殲神封神大戦⑲〜太平道の王、群れの道士
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「漸くこの戦争の終着点に辿り着いたね」
グリモアベースの片隅で、そっと双眸を閉ざしていた北条・優希斗がそう静かに言の葉を紡ぐ。
紡ぐと同時に開かれたその双眸は、蒼穹の輝きに彩られ。
その双眸で目前の猟兵達を見つめて1つ頷き、皆と淡々と言葉を続けた。
「今回の戦争の元凶、張角が出現する戦場の1つを見つけたよ。敵は、仙界の大草原、『太平道』に布陣を敷いている」
大賢良師『張角』が率いるは、『黄巾オブリビオン』の軍勢。
彼等は、『張角』に無限の忠誠を捧げ、滅私奉公の魂を持つ者達。
『張角』の狂信者達にして、最強足る手勢。
その数、凡そ数十万人。
それが意味することは、即ち……。
「……ああ、そうだ。『張角』との戦いは合戦になる。数十万の大軍を率いる『張角』との真正面からの衝突にね」
『張角』は自ら陣頭に立ち、数々の技を使い、猟兵達を苦しめる。
なれば『張角』に直接攻撃をすれば良いが、其処は合戦。
故に……。
「当然ながら、黄巾オブリビオン軍は文字通り命がけで戦い、張角への攻撃を阻止してくるだろう。だから、今回は……」
この軍勢に対する対抗策を考えなければならない。
例えば軍勢を蹴散らす者達と、張角と直接戦う者達で連携して張角を追い詰めていく……と言った様に。
「因みにこの戦場の張角は、一騎討ち等には、まあ、間違いなく応じないだろうね。だから、今回の戦いは乱戦になるだろう。狼に率いられた羊の群れは逆のそれより遥かに強いと言われるが……」
――この張角は、狼の主であり、それに忠実な狼の群れを率いて狩りを行うのだ。
「オブリビオン・フォーミュラでもある以上、かなりの強敵なのは間違いない。だが……皆ならきっと張角とその軍勢を撃ち破り、この戦争に終止符を打ってくれると信じている。だから……どうか皆、宜しく頼む」
優希斗のその言葉と友に。
吹き荒れた蒼穹の風に飲み込まれ、猟兵達はグリモアベースを後にした。
長野聖夜
――真の平和は、流血の果てに。
いつも大変お世話になっております。
長野聖夜です。
大賢良師『張角』戦をお送りいたします。
今回のプレイングボーナスは下記です。
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プレイングボーナス……黄巾オブリビオンの大軍勢を蹴散らし、張角と戦う(先制攻撃はありません)。
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黄巾オブリビオンは数十万単位に及ぶとされております。
戦場は平原ですので、見晴らしは良いです。
尚、このシナリオの黄巾オブリビオンの軍勢は、前衛で戦う部隊、後衛から支援する部隊、張角を守る部隊等、ある程度役割分担がされている様です。
その為、味方同士の連携や集団戦闘を意識したプレイングの方がより、採用し易くなります。
また、このシナリオは基本的に一括返却の予定です、予めご了承下さい。
プレイング受付期間及びリプレイ執筆期間は下記です。
プレイング受付期間:OP公開後~1月29日(土)18:00頃迄。
リプレイ執筆期間:1月29日(土)19:00頃~1月31日(月)午前中迄。
変更ございましたら、マスターページ及びタグにてお知らせ致します。
――それでは、良き合戦を。
第1章 ボス戦
『大賢良師『張角』』
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POW : 戦術宝貝「黄巾力士」
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【巨人兵士型宝貝「黄巾力士」】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD : 黄巾三巨頭
戦闘用の、自身と同じ強さの【妖術を操る地公将軍『張宝』】と【武芸に長けた人公将軍『張梁』】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ : 黄巾之檄
【「蒼天已死 黄天當立」の檄文】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「わざわざ正面から相手をする必要があるのかしら?」
私は射手だから後衛ね。
弓矢【射貫き打ち抜く鋒矢】を持ち、[迷彩]を施し、[目立たない]ようにしつつ、敵軍勢からは5キロぐらいは距離をとる。
そして味方が敵軍勢と当たっているところで隙を見つけて集中。
ユーベルコード【千里眼撃ち】。射程は113レベルの二乗で12キロ以上。大将を[スナイパー]として狙い撃つわ。
「[誘導弾]付きの攻撃を凌げるのかしら?」
もちろん一撃では済まさないわよ?
