおおおあああ!?」
 子泣き爺達の重みもあって風圧でバランスを崩した鬼はそのまま転倒!
 子泣き爺が一斉に石化し、その重みで雪の地面に埋もれるようにして転がっていった。
「うわあああああ!?」
「捕まって!っくっ……!」
 吸血鬼の少女が巨大なコウモリの翼を広げ、滑空するようにして風圧に耐える。
 が、それでも上手く飛ぶことはできず、あさってのコース外へと飛んでいった。

「さて、邪魔者ははけていった。もう少し!」
 シモーヌは吹きすさぶ旋風の中、気合を入れてシッケンケンに追いつきに行ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

な…なんだか大変なことになっています!?
とはいえ別の世界なのでUCは思いっきり使っても大丈夫のようですが…とりあえず勝つことだけを考えましょう!
まず【全てを凍てつかせる小さな妖精】さんを召喚して妨害ガードをしましょう!
近づく相手や妨害も凍らせて脱落させていけば…!

途中までは良かったのですが…やはりフラグから逃れられない!
わたしを間にメデューサと雪女の挟まれましたぁー!?
ここはイチかバチか…妖精さんを双方に飛ばして凍らせます!
同時に両端から石化光線と氷の吐息が迫ってきて―――
(双方とも凍らせるが、本人も石化された上に氷漬けにされてそのまま滑りながら進んでいく…)




「な……なんだか大変なことになっています!?」
 魑魅魍魎の跳梁跋扈か。様々な妖怪達の滑走レースに驚くはテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)。
 今回はスノボウェアで普通にスノーボードに乗って参戦した。
 自身がスノーボードにされた経験もあるが、そこは気にしないで行こう。

「……とりあえず勝つことだけを考えましょう!|全てを凍てつかせる小さな妖精《アイシング・フリーズ・フェアリー》さん、妖怪はみーんな凍らせてきてください!」
 白銀の世界を滑りながら、鋭く凍てつく様な冬の風に乗ってテフラから可愛い氷の妖精達が召喚されていく。
 この青い氷の妖精達に油断して触れてしまえばたちまちカチコチに凍り付いてしまうだろう。

「うおおおおお!」
 地形をきりさきなますのようなねじれ3次元のコースを生み出すかまいたちにテフラは追いつく。
「う、うひゃあ!どうなってるんですかこのコース!滑れるんですか!?」
 とりあえず地面に接地されている低い場所の足場を何とかジャンプしながらも。
「こんな悪路を生み出す妖怪さんはお仕置きです!妖精さん…頼みましたよ♪」
 妖精がかまいたちに飛んでいく。
 かまいたちはブレードスケートで滑りながらも容赦なく妖精を切り刻む。
 が、手ごたえがない。
 冷気で出来た妖精は両断する事が出来ず、代わりにかまいたちの鎌が凍り、そこから体へ、全身に伝わるようにぴきぱきと身体が凍り付いていく。
「な、なんじゃこ――」
 あっという間に氷の塊と化したかまいたちは、ねじれた雪のコースをガンゴンと跳ねながら無様に滑っていく。
 あの体勢ではもう復帰することはできないだろう。あの衝撃で氷が壊れないのが不思議だが、妖精の力なのだろう。

「おーっほっほっほ!おいついてきましたわよ!」
 平坦な雪道に滑り出ると、今度は後ろから、倒れた状態で人間ボードの様に滑るゴーレムの上に乗った魔女の少女が追走してきた。
「まだまだ変身ポーションの在庫はありますわ!豚になってボードから外れ、転がって雪だるまにおなり!」
 ぽいぽいと爆発する怪しげなポーションを投げて来る魔女。
「うわわわ!その変身系ポーションもうちょっと詳しくお話して欲しい所ですが、わたしは兎ですので~!」
 ぶわっと、後ろにフリップ回転して手を横に一閃。増えだした氷妖精達がゴーレムらに飛んでいく。
 飛んでくる豚化ポーションはたちまち凍り付き、爆発することなく雪の地面に落ちる。
 そしてきゅっと抱き着くように氷妖精がゴーレムに触れると、ゴーレムは凍ったまま動かなくなる。
 凍ったゴーレムの氷のボードはとても滑りやすい。
「あっ、ああっ!?どこへいきます……の……」
 そして明後日の方へとツルツル凍っていくゴーレムと、ゴーレムの氷を伝って足元から凍り付いていく魔女。
 倒れたゴーレムを台座とした魔女の少女の氷のオブジェが完成した頃には、完全にコースから外れた所へ延々と滑って行ったのだった。

「この調子で妖怪をどんどん凍らせていきましょう!」
 そう言っている内に隣に現れた次のスノーボーダーに氷妖精をけしかけるテフラ。
 カチン、と、妖精は相手に触れて冷気を放出し、一瞬で相手の全身が凍り付く。
 が、その滑りはまるで変化をもたらさず、普通にテフラと並走していた。
「な、なんなんです!?」
 よく見るとその姿は石像。否、地蔵であった。
 更によく見るとその地蔵の後ろにはもう6体、計7体の地蔵スノーボーダーが滑っていたのだ。
 東方妖怪、七笠地蔵である。
「な、なんですってー!?」
 七笠地蔵は無機物なので凍っても石化してもお構いなしである。
「「「「「「「失礼」」」」」」」
「うわぁ゛ー!?」
 七笠地蔵によるジェットストリームアタックの如き体当たりを受け、テフラは大きく弾き飛ばされ。
 そのまま横の別コースに逸れてしまったのだった。

「びっくりしました。ああいう妖怪さんもいるなんて……ここはまだ本筋でしょうか?」
 何とか体勢を取り直して雪山を滑り続けるテフラ。
 正面には2体の妖怪。このスピードなら追い抜けそうだ。
「妖精さん、凍らせて行ってください!横、失礼しますねー!……!?」
 そう言ってユーベルコードをけしかけようとした時だった。
 まず2体の内、左。それはぞうきんをスノーボードにしている一つ目小僧の石像であった。
 石化している。
 2体の内、右。それは壁の妖怪ぬりかべをスノーボードにしている座敷童だったが、ぬりかべごと巨大な氷塊に閉じ込められている。
 冷たそうに驚いた表情のまま、滑ったポーズを止めてないが、何か障害物にぶつかっただけでツルツル回ってコースから逸れていきそうな、完全に身動き取れずに静止した氷漬け状態になっていた。
「え、嘘、これって。……つまりこの子達の横には……」
 2体のオブジェと化した妖怪の横を通り過ぎると、その元凶がすぐにやってきた。

「あら、また石像スノーボーダーになりに来た兎妖怪が一匹。」
 左からはスキー板付き朧車の中から顔を覗かせるメデューサが迫る。
「ほう、めんこいな。男の兎っ子かや?童は今日こそあのシッケンケンに勝たねばならぬでな。ここで凍ってもらうぞ。」
 右からはスキーで滑っている雪女が迫る。
「う、うわーっ!さいこ……じゃなくて最悪の組み合わせです!?わたしを間にメデューサと雪女のコンビに挟まれましたぁー!?」
 速度を遅めてはボスのシッケンケンに追いつけない。
 加速をするも、息が合うのか双方共に同じ速度でぴったりついてくる。
 左に逸れれば石化し、右に逸れれば凍り付いてしまうだろう。
「こ、ここはイチかバチか……|全てを凍てつかせる小さな妖精《アイシング・フリーズ・フェアリー》さん、両方凍らせてきてくださーいっ!」
 テフラは両手を広げて、くるりと横回転して滑ると、氷妖精が全方位に向けて放たれる。
「しゃあっ!」
「ふうっ……」
 それと同時にメデューサの眼から石化光線が、雪女から氷の吐息が迫ってくる。
「ひ!あ」
 それがテフラの最後の言葉だった。

「や、やめ……!私、寒さには弱……!」
「ぬ、ぉお!?童も凍らせるのかこの雪ん子、あひっ!こ、この冷たさ……癖に……な……」
 朧車ごと凍り付いたメデューサは、迫っていた岩にぶつかり、転倒。
 中にいたメデューサが横倒れになって飛び出て、雪の彼方へと滑って行った。
 雪女もまた凍り付いていた。雪の妖怪である彼女でさえ凍り付く、あまりに強力な冷気を浴びた彼女は、どこか恍惚な顔を張り付かせながら氷像となり、そのまま真っ直ぐに滑走し続けていた。

