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暗夜の墓所を攻略せよ

#ダークセイヴァー #第五の貴族

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「ふむ。『闇の救済者』とやらはますます勢いを増しているようだのう」

 星も月も太陽も、一切の光が届かぬ地の底に、怨嗟と怨念に満たされた墓所があった。
 土に染み付いた血と屍の匂いが、墓に飾られた薔薇の香りと混ざりあって異臭を放つ。そんなおぞましき地の最深部で、1人のヴァンパイアが儀式を行っていた。

「短命で力も弱い、我らからすれば塵芥のような者どもが、斯様な躍進を果たすとは……なかなか面白いではないか」

 ふふ、と笑みを浮かべるその者は、まだ童女と呼べるほどに幼い見た目をしていた。
 だが実際にはどれだけの年月を生きてきたのか、声色や所作には老獪で厭世的な雰囲気がにじみ出ている。吸血鬼にとって外見年齢など何の判断基準にもならない。

「この世にもはや我の心を踊らせるものなど無いと思っていたが、そう捨てたものでも無かったか。まだまだ彼奴らは楽しませてくれそうではないか」

 そう言って笑う女吸血鬼の元に墓所の怨念が集まっていき、その前にある祭壇が輝く。
 闇を照らす一瞬の光。それが収まった時、彼女の手の中には小さな『紋章』があった。

「うむ、良い出来である。さて、次は誰にこれをくれてやろうか」

 第五の貴族にして『紋章の祭壇』の管理者、『暗夜卿』ディアンドラ・ノアーヴェ。
 闇黒に潜みたる墓所の主は、地の底より人類を弄ぶ陰謀を巡らせるのであった――。


「新たな『紋章の祭壇』を発見しました。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「紋章の祭壇とはダークセイヴァーを支配する『第五の貴族』が、その支配力の源である『紋章』を生産するための生体実験室です」
 宿主に莫大な力を与える寄生型オブリビオンである『紋章』は、大量の人族奴隷や下級オブリビオンの生贄を素体に造られている。この施設を放置すればヴァンパイアの戦力が増強されていくだけでなく、おびただしい数の命が犠牲にされ続けることになる。

「今回発見された『紋章の祭壇』を管理している第五の貴族は『暗夜卿』ディアンドラ・ノアーヴェ。吸血鬼の中でも古い血筋で、蘇ってからも長く活動しているようです」
 彼女は見た目こそ幼いが思考は老獪で厭世的で、これまでは吸血鬼と同族殺しや猟兵達との抗争にも興味を示していなかった。だが地上で『闇の救済者』達の躍進を耳にして、重い腰を上げたという。
「彼女は祭壇を使用して『辺境伯の紋章』を創り上げ、地上の吸血鬼達に与えました」
 もちろん全ての『辺境伯の紋章』が彼女の祭壇で生産された訳ではないが、辺境で人類の拠点を捜索していた「辺境伯」達の行動には、少なからず関与していた可能性がある。人々の生存圏を守るためにも、これ以上の紋章を作られる前に祭壇を破壊しておきたい。

「ディアンドラが統治する地底都市には巨大な墓所が存在します。この地下墓所の最深部に『紋章の祭壇』があるようです」
 この墓所はディアンドラが紋章を作るために犠牲となった者達が眠る地でもある。地底都市の中でも特に暗く、内部は死者の呪いや怨念に満ちている。たとえ猟兵でも心を強く保たなければ、恐怖に取り憑かれて先に進めなくなってしまうだろう。
「最深部周辺は怨念も最も強く、この地に縛り付けられた亡霊達が成仏できずに彷徨っています。ディアンドラはそんな亡霊の魂すら『紋章』の素材に利用しているようですが」
 生前も死後も吸血鬼の企みに利用される彼らを、無念から解き放ち成仏させてやれば、敵の紋章製作を妨害する事にもなる。必ずしも物理的に倒す以外にも、今回の『祭壇』を破壊する方法はあるというわけだ。

「ですが『紋章の祭壇』に異変があればディアンドラも黙ってはいないでしょう」
 作戦が順調に進んだとしても、おそらく戦闘は避けられない。性格上表立って活動することを好まない『暗夜卿』だが、その気になれば第五の貴族として相応しい実力を持つ。
「彼女が装備しているのは特殊効果のない普通の『辺境伯の紋章』ですが、本来の実力が極めて高いため、強化により手のつけられない強さになっています」
 勝機を見出すには『紋章』を狙って攻撃を仕掛け、一時的にでも強化を解除する事だ。
 まともに戦っても勝ち目のない強敵だと踏まえた上で、全力で挑む必要があるだろう。

「最終的にディアンドラを倒し『紋章の祭壇』を破壊すれば作戦成功です。難易度の高い依頼となりますが、皆様ならきっと成し遂げられると信じています」
 祭壇の破壊により紋章の製造量が減少すれば、吸血鬼の支配はまた揺らぐことだろう。
 説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、地下墓地への道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーにて、第五の貴族が『紋章』を生産するための実験室「紋章の祭壇」を破壊するのが目的です。

 1章は地下墓所を探索し、最深部にある『紋章の祭壇』を目指します。
 墓所の内部は紋章の生贄にされた者達の怨念や呪詛が渦巻いており、侵入者の精神を蝕みます。恐怖を抑え込んで心を強く保ち、墓所を突破してください。

 2章は『その地に縛り付けられた亡霊』との集団戦です。
 彼らも『紋章の祭壇』で犠牲になった者達の成れの果てであり、死してなお成仏できない魂を紋章の素体として利用されています。
 現状は紋章に「なりかけ」といった所ですが、物理的に倒すか、説得して無念を晴らしてやれば天に召されていきます。

 3章は第五の貴族である『暗夜卿』ディアンドラ・ノアーヴェとの決戦です。
 装備している『辺境伯の紋章』に特別な効果はありませんが、正攻法では太刀打ちできないほどの圧倒的な強さを誇ります。
 紋章を攻撃すれば一時的に強化が解除されるので、そこを狙うのが最も勝算が高いでしょう。どうか全力で挑んでいただければ幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『光の届かない地下墓所』

POW   :    恐怖心を抑え込み探索する。

SPD   :    死者の眠りを妨げないように慎重に探索する。

WIZ   :    呪いや怨霊を祓いながら探索する。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朱酉・逢真
心情)ひ、ひ! 長命だろうが定命のうちよ、倦怠こそは至上の病か。いいとも、いっときの楽しみに貢献しよう。〈過去〉は斃すが、それはそれ。生きても死んでもいのちはいのちだ、なべて等しく慈しむばかりさ。
行動)呪いに怨念満ちた空間。ひひ、息がしやすいねェ。彼岸に似ていてさ。だが死後も此岸にとどまられっと困るワケでさ。装備枠から〈宿・服・軛〉未装備枠から〈亡霊ラムプ・携帯神社・黒骨〉を複製。宿ってなァ俺自身だから、つまっとこ分身だな。ラムプで怨霊を呼び寄せ・黒骨で浄化の歌流して慰撫し・神社にて眠ってもらおうか。後で彼岸に持ち帰ろう。他のおヒトらも通りやすくなンだろ。