一射で済まないのなら、倒れるまで打ち続けるまでのことよ。
蓮池・大輝
☆連携・アドリブ歓迎。WIZ
「張角、何だか思っていたのと少し違う気もしますが、何にせよ彼を倒せばやっと戦争を終えられますね。力を尽くしましょう。」
さて、平原なら風も邪魔されずによく吹くでしょうね。【高速詠唱】と風【属性攻撃】で軍勢の兵士たちを吹き飛ばしながら張角への道を作ります。
戦場の真ん中辺りまで辿り着けたらUC発動。びゅんびゅん吹かせますよ!
黄巾の兵士たちを空中へ吹き飛ばしつつ、周りの猟兵たちには【つむじ風マフラー】で強化を!
あとは張角に向かって【衝撃波】をおみまいしてやりましょう!
キリカ・リクサール
フン、世界を骸の海に沈める事が奴の言う「太平」か…
では、望み通りにしてやろう…もっとも、沈むのは奴らだけだがな
UCを発動
高速移動で戦場を駆け抜け、己の寿命を削りながら強大な念動力を放射
敵の体をハンマーのように振り回して吹き飛ばし群がる敵を蹴散らす
さらにデゼス・ポアも宙に飛ばし、刃によるなぎ払いで蹂躙していく
共闘する味方の為にも敵軍の被害を広げながら切り込もう
フッ…本番はこれからか…
丁度良い、身体も温まって来た所だしな
召喚された妖術を使う張宝は念動力で対抗
周囲の巨岩を操って投げつけたり、攻撃を念動力で握り潰す
武芸に長けた張梁は高速移動とナガクニで対応
素早い動きで切り結んだり、斬撃波で虚を突いて攻撃をする
他の猟兵とも連携して、二人の動きを引き付けよう
召喚した二体を引き付けている間にデゼス・ポアを張角の死角に回す
そのまま奴の背後から強襲
二体が消えたら最後の力を振り絞り、全念動力を乗せた一撃を叩き込む
黄天は既に昏く、文字通り黄昏を迎えた
陽が沈むように、骸の海に沈んで行け…お前の掲げた野望と共にな
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
これだけの軍勢は、さすがというか。
では、参りましょうか。
基本はUCを使用して、敵に不運を押し付けましょう。こうすることによって、味方の攻撃もより威力を発揮するというもの。
ええ、『敵にとって不幸なことに』ね。
その後は私は霹靂に騎乗しつつ、空より白雪林による援護射撃をしていきますね。
ええ、今回の私は、支援ですよ。…私本来の動きとも言えます(生粋の弓使い)
※
霹靂、飛んでるときは結界での防御も行っている。クエッと鳴く。
はじめてのお正月は潰されました。
ウィリアム・バークリー
実に広々とした戦場だね。何かに気を使う必要は無い。それなら、一つ始めよう。
一番槍、させていただけますか?
「全力魔法」氷の「属性魔法」「範囲攻撃」「貫通攻撃」「高速詠唱」。
トリニティ・エンハンス、攻撃力重視。Spell Boost. Elemental Cannon 起動。Mode:Final Strike. Idea Cannon Full Burst!!
原理砲から放った氷雪魔力の奔流を左右に振って、その威力で敵の陣形を崩します。
原理砲の魔力残量が尽きるまで、敵陣を崩しかき乱すための放射を続けます。
ふう、ぼくのお仕事はここまでですね。
皆さん、敵が立ち直る前に思いっきり殴り込んできてください。
司・千尋
連携、アドリブ可
総大将が陣頭に立つのは珍しいよな
探す手間が省けて良いけど
装備してる武器も使いつつ
範囲内の敵全てを『翠色冷光』で攻撃
回避されても弾道をある程度操作して追尾させる
早業や範囲攻撃、2回攻撃など手数で補う
敵に押され気味なら援護や防御優先
後衛の支援部隊を優先的に狙う
無理なら仲間と同じ敵を狙い
数を減らす事を優先し行動
この世界でもロボが流行ってるのか?
デカいから攻撃しやすくて助かるけど
男の浪漫ってヤツなのかね?
敵の攻撃は結界術と細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
オーラ防御を鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
割れてもすぐ次を展開
回避や防御、『翠色冷光』で迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
…戻ったばかりで全身傷だらけだが
カタストロフが迫っているなら見過ごせない
俺は先陣を切って後続の道を開いた上で
張角と直接対峙しよう
指定UC発動
今は魂の少女たちの力を借りないと動けない
…無理を強いるけど、力を貸して
黒剣から「生命力吸収」つきの「衝撃波」を連射し
黄巾オブリビオンを一気に蹴散らしながら前進
反撃は「見切り」の上で漆黒の「オーラ防御」で軽減
二将軍召喚中、張角は動けないはず
「地形の利用、ダッシュ、闇に紛れる」+高速移動で護衛部隊の群れの中に身を隠し気配を殺しながら接近
背後を取ったら「2回攻撃、串刺し」で一気に心臓を貫いてやる
鴻鈞道人の哀れな道化よ、骸の海に沈め!