「…………………………」
 テフラは二人の妖怪の攻撃を浴びた結果。
 石像と化してしまった上で氷漬けとなった。
 物言わぬ石像に更に厚く冷たい氷がコーティングされ。
 それを凄いオブジェだと感嘆に浸りながら周囲を漂う氷妖精に見守られつつ。
 声を発する事も出来ぬまま、しかし奇跡的にコースを外れる事無く、このまま先へと滑走し続けたのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

響納・リズ(サポート)
「皆様のお役に立てるよう、頑張りますわね」

移動時には、急ぐ要素があれば、サモン・アーティアを使って移動します。
洞窟など罠が予想される場所では、慎重に進み、万が一、けが人が出た場合は、回復UCにてすぐに癒します。
調査の際は、タロットを使っての失せもの探しや、礼儀作法を使っての交渉。聞き耳等を駆使して、情報を得ようとします。
交渉時は相手の機嫌を損ねないよう気遣いながら、気持ちよく話してくれるように進めます。

共同で進む際は、足手まといにならないよう、相手を補佐する形で参加したいと思います。

アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです。




「えっと、スノーボードで競争、ですか?」
 オラトリオの響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)はどうしようかと悩んだ。
 急ぐ要素があればグリフォンのアーティアを使うと作戦に決めていたが。
「おう、姉ちゃん、丁度いいのがあるぜ。」
 一本だたらという、1本足の鍛冶師の妖怪が、リズに巨大なスノーボードを捧げて来た。
「おとろしなんかのでかい妖怪向けのスノーボードだ。こいつに姉ちゃんの妖怪を乗せて滑ると良いぜ!」
「あ、いえ、アーティアは妖怪ではないのですが。ともかくありがとうございます。」
「良い翼をしてるが飛行は無しだぜ!滑空は上昇しないならギリ良しだ!良い勝負見せてくれよな!」
 どうやら滑走具を作るのに心血を注いで一本だたらのスノーボードは無く、彼は観戦するらしい。


「アーティア、大丈夫?」
 雪山の斜面を風切るようにして滑走するリズ。
 アーティアは一瞬リズを見て頷いた後、心配そうな顔をして正面に向きなおした。
 今、巨大なスノーボードにアーティアが乗り、その上をリズがしがみついて滑っている。
 グリフォン型のボブスレーに掴まっているような感覚かもしれない。
 それを上手い事、アーティアに触れて意気を統合し、上手い具合に滑り、木々や岩を避けて滑走し続けている。
 崖が見える。
「私の可愛いアーティア、いちにのさんで飛びますよ。」
 息を合わせて、大きくジャンプするアーティア。
 そのままリズとアーティアは大きく翼を広げ、急降下するように滑空する。
 雪山の冷たい空気を気持ちよく二人は浴びながら、ざしゅっと直下の斜面に着陸。
「アーティア、なんだか楽しくなってきました。」

「誰か追い上げて来た!?」
「よーしオイラまた一つ騙してくるか!」
 化け狸やろくろ首等の妖怪スノーボーダーと出くわす。
『沢山滑ってお疲れではないですか?私が癒やして差し上げましょう』
 リズはユーベルコードを発動。冬に色めく美しい桜の花吹雪が辺り一面を埋め尽くす。
「あっ!?やば……ここで……眠っ……ちゃ……」
「ふえ、ぇ?なんで雪に……桜……が……」
 妖怪達はそれを浴びてみんな揃って眠り出す。
 その拍子にこける妖怪、違う道の看板に化けていた妖怪が元に戻って眠り出したりもする。

「これで後は先頭の妖怪でしょうか。急ぎましょうアーティア。」
 リズは妖怪達を眠らせながら先へと滑って行ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『ゲレンデシッケンケン』

POW   :    滑走「アンプリペアードトラクション」
【指先から丈夫で凍てつく「氷の紐」】を放ち、命中した敵を【縛り上げ、身体を凍らせ、引きずり回し、雪】に包み継続ダメージを与える。自身が【より雪深く難しいコースを滑走】していると威力アップ。
SPD   :    旋符「氷のスラッシュクラフター」
速度マッハ5.0以上の【エアトリック時に巻き起こる、氷結衝撃波】で攻撃する。軌跡にはしばらく【氷のジャンプ台と、凍てつく氷の紐トラップ】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
WIZ   :    ゲレンデ美人のカリスマ
一緒に【滑走】を行った全員に、ひとつ頼み事ができる。成功率は、対象が[滑走]を【して熱中した】程増加する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ついてきたわね」
 カクリヨファンタズムの富雪山は中腹を抜け。
 妖怪達を潜り抜けた猟兵達は、今回最強のスノーボーダー、シッケンケンと並走する。

「勝負の最中に聞いてるか知らないけれど、色々と先に話しておくわ。私に憑いた|骸魂《オブリビオン》の名前は『ゲレンデ美人』」
 ゲレンデ美人は、種族:新しい妖怪の一種であり、その能力は『雪山に居る間、|魅力《カリスマ》とスポーツ技能が飛躍的に上がる』というものだ。

「生まれつきの一本足でも遊びたくて努力してきた私は、スポーツ以外で勝負ができないこの骸魂の無念が解るわ。だからこの世界のどこでもスノーボードで|決闘ごっこ《カクリヨバトリズム》ができる様に、私はカクリヨ・カタストロフの支配者となるの。」
 シッケンケン、否、ゲレンデ美人が憑依した妖怪『ゲレンデシッケンケン』は、氷雪を操る雪女の力に加え、指先から糸の様に紐を放ち、自在に操り、更に紐や体を通して凍てつく冷気を放つ事ができる。
 これらを利用しながらも超人的なスノーボードテクニックとカリスマで猟兵達を圧倒してくる。
「正々堂々から妨害まで。何をしても私が一番な事を証明してあげる。」
仇死原・アンナ(サポート)
鉄塊剣『錆色の乙女』,妖刀『アサエモン・サーベル』、戦闘用処刑道具『赤錆びた拷問器具』、『鎖の鞭』等装備してる物を使います

UCは指定した物をどれでも使用

普段の口調は(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
戦闘中は(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)

処刑人として敵と戦います
同行者がいれば協力
メインは鉄塊剣で攻撃
鉄塊剣の使用が不向きな相手・場所では刀剣をメインにして相手をします。
拷問具や鞭を使い敵の行動を阻害、鉄塊剣や刀剣で敵を攻撃します。影朧にはできる限り説得しますが説得不能と判断すれば容赦なく屠ります
キャバリアを操縦したり生身でも戦います


イネス・オルティス(サポート)
『この鎧は一族伝統のものよ、それがどうかしたの?』

アックス&ウィザーズ辺境のどこかにある隠れ里に住む一族の女戦士
〔一族伝統の鎧〕のビキニアーマーを愛用し主に〔巨獣槍〕という槍を使う
”ダッシュ”で近づき”なぎ払い”、”串刺し”等をよく行う

ボン・キュ・ボンのナイススタイルで、ビキニアーマーを普段使いしている
恥ずかしさ耐性のあるイネスは、周りの視線を気にしません
そのビキニアーマー姿の存在感で、無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません

アドリブ・絡み・可 ””内技能
描写はセクシーレベルまで
キャバリアには乗らず生身で戦います(他の人のキャバリアを足場にする等はあり)




「カクリヨファンタズムのアスリートアース化か……何とも燃える話だが、価値観の押しつけは良く無い。」
 そう言ったのは漆黒の髪と瞳に地獄の炎を宿す女性、仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)。
 彼女は鉄塊に似たギロチン刃の如きデザインのスノーボードを乗りこなしている。
「所でお前は味方の猟兵か?その服は何だ」
「このビキニアーマーがどうかしたの?この鎧は一族伝統のもの。たとえスポーツでも脱ぐ事は無いわ。」
 この寒空の下、銀地に金装飾のビキニアーマーを着た、背までかかる赤茶髪の女性、イネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)。
 彼女は巨獣槍に似たデザインの牙のペイントが施されたスノーボードを乗りこなしている。

「いや……雪山であれば防寒服。適所には相応の恰好をするのが礼儀というかだな。」
「あら、そんなの別に関係ないわ。」
 対峙するシッケンケンは答えた。
「一緒に滑った妖怪達もルックス考えてなかったし、薄着のスノーボーダーなんて星の数ほど見て来たから、何も問題ないわよ。あんたが気にし過ぎてるだけ。」

 イネスのビキニアーマーは時に人を誘惑する効果を持つが、シッケンケンには特に効果がない。
 スノーボーダーには割と、明らかに寒そうな露出を多めにした者も多いらしい。
 スポーツをしている内に体が熱くなるからかもしれない。
 一昔前にはへそ出しルックが流行ったと聞く。