「ひ、ひ! 長命だろうが定命のうちよ、倦怠こそは至上の病か」
 星明かりすら届かない暗黒の地下墓所に、背筋が冷えるような怪しげな笑い声が響く。
 不死の存在たる病毒の神、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は、この墓所の管理者である『暗夜卿』の厭世感を知り、諧謔のために人を弄ぶ、その戯れぶりを嗤う。
「いいとも、いっときの楽しみに貢献しよう。〈過去〉は斃すが、それはそれ。生きても死んでもいのちはいのちだ、なべて等しく慈しむばかりさ」
 生きることに倦み疲れた命にとって、彼がもたらす病と死は最大の刺激となるだろう。
 もっとも、当の相手がそれを喜んで受領するかは定かではないが――何にせよ、まずはこの場所を抜けて『紋章の祭壇』に辿り着かなければ。

「呪いに怨念満ちた空間。ひひ、息がしやすいねェ。彼岸に似ていてさ」
 常人であれば恐怖で一歩も動けなくなるような環境でも、逢真にはむしろ快適だった。
 闇に目を凝らすまでもなく、至るところを飛び交う死者の魂に怨念に呪詛。この全てが紋章の作成に使われた犠牲者なら、一体何百、何千の命がここに埋まっているのだろう。
「だが死後も此岸にとどまられっと困るワケでさ」
 逢真は我が身そのものである「宿」、腐食の権能である「服」、それらを抑える「軛」を【多元の多面】により複製し、自らの分身を創造する。瘴気より現れた彼の似姿達は、亡霊を呼び寄せるランプ、オルゴールの箱、そして邪法の祭祀具をそれぞれ持っていた。

「さてお前さんら、こっちに来な。彼岸渡しの子守唄を聞かせてやろうじゃないか」
 逢真は念力によって全ての分身を同時に操作する。そのうちの一人が「亡霊ラムプ」をかざすと、周囲にいた怨霊たちがその朧な光に誘われて集まってくる。そこで別の一人がオルゴールのレバーを回すと、物悲しい鎮魂歌が流れはじめた。
『オォォォ……』
 よく見ればそのオルゴールは絡繰ではなく、箱と同化した「黒骨」が歌を奏でている。
 世にも不思議な歌う骨による浄化の調べは、さまよえる死者たちの恨み辛みを慰撫し、呪詛を清める。死者の魂を鎮めるうえで"音"は古くから用いられてきた手法だ。

「落ち着いたかい。そら、ここに入っときな」
 死者の魂が鎮まったのをみて、逢真は分身が持つ「携帯神社」を彼らの拠り所にする。
 此岸をさまよい続けてきた迷い子たちの魂は、ここでひと時の眠りにつく事となった。
「後で彼岸に持ち帰ろう。他のおヒトらも通りやすくなンだろ」
 そうして彼は道行く先にいる怨霊を呼び寄せ、慰撫し、回収しながら先に進んでいく。
 彼が歩いたあとの道は墓所らしい静けさに包まれており、不穏な気配はひとつもない。命を彼岸へ運び去る神の御業は、毒に限らす斯様に穏やかな形を取ることもあるようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオ・ウィンディア
墓所と聞けば向かわずにはいられないわね
そこに恐怖があると知っていても
そこに死者の言葉があるのなら私はそれを聞いてみたい、と思うのよ

亡魂のレコルダールで明かりを確保

聞かせてちょうだいあなたの故郷を
どんな生き方をしてどんな思いが生まれたのか
呪詛よりも郷愁を誘う歌声で周りを浄化しながら静かに歩く

死者には最大限の敬意と親愛を
たとえ生贄にされた苦しみがあったとしても、
魂がまだこの世に残っているとしても
肉体からの解放に達した人々はもっと自由であっていいと思うから

私はリオ・ウィンデイア
死者とともに歩む喪服の娘
そして、今を生きるために全力を尽くすもの

この世を恨んでいるというのなら私がこの奥でそれを退治するわ



「墓所と聞けば向かわずにはいられないわね」
 これまでも遍く世界の墓地を訪れてきた死霊術師のリオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)は、『第五の貴族』が管理する危険な地下墓所にも迷わず足を運ぶ。
「そこに恐怖があると知っていても、そこに死者の言葉があるのなら私はそれを聞いてみたい、と思うのよ」
 どんなに深い闇と脅威がその先に待ち受けていたとしても、退こうとは考えなかった。
 浄化の作用がある「亡魂のレコルダール」の光で照明を確保し、地下墓所に入る少女。その周囲には生者の気配に惹かれてか、すぐに数多くの怨霊たちが集まってきた。

「聞かせてちょうだいあなたの故郷を」
 呪いと恨みに満ちた死者たちの怨嗟に耳を傾けながら、リオはゆっくりと静かに歩く。
 彼らがどんな生き方をしてどんな思いが生まれたのか、それを知ることが彼女の望み。会話の余地を作るために、手回しオルガンを手に【シンフォニック・キュア】を奏でる。
『アァァ……ウゥ……?』
 魔楽器・マルシュアスが奏でる音色に合わせ紡がれる歌声は、呪詛よりも郷愁を誘い、周りの怨念を浄化していく。闇に響く旋律にはたと我に返った亡霊たちは、不思議そうな様子でリオを見た。

『コノ歌……ナンダカ懐カシイ……』
『オ母サンノ子守唄ニ似テル……』
 ぽつりぽつりと死者が語りだす生前の記憶。ヴァンパイアの圧政に苦しめられながらも畑を耕し、家事に精を出す慎ましやかな故郷の村での暮らしは、唐突に終わりを迎えた。
 恐らく『暗夜卿』にとっては誰でも良かった。紋章の製造に必要な命の数さえあれば。差し向けられた怪物によって彼らの日常は壊され、捕われ、そして此の地で贄となった。
『憎イ……私達カラ何モカモヲ奪ッタ奴ガ……』
 亡霊に残されたのは尽きることのない怨念と憎悪。理不尽な死は彼らに安息を許さず、此の地に縛り付けている。そうして蓄積される地縛霊達の呪詛さえも、敵は紋章の製作に利用しているのだ。

「そう……辛かったのね」
 死者たちが訴える生前の悲劇に、リオは最大限の敬意と親愛をもって耳を傾けていた。
 喪服衣装に身を包んだ彼女の表情は哀しみに満ちている。死してなお安息を得られず、己の怨嗟により自縄自縛に陥っている魂の有り様は、ひどく痛々しくて、悼ましい。
(たとえ生贄にされた苦しみがあったとしても、魂がまだこの世に残っているとしても、肉体からの解放に達した人々はもっと自由であっていいと思うから)
 それがリオの価値観であり、死者の自由を束縛する者を彼女は好まない。この地下墓所が死者の呪詛を留めるための巨大な檻だというのなら、彼女のすべき事は決まっている。