夜刀神・鏡介
勝てば官軍なんて言葉もあるし、一騎打ちを受けないのは武人として云々。なんてことは言わんよ
まあ、そもそも奴は純粋な武人じゃないだろうが
集団戦よりは単体との戦いの方が得意だからな。可能なら張角か、護衛部隊との戦いに回りたい所
突貫に備えてバイク『八咫烏』を用意しておき、道が開かれたタイミングで飛び出していく
配下が止めに来たのなら斬撃波で迎撃するか、そのまま突撃して跳ね飛ばす
なお、決戦時にバイクを走り回らせる余裕がなさそうなら張角達とは降りて戦う
張角や護衛との戦いに持ち込めたなら、無理は承知で押し通しにいく
今は多少の負傷は許容して、攻撃を狙えるタイミングで確実に一閃を叩き込む……次に繋げていこう
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太平道の最奥部に広がる、無限にも等しい広大な草原に展開された軍勢の。
『さあ、我が元に集いし同胞達よ! 今こそ真なる理想郷、太平の為に決起せよ!』
陣頭に立ち、その手の錫杖を突きつけるその男の声に、黄巾オブリビオン達が一斉に鬨の声を上げている。
その鬨の声を聞き取りながら。
「総大将が陣頭に立つのは珍しいよな」
皮肉げに軽く肩を竦めて呟く司・千尋のそれを聞いて。
「フン」
微かに紅に染めた唇に薄らとした笑みを刻んだキリカ・リクサールが鼻を鳴らす。
「その真なる『太平』が世界を骸の海に沈めること……か」
其処に籠められるは、嘲弄にして、嘲笑。
腰まで届く程の紫髪を軽く梳き、ならば、と軽く溜息を漏らした。
「骸の海が太平ならば、大人しくその海の揺り籠の中で眠り続ければ良いものを」
「まあ、確かに張角、何だか思っていたのと少し違う気もしますね。何というか、もっと賢人っぽい人かと思っていましたが」
そのキリカの呟きに小さく首肯しながらそう返したのは蓮池・大輝。
水色の髪を軽く弄る様に、クルクルと指に絡めつつの其れに、まあ、と夜刀神・鏡介が軽く肩を竦めた。
「勝てば官軍って言葉もあるし、これだけの軍勢を用意しつつ、一騎討ちを受けないのは武人として云々、と言った所で、響く様なタイプでは無さそうだよね。元々、生粋な武人でも無いだろうし。只、俺はどちらかと言えば、集団戦よりも単体との戦の方が得意だけれど」
その鏡介の呟きに。
「そう言うことでしたら……Elemental」
ルーンソード『スプラッシュ』を腰部から抜剣し、空中に突きつけ。
『スプラッシュ』を鍵に、全身に集中させた精霊達に自らの魔力を補助させて。
その場で火・水・土・風……相反する四大精霊達を其々に集約させる4つの魔法陣を描き出したウィリアム・バークリーが軽く頷く。
雪色の微かに混ざった、赤・青・黄・緑の魔法陣達が其々に明滅を繰り返し、同時に『スプラッシュ』の先端に浮かび上がる魔法陣。
五芒星が中心に描かれたその魔法陣から魔導原理砲『イデア・キャノン』……1台の巨大な大砲が召喚された。
「一番槍は、僕に任せてくれませんか?」
両手でレバーを握りしめ、足下のアクセルの様なパーツに足を掛けながらの、ウィリアムの問いかけに。
「ええ、構わないわよ」
弓の弦の張り具合を確かたヴィオレッタ・エーデルシュタインが軽く頷いた。
「これだけの軍勢は、流石、と思いますが。であればこそ、私達も其々が為すべき事を為すべきでしょう」
白い雪の様に長い弓……白雪林を構えた馬県・義透の人格が1人――『静かなる者』梓奥武・孝透もそう応えを返すその間に。
「……いずれにせよ、カタストロフが迫っている」
その漆黒の鎧の所々に裂傷・打撲傷・火傷等を残したままに。
血の気の無い青白く、感情の見えない表情をした館野・敬輔の呟きに、千尋が微かに目を眇めた。
「……館野。その傷は?」
千尋が翡翠を思わせる瞳を鋭く細めて敬輔に問いかけるその間にも。
「Power Converge……」
ウィリアムが朗々と詠唱を紡ぐと同時に、そのコンソール上にカタカタカタカタカタ……と素早くキーコードを撃ち込んでいく。
呼び出した4つの色彩異なる魔法陣が其々の色に明滅し、『イデア・キャノン』の砲塔に吸い込まれる様に収束していく。