「本当にスポーツでカタストロフを起こすつもりか?」
 アンナが説得を試みる。
「……|影朧《この子》の望みはどこでもゲレンデを呼び出してスポーツをする事。誰かの為に尽くすなんて、熱くて溶けてしまいそうでしょ?……だから惹かれたし、憑かれたの。」
 シッケンケンは影朧に憑りつかれておりながら、影朧と共生するかのように正気で、仲良くその力を使いこなしている。
 説得するまでもなく勝負に勝てば潔く影朧は消滅するという。
「勝負に勝てば潔く|影朧《この子》は成仏するって言ってるわ。ま、今まで私負けた事ないから。あなた達もせいぜい頑張りなさい。」
「言ってくれる。処刑人の力を見せてやる!」
 アンナは説得を取りやめた。何故なら彼女は絶賛アスリートアースで奮闘中の処刑人アスリートであるからだ。
 スポーツで決着が着くならスポーツで倒す。
 それが妨害もなんでもアリなアスリートアース的なスポーツなら猶更だ。

『静かに速やかに眠るがいい!』
 アンナは地獄の炎を身体から噴き上げ滑走しながら、鉄塊剣を地面に叩きつけると、雪の斜面を破壊していく。
 シッケンケンは指から紐を放つと、それらの地面を捉え、縛り、自身にちょうどいい飛び石の様な足場を形成。
 ひらりと飛び、グラブトリック(スノーボードを掴む様な動作で飛ぶ魅せ技)を連発しながら滑り進む。
 更に縛った雪塊の内幾つかをアンナやイネスに、ジャンプ中のスピントリック中に投げるように放った。
 雪塊はシッケンケンの冷気によって凍っている。威力が高い。

「フン!」
 アンナはそれらを鉄塊を振るい砕きながら、崩壊する雪の地形をひとっ飛びするようにして跳躍。
 投擲とトリックに気を取られている相手にとユーベルコードを発動。
 空から鴉の亡霊を放ち、シッケンケンに襲わせる。
 だがシッケンケンは紐を操り鴉の亡霊に括り付けると、空中で一纏めに縛り上げ、ふうっと氷の吐息を吹いて凍結。
 一纏めにして凍らされた鴉達の氷塊がアンナに投げつけられた。
「っ……」

「良い所ね。大自然を感じるわ。ビキニアーマーの力が最大限に発揮される場所よ」
 珍しく饒舌なイネスが言う。
「あなたは雪山以外で闘った事はある?」
 イネスは|薄衣甲冑《ビキニアーマー》を覚醒させ、光を放ち、戦場を塗り替えていく。
 すると三人が滑っている場所が、気づくと雪山ではなくなっていた。
 ビキニアーマーの神の波動が絶えず起こりうる、神々しきビキニアーマー女神の神殿の一角をいつの間にか滑っていたのであった。
「ビキニアーマー女神の加護があるこの場所では私の聖地。あなたに地の利は無いわよ」
 ビキニであるほど強くなるビキニアーマー神殿でスピードアップしたイネスがシッケンケンを抜く。
「そう。……さっきも言ったけど、露出の有無なんてスノーボーダーには関係ないわ。」
 シッケンケンは己の紐を自身に向け、縛り上げるようにその場で紐を操り、自身のスノボウェアを改造。
 へそ出しルックが蠱惑的な、防寒素材のビキニに衣装へと即座に衣装を改造した。
 シッケンケンのスピードが上昇。イネスに追いついてくる。
「これはワタシもビキニになるべきか……!?くっ、『起動!』」
 アンナは戦闘服に即着替えれるイグニッションカードをかざし、ビキニ姿に着替える。
 今回は悪魔の角が露出した、片乳が零れそうな黒藍色の際どいビキニとなっている。
「風邪を引く前に……」
 アンナは自身に蒼い地獄の炎を纏わせ、シッケンケンの放つ氷雪冷気に耐える。

「ゲレンデ美人は雪山で最強の力を発揮するけれど」
 シッケンケンは言う。
「私、それ以外の場所で滑った事が無いわけではないわ。グラススキーは知っていて?」
 大理石の様な地面となった神殿のゲレンデコースを滑るシッケンケンは、影朧の力が弱まるのを感じながらも神がかり的なスノーボードテクニックで滑走を続けている。
「まあ、雪の方が滑りやすいのは当然ね。染めてあげるわ」
 シッケンケンは滑走中に突如両腕を広げ、冷気を解放すると、神殿一面に吹雪を放出。
 あっという間にビキニアーマー女神の彫刻や胸にも積もるほどの雪景色の神殿と化した。
「伝説の鎧の加護と大自然の力をあなたも身に着けるなんて……!」
 イネスはこの妖怪が強敵であることを確信した。


 無限に続くかのような雪積もる神殿の斜面。
 ビキニアーマー姿の女神像が乱立するコースを3人は滑っていた。
「こちらから仕掛けるわよ」
 イネスは以前最強のビキニアーマー使いである為スピードが良く出る。
 シッケンケンが前をリードする度、ダッシュの如き加速で巨獣槍を構えてのスノーボード滑走突撃を放つ。
 それをシッケンケンは自身の周囲に紐を巡らせて感知、疾風と鎌鼬を纏う突撃を幾度も躱す。
「返してあげるわ。『旋符「氷のスラッシュクラフター」』」
 シッケンケンがジャンプトリックを決めると同時に氷刃の如き衝撃波が辺りに飛ぶ。
 アンナとオルティスはかろうじて武器で受けると、武器が一瞬で樹氷の様に凍り付く。
 そして斜面に当たった衝撃波からは瞬く間に氷のジャンプ台がいくつも出来上がる。
「どんどん行くわよ。ついてこれるかしら」
 氷上でトリプルアクセルを決めるかの様な美しいスピントリックを何度も氷のジャンプ台で決めながら、氷の衝撃波を飛ばしてくるシッケンケン。
 それだけではない。幾重にも張り巡らされた氷の紐のトラップも注意して躱さねばならなかった。

 イネスは獣槍を斜面に突き立て、棒高跳びの様にして跳ぶ。
 縦に高速回転しながら氷の紐を切り裂いてシッケンケンを追い越さんと高速で追撃する。
「あら、傷つけるつもりかしら?」
 シッケンケンの指先の紐が揺れる。
 すると隣にあったビキニアーマー女神像が突如縛られてシッケンケンに牽引。横スライド移動を起こしてイネスの前に立ち塞がる。
「なっ……卑怯な!」
「妨害はお互い様でしょ?」
 イネスは攻撃を中断。回転を横に変えて空中横フリップターンで女神像を躱し着地。
 シッケンケンの1歩後ろの距離となった。
「気を逸らしたな。『暗殺剣「|墓場鳥《サヨナキドリ》」』!」
 アンナが妖刀『アサエモン・サーベル』を手に、死角から暗殺気味に刀剣を振るい、切り上げ気味に足から上へと切り裂こうとする。
「ふっ……!」
 紐でそのユーベルコードを感知したシッケンケンは、跳ぶ。
 なんとアンナの放つ一閃にスノーボードを真横にして沿わせ、斬撃に、騎乗!
「何っ!」
 グラインドレールの如く妖刀にスノーボードを滑らせると、加速して再跳躍。
 点在するビキニアーマー女神像をも超えて二人の遥か先に着地した。
「こうなったら二人同時に行きましょう」
 アンナとイネスが槍と鉄塊剣を構えて、ビキニアーマーの力を借りて姿勢を低くする。
 加速して両側から武器を振るい吹き飛ばそうとする。
「いい加減その攻撃も飽きたわ。『正々堂々とスポーツで闘ってくれる?』」
「「!!?」」
 アンナとイネスは突如胸が高鳴り、攻撃を止めてしまう。
 止まった隙に再びシッケンケンがリードを続けた。
 シッケンケンのユーベルコードである。
 このスノーボードスポーツで闘っている限り、一度に一つの要件を相手に承諾させてしまうのだ!
「それにしても……同士討ちとかじゃなくて攻撃を止めさせるだけなんて、本当にスノーボードが好きなのね。」
「ならばそれに興じるしかあるまい。私は処刑人、スノーボードでお前を処刑する!」
 ややぶっ飛んだ発言をするアンナと共にイネスも覚悟を決める。
 もうすぐビキニアーマーの女神の神殿の環境効果が切れてしまう為でもあったからだ。