「私はリオ・ウィンデイア。死者とともに歩む喪服の娘。そして、今を生きるために全力を尽くすもの」
 歌と演奏を終えたリオは、清聴していた死者たちに改めて名乗る。澄んだソプラノの声は通りがよく、墓所の闇の奥まで響いていく。その美声で、彼女ははっきりと宣言した。
「この世を恨んでいるというのなら私がこの奥でそれを退治するわ」
 死者たちから自由を奪っている元凶をこの手で倒す。凛とした表情と立ち居振舞いからは自信が感じられ、舞台女優のように生者のみならず死者たちの耳目さえも惹き付けた。
『……ァリがとぅ……』
 想いを受け止めてもらった死者たちは、リオの宣言に満足したように姿を消していく。
 後に残されたのは闇と静寂。その最深の『祭壇』を目指し、墓場の歌姫は歩き続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

塩崎・曲人
へっ、アルダワ出身者舐めてもらっちゃ困るぜ
地下ダンジョンの攻略ならお手のもんよ

「まぁ、あそこはここほど怨念渦巻いてちゃ居なかったがね!鬱陶しいにも程があんぞオイ」
オレ様ビビリのつもりはねぇが、こんな場所で泰然自若してられるほど大物でもねぇわ
顔をしかめつつも、奥に行かなきゃ始まらねぇと自分に言い聞かせて先へ進むぜ

物理的、魔術的なトラップは前述の通り大得意なんで
怨念への抵抗だけに集中していこう
「こちとらお前らの無念を晴らす側だぜ?歓迎てくれたっていいんじゃねぇかねぇ……」
そう、オレは咎人殺し
こういう怨念背負って戦うのもプロな訳よ



「へっ、アルダワ出身者舐めてもらっちゃ困るぜ」
 光届かぬ広大な墓所を、自信ありげな様子で塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)が行く。故郷の魔法学園で迷宮探索に慣れている彼は、こうした場所の歩き方にも詳しい。
「地下ダンジョンの攻略ならお手のもんよ」
 光苔や鬼火による僅かな明かりを頼りに、『紋章の祭壇』があるという深部に向かって迷いなく進む。自然体なふうを装いつつも、トラップに対する警戒も怠ってはいない――体に染み付いた故郷での経験は、しっかりと闇夜の世界でも役立っていた。

「まぁ、あそこはここほど怨念渦巻いてちゃ居なかったがね! 鬱陶しいにも程があんぞオイ」
 そんな曲人の行く手を阻むのは、この地で犠牲となった数多の怨霊達。何百何千という死者の無念が呪いとなって渦を巻き、不気味な慟哭が墓所の至るところで聞こえてくる。
「オレ様ビビリのつもりはねぇが、こんな場所で泰然自若してられるほど大物でもねぇわ」
 物理的、魔術的なトラップは前述の通り大得意な彼だが、怨霊退散の専門化ではない。
 顔をしかめつつも、奥に行かなきゃ始まらねぇと自分に言い聞かせて先へ進む。怨念がもたらす恐怖に心を持っていかれないよう、しっかりと意識を集中して。

「こちとらお前らの無念を晴らす側だぜ? 歓迎てくれたっていいんじゃねぇかねぇ……」
 ざわめく怨霊の気配を肌で感じながら、ぼやき半分に曲人は言う。ここにいる死者達がみな『暗夜卿』の紋章創造の生贄だったのなら、猟兵達との利害は一致しているはずだ。
「オレはあの祭壇をブッ壊しに来たんだ。邪魔しないでくれねぇか?」
『祭壇……壊ス……?』
 ぶっきらぼうだが裏表のない曲人の言葉に、怨霊達が反応を示す。大量の生命を素材に紋章を作り出す、忌まわしき『紋章の祭壇』――その破壊は『暗夜卿』への復讐と並ぶ、彼らの悲願であろう。

『アノ祭壇ガ無クナレバ……モウ私達ミタイナ生贄モ増エナイ……』
『本当ニ……デキルノ……?』
 期待と疑念のこもった怨霊達の圧が強くなる。呑まれないように抵抗心を保ったまま、曲人は「あぁ」と気安く応じた。わりと乱暴でデリカシーも無いしついでに金も無いが、妙な所で彼は義理堅い。一度負うと決めたものを途中で投げ出しはしないだろう。
「そう、オレは咎人殺し。こういう怨念背負って戦うのもプロな訳よ」
 ラフなストリートファッションにチェーンや鉄パイプで武装した彼の格好は、頼もしいと思えるタイプでは無かったが迫力と自信に満ちていた。軽薄そうでいて力強いその言葉を聞いた怨霊は、彼を信じてみることにした。

『ドウカ……オ願イ……アノ『祭壇』ヲ……ソシテ、アノ吸血鬼ヲ……』
 それを最後に、辺りに木霊していた怨霊達の声が小さくなり、やがて聞こえなくなる。
 どうやら通っていいという事らしい。ありがとよと口の端を上げて、曲人はスタスタとその奥に進む。聞こえなくなった声のかわりに、背中に増えた想いの重みを感じながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
恐怖なんてものは感じないけど…この場に渦巻く死者達の怨念や呪いは放っておけないわね…。
わたしの可愛い聖職者達、わたしに力を貸しなさい。

【虜の軍勢】で「神龍教派のクレリック」「光の断罪者」を召喚。
それぞれ、【神罰の吐息】【光の断罪者】で亡霊達の浄化を指示。

わたしも、聖属性と【破魔】の力を込めた魔術結界【結界術】を展開し、クレリック達の聖なる力を高めて支援すると同時に、亡霊達の怨念を浄化して弱めるわ。

もうこれ以上苦しむ必要はないわ。
次に貴方達が転生してこの世界に戻って来た時には、もっと良い世界になってる事を約束するわ。
だから、今は安らかに眠りなさい。



「恐怖なんてものは感じないけど……この場に渦巻く死者達の怨念や呪いは放っておけないわね……」
 この世界の出身であるフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)にとって、死者の怨念は珍しいものではない。だが『紋章の祭壇』を探すために地下墓地に足を踏み入れた彼女は、地上ではまずあり得ないほどの膨大な怨霊の気配を感じた。
「わたしの可愛い聖職者達、わたしに力を貸しなさい」
 敵が『紋章』を製造する過程で犠牲となった、この数多の魂を浄化するために、彼女は【虜の軍勢】から「神龍教派のクレリック」と「光の断罪者」達を召喚する。この者らは吸血姫に忠誠と服従を誓い、オブリビオンながら彼女の眷属となった者達である。

「神龍よ、かの者達に浄化の息吹を!」
「私達の光で、あなた達の怨念を晴らしましょう」
 神龍教派のクレリックは【神罰の吐息】を吹かせて、地下墓所を聖なる加護で満たす。同時に光の断罪者は癒やしから破壊へと反転した聖者の光をもって、呪いや怨念を祓う。
 眷属達の働きぶりに合わせてフレミアも聖属性と破魔の力を込めた魔術結界を展開し、クレリック達の聖なる力を高めて支援すると共に、亡霊達の怨念を浄化して弱めていく。
『オオォォォォォ……!!!?』
 多人数による徹底した浄化作戦により、周囲に満ちていた怨念は瞬く間に消えていく。
 闇が支配するこの地で生前以来となる光を浴びた亡霊達は、驚愕の叫びを上げながら、ある者は逃げ惑い、ある者は聖なる力にて消滅する。