無論、その大技をむざむざと見逃してやる程、張角もお人好しではあるまい。
『太平の時をあくまでも邪魔するか……猟兵達! 者共、遠慮は要らぬ! 一気に掛かれー!』
その叫びと、ほぼ同時に。
巨人兵士型宝貝『黄巾力士』に搭乗し、凡そ3メートルを越える巨体を晒す張角。
その左翼には、現れた右手に仙杖、左手に霊鳥扇を構えた『張宝』。
右翼には、青龍偃月刀を構えた『張梁』が姿を現し、他の黄巾の兵達を率いるべく其々に身構えている。
同時に、一斉に数十万を越える黄巾オブリビオン達が戦場を震撼させる雄叫びを上げ、後方の射撃部隊が一斉に矢を射かけてきた。
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「……まあ、合戦って言うならば、先ずは矢による一斉射撃は、定石だよな」
上空から降り注ぐ大量の矢雨。
最初の手合わせの具合への確認の意味も込め、千尋が素早く無数の鳥威を空中から降り注ぐ矢雨に向かって展開させる。
焦茶色の結界を纏った無限にも等しい鳥威を輪の様に連ねて降り注ぐ矢を防ぎ。
それでも防ぎきることの出来ない矢を避けさせる様に。
「彼を倒せばやっと戦争を終えられますね。と言う訳で僕も力を尽くしましょう! 突風注意報です!」
大輝が叫び、戦場全体を包み込まんばかりの猛烈な旋風を発生させた。
――轟!
唸る風が螺旋に連なり、突発的な竜巻のマフラーを作り上げ、それが矢の残弾を剛に対する柔の如く制して弾く。
「……Release」
その間にも、朗々と紡がれるウィリアムの詠唱。
対して巨大宝貝と合体した張角は、その手の巨大な錫杖を大地に叩き付け。
『蒼!天!已!死!黄!天!當!立! 我等の手で、今こそ最善最良の安寧に至る王道を創造するのだ!』
高らかに激励の詔を諳んじるや、黄巾オブリビオン達の放った矢の速度が増して。
『行け、我が弟達よ! 太平の未来を否定し、戦いを拡げる悪鬼、猟兵達を滅せ!』
檄文と共に飛ばされた激励を受け、妖術に秀でた『張宝』がその手の仙杖をすかさず猟兵達に突きつけた。
張宝直下の妖術部隊も、仙杖を一斉に此方に突きつけ、漆黒の魔弾を解き放ち。
『うおおおおおおおっ!』
張角の鼓舞に応えた『張梁』もまた、青龍偃月刀を大上段に構え、傘下の突撃部隊と共に、一斉に猟兵達に肉薄してきた。
「……態々正面から相手にする必要があるのかしら? と思っていたけれど……この妖術の弾幕を潜り抜けるのは簡単では無さそうね」
「ええ、そうですね。ですが、その為に斬り込み隊を向かわせるための援護を行うのも、私達射撃部隊の役割でもありますよ、ヴィオレッタ殿」
ヴィオレッタの確認の呟きに頷き返しながら。
自らの全身から自身の存在を構築する四悪霊達が封じてきた呪詛を解放する義透。
空気に溶け込むかの様に消えゆく其れは、放たれた妖術弾の群をまるで乗っ取るかの様に包み込み。
「……精霊力収束率90%。Elemental Canon Mode:Final Strike. Full Burst Mode、All Green」
コンソールに浮かび上がる文字を朗々と読み上げ、着々と発射シークエンスを進めていくウィリアムへの着弾を運悪く逸らさせた。
――その間に。
「ふふ……そろそろ頃合いと言った所かな?」
ヴェークマ・ノクテルトのリミッターを解除するべく、マッキナ・シトロンのタッチパネルにしなやかな指を這わせながら。
「そう思わないか……敬輔?」
キリカが意味ありげに口元に刻んだ鱶の笑みを深めると、傷だらけの敬輔も、また静かに首肯して。
「ああ……そうだな」
と鞘に納剣していた黒剣を抜き、自らの正面に翳す様に両手遣いに構えた、刹那。
「……Elemental Cannon Fire!」
ウィリアムが叫びと共に、『イデア・キャノン』の引金を引くと同時に、アクセルの如く踏みしめていたペダルを踏み抜いた。
瞬間、『イデア・キャノン』の砲塔に収束され、爆発的な迄の高まりを見せ続けていた赤・青・緑・黄の魔法陣の明滅が一際強くなり。