 3人の進む道が夢の靄の如く切り替わっていく。
 即ち神殿から、元の雪山へと。
「ほわっ、戦闘に追いつきました!?きゃあぁシッケンケン様だー!」
 そこへ氷のスノーボードで滑走する妖怪氷柱女のスノーボーダーが横から入ってきた。
 目の前には大きな崖。
「ちょうどいいわ。私と協力して『氷で大きなジャンプ台を作って欲しい』のだけど。」
「えっ!?やりますやります。大ジャンプですね!……ふうっ……!」
 吐息をかけるように手から極度の冷気を放つ氷柱女とシッケンケン。
 目の前の崖が巨大な氷のコースで補強され、スキージャンプの如き立派な氷のジャンプ台へと姿を変えた。

「1080°は知ってるわよね。スノーボーダーの奥義。空中3回転ジャンプトリック。これなら何回転出せるかしら……勝負よ。」
「ビキニアーマー神よ、私に全力の力を!」
 イネスが光を纏うと、残ったユーベルコードの力を集約。天空のビキニアーマーなる天秤を模した様なステージ衣装の如きビキニアーマーと化し、槍を構える。
 その加速はロケットの様な速さとなっていく。

「ふっ!!」
 4人が一斉に氷のジャンプ台を飛んだ!
 1回転、2回転、3回転。
 風に乗り幾度も回転しながら速度を上げていく。
 その空中戦を真っ直ぐ突っ切るはイネスだ。
 ビキニアーマーのロケット突撃が大きく3人を引き離していく。
「まだよ」
 シッケンケンは回転しながら氷の紐を空中に張り巡らせ、固定する。
 するとその氷の紐に乗り、加速し、また乗り、加速し。
 幾度もの回転グラインドレールで急加速を行う!
「なっ……!」
 なんとビキニアーマーロケット突撃を行うイネスよりわずかに速度が勝ったのだった!
「これで空中戦も――」
「まだだっ!」
「!?」
 シッケンケンは隣で抜いてくる者を見た。
 それは拷問具から取り出した無数の地獄の炎が迸るワイヤーを、シッケンケン同様に空中に張り巡らせ、同様に回転しながら滑るアンナの姿だった。
「先に私の妖刀で滑った所から知見は得ていた!」

「は、はえぇ、みんなすごい……頑張ってー!」
 一人加速に取り残されたがきっちりと3回転を成功させた氷柱女は空中で皆を見送った。

 雪の斜面に着地する。
 先頭アンナ、やや後ろにシッケンケン、更にやや後ろにイネスが。
「やるわね。……正直見くびっていたわ。でも、勝負はここからよ。」

 猟兵とゲレンデシッケンケンの滑走戦闘はまだまだ続く……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シモーヌ・イルネージュ
やっと追いついた!
このまま勝ち逃げなんて許さないよ。
こっちはカタストロフになって、スポーツですべての戦いを決めるなんてことになったら、つまらないんだ。
一気に追い抜いてやる。

向こうの方がスポーツの腕はあるみたいだけど、アタシは実戦向きなんだ。
相手の妨害を利用して、逆に優位を立とうか。

UC【血河雷鳴】を発動して、相手に接近。
氷の紐を放ったところで、逆に紐を捕まえよう。
あとは【怪力】任せで大回転かまして、【吹き飛ばし】。
距離を稼ごう。

あとでカチコチになりそうだけど、今は勝てればよし!




「やっと追いついた!このまま勝ち逃げなんて許さないよ。」
 白銀の世界に氷原のような銀髪が揺れる。雪の飛沫をあげながら、シモーヌはシッケンケンを視界に捉えた。
「こっちの世界はカタストロフになって、スポーツですべての戦いを決めるなんてことになったら、つまらないんだ。」
 多種多様な妖怪の怪奇談な世界が、ただの運動会になってしまうのは違うと。
 シモーヌは強く彼女の想いを拒絶する。
「一気に追い抜いてやる。」

 スキーのシモーヌ、スノボのシッケンケン。
 お互いに別の滑走具で雪の斜面を滑りながら、シモーヌはシッケンケンに距離を詰めていく。
 かたやジグザグに跳ねながら滑るスキー。障害物は左右に避ける。
 かたや緩やかなカーブを描きつつも真っ直ぐに滑るスノボ。障害物はジャンプで飛び、華麗な|捻り回転《フリップ》トリックを決めて飛び越える。
 しかしシモーヌのエッジの効いた滑りが徐々にシッケンケンに距離を詰めていった。

「中々やるみたいね。じゃ、これならどうかしら。」
 シッケンケンは懐のポケットからケルビンカードを取り出し、光らせると、指から冷気で編まれた氷の紐を展開し、シモーヌの前にワイヤートラップの如く展開する。
『滑走「アンプリペアードトラクション」』
 触れれば凍てつく氷の紐がシモーヌに襲い掛かる。
「なんの!」
 シモーヌは黒槍でこれを切り裂いていく。
 更にシモーヌは黒槍に力を籠め、中に封じたスピリットバードを身体に宿していく。
『|血河雷鳴《メメント・モリ》発動。封じし魂の羽よ。我と共に戦い給え!』
 シモーヌが雷の如きオーラに包まれる。
「これで凍結は防げる。あとでカチコチになりそうだけど、今は勝てればよし!」

 まるでレーザー弾幕の様に放たれるシッケンケンの青い氷の紐。
 シモーヌはその紐をジグザグに滑って躱しながら、黒槍に引っかけるようにして紐を絡ませていく。
 黒槍に十分絡ませた後、それをまるで投網の様に引き寄せる。
 彼女は力寄りの怪力持ちなのだ。
「アタシは実戦向きなんだ。こうして……」
 ズズズと、紐を放つシッケンケンがシモーヌに引き寄せられ、ズンッと雪の地面にめり込むくらい足を踏ん張らせ、シモーヌはシッケンケンを紐越しに、怪力に任せて一気に振り回す!
「こうして……!」
 雪原の中、大車輪の如く横に回転していくシッケンケン。
 ――違和感があるのはシッケンケンは狼狽える事無くすまし顔な事と、何かキラキラしたものがシッケンケンの後ろで光っている事だ。
「吹きとべっ!」
 シモーヌは横後ろ、明後日の方向へとシッケンケンを投げ飛ばした!
 ……かに見えたが!
 シモーヌが手を離した瞬間、空中を滑るように大きく回転しスライド移動するシッケンケンの姿を見た。
 なんとシッケンケンは紐で氷のレールを作り出し、空中で回転滑走。孤を描くように前方へと吹き飛んで着地。シモーヌから距離を離したのだった!
「ここはカクリヨファンタズム。怪力自慢の鬼とも滑り合ったわ。そんな作戦、対策してないとでも思った?」
 ふっとシッケンケンが微笑んで引き離す。

「……ははっ!やるじゃないか!でもまだ負けたわけじゃない!」
 シモーヌは熱のこもった笑みを見せると、諦める事無く追走する。
 発動中であれば無敵であるはずの身体の手が、しもやけになっているかのような感覚を得る。

 更に斜面を滑り降りた後、再びシモーヌがシッケンケンに近づいた。
「風が気持ちいい……」
 雪山の麓から突風の如く吹きあげて来る雪風に髪をたなびかせながらも、黒槍をスキーストックに使うシモーヌが接近している事に気づく。
「そう。熱いのね貴女って。何度でも凍らせてあげるわ」
「まだカチコチになってないよ。」
 スキーのシモーヌとスノボのシッケンケンが隣に並走するまでに至る。
「その羽のオーラ、骸魂みたいに憑依してる類でしょ。羽の数が時間と共に減っている。いつまでもつかしら。」
「その前に決着が着くだろうよ!」
 シモーヌはクルースニク(人狼)だが、武器と装備はサンダーバードと呼ばれる雷使いのそれだ。
 黒槍に月光の如き雷を迸らせ、雪の地面ごと吹き飛ばすようなストックでの突きを地面に放ち、巨大な雷雪衝撃波で攻撃する。
 それをシッケンケンは遠方の木々に紐を括り付け自身を牽引。
 ワイヤーアクションの様な高速移動で躱していく。
「その足を縛り上げてあげる」
 シッケンケンは「アンプリペアードトラクション」を再発動。
 うねる様に包囲し、鋭いつららの如く飛んでくる氷の紐。
 それと同時に雪の下に仕込んでいたのか地面からも網の様に這い上がって来る無数の氷の紐。
 狙いはシモーヌの足元である。
 絡まれば足を縛られバランスを崩したまま雪に引きずられ、羽ももげて凍り付く事だろう。

 シモーヌの冷水のように透んだ碧眼が煌めく。
 サイバーアイが様々な方向から飛んでくる氷紐を逐一察知。
 再び黒槍を振り回し、地面からの紐は斬り、飛んでくる紐を黒槍に1本1本くっつけ、絡ませ、一纏めにして行く。
 両の足を揃えながら集中してこなす、器用な技である。
「そう。スリリングね。何度でもいなしてあげるわ」
 シッケンケンは再び自身の周囲にも氷の紐レールを展開しようとする。
 壁や雪塊、岩や木にぶつけようとも、滑らかに移動する走法をシッケンケンは習得している。
「これならどうだ!」
 だが今回シモーヌが取った行動はそのまま加速する事であった。
 そう、目の前にはいつの間にかジャンプする為の崖がある……!