「もうこれ以上苦しむ必要はないわ」
 奥に進むのに合わせて結界の範囲を広げながら、フレミアは墓所の亡霊に語りかける。
 ヴァンパイアの陰謀により犠牲となり、死してなお怨念を利用される終わりなき地獄。その元凶を滅ぼすために自分達は来たのだから、もう何も心配はいらないと。
「次に貴方達が転生してこの世界に戻って来た時には、もっと良い世界になってる事を約束するわ」
 夜明けは今だ遠くとも、光ある未来への道程は着実に進んでいる。まだ幼さのある容姿ながら、フレミアの立ち居振舞いには凛とした気品があり、言葉には希望が満ちている。怨念の塊と化した死者達の魂にも訴えかける説得力が、そこにはあった。

『本当ニ……生マレ変ワッタラ、今度コソ平和ニ……』
 此の地に縛られた亡霊も、かつては地上で慎ましく暮らしてきた者達だ。ヴァンパイアの圧政に生前も死後も翻弄され続けた彼らは、フレミアの語る未来の世界に心惹かれた。
『今度コソ……幸セニ……』
「ええ。わたし達が必ずそんな世界にしてみせるわ」
 フレミアはこくりと頷いて、眷属達と共に浄化の光と加護を広げる。地下墓所を照らす柔らかな光が亡霊達を包み込み――痛みもなく、苦しみもなく、彼岸に送り届けていく。

「だから、今は安らかに眠りなさい」
『アリガトウ……』
 怨みの消えた安らかな声で感謝を伝え、亡霊達は眠りについた。辺りを包んでいた陰鬱な雰囲気も大分軽くなった気がする。これで呪いや怨念に道を阻まれる事もないだろう。
 フレミアと眷属達はその後も要所で浄化を繰り返しつつ、墓所の奥を目指すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
呪いはわたしの力…だけど、このまま放置しておくわけにはいかない…。
無念の魂を鎮めないと…。

【ソウル・リベリオン】を召喚…。

死者達の呪いや怨念を喰らい、魂を元に戻し、死者達に【降霊】でゆっくり休むように語り掛けたりして浄化…。

霊魔のレンズで特に呪いや不吉な魔力が強まっているトコロを探り、墓地を探知術式【呪詛、情報収集、高速詠唱】で探索して祭壇の場所や呪いの吹溜りになってる場所といった呪いの力の中心地を捜索…。

【ソウル・リベリオン】で呪いと怨念を喰らいつくして力を高め、【破魔】の【結界術】で吹溜りを完全に浄化し、破壊していくよ…。

みんなの呪いは受け取ったから…。必ず、黒幕はわたし達が倒すよ…



「呪いはわたしの力……だけど、このまま放置しておくわけにはいかない……」
 呪術や呪詛の扱いに精通した雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、この地下墓所に満ちる怨念の強さと規模、そして地縛された死者達の無念のほどが痛いほど理解できた。
「無念の魂を鎮めないと……」
 最終目標は『紋章の祭壇』の破壊ながら、この状況はとても見過ごせるものではない。
 一刻も早く死者に安息をもたらすために、彼女はまず周辺の怨念の浄化から開始する。

「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……。彼の魂に救済を……!」
 鎮魂のために璃奈が召喚したのは【ソウル・リベリオン】。墓所に渦巻く亡霊に向けて振るうと、その刃は呪いや怨念を喰らい、怨嗟の塊と化していた魂を在るべき姿へ戻す。
 それまで生前の怨みや憎しみを呪いとして撒き散らすばかりだった死者は、呪詛喰らいの魔剣に斬られることで我に返っていった。
「どうかゆっくり休んで……」
『アァ……ありがとう……』
 璃奈はそうして元に戻した死者達に降霊術で語りかけ、彼岸で眠りにつくように祈る。
 巫女の少女に看取られて、浄化された魂は今度こそ迷うことなく天に召されていった。

「まだ沢山……呪いが満ち溢れてる……」
 一箇所だけを浄化しても、墓所全体に満ちる呪いと怨念はまだまだ消えることはない。
 璃奈はより根本から呪いを断つために「霊魔のレンズ」や探知術式を用いて、特に呪いや不吉な魔力が強まっているトコロを探索する。そうした呪いの吹き溜まりになっている場所は、すべての元凶である『紋章の祭壇』にも近いはずだ。
「ここかな……」
 レンズ越しに可視化された霊の姿や魔力の流れと、研ぎ澄まされた感覚が璃奈を導く。
 暫しの捜索の末、呪いの力の中心地となっている場所を見つけ出した彼女は、常人なら卒倒するほどの呪詛の奔流にも怯まず、ソウル・リベリオンを携えてその最深部に迫る。

「ソウル・リベリオン、全て喰らいつくして……」
 呪いの中心に呪詛喰らいの魔剣を突き立てると、渦巻いていた怨念が吸収されていく。この魔剣には呪いに縛られた者を救済する他に、呪いを喰らって力を増す能力もあった。
 それを利用して力を高めた璃奈は囁くように呪文を唱えると、破魔の結界を周囲に張り巡らせ、呪いの吹き溜まりを完全に浄化し、破壊する。
『オアァァァァァ………』
 呪詛とともに消え去っていく亡霊達の叫びは、ようやく解放された事による歓喜か。
 完全浄化が完了したあとの元・吹き溜まりには、清浄な空気と静謐に包まれていた。

「みんなの呪いは受け取ったから……。必ず、黒幕はわたし達が倒すよ……」
 膨大な呪詛を喰らった魔剣を握りしめて、璃奈は消えていった亡霊達に誓いを立てる。
 彼らが遺していった呪いという想いは、必ず『暗夜卿』にも届きうる刃となるだろう。これまでよりも力強い足取りで、彼女は『紋章の祭壇』のある墓所の最深部に向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
カビィちゃん(f24111)と

『紋章の祭壇…思念が渦巻いてる、生半可な場所ではないわね』
うん。シェル姉……気を抜けば取り込まれる。気を確かにしていこ!

相棒の魔剣とやり取り

(カビ紋章、絶好調)

『……』
……

(カビ紋章、超発光)

……
っだー!
何時のまにラヴラビ53期を!?
あの問題作を50も増やした!?世界に謝れ!

ってもー突っ込んじゃった!