相反する精霊達の力を収束させ、爆発的なまでに威力を高めた巨大な光弾が、戦場全体を焼き尽くさんと迸った。
相反する精霊同士の強引な融合により生み出された光弾が肉薄してくる張角達が前面に押し出した先遣隊の中央で炸裂。
極光の如き爆発を起こしてそれらの多くを飲み込んで、張角自らの率いていた黄巾オブリビオン達の1/3を消失させた。
――プスン、プスン……。
放たれた火力の大きさの反動に耐えられず、オーバーヒートして煙を上げる『イデア・キャノン』の仮想砲身を切り替えながら。
「一番槍としてのぼくの役割は此処までです。敬輔さん、キリカさん、後は……!」
そうウィリアムが呼びかけるのに応じる様に。
「【épique:La Chanson de Roland】。……リミッター全解除……起動しろ! 【Durandal】!」
キリカが、マッキナ・シトロンのタッチパネルに解除コードを入力し。
「……皆、すまない。今のままの俺ではまともに戦うことも出来ない。だから……辛いだろうけれども、皆の力を貸してくれ……!」
敬輔が祈る様に両手遣いに構えた黒剣の中の『少女』達に呼びかけた時。
キリカの全身に纏われたヴェートマ・ノクテルトの体の各部の青き発光が、赤いライン上の線へと変わり。
薄く白い靄の光が敬輔の全身を、包み込む様に広がった。
●
「では……始めようか」
その言の葉と、ほぼ同時に。
ヒュン、と紫の髪を風に靡かせ、赤く点滅するヴェートマ・ノクテルトに、その命を食らわれながらキリカが走る。
疾風と化したキリカが自らの生命力が削り取られるのを感じながら、意識のみで莫大な念動の波を放出。
解き放たれた念動の波が巨大なハンマーの様に振り回され、張角の鼓舞に力を増した黄巾オブリビオン達を拉げ、打ちのめし、叩き潰していく。
更に……。
――パチン。
「踊れ、デゼス・ポア。此度はお前の大好きな、血の宴の待つ戦場だぞ」
そう鱶の笑みを浮かべたままに、キリカが囁き掛ける様に呼びかけるや否や。
「キャハハハハハハハハハハハハッ!」
女とも、老婆ともつかぬ嘲笑が戦場全体に響き渡った。
キリカの指鳴らしに応じたそれは、その全身から棘の様に生えた血に塗れた無数の刃を持つ、見た目には可愛らしい金髪のお人形。
しかし底の見えない闇のような眼孔が穿かれた不気味なオペラマスクとその刃が、愛らしさを完全に裏切っている。
――かの人形こそ、デゼス・ポア。
その人形が浮遊しながら目に見えた黄巾オブリビオン達をまるで細切れにする様に無数の刃を振るい、その度に滴る血に嗤う。
ウィリアムが切り開いたその穴を更に穿ち、深く掘り下げていくかの様に叩き込まれる念動とデゼス・ポアの斬撃の宴。
堪らず後方の弓兵部隊が次々に面上に矢を射かけ、紫電の残像と化したキリカを射貫き、その命を奪わんことを欲するが。
「……生憎だけれど、そうはさせられないのよね」
素早く弓に呪の刻まれた木材の合成弓に、鋒矢を番え、解き放つヴィオレッタ。
鋭く風を切って肉薄する鋒矢が、まるで周囲の空気に溶け込むかの様にその形を消し、瞬く間に数人の敵を射貫いている。
『この程度の切り込みに押し返されるな! 進め! 進め! 弓兵隊は射撃を途切れさせるな! あの女を直接狙う必要は無い! 動きを阻害する様に矢をばらまけ!』
宝貝と合体し、戦場を高見から睥睨しながら、檄を飛ばす張角。
伝達された張角の指示に忠実な兵士達が次々に矢の雨を草原と水平に射ち出し連射して、キリカの移動そのものを封じようとした時。
「成程。戦況を見誤る程愚かな相手ではない、と言う事ですね。確かに其れは、何も無ければ一定の効果を得る事が出来たでしょう。そう……僕の風が無い限りはね!」
――轟!
言葉と共に、戦場に向けて突風を叩き付ける様に巻き起こす大輝。
大地の草原を吸い上げる様に生まれた旋風が、地上と水平に走る様に起き、圧縮された風嵐と化して矢を撃ち落とす。
矢を叩き落としつつも、怯むこと無く矢を射かけ続ける黄巾弓兵隊。
――バサリ、バサリ。
その黄巾弓兵達の上に不意に、黒い影が差した。
「残念ですが、あなた達は、『不幸の星』の元に生まれ落ちてしまった様ですね」
――クェェェェェェッ!