「っ!」
 シモーヌとシッケンケンは回転ジャンプをして雪崖を飛んだ。
 空中で回転し、槍だけでなく全身に紐を絡ませ、引き寄せ、振り回していくシモーヌ。
「この……!」
 シッケンケンは横でなく縦の世界の空中でバランスを必死に取ろうと回転するが、突如下に向けて叩き落すような回転をかけられると、周囲に展開していた糸に自分が絡まり、攻撃どころではなくなってしまう。
「ふっ!っあ」
 そのまま崖に叩きつけられる。それはスノーボードを向けて防ぐ。
 が、防いだ先で体勢を変えられず。
 指先の紐を自切してバランスを取ろうとしても遅く。
「っああっ!」
 大の字で崖直下の雪の地面へと身体を叩きつけられる形になった。

「へへっ。このまま一気に勝ち逃げしてやる!……っと」
 気が緩んだのかユーベルコードの効果が薄まっていく。
 既に黒槍とスキーストックを持つ手の指先からパキパキと白く冷たい氷で覆われていっている。
 身体のあちこちも、鋭くどこか痛い氷が付いていき、侵食するように身体を凍らせていく。
「せめて表彰台までは持ってくれよ。凍ったまま1位になるのはちょっとアレだぜ。」
 白銀の髪に氷柱が垂れ下がり、吐く息にダイヤモンドダストが煌めく。
 シモーヌは急いでゴールまで滑っていくのだった。

「……これくらいで……まだ諦めないわ。」
 シッケンケンもまた転倒した体勢を整えて、雪の中から這い上がり、再び滑り出したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

何とか元に戻っ…たのですが気づけば目的の彼女の目の前なのです!
こうなったら【ウィザード・ミサイル】で攻撃しまくりますが…まあかすりすらしませんね!!!

それよりも彼女の攻撃が激しすぎてなかなか近づけないどころか所々凍りつきだして大変なのです!
【ウィザード・ミサイル】で暖めようとしても全っ然間に合っていません…
挙句の果てには氷の紐トラップに見事ハマって…一気に凍っちゃ―――
(そのまま氷の紐によって手繰り寄せられお持ち帰りされる兎の氷像…)




「…………………………」
 石化状態のまま凍り付いて微動だにできなくなったテフラは雪の斜面を滑り続けている。
 奇跡の様に障害物にぶつからず滑走し続けていると。
 一旦他の猟兵達と別のコースを滑っていたシッケンケンの近くまで来ていた。
「あら。新手の地蔵かしら」
 ふと気になったシッケンケンはテフラに並び、それを見やる。
 驚きと恍惚の混ざった表情に両腕を広げバランスを取ろうとしている様な慌てた姿。
 しかし足さばきはいい感じにそろえた、凍り付いた石像となっているうさ耳スノーボーダー。
「……ふぅん」
 その童顔に可愛さを覚えたのか、興味をそそられたシッケンケンは、懐からスマホを取り出す(外の世界から流れ着いたものらしい。)
 滑走中に上手くテフラを引き寄せ、バランスを取りながら、シッケンケンは石化凍結したテフラと自撮りツーショットを撮った。
「……よし。……こんな事してる暇はないわね。」
 氷の紐でテフラのオブジェを縛り上げると、振り回し、明後日の方へと投げて滑らせる。
 邪魔者が消えたと言わんばかりにシッケンケンは加速して雪山を滑り降りていった。

「…………………………」
 テフラは地蔵が祀られた木にぶつかった。
 どさどさと積もった雪が身にかかり、雪に埋もれた状態でじっと地蔵を見続ける状態となる。
 するとどうした事だろう。テフラのオブジェに光が宿り、じわじわと石の身体が元の肉体を取り戻して幾ではないか。
 テフラが今ぶつかった地蔵は「身代わり地蔵」と呼ばれる、身に降りかかった災厄を吸収してくれる地蔵である。
 石だから地蔵にはノーカンなのでサービスと言わんばかりに石化が解けたテフラは、直立状態でガタガタ、ピキパキと揺れ、隙間の空いた自身の身の氷を内側から砕いていく。
「……ふ、ふぅ……ぶるぶる……な、何か元に戻りましたたた……!?」
 埋もれていた自身の雪からジャンプしてボードを引き上げ、まだ少しくっついている氷の冷たさに震えるテフラは、先程自撮りしていた時にも意識が残っていた。
「さっき写真を撮っていた人が確かシッケンケンさんでしょうか。追えばまだ間に合うかもしれません……!」

 テフラは地蔵に一礼してから、滑走を再開した。
 だが普通に滑っても恐らく間に合わないだろう。
「暖めながら加速していけばなんとか……!」
 テフラの手に熱の魔力が込められていく。


ズズン、ズズン、遠くから地鳴りが響く。
「入道でも追いついてきたかしら」
 地響きの主はすぐ飛び込んできた。
 後ろに向けて火の矢の爆発魔法を連射して、アフターバーナーの様に加速を繰り返して急接近してきたテフラである。
「追いつきましたよ!」
 帽子からはみ出る兎耳が揺れる。
 この炎の矢はテフラを暖め凍えないようにするための知恵でもある様だ。
「あら、さっきの。生身になったんだ。……ふぅん。」
 シッケンケンは元に戻った褐色兎に何か思う所がある様な顔をした。
 趣好にでも触れたのだろうか。
「ところで、そんなに炎を出して後ろは大丈夫かしら?」
 シッケンケンが近づいてきたテフラに申す。
「他の猟兵さんですか?妖怪さんですか?シッケンケンさんさえ抜ければ後はトップなんですから――う、ひゃわああぁ!?」
 テフラは腰を抜かしかけた。
 地響きは魔法の爆発を起こさなくても聞こえて来る。
 中途半端に雪山を暖め為、雪の層が崩れ出した。
 巨大な雪崩となってテフラとシッケンケンの後ろから津波の如き雪が迫り来る!
 巻き込まれたら大変な事になるどころか最悪リタイアだろう。

 シッケンケンはおもむろにテフラに投げキッスを仕掛けた。
「えっ!?」
 そこで一瞬凍り付くも、攻撃の手は止められない。
「これはチャンスなのですから、ここで魔法を当てて転倒させられれば、雪崩に巻き込んで倒せてしまいそうですし……!」
 テフラは雪に埋もれそうなスノーボードを何度も兎の様にぴょんぴょん跳ね飛びながら、後ろに撃っていた魔法の爆炎矢を前に向け、放っていく。
 700本を超える炎の矢の連射。それをシッケンケンは時には躱して雪飛沫を上げ、時には氷の紐を指から出し、ワイヤーの網ではじき逸らしていなしていく。
「ぜ、全然当たらないです!?」
「危ないわねその技。『自分に当ててくれない?』」
「え」
 その言葉はシッケンケンのユーベルコードだった。
 心が揺さぶられたテフラは、誤って自分自身に手を当てて魔法を暴発させ。
「ふきゃーっ!?」
 爆発。
 上下のいけない部分を隠す下着とスノボ靴と靴下、手袋と帽子、それ以外の衣服が爆炎で焼け消えてしまった。
「けほっ……焼けるにしてもあからさま過ぎません!?」
 胸を中心に炎を放てばこうもなるのかもしれない。
 そう突っ込んでいる隙に、シッケンケンの指先から放たれた氷の紐がテフラの全身を縛った。
「う、ひゃあ!あ゛っ!!」
 涙目で手を後ろにした亀甲縛りで縛られたテフラは、そのままシッケンケンに引きずり回される。
「そんなに熱い妨害をしてくるなんて。お仕置きが必要ね。」
「い、いひゃあああっ!冷た!痛……!体が、こここおっててててて!」
 氷の紐から迸る強烈な冷気で凍り付く体。
 雪崩の中に沈められながら引きずり回されて、まるでてんぷらに衣をつけるように雪にまぶされ続けられる身体。
「ほら、そのまま凍りなさい。」
「……!…………………………」
 あっという間に全身が完全に凍り付いた手ごたえを感じたシッケンケンは、紐を引っ張ってテフラを引き寄せながら、次の雪の崖を跳躍した。