『全て忘れてシリアスに振舞まう目論見は潰えたわね』

でも安全ではあるね……道中
『セリカが悪霊の立場ならこれと関わりたい?』

見てると精神の均衡に影響でそうなんだよなぁ、今のカビィちゃん
寄ってきた悪霊も逃げ帰ってるもん
なんか普通に進む以上の精神的疲労感をわたしゃ感じてるよ…


カビパン・カピパン
カビパン紋章がどのようなモノかあまりに過激すぎて筆者は文章にできない。しかし、彼女の事を一番よく知っている製作総指揮なら見事に表現してくれることだろう。
(ここにカビパン紋章の解説が入ります)

「記念すべきラヴラビシーズン53は爆発するスカイタワーからセフィ姉が飛び降りてマグロ寿司を握って、ディアンドラと感動の祝杯を上げるの。決め台詞は『チェックメイト!』」
ラブラビシーズン53の構想を語っていた。

途中で怨念や呪詛が蝕もうとするも
「ワレも生贄にされた紋章、楯突くなんて100年早いんじゃボケ!」
と追い返していく。

カビパン紋章の効果なのかギャグが渦巻くようになり、違う意味でセフィリカの精神を蝕んでいく。



『紋章の祭壇…思念が渦巻いてる、生半可な場所ではないわね』
「うん。シェル姉……気を抜けば取り込まれる。気を確かにしていこ!」
 地下墓所に突入したセフィリカ・ランブレイ(蒼剣と姫・f00633)は、相棒の意思ある魔剣シェルファとやり取りを交わして気を引き締める。まだ入り口から入ったばかりの段階でも周囲には怨念や呪いが満ちており、油断は許されない環境だ。
「今回のラヴラビの撮影はここ、地下墓所からお送り致します」
 ――そんな真面目ムードの二人に真っ向から水を差すのはカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。先日ダークセイヴァーの依頼で『紋章』と化した彼女は、宝石状の紋章から悪霊の本体をニュッと現し、やいのやいのと空気を読まず騒いでいた。

「記念すべきラヴラビシーズン53は爆発するスカイタワーからセフィ姉が飛び降りてマグロ寿司を握って、ディアンドラと感動の祝杯を上げるの。決め台詞は『チェックメイト!』」
 自身が主催しセフィリカが俳優(あるいはツッコミ担当)を務める「ラヴラビ」新シーズンの構想を語るカビパン紋章。それがどのようなモノか説明するには余白が足りない。文章に起こすにはあまりに過激すぎ、口にするのも憚られるような名状しがたさである。それでもあえて言うなら、ソレはギャグのように喧しく、冗談のように光り輝いていた。
『……』
「……」
 そんな絶好調のカビパン紋章を見て、セフィリカとシェルファは沈黙。もし突っ込めば最後、めくるめくギャグ時空に引きずり込まれ軌道修正不可能になるのはこれまでの経験から分かっている。なにも見なかったことにしてシリアスを維持するのが賢明である。

『カビパンの紋章……わけが分からないわ、生半可な紋章ではないわね』
「うん。シェル姉……気を抜けば取り込まれる。気を確かにしていこ」
 小声で囁き交わしながら小型ドローン【街角の誰彼】を偵察に飛ばし、墓所を探索するセフィリカ達。墓所自体の構造は単純でさほど迷うことは無さそうだが、脅威となるのはやはり怨霊だろう。
『ウゥゥゥアァァァァァァ……!』
 『暗夜卿』が紋章を作るための生け贄にされた数多の犠牲者達。その無念の想いが呪いや怨念となって侵入者を蝕む。セフィリカは意識を強く保って抵抗しようとするが――。

「ワレも生贄にされた紋章、楯突くなんて100年早いんじゃボケ!」
 その時、カビパン紋章が威嚇するようにビカビカと超発光し、ドスを聞かせて叫んだ。怨霊はその剣幕に恐れをなしてビクッと震え上がり、蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。
『……』
「……」
 それを見たセフィリカとシェルファは、またも沈黙。スルーするのが一番だと分かってはいても、やる事なす事がとかくハチャメチャすぎて、どうしても注意を向けてしまう。
「あ、それでスカイタワーの撮影なんだけど、ここは今流行りのCG合成で……」
「……っだー!」
 それでも沈黙を保っていたセフィリカの忍耐は、カビパンが何事もなかったかのようにラヴラビシーズン53構想の続きを語り始めた時、とうとう堰を切ったように決壊した。

「何時のまにラヴラビ53期を!? あの問題作を50も増やした!? 世界に謝れ!」
 一度口を開いてしまえば、あとは小気味いいくらいぽんぽんと言葉が飛び出してきた。
 溜め込んだものを吐き出してスッキリしたセフィリカは、直後にカビパンのペースに乗せられてしまったことに気付いて頭を抱える。
「ってもー突っ込んじゃった!」
『全て忘れてシリアスに振舞まう目論見は潰えたわね』
 カビパンと同行する事になった時点で、遅かれ早かれこうなる定めなのかもしれない。
 若干の敗北感を覚える二人とは対照的に、カビ紋章はマイペースに光りまくっていた。

「でも安全ではあるね……道中」
『セリカが悪霊の立場ならこれと関わりたい?』
 セフィリカ達が話し合っている間も、カビパン紋章は謎の発光と怒声で悪霊を追い返している。悪霊よりヤバいものを近くに置いておくことで悪霊を追い払うという魔除けは、実は古今東西によく見られるモノだが、にしたってコレはちょっとヤバすぎる気もする。
「ヒラ悪霊が舐めてんじゃねえぞゴラァ!」
『ヒェェ……勘弁シテツカァサイ……』
 さらに紋章の効果なのか周囲には怨念のかわりにギャグが渦巻くようになり、亡霊達のリアクションもギャグっぽくなっていく。一体どういった原理なのかは皆目不明である。

「見てると精神の均衡に影響でそうなんだよなぁ、今のカビィちゃん」
 寄ってきた悪霊が逃げ帰っていくのを、げんなりと疲れた表情で見守るセフィリカ。
 危険がなくて楽といえば楽なのだが、この遣りどころのない気持ちはなんだろうか。
「なんか普通に進む以上の精神的疲労感をわたしゃ感じてるよ……」
 まだ先は長いのにこんな調子で大丈夫だろうか。最後までシリアスできるだろうか。
 カビパン紋章に違う意味で精神を蝕まれながら、セフィリカは先に進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
紋章が無くなれば、救済者のヒト達の戦いも楽になる
そしたらこの世界が、もっと光に近付けるよね

…って、来たのはいいけど、どっちに向かうのが正解なんじゃろ…やばい迷う…
他の猟兵さん達の気配を辿りつつ、何とか先に進む
怨念の声とかが邪魔してくるけど、それどころやないです
話し声とか物音とかを察知するのに集中…!
ちょ、ちょっと!お願いやから静かにして…!

でも奥に進むと流石に怨念も強くて
withを抱きしめて【勇気】を貰う
う…ううん、大丈夫、絶対大丈夫
貴方も一緒やし、こんな声、相手にせんかったら良いんやから
拒絶の意思で自身を覆う。焔が道を照らしてくれる
待ってて。もう恨まなくていいように
海に還してあげるから



「紋章が無くなれば、救済者のヒト達の戦いも楽になる」
 ヴァンパイアの圧政に抵抗する『闇の救済者』達にとっても、大きな脅威である紋章。その生産場がこの地下墓所の奥にあると知った春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、其れを破壊するために探索に臨んでいた。
「そしたらこの世界が、もっと光に近付けるよね」
 闇に支配されたこの世界が夜明けを迎える瞬間はきっと、とても美しい光景のはずだ。
 そんな輝かしい明日を見る為に、旅人は最愛の恋人である大剣『with』と共に行く。