影から降り注ぐ様なその鳴き声の主は、金色混じりの焦げ茶の羽毛が美しい、義透のヒポグリフ霹靂。
霹靂に騎乗し、柔らかく目尻を細めた義透が、淡く青く光り輝く白雪林から、ヒュン、ヒュン、と次々に矢を撃ち出す。
空中から鋭く空を切り放たれた矢が、次々に後方の射撃部隊の頭蓋骨を射貫いて脳漿を撒き散らせさせながら滅ぼし。
「さてと……じゃあ、俺も少し暴れさせて貰うとしようかな?」
愉快さと皮肉の酸味が十分に利いた笑みを浮かべた千尋が、キリカが切り崩した戦場まで前進、人差し指を立てる。
立てられた人差し指に、ポウ……と灯るは青い光弾。
更に、自らの本体でもある結詞の糸の先端に同様の青い光弾を点火させ、戦場全体に広がる様に放射線状に展開。
「まっ……邪魔だから消えろよ、お前等」
呟きと共に結詞の先端に灯された青い光弾を散弾の様に連射する千尋。
敬輔やキリカ、『八咫烏』の鏡介を守る様に無数の鳥威を盾として展開し、焦茶色の蜘蛛の巣を思わせる結界を張り巡らしながら。
「館野。如何して怪我をしたまま来ているのか、聞く気は無いが……どうせ来たんなら、しっかりやれよ?」
「うん……分かっている」
千尋のからかい交じりのそれに敬輔……その黒剣に宿り、精神を同調させている『少女』が頷き、黒剣を大地に擦過させる。
擦過と共に撥ね上げた赤黒く光り輝く刀身から白い斬撃の波が解き放たれ、キリカとデゼス・ポアが打ち漏らした敵を斬り裂いた。
――その黄巾オブリビオン達の命を食らい、自らの糧としながら。
(「……無理を強いて、すまない、皆」)
苦しげに喘ぐ様にも見える『少女』達の気配を察しながら、同調している『彼女』達の思念に呼びかける敬輔。
その敬輔の呼吸もまた普段よりも荒く、それ故に自分の体力がどれ程消耗しているのかが良く分かる。
――大丈夫だよ、お兄ちゃん。
――この位なら、まだやれる。
「油断は禁物だよ、敬輔」
少女達の声が聞こえたのか。
それとも、荒い敬輔の息遣いを肌で感じ取ったか。
不意に静かな湖面に波紋を立たせるかの如く、白と黄金色の斬撃波が、怒濤の様に押し寄せた。
それは、鏡介の腰に帯びられた白鞘が帯びていた森羅万象を断ち切る、神刀【無仭】から溢れる様に放出される斬撃の余波。
封じられていた神気の一部を大気に浸透させ、斬撃波として解放した鏡介が、更に『八咫烏』のアクセルを踏み抜く。
鏡介の力の込められた踏み抜きに、エンジンが大きく唸りを上げ、更なる加速を進め、張角に肉薄する。
だが……。
『張宝、張梁!』
『兄上! 兄上の邪魔立ては、我等がさせぬ!』
宝貝と合体した張角の其れに応えた張宝がかん、と仙杖で大地を叩き、張梁が青龍偃月刀を大上段から振り下ろす。
やむをえぬ、と白鞘に納められた神刀【無仭】の濃口を切り、其れに応じようとする鏡介だったが。
「フッ……漸くその気になった様だな……丁度良い、身体も温まってきた所だ。お前達の相手は私がしてやろう」
目にも留まらぬ速さで鏡介と張梁の間に割って入る様に飛び込んだキリカが鱶の笑みを更に深めた。
口から滴り落ちる血とその笑みが、屍山血河の跡を思い起こさせ、その手の返り血に塗れたナガクニが怪しい銀の輝きを放つ。
邪龍の骨の粉末を混ぜ作り上げられたとされる短刀の輝きに、吸い込まれる様に青龍偃月刀が振り下ろされ。
――キィンッ!