 回転トリックを決めながら、宙に舞うシッケンケンとテフラの氷像。
 テフラの氷像はシッケンケンに、お姫様だっこの様に抱えられて着地する。
「ふふ、気に入ったわ。あなたの容姿。|決闘ごっこ《カクリヨバトリズム》の勝者のトロフィーに相応しいわ。」
 スノーボードに足を着けながらも直立不動の亀甲縛りで樹氷像の様に凍り付いたテフラは、まるで氷のトロフィーの様になってシッケンケンに抱きかかえられ、もう一度自撮りツーショットを撮られたのだった。
「うおっと、追いついてきたぞ!」
 木々を抜けて横から、女天狗のスノーボーダーがやってきた。
「ちょうどいいわ。『この子を大事に保管して、勝負の後に1位の子に持ってきて』」
「えっ、そんな大役!?でも私も参加して……ああ何かどうでもよくなってきた!引き受ける!」
 手持ち沙汰では勝負に集中できず、不利だ。
 ユーベルコードで言う事をきかせた天狗の娘に、凍ったテフラの氷トロフィーが渡されると、シッケンケンは滑走に集中する。

 1位。自分に勝利は揺るがない。必ずこの兎を手に入れて持ち帰ると思いながらも。
 追い抜いていった猟兵達を必ず追い越すつもりで、シッケンケンは追い上げを始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミスティ・ストレルカ(サポート)
基本方針は専守防衛・他者フォローです
サポート故、連携重視のお任せ

知らない人にはどうにも気後れしてしまうけど
それでも他の人が怪我するのも嫌なので押すところは押すのですよ
主にサモン・シープ等攻撃系のUCで他者行動の隙を消す様に立ち回るのです
中遠距離をとり全体を掴む感じですね

防御系の技能で時間稼ぎも行けますので
生まれながらの光での前線維持、魔力性防御障壁の囮役も…ちょっと怖いけど
でもでも、みんなの居場所を守るのですよー

そうそう、えっちなのはいけないと思います。
興味がない…訳ではないですがひつじさんが怖い雰囲気纏って凄い勢いで止めにツッコんでくるのです
年齢制限がどうとか、らしいです




「寒いのです……眠ってしまわないようにしないとなのです」
 ふわふわした雰囲気の整った白短髪の少女、ミスティ・ストレルカ(白羽に願う・f10486)。
 スノーボードでたどたどしく滑りながらもなんとか彼女はシッケンケンに追いついた。
 それもこれも先までの交戦で猟兵達が妖怪達を退けてくれたからでもある。
「スノボで勝負……お相手さんはちょっと怖いけど、みんなの居場所を守るのですよー」

「来たわね。あなたも熱い勝負を見せてくれるのかしら。」
 シッケンケンは挑発するように大きく動きながらミスティに寄せて来た。
「熱いのよりは、程良く暖かいのが良いです。『おいで、ひつじさん』」
 ミスティはデフォルメ調の白羊を召喚する。
「めえー」
 羊さんもどういう原理かスノーボードに乗って滑っている。

 この寒い雪山で召喚したふわもこ羊さんにうっかり触って眠りたくなってしまうミスティだが、この子は今から攻撃に使う。
「私の役目は時間稼ぎなのですよ。行ってください、ひつじさん」
 ひつじは突如スノーボードを外してシッケンケンに飛び掛かる。
「何?」
 うっかり触ってしまったシッケンケンに対し、羊は勢いよく全身から電気を放った!
「う゛あ゛っ」
 痺れるシッケンケン。だがすぐに手指から氷の紐と冷気を放ち。
「メッ!?」
 煙の様な冷気に包まれた後、全身を紐で縛られた氷漬け羊さんがシッケンケンに抱えられていた。まるで冷凍食品である。
「ああっ、ひつじさん」
「返すわ」
 氷の羊さんがどふっとミスティにパスされる。
 よく見るとシッケンケンの手には高密度の氷で出来たグローブが生成されていた。
 高密度に固める事により絶縁体となった氷によって電気を軽減したのだ。

「まだです。やれることはいっぱいあります。」
 ぽんっと煙の様に羊が消え、氷が崩れる。
 羊さんはユーベルコードなので出し入れが簡単なのだ。
 再びミスティは羊を召喚し、スノーボードに乗せて放つ。
 今度は羊とミスティ、左右から挟み撃ちの形になった。
「くだらないわ。」
 シッケンケンはその場でくるりとジャンプトリックの跳躍を起こす。
 すると氷のスノーボードから斬撃のような形の冷気の衝撃波が放たれた。
「うわっ、ひつじさん」
 ミスティはかろうじて避けるが、羊は足元に冷気衝撃波の弾幕を喰らう。
「メ、メエー!」
 羊のスノーボードがツルツル滑る氷となって、コントロールが効かず、明後日の方へと滑って行った。
「再召喚です」
 再び放ち、投擲。今度はシッケンケンの前へ。
 リードさせて羊だけでも勝たせる算段か。
 シッケンケンは再びジャンプトリックを雪地で決めると、冷気衝撃波に飲まれた羊。
「メエエ!――」
 一瞬で氷のジャンプ台に閉じ込められて静止してしまい、その上に乗られ、高くジャンプ。
 シッケンケンの恰好良きトリックの踏み台にされてしまった。

「ああっ、羊さん」
「いい加減飽きたわ。『その羊出さないでちゃんと滑ってくれる』?」
 シッケンケンのユーベルコードに心を揺さぶられる。
 だが、滑りに熱中するより相手の妨害を試み続けていたミスティはかろうじてそれに抵抗した。
「だめです。ひつじさんは私の大切なひつじさんです。」
「……だったら酷使しないでよ。」
「いい加減見切りました。次はひつじさん大活躍です。」

 再びミスティが羊を召喚する。
 今度は並走、否、先と同様、羊を先行させている。
 シッケンケンは何かアクションをしようとしたが、その前にかがみ、ジャンプトリックの準備をした。
 目の前には大きな雪の崖が。
「ふっ!」
 シッケンケンが跳ぶ。
「今ですひつじさん」
 羊は加速をつけて飛び、遅れてミスティがジャンプする。
 空中でスノーボードの安定を図りながら、シッケンケンの様子を見るミスティ。
 シッケンケンは氷の紐を展開し、羊に巻き付け、冷気を送る。
 超高密度氷の手袋で電撃には耐性を付けている。
 そして一瞬の内に紐で縛られ、氷漬けとなった羊。
「まだまだいくわよ」
 その羊に更に空中でボードを乗せ、ジャンプ台代わりとして追加で跳ぼうとする。
「いまです、ひつじさん」
 そうミスティが呟いたと同時。
 羊は氷の中で勢いよく電撃を放ち、体を覆う氷を破壊したのだった。
「っ!?」
 態勢を崩しながらもなんとか着地するシッケンケンだが、トリックは失敗し失速。
「おさきです。」
 その横をミスティが抜けていった。
「やるわね……!」
「いえ、もう終わりです。障壁展開です。」
 先行したミスティは魔力性防御障壁の透明なそびえたつ壁を幾度も幾度も設置。
「嫌な事を……」
「妨害役を買って出ましたから。」
 さむさむと白い息を吐きながら、どんどん結界の様な障壁をゲレンデに点在させ、シッケンケンの装甲を妨害する。
 シッケンケンは1つ1つを、紐で縛り、凍らせ、縛る様に粉砕しながら進む。
 その眼は諦める事を知らなかったが、徐々に障壁破壊攻撃によるロスが積もっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒風・白雨
スポーツに満ちた世界への改変か
料理に満ちた世界ならば手伝ってやっても良いが、
グリモア猟兵が言っていたとおり、そのような世界は腹いっぱいなのでな
ここで潰させて貰うとしよう

とは言ってみたが、今から正攻法で追いつくのは少々難儀か
先程ちらりと雪崩があったようじゃが、あれに乗って征くとしよう

UCを籠めた脚で大地を破壊し、大雪崩を起こす
全てを飲み込みませながら一気に雪板で滑り降りよう

加えて雷雪を伴った竜巻を引き起こそう
自分には追い風、相手には向かい風
さらには落雷による直進妨害

おぬしの得意な雪深く難しいコースじゃ
その力と技を魅せて貰おうぞ

――わしがおぬしに勝つ必要はない
おぬしがペアならば、こちらはチームじゃ




 シッケンケンは数々の妨害の遅れを取り戻そうと雪山を滑り続ける。
 その時、後ろからゴゴゴゴ……という地響きが聞こえて来た。
「入道でも追いついて来たかしら」

 それは予想より、先に兎のキマイラが起こしたものより、はるかに巨大な大雪崩であった。
 それが猛スピードで妖怪やシッケンケンを飲み込まんと襲い掛かって来る。
「ありがたいわ。これに乗って追い上げましょう。」
 シッケンケンはむしろ好機と言わんばかりにタイミングよくジャンプすると、雪崩の中に巻き込まれる。
 否、神業的なテクニックで、雪で出来た津波をサーフィンの様に乗りこなして雪崩の上で滑っている!