「……って、来たのはいいけど、どっちに向かうのが正解なんじゃろ……やばい迷う……」

 そして探索開始から程なくして、結希はものの見事に墓所の中で道に迷いかけていた。
 構造自体はさほど複雑ではないのだが、どこまでも似たような景色が延々と続くのと、何より地底の暗さが方角を見失わせる。油断すれば来た道まで分からなくなりそうだ。
「あ、向こうから話し声がする……なんか聞き覚えのあるような気もする声やけど……」
 あわや迷子になりそうな結希は、先行している猟兵の気配を辿ってなんとか先に進む。
 他の猟兵が進んだ後の道には足跡が残っていたり、怨念が薄くなっていたりするので、比較的進みやすい。あとは何かがピカピカ光るのが見えたり、騒ぎ声が聞こえてきたり。

『ウオォォォォ……!』
 もちろん墓所にいるのは猟兵だけではなく、先に進めば死者の怨念が邪魔をしてくる。
 が、今の結希は他の猟兵の話し声とか物音とかを察知するのに集中していて、正直な話それどころではなかった。
「ちょ、ちょっと! お願いやから静かにして……!」
 死者がもたらす恐怖に対抗する手段として「気にしない」というのは実際有効である。
 怨念の声も耳を傾けなければただの雑音。災い転じて何とやらで、道に迷いかけた焦りがかえって彼女の意識を亡霊からそらし、悪い影響を受けずに済んでいた。

 ――だが、墓所の奥まで進むと流石に怨念も強く、無視してばかりもいられなくなる。
 どこからとなく聞こえてくる死者の怨嗟や嘆きの声に、闇の中をうごめく無数の気配。まるで地獄の一丁目に迷い込んだかのように、背筋を走る悪寒が止まらない。
「う……ううん、大丈夫、絶対大丈夫」
 微かに青ざめた結希だったが、愛する『with』を抱きしめて勇気を貰う。一人だったら臆していたかもしれないが、彼女には大切な愛剣がいつでも傍にいる。だから大丈夫。

「貴方も一緒やし、こんな声、相手にせんかったら良いんやから」
 拒絶の意思で自身を覆い、背中に広げた緋色の翼から、絶望を【拒絶する焔】を放つ。
 闇の中に灯った紅蓮の煌めきは、今にも結希を呑み込もうとしていた怨念を焼き払い、進むべき道を照らし出した。
『オァァァぁぁぁ……』
 亡霊たちはその赫焔を恐れ、悲鳴とも悔恨ともつかない叫びを残して逃げ去っていく。
 危機を乗り越えた結希はほっと息を吐くと、表情を引き締め直してさらに奥へと進む。

「待ってて。もう恨まなくていいように、海に還してあげるから」
 この先にある『紋章の祭壇』を破壊すれば、彼らの魂と怨念もきっと解放されるはず。
 結希はもう迷うことはなく、希望と約束を胸に、焔が照らす道をまっすぐに進む――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
死して尚、望まぬ行いに加担させられる…ですか

(銀河帝国に己を含む兵器開発を強要された創造主。彼女の数多の英知と無念が封じられた電脳禁忌剣を見遣り)

これ以上、悲劇を繰り返させぬ
そんな御伽の騎士が、貴女も、貴女の想い人もお好きでしたね
…私もそうです

自己ハッキングで思考演算の電子的セキュリティを向上

視界は全く問題ありません
が、やはり精神干渉系の障害への対処は不得手ですね
原因不明の“恐怖”が出力され動作が鈍っています

どうやら怨念の分布にはムラがある様子
時間をかけ迂回すれば祭壇へ辿りつけそうですが…

いえ、騎士の道に“狂った”なら貫いてこそ、ですね

UC使用

騎士としての行動を最優先
恐怖捻じ伏せ最短進路を疾走



「死して尚、望まぬ行いに加担させられる……ですか」
 生前は『紋章』を創造する生贄となり、死後もその怨念を利用され続ける死者たちに、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己の創造主を重ねていた。銀河帝国に望まぬ兵器開発を強要されたかの天才科学者の業苦は死してなお、その被造物が遺っている限り終わらない。
「これ以上、悲劇を繰り返させぬ。そんな御伽の騎士が、貴女も、貴女の想い人もお好きでしたね」
 彼女の数多の英知と無念が封じられた「電脳禁忌剣アレクシア」を見やり、機械仕掛けの騎士はぽつりと呟く。それはしょせん御伽噺であり、現実とするにはあまりに遠すぎる理想であると、彼は痛いほど理解していて、だがそれでも――。

「……私もそうです」
 これが兵器として不適格な狂気であると理解した上で、トリテレイアは騎士道を歩む。
 理想には今だ遠くとも、まずは一歩ずつ、目の前の悲劇の連鎖を防ぐ事から始めよう。兜の奥のカメラアイが緑に発光し、全身に配置されたマルチセンサーが周囲を把握する。
「視界は全く問題ありません。が、やはり精神干渉系の障害への対処は不得手ですね」
 自己の電子頭脳にハッキングを行い、思考演算の電子的セキュリティを向上させているものの、霊障という専門とは異なるサイドからの攻撃への対策として万全とは言い難い。

「原因不明の"恐怖"が出力され動作が鈍っています」
 機械であるトリテレイアの感情――演算機能にまで影響を及ぼすとは、此の地に渦巻く怨念はよほど強いのだろう。彼は不自然な気温の低下や気流の乱れといった「霊の現れるシグナル」を多角的に分析することで、精神干渉の発生源を見極める。
(どうやら怨念の分布にはムラがある様子。時間をかけ迂回すれば祭壇へ辿りつけそうですが……)
 このまま干渉を受け続ければどんな誤作動が生じるか定かではない以上、タイムロスを許容して安全策を取るのは合理的な判断と言えた。確実な任務遂行を考えるのであれば、迷うまでもない状況だったが――。

「いえ、騎士の道に"狂った"なら貫いてこそ、ですね」
 合理性よりも騎士としての行動を最優先して、【機械人形は守護騎士たらんと希う】。
 論理としては破綻していても、狂気に等しい信念と理想は時として恐怖を捻じ伏せる。人間はそれを「勇気」とも呼ぶだろう。
「今は一刻も早く、この悲劇を終わらせる事が優先です」
 怨念の分布図を考慮せず、最深部までの最短経路を疾走するトリテレイア。亡霊たちの怨嗟の声も、渦巻く闇も、恐怖もたらす呪いも、彼の歩みを止めさせることはできない。

『ウアァァァァ……』
 まとわり付くように近くで聞こえていた亡霊の声が、だんだん小さく遠くなっていく。
 騎士として相応しき道を邁進するトリテレイアには、どんな囁きも無意味と悟ったか。あるいは理想を捨てる事なく苦難に挑む勇敢さに、死者の魂を震わすものがあったのか。
(御伽噺に謳われる騎士達よ。鋼の我が身、災禍を払う守護の盾と成ることをここに誓う)
 誓いの言葉を胸に秘め、『紋章の祭壇』を目指す彼の姿は、紛れもない騎士であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