と鏡面を叩き弾かれる様な澄んだ音が戦場に響き、ナガクニの刃と青龍偃月刀の刃の間に火花が散った。
地面に叩き付けられた張宝の杖が、その間に大地を割り、地割れの中に鏡介を飲み込まんことを欲したその時には。
「させないっ!」
白き靄に導かれた敬輔が其方へと瞬く間に移動、鋭い刺突を繰り出している。
繰り出された大気を突き抜ける刺突の衝撃が、物理的な一撃と化して、張宝の仙杖を持つ手を貫き、張宝が一瞬怯んだところに。
「大技は既に使い切ってしまったけれど……それでも、残弾が一発も残っていないわけじゃない!」
ウィリアムが大量の魔力の消耗の反動に頭痛を堪える表情になりながら、砲塔を取り替えた『イデア・キャノン』を張宝に向け。
「……凍てつけっ!」
『イデア・キャノン』の引金を引いた。
入れ替わった雪の様に白さと薄水色の綯い交ぜになった『イデア・キャノン』の仮想砲塔から氷の散弾が機銃の様に吐き出される。
『ちっ……我と共に妖を操る者達よ!』
怒濤の様に撃ち出された氷塊が放射線状に撃ち出されるのに舌打ちをした張宝が其れに応じる様に漆黒の妖弾を射出する。
張宝の背後で援護のために控えていた妖術部隊達もまた、ウィリアムの氷弾を撃ち落とすべく妖力の込められた魔弾で応戦。
相殺し、次々に掻き消えるウィリアムの氷弾と、張宝と妖術部隊の散弾だったが。
「残念ながら、あなた達と戦っているのはウィリアムさん達だけでは無いのですよ」
その言の葉と、共に。
義透の放った上空から降り注ぐ雪の様に白い矢が次々に張宝の配下達を射貫き、その動きを止め。
「あなた達の好きにはさせませんからっ!」
そこに大輝が巻き起こした旋風が螺旋を描いて襲い掛かり、張宝配下の兵士達を纏めて上空へと吹き飛ばし。
「まあ、其れを逃がしてやる程俺もお人好しじゃ無いんだよな。……行け、宵、暁」
上空で目を回す黄巾オブリビオン達に向け、千尋が嗾けたのは、2体の人形。
小太刀・月烏を握る宵が、上空に浮かび上がった敵を切り払い。
鈍器・鴗鳥を振り回す暁が黄巾オブリビオン達を叩きのめし。
「キャハハハハハハハハハッ!」
それでも生き残った黄巾オブリビオン達は、デゼス・ポアが嘲笑をあげ血錆の刃で瞬く間に千切りにし、存在を滅ぼしていく。
『くっ……張宝!』
張宝の配下が1人残らず斬り捨てられたのに気がつき、声を張り上げる張角。
その空白の一瞬を……。
――ブルン! ブルン! ブルン!
バイクの駆動音と、車輪が草原を駆け抜ける音と共に、鏡介が埋める様に肉薄、【無仭】の濃口を切り。
「――壱の型【飛燕】」
白鞘から【無仭】を抜刀、居合いの要領で下段から撥ね上げる様に張角に迫った。
森羅万象あらゆる万物と事象を断ち切る白き剣閃が昇り月の様な弧を描いて張角に迫り、其の体に斬撃を与えようと……。
『くっ……不味いか……!』
血相を変えて咄嗟にその刃の一閃を躱す張角。
その張角を守る様に直営の黄巾オブリビオン達が肉壁となって立ちはだかるが、血の一滴も滴らせること無く切り崩された。
「だが、お前の危機は終わっていないぜ?」
面白そうに、愉快そうに。
口元に皮肉な笑みを浮かべた千尋が呟きと共に右人差し指を突きつけ、すかさず青い光弾を放つ。
まるで青い灯火の様に揺らめく光弾が、吸い込まれる様に張角に迫り。
『させぬっ!』
其れに気がついた張宝が、敬輔に一瞬妖術を叩き付けた。
「くっ……まだ、それだけの力を……!」
咄嗟に漆黒の結界を前面に展開、放たれた妖弾を受け止める敬輔。
けれども爆発の衝撃を抑えきれず、耐えきれなくなったと言う様に素早く側転。
千尋の鳥威の影に隠れる様に姿を消したのを限界が来て後退したのだと判断した張宝が、身を挺して張角を庇う。
「がっ……!」
青い光弾にその身を撃ち抜かれる張宝。
と……その間に。
「彼我の距離、12キロメートル。目標、視認済。さて……あなたにこの攻撃を凌ぐことが出来るかしら?」
何処か皮肉った、そんな調子で。
1本の矢を合成弓に番えたヴィオレッタがひょう、とその矢を解き放った。
解き放たれた弓に描かれた呪の加護を受けたその鋒矢が、遂に張角の側面……死角を捕らえ、文字通り一矢報いようとしたその刹那。
『くっ……兄者をやらせるわけにはっ!』
火花を散らし、一瞬力任せに青龍偃月刀でキリカを押し返した張梁が張角を庇うべく其方に向かおうとするが。
「ふん……私の前で、それができると思ったか?」
軽く鼻を鳴らし。
寿命の消耗故か、目を血の色に染め上げたキリカが、体を前傾姿勢に傾ける様にして、大地を蹴る。
アンファントリア・ブーツの衝撃を押し殺しきれずに大地が隆起したその場所を踏み台に肉薄し、念動力を叩きつけるキリカ。