「おお、追いついたようだな!そしておぬしが骸魂、その依り代のシッケンケンか。」
 同様にこの恐るべき大雪崩を、筆で和風の花柄がペイントされた雪板(足の固定具が無い木製のスノーボード)で乗りこなす猟兵がいた。
 太腿まで伸びる白髪を風にたなびかせる、赤い東洋竜の角を持つ麗人にして暴風雨の竜神。彼女の名は黒風・白雨(竜神・f31313)。
「なに、先に|ぐりもあ《・・・・》の映像で雪崩が起きる所を見たのでな。真似して起こしてみたという所よ。わしの力で大地を踏みつければ、このような現象は造作もない。」
「豪快な事をするのね。」
 まあそれを利用させてもらっているけど。と、雪崩の当事者に驚く事も無いシッケンケン。
 白雨の和服とシッケンケンの冬着が雪で白く染まっていく。

「それにしても、スポーツに満ちた世界への改変か?」
 雪崩の中一進一退の滑りを見せる中、白雨が言う。
「グリモア猟兵が言っていたとおり、そのような世界は腹いっぱいなのでな。もっとも――料理に満ちた世界ならば手伝ってやっても良いがな?温泉には行った事あるかの。温泉卵、蒸し焼いた『しうまい』に、饅頭、程良く茹でた伊勢海老の目立つ小舟盛り会席料理……くふふ」
 思わず想像して涎を垂らす白雨。
「まあそのようなカタストロフではないのが悔やまれる。故に、ここで潰させて貰うとしよう。ゆくぞ」

 白雨が前寄りにボードを勢いよく踏み込む。
 するとズドン!と轟音が雪の下の地面へと伝わり、更に勢いの強い大雪崩となっていく。
「加えて、こうじゃ。」
 辺り一面は急に曇り出し、たちまち、吹雪と雷と暴風と竜巻が渦巻く過酷な世界と化していく。
 己の司る暴風雨を、この雪山の自然を利用して暴風雷雪(サンダーブリザードストーム)へと転じた自身の力。
 それは周囲の地場の力を自身の力に塗り替える能力も持つ、白雨のユーベルコード、|天威《テンイ》である。
「おぬしの得意な雪深く難しいコースじゃ。是非、その力と技を魅せて貰おうぞ」

「そうね。」
 雪山に地を裂いて降り注ぐ雷の中、ふうっと白く冷たい息を吐いて。
「良いわ。ご期待通り魅せてあげる。」
 そう言ったシッケンケンは、氷の紐を固め、避雷針の様にしたものを地面に投げ突き刺す。
 雷が氷紐の避雷針へと誘導され、落ちていく。
 その落ちて来る雷の隙間を縫うように滑走。
 迫り来る竜巻。
 暴風に身体が煽られ、スピードが減じていく。
 ふと横を見ると白雨が恐ろしい速さでシッケンケンを抜いていく。竜巻を操作しての追い風の様だ。
 シッケンケンは手を手刀の如く切り裂くように動かすと、竜巻を切り裂く様な突発・局所的な吹雪を巻き起こす。
 裂かれた風の隙間を鋭く滑りながら、横から吹いてくる竜巻の所まで急襲する。
 と、氷の紐を上空に向けて展開。
 螺旋の如く巻いて固定した氷紐のレールに、吹雪の追い風を後ろに吹かせながら風に乗り、宙を舞う様に飛ぶ。
「ほう!」
 白雨が感嘆としていく中、あろうことか竜巻を飛び越えたシッケンケンは、白雨が吹かせる追い風の方へと急降下しながら空を滑り降りて来る。
 それを阻まんと雷と他の竜巻が襲う。
「ふっ!」
 シッケンケンの氷妖術によって作られた避雷針付きの雹により雷は爆散。
 竜巻は螺旋網状に展開した氷紐に、妖術によって氷を張った風のようにうねる氷の壁で阻止。
 更にうねる氷壁に乗って滑りながら、勢いよく白雨のもとへと滑走、着地する。
「こんなもの?」
「……ふふ!言うではないか!ならばもっともっと難しくしてやろうかの……おおっ!?」
 突如がくんと白雨は何かに引っ張られるような感覚を覚える。
 身体、特に腕にシッケンケンの氷の紐が巻き付いていた。
「『滑走「アンプリペアードトラクション」』。あなたも難解コースに付き合ってもらうわ。」 
「なるほど、良いだろう!このような勝負を持ちかけたのを悔やませるくらいにはな!」
 竜の如く目を見開いた白雨はテンションが上がり、周囲の天災がより激しさを増す。

 吹雪を味方につけ、雷はいなしながら躱し、竜巻は利用できるものは利用しながら、高速で前後から向かってくる木々や岩などの障害物を飛ぶなどして躱し、雪深い雪崩の中を掘り返すように強くも美しい滑走で難なくいなしていく。
 熱いコースになっているからか、その顔には先程以上に嬉し気な微笑みを見せる。
「雷神風神、天狗なんかがよくやる手だわ。」
「ふふ。良き汗をかいているようじゃな。」
「こんなものでは私は止められないわ。」
「なに――わしがお主を止める必要も勝つ必要もない。おぬしがペアならば、こちらはチームじゃ。猟兵全員の力で出し抜くだけというものよ。」
「ペアって。……ああ。影朧との、ね。」
 無駄に捕捉しておくとアンプリペアードトラクションはアンプリペアード・トラクションで区切られ、「予期せぬ牽引」的な意味合いを持つ。

 そう、雪崩という悪路の中から飛び掛かる、シッケンケンが操作した追加の氷紐が、今まさに死角から白雨の全身を縛ったようにだ。
「ぬうっ!」
「ところで、あなたは大丈夫なのかしら?私の紐を対策してなくて。」
 雪の中、シッケンケンに引きずられる様にして滑る白雨。
「このままでいるなら岩や氷塊、障害物にぶつけたり、雪の中に引きずってまぶしたりして、最後には雪だるまの様な雪の塊となって冷気で凍って、リタイア。雪玉の様な氷塊になって雪山に佇んで、誰かに見つけられるまで朝日と月光と降りしきる雪を浴び続ける様になるわ。……どうかしら。」

「小癪な真似を、すると――いうの――だな!!」
 息を一つ大きく、勢いよく吐く。それと同時に気合を込めた白雨の暴力が氷紐に迸る!
「っ!」
 白雨の余りにも暴力的な【暴力】スキルによって身体の紐は無理矢理引きちぎられ、同時にシッケンケンにも暴力の衝撃が伝わり、跳ね上がる。
 上手く空中で体勢を整え、フリップトリックに変えて芸術的に着地するが、その隙を横から出し抜かれる。
 シッケンケンは手を伸ばし、もう一度白雨の腕を縛った。
「ほう、今のを受けてわしを恐れぬか。良いだろう!」
 白雨は強引な【暴力】スキルで勢いよくシッケンケンを引っ張り、跳ね上げる。
 今度は反対側の木にぶつける様に勢い良く引っ張ったのだ。
「待ってたわ!」
 氷のレールをスノーボードの底面に展開し、ぶつかる木に沿わせることで壁走りの如く横向きになって木を滑る。
「待っておったぞ。そら!」
 白雨は自身の領域から雷を降らす。シッケンケンの滑っている木に!
 木は避雷針より先に落ちる高き障害物だ!
「きゃっ!」
 痺れを耐えるも、あまりの衝撃に爆散する木に吹き飛ばされ、悲鳴をあげて雪崩の中を転がる。
 雪だるまの様な雪塊になりながらも雪崩の中から浮き上がり、ジャンプを繰り返し雪を振り払って復帰する。雪の操作は雪女の一種であるシッケンケン故の特権だ。
 が、そうしている隙に白雨が氷紐を振りほどいてシッケンケンを出し抜いたのだった。