…やみ…?ぼしょ
まさしく屍あるべし

UC最大範囲発動情報収集
構造を見切り宝探し

おんねん…?きょうき…?
わたしは がらんどう
我等物の屍、ただ残響あるのみ
唯伽藍なれば、吹き抜けていく故に

落ち着いて受け流す

みだす だれか
海に還せば波は鎮まる道理

おやすみなさい
おやすみなさい
皆そこへ 水底へ

平素そのものの足取りで奥へ…



「……やみ……? ぼしょ」
 どこか虚ろさをも感じさせる澄んだ瞳で、地下墓所の闇を見透かす御堂・伽藍(がらんどう・f33020)。数多の死した品、我楽多に宿った魂が、此の地に根ざす死者達と共感しているのだろうか。
「まさしく屍あるべし」
 夥しい呪いに満ちたその光景を見て、彼女はひとつ頷き【それは等しく価値あるもの】を発動。「すてぜに」と呼ばれる浮遊する財貨の群れを召喚し、アクティブ情報収集偵察モードにして墓所の各方面へと飛ばす。

「かえるけれどかえない。価値あるものは価値あるものを知る」
 顧みられぬ貨幣、傷付いた宝石。打ち捨てたれた冨と五感を共有させることで、伽藍は遠く広くを見通す耳目を得る。これを最大範囲で展開して墓所の構造を把握した彼女は、此の地に隠された宝――『紋章の祭壇』を探して歩きだす。
『ウアァアァァァァァ……』
 墓所の奥に向かって進めば、立ちはだかるのは怨霊達。『紋章』を作り出すための犠牲になった死者の怨念が呪いとなって渦を巻く。只人であれば恐怖で息は詰まり、それ以上一歩も動けなくなるほどの呪詛だが――。

「おんねん……? きょうき……? わたしは がらんどう」
 恐ろしき呪怨の渦中に巻き込まれても、伽藍は平然とした様子でとことこ歩いていく。
 怨嗟の声が耳に届いても聞き流し。肌寒い風が吹き抜けていっても受け流し。怨霊達がどんなに激しく自らの無念を訴えても、彼女の眉ひとつ動かすことはできない。
「我等物の屍、ただ残響あるのみ。唯伽藍なれば、吹き抜けていく故に」
 なんにもないし、なんでもはいる。美しいものも汚いものも何ひとつ拒むことはない。
 通常のヤドリガミとも僵尸とも異なる特殊な生い立ちゆえに、彼女の心は死者の怨念に乱されることは無かった。

「みだす だれか 海に還せば波は鎮まる道理」
 迫りくる怨念を落ち着いて受け流す伽藍。まるで六つの腕で呪いを抱きしめるように、その口元には慈悲の笑みが浮かび。この墓所よりも深くて底のない、彼女のがらんどうに触れた死者は、その中に吸い込まれるように沈静化していく。
『オォぉぉぉ……』
 さまよえる魂は深淵に安息の場所を見出したか、怨嗟の声も掠れて小さくなっていく。
 やがて伽藍の周りから騒ぎ立てる死者の気配はなくなり、がらんとした静寂が満ちる。

「おやすみなさい おやすみなさい 皆そこへ 水底へ」
 歌うように、ささやくように言葉を紡ぎながら、少女は平素そのものの足取りで奥へ。阻むものはなく、道に迷うこともなく、『紋章の祭壇』まで一路まっすぐに進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
アドリブ連携大歓迎

指定UC発動後「暗視、世界知識、地形の利用」で祭壇の在処の見当をつけたら
「ダッシュ」+高速移動で一気に墓地を駆け抜けよう

…これはまた、凄まじい量の怨念だな
俺自身は暗夜卿への怒りと憎悪で恐怖を抑え込めるが
纏っている魂たちが怨念や呪詛に蝕まれて…
…否、犠牲者達に共感して怨嗟の声を上げ始めている

…共感してしまうのも無理ないか
俺が纏う魂は、吸血鬼に無理やり「かみさま」にされた少女たちの魂
彼女たちも俺と同様、オブリビオンへの復讐心を持っているから
どうしても犠牲者に共感し、同調してしまう

…ならば
俺も少女たちの魂たちと一緒に犠牲者の怨念と同調し
怨念に身を委ねよう
…皆の仇、俺が討つから



「喰らった魂を、力に替えて」
 第五の貴族が一人『暗夜卿』が管理する地下墓所の入り口に立った館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、【魂魄解放】を発動し、黒剣がかつて喰らった魂を身にまとう。
 数多の霊魂の力を借りて、『紋章の祭壇』がある最深部まで一気に駆け抜ける算段だ。
「あまり長居すべきではない場所のようだからな」
 この世界で生まれ育った彼の目は、地底の暗さにもすぐに慣れ。内部の地形を把握し、祭壇の在処に見当をつけると、黒騎士は野を馳せる獣のような速さで墓地を疾走する。

「……これはまた、凄まじい量の怨念だな」
 一歩踏み入れるなり敬輔を出迎えたのは、此の地で亡くなった死者の呪いと怨嗟の声。
 『紋章』を創造するための生贄にされた犠牲者の念が、生者の心を恐怖で苛んでくる。
「俺自身はどうにかなるが……」
 この惨状を作った『暗夜卿』への怒りと憎悪で恐怖を抑え込める敬輔とは違い、彼が纏っている魂達は怨念や呪詛に蝕まれて――否、犠牲者達に共感して怨嗟の声を上げ始めている。墓所の亡霊たちと共鳴してわななく魂の感情が、敬輔の心にまで伝わってきた。

「……共感してしまうのも無理ないか」
 敬輔が纏う魂は、吸血鬼に無理やり「かみさま」にされた少女達の魂。彼女らも敬輔と同様にオブリビオンへの復讐心を持っているからこそ、こうして力を借りる事もできる訳だが、同時に似たような境遇にある犠牲者にどうしても共感し、同調してしまう。
『憎イ……憎イ……』
『許セナイ……絶対ニ……』
 墓所の怨霊と黒剣の魂魄が共鳴することで、周囲を満たす呪いはより強くなっていく。
 このままでは開放した魂は術者の制御を外れ、怨霊達と一緒になって暴走を始めるかもしれない。

「……ならば」
 そうなる前に、敬輔は少女達の魂と一緒に犠牲者の怨念と同調し、あえて身を委ねた。
 吸血鬼に対する復讐の念は、彼も痛いほどよく理解している。だからこそ復讐を遂げるためには情を抑え、冷酷に徹するのも必要だという事も。
「俺も共に、この復讐を背負おう」
 荒ぶる怨念を復讐の刃として研ぎ澄ます事ができるのは、この場においては彼のみだ。
 怨嗟も呪いも全て受け止めて、されど己を見失わず。常人ならば心が壊れかねない程の呪詛を、復讐の騎士は完璧に制御する。

「……皆の仇、俺が討つから」
 墓所の怨念との同調に成功した後、敬輔が纏う魂魄の規模は一回り大きくなっていた。
 この力があれば『紋章の祭壇』の破壊も『暗夜卿』の打倒も果たせるだろう。胸の奥で黒く燃え盛る復讐の焔を感じながら、彼は墓所の深部へと駆けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
詩乃(f17458)と

生体実験とか、とんでもねえことやってんなあ。まあ、人の理屈を気にする連中じゃねえのはわかってるけどさ。
ともかく、これ以上のさばらせてはおけねえよな。

墓所には罠が仕掛けられてるって話だったな。
《残されし十二番目の贈り物》を起動して〈第六感〉を強化し、危険そうなルートと、逆に比較的安全に進めそうなルートを判別して、罠を回避しつつ進んでいく。
必要に応じて〈オーラ防御〉や〈呪詛耐性〉を活用し、襲い来る怨念や呪詛をやり過ごす。

亡霊たちを宥めるんは基本的に詩乃に任せるけど、助言が必要そうなら〈コミュ力〉を活かして適度に合いの手を入れ、交渉がスムーズに進むように手伝うぞ。


大町・詩乃
嵐さん(f03812)と

これ以上の犠牲者を出さない為に、そして亡くなられた方の魂を弔う為に頑張ります!