そこに駄目押しとばかりに空中から義透が雪の様に白い矢を降り注がせ、更に霹靂が口からブレスを張梁の目前に吹き付けた。
ブレスに目前の大地を焼かれ、焼け爛れた大地に一瞬移動を躊躇した張梁の背にキリカの大量の念動が叩き付けられ。
『ガハアッ!』
その背骨をへし折った矢先。
「今ですね……吹き飛んでください!」
大輝が風呼ぶステッキを突きつけると。
「めぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
大輝の相棒の羊さんが、怒濤の如く大地を踏みしめて、張角に肉薄し。
強烈な体当たりを正面から張角に叩き付け、宝貝の外装を大きく凹ませた。
『ぐっ……しまっ……!』
ゲホッ、と思わぬ衝撃に目を剥き、軽く頭を振る張角に向けて。
『兄者~!』
張梁が張角に手を差し伸べながら、無念の絶叫と共に戦場から消失した。
●
「後は張角、お前だけだな」
『八咫烏』をハンドリングで操作し、ギリギリ迄平面に寝そべらせて加速しながら。
【無仭】を一度白鞘に戻し、動から静の態勢を取り直した鏡介の呟きに、ギリリ、と張角が歯がみする。
『弟達は打ち倒され、異門同胞は一時的に閉ざされたが……だが、私の大望……太平の道が閉ざされたわけでは無いぞ、猟兵達!』
「ふん、口だけは達者だな。だが……この程度の伏兵にも気がつかないお前に、私達を倒し、身の程知らずな野望を達成することなど、出来はせぬよ」
サディスティックな愉悦に満ちた笑みを作り上げ、張角をキリカが挑発する。
「何?」
それに思わず張角が怪訝そうな表情を浮かべた、その時。
「キャハハハハハハハハハハハハッ!」
「鏡介さん、大輝さん、千尋さん……援護、感謝する!」
甲高い少女の哄笑と鋭く短い声が張角の背後で不意に響き。
――その背に、鈍い衝撃が襲い掛かった。
『がっ?!』
「キャハハハハハハハハハハハハッ! キャハハハハハハハハハハハハッ!」
デゼス・ポアの血に塗れた鈍色の刃による間断無き斬撃が、張角の背を襲い。
「鴻鈞道人の憐れな道化よ、骸の海へ沈め!」
続けざまに敬輔が解放した白い靄が鋭く研ぎ澄まされたレイピアの様に鋭い刺突の刃と化して、張角の心臓を穿つ。
『ガッ……ガガッ……?!』
ゴボリ、と大量の血反吐を撒き散らす張角に、ウィリアムが『イデア・キャノン』の砲塔の狙いを定め。
(「まだ、一発は魔力が残っている……! 皆、ぼくに力を貸してくれ……っ!」)
「Icicle Bullet! ――Shoot!」
叫びと共に、三度『イデア・キャノン』のトリガーを引いた。
砲塔に凝縮していた氷の精霊達の魔力の残滓を一発の弾丸として発射、敬輔の刃に貫かれ剥き出しになった心臓を凍てつかせ。
「此で終わりだな」
『八咫烏』を飛び降りて加速した鏡介が、納刀した【無仭】を抜刀、黄金色の神気を纏った下段からの一閃で其の体を切断。
――其は、全ての基礎にして、奥義。
その一閃に左脇腹から右肩に掛けてを深々と斬り裂かれ、血泡を吹く張角に。
「さて……そろそろ終わりにしましょうか」
「そうね。……さよなら」
其処に義透が上空から、ヴィオレッタが大地から其々に矢を射かけた。
義透の放った矢は張角の頭部を貫き、ヴィオレッタの矢は、その右胸を貫いて。
「この世界でもロボって流行っているのか? まあ、デカいから狙いやすくて助かったが、此も、男の浪漫って奴なのかね? ……人の心は、モノの俺には良く分からん。……まあ、だから面白いんだが」
千尋が口元に愉快そうな笑みを浮かべて青い光弾を両人差し指の先から放出し、張角の両足を撃ち抜いた。
『な……ぜ……お前……達……は……太平を……平和を……拒……む……』
ヒュー、ヒュー……と。
血泡を吹き、目から血涙を滴らせながらの張角の問いに、キリカが嗤い。
「黄天は既に昏く、文字通り黄昏……終わりを迎えたのだ。陽が沈む様にな。過去の亡霊と化した三皇の統治を、『未来』であり、『今』を生きる私達が望まない。故にお前は、骸の海に沈むが良い」
――パン、と。
赤い線の走るヴェートマ・ノクテルトをも朱の血に染めて。
マッキナ・シトロンに、DANGER! と警告されているのを気にした様子も無くキリカが練りに練り上げた最後の念動力を解放。
その念動力を血と紫色に輝く巨大な鎚と化させて唐竹割りに振り下ろし……張角をぐしゃりと潰し。
「……お前の掲げた、身の程知らずな野望と共にな」
餞別の様なキリカの言葉が、肉塊と化した張角が最期に聞いた、言葉となった。
大成功
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