「おお、抜いてしもうたぞ!さっきの威勢はどうした?このままごぉるさせてもらおうかの!」
「……1位となる勝者は一人よ。チームって言ってたけど、ここからは皆で仲間割れする未来が見えるわ。最後に出し抜いて私が笑ってあげるから、覚悟なさい。」
 不敵に笑う白雨を追うようにしてシッケンケンは滑走を再開した。
 周囲の悪路領域は彼女に引きずられる様にして、いつの間にか引いていった。


 滑走はいよいよ大詰めとなった。
 ギロチン刃の様なボードを駆る仇死原・アンナが先頭でリード。
 その後ろを槍の様なボードを駆るイネス・オルティスと、
スキーで参戦したシモーヌ・イルネージュが並走。
 遅れて羊さんデザインの可愛らしいペイントを施されたスノーボードを駆るミスティ・ストレルカが、後ろに魔法の壁を作りながらやってきた。
「あぅ、他の猟兵さん達です?……後ろにまだ妖怪さんがいますので、お役目は完ぺきです。」
 更に遅れて花柄の雪板で滑る黒風・白雨が、その魔法の壁ごと障害物を飲み込みながら雪崩に乗ってやってきた。
「おお追いついた様じゃな。折角じゃ。このまま1位になって見るのもやぶさかではあるまい?」
 後は猟兵達のデッドヒートとなりそうだった。
 ……否、更に後ろからは透明で冷たい氷に覆われトロフィー扱いとなったテフラを抱えて滑る女天狗のスノーボーダーもいるのだが。

「このような雪の場所でも熱く切り開く。私は、処刑人だ!」
 爆走するアンナ。
「どうでもいいけれど、やっぱり1位が気持ちいいから、手加減はしないわよ」
 ここにきてビキニアーマー衣装による空気抵抗の無さから更なる加速で追い上げて来たイネスが僅差でアンナを抜いていく。

 やがてゴールが見える。
 ゴール前にかかる大きな雪塊によるカーブを強いられる。
「直進した方が速いわ。行くわよ!」
 イネスは雪塊にあえて突っ込み、破壊しながら突き進もうとする。
 アンナは普通に鋭い刃の様なカーブを描こうとするが、そこをアウトから抜いてきた者がいる。
「後は他の猟兵だけか。スキーは慣れたものなんだ!」
 エッジをきかせ更に鋭いカーブでシモーヌが、ギリギリまで傾いた姿勢でアンナを出し抜いた。
「そうね。でも万年滑る私の方が、凄いわ。」
「えっ?!」
 更に更にアウトから、何とシッケンケンが追い上げて来た。
 彼女は障害物を破壊するのを諦め、木々や障壁に紐を巻き付けたまま掴まり、遠心力を持って孤を描くように加速。を連続で続けるスイングバイ走法を試みたのだ。
「ついで。あんた達もここで凍ってなさい」
 シモーヌとアンナに氷の紐が巻き付かれようとする。
 彼女らもスイングバイの支点に使う気だ!
「仕方ない、もう一度だ。持ってくれよ『血河雷鳴』!」
 シモーヌは再びユーベルコードを起動し、スピリットバードと融合。
 後で凍るのを覚悟しながら、飛んでくる氷の紐をアンナの分まで片手で掴み上げていく。
「きたわね」
 シッケンケンはそれを確認してさらに振り子運動で加速。
 猟兵の力でゴールに向かうつもりだ!
「(変な方向へ飛ぶくらい力いっぱいぶん投げてやる)」
「(タイミングと伝わる手先の感覚に集中。手を離したと同時に空中にレールを敷いてゴールに飛んでやるわ)」
 アンナがその間を駆け抜ける1秒の間、両者の時間がゆっくり流れていく。
「「今!」」
 シモーヌが力いっぱい氷の紐を引っ張って投げようとする!
 その勢いに氷紐のレール加速を利用して空高く飛ぼうとするシッケンケ――
「うあっ!?」
 その時である、レール先、投げ飛んだ直後の空中でシッケンケンが何かに激突し墜落する!
「空中、お邪魔なのですよ。」
 ミスティが防御障壁を傾けて展開、空中でジャンプ台にして足場にしたもの、に、ぶつかってしまったのだ!
「何が起き――」
 墜落するシッケンケン。その上をジャンプして華麗にグラブトリックを決めるミスティ。
 このカーブを抜ければ後は直線コースからのゴール。
 猟兵達が曲がり切ろうとする……。
「抜けた!わ、きゃあっ!?」
 雪塊をぶち破ったイネスが猟兵達と激突する!
「ぬうっ、わしと同じ考えを持つ者が!ぶつか――」
 その後ろから雪塊を破壊して大雪崩となった雪に乗って滑っていた白雨がイネスに激突する!
「え」
「なんっ」
「うわっーー!!」
 雪崩、シッケンケン、猟兵達。全てが一塊になって激突し。
 数秒の間、ゴール手前で全員が転倒。静まり返った。

「風のように疾く、トロフィーをお届けしなければ……!」
 少女の声と共に、滑走音。風が横切った。

「う……」
 よろけて倒れたシッケンケンはようやく起き上がる。
 最後の直線、勢いをつけてジャンプし、雪に滑り乗って、今ゴールを果たした。
「ふぅ、滅茶苦茶な勝負だったわ。どうなったの?私の勝ち?」
 ゴールラインを抜けてボードを横にし止める。
 順位表の張られた掲示板を見やった。
「!」
 シッケンケンは敗北していた。
 ゴール直前のカーブで気絶している間に、猟兵達がゴールを果たしていたのだ。
「……そう。私の、私達の、負けという訳ね。……あのトロフィー、台無しになってしまったわ。」
「それで、1位は誰なの?」

「お疲れ様ですシッケンケン様!これタオル」
 試合後、暖かいブランケットを氷柱女に渡されながら、表彰台を見やるシッケンケン。
「まさか、こんな、ね。」

1位:天狗(テフラ・カルデラの氷トロフィーを抱えている)
2位:シモーヌ・イルネージュ
3位:黒風・白雨
4位:イネス・オルティス
5位:仇死原・アンナ
6位:ミスティ・ストレルカ
7位:ゲレンデシッケンケン(現着)

 そう、先のカーブの雪崩アクシデントの最中に天狗が駆け抜け、まさかの逆転勝利を果たしたのだ。
 猟兵ではなく、カクリヨファンタズムのいち妖怪が。

 その次はほぼ同時に這い出たが、スイング運動で慣性がついていたシモーヌ、雪崩で上面を取っていたため激突時に飛び出した白雨、突撃で加速がついていたイネスが距離的に近かったためにゴールを果たし、ミスティも近かったが速さでアンナがギリギリで追い抜きこのような順位となったのだった。

「猟兵達より先に妖怪に負けたんじゃ、流石に完敗だわ。」
 シッケンケンが光に包まれる。
 彼女の中から、いい勝負だったとサムズアップするようなイケメンの何かが光の霊となって魂の様に抜けていき、空に浮かんで霧散した。
 こうして骸魂は消滅。以てカクリヨファンタズムのカタストロフは今日も免れたのであった。

「お、おお、よかっ……た……」
 2位の表彰台に立っていたシモーヌが気を抜いてコードを解除し、見事に全身がカチコチに固まってしまう。
「ふむ、折角じゃからそのトロフィー、持ち帰ってはいかがかの?1位に渡す為に用意したのであろう?」
 氷紐に全身縛られた為同じく腕を中心に凍っていたが、力技で氷を振り落としていた白雨が冗談交じりに天狗に言う。
「いやいやいやいえいえいえ!?猟兵さんでしょう!?後他の方もなんだか凍ってますし!?というかまさかあっしが1位になるなんて思ってもなくてですね!?」
 あわあわと氷漬けで縛られたテフラを揺さぶる、表彰台に立つ女天狗。
「勝負は時の運。それにここまで着いてきた実力もあるわ。おめでとう」
 熱湯のヤカンを持ってきながらシッケンケンがケンケンでやってくる(忘れやすいが彼女は左足しかない)
「これからが大変よ?あなた私を負かして1位になったって事は、この山の主になったって事じゃない」
「え」
「次は負けないから。猟兵さん。そして、富雪山の主さん?」
 シッケンケンのクールな表情が、雪が解けたような微笑みを見せた。

 その後、カクリヨファンタズムは富雪山では、一時期妙な信仰が訪れた。
 妖怪達の中でも天狗達にスノーボードブームがやってきて、雪山で滑る天狗達が増え。
 山頂の神棚には縛られた兎の神の様なご神体の氷像が飾られる事になったとか。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年01月16日


挿絵イラスト