怨念や呪詛が渦巻く地下墓所を進みますが、まずはUCを使って少しでも友好的な雰囲気を作り出して、怨霊さん達に優しく語り掛けます。
助けてあげられなくてごめんなさいとお詫びし、せめて貴方達の仇は取りますと誓います。
そして、どうか安らかにお眠りくださいと、慰め・浄化・祈りによって慰霊を行います。

これを繰り返しつつ進みます。
慰霊中心の行動なので、詩乃一人では適切な進路を捜したり、トラップ等への対処が疎かになってしまうのですが、嵐さんに助けて頂いて最深部を目指します。

この地では、もう悲劇は起こさせません!



「生体実験とか、とんでもねえことやってんなあ。まあ、人の理屈を気にする連中じゃねえのはわかってるけどさ」
 ヴァンパイアのしでかす事は毎度悪趣味で残酷なものばかりだと、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は肩をすくめる。事実としてこの世界の支配者であるため、その横暴に歯止めをかけるものが無いのが余計にタチが悪い。
「ともかく、これ以上のさばらせてはおけねえよな」
「これ以上の犠牲者を出さない為に、そして亡くなられた方の魂を弔う為に頑張ります!」
 連中の悪事を止められる者がいるとすれば、それは猟兵をおいて他にない。嵐の言葉に大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)も深々と頷き、この作戦への意気込みを強く示す。

「墓所には罠が仕掛けられてるって話だったな」
 地下墓所に侵入した嵐はまず【残されし十二番目の贈り物】を起動して第六感を高め、危険そうなルートと、逆に比較的安全に進めそうなルートを判別する。強力な第五の貴族との戦いが控えている以上、道中の罠はなるべく回避して消耗は抑えていきたい。
「こっちの方が安全そうだ。ただ、亡霊が出てきたらその時は頼むな」
「お任せください。女神の名にかけて必ずや鎮めてみせます」
 物理的な罠への対処が嵐の担当なら、この地に囚われた怨霊への対処は詩乃の務めだ。
 墓所の中は常に凄まじい規模の怨念や呪詛が渦巻いており、怨嗟の声がどこからとなく聞こえてくる。身を守るオーラや呪詛耐性がなければ一歩進むのも辛い環境だ。

「助けてあげられなくてごめんなさい」
 そんな中でも詩乃は平時の振る舞いのまま、まずは【慈眼乃光】を使って少しでも友好的な雰囲気を作ろうと試みる。暖かく慈しむ彼女の視線は、怨霊と化した死者達の心にも働きかけ、無意識に友好的な行動を行うように作用する。
「せめて貴方達の仇は取ります」
 渦巻く怨念が弱まったのを感じると、詩乃は怨霊に優しく語りかけ、まずはお詫びを、それから誓いを立てる。失われた命を取り戻す事はできないが、悲劇の元凶を討ち取り、新たな被害を阻止する事はできる。それが犠牲者達へのせめてもの供養になると信じて。

「どうか安らかにお眠りください」
 神楽鈴をしゃらんと鳴らし、龍笛「響月」の音を響かせて、慰霊の儀を執り行う詩乃。
 真心の籠もった彼女の祈りと慰めは荒ぶる魂を浄化し、在るべき彼岸へと送っていく。
『ァ……ありがとう……』
 いつしか怨嗟の声は消え、ささやくような感謝の声を残して怨霊達の気配は消え去る。
 この辺りに漂っていた死者の怨念や呪いは、どうやら無事に祓うことができたようだ。

「これを繰り返しつつ進みましょう」
「長丁場になりそうだな」
 一箇所での慰霊を終えた詩乃と嵐は、墓所の奥に進んで怨念の強い所に行き着くたび、同様の手順を執り行う。ただ最深部を目指すだけならここまでする必要は無いだろうが、放っておけないのは詩乃の性分であろう。
「嵐さんには助けて頂いてすみません」
「いいって。こっちも亡霊たちを宥めてもらえて助かってるしな」
 慰霊に集中するため進路や罠の対処が疎かになりがちな詩乃を、嵐がその都度サポートする。時にはコミュ力の高さを活かして、亡霊との会話に適度に合いの手を入れもする。あらゆる意味で交渉がスムーズに進むよう手伝うのが今回の彼の役割だ。

「この地では、もう悲劇は起こさせません!」
「もう泣いてないで、ゆっくり休みな」
 少々時間を取られはしたものの、詩乃と嵐の尽力によって墓所全体に蔓延っていた怨念はかなり和らいでいた。息が詰まるような呪詛もさまよう亡霊の気配も今は薄れている。
 あとは災いの源である『紋章の祭壇』を破壊すれば、この地の浄化は完了するだろう。深淵に迫るにつれておぞましいものの気配を感じるが、ここで退く訳にもいかなかった。
「……行くか」
「ええ」
 恐怖を抑え、呪いを祓い、亡霊を鎮め、嵐と詩乃はこの地の怨念の元凶に迫っていく。
 いつしか墓所に染み付いた死臭には、血の匂いと薔薇の香りが混ざりだしていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
この暗い世界ではよくある光景、よくある墓所とはいえ…やるせないものね
…こんな哀しいこと、はやく終わらせましょう

UCを発動し周囲の霊魂や呪詛を大鎌に降霊して闇の魔力を溜め、
心の中で犠牲者達に祈りを捧げ精神攻撃を浄化しつつ墓所を進むわ

…私は声なき声、音なき嘆きを聞き届け、汝ら衆生を解き放つもの
地の底に縛られ未だ鎮まらぬ魂達よ。私の声に耳を傾けよ

悪戯に生命を奪われ、死後の安息すら踏みにじられる…その無念は察するに余りある

…汝らが真に魂の安息を願うならばその怨嗟、その憎悪、その憤怒を私に預けるがいい

…この大鎌は、貴方達の遺志を力と為して刃とするもの
貴方達が闇夜卿に正しき復讐を望むならば我が下に集え…!



「この暗い世界ではよくある光景、よくある墓所とはいえ……やるせないものね」
 数えきれないほどの死者の怨念と呪いに満ちた、光届かぬ地下墓所の様子を見渡して、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はふうとため息を吐く。最も憂うべきはこんな光景が決して珍しい物ではないという、世界の現状かもしれない。
「……こんな哀しいこと、はやく終わらせましょう」
 世界に救済と繁栄をもたらす事が自分の使命なら、闇に散っていった死者の魂を救うのもそうだ。心の中で犠牲者達に祈りを捧げながら、彼女は地下墓所の奥へと進んでいく。

「……黒剣覚醒、呪言詠唱開始」
 リーヴァルディが【代行者の羈束・過去を刻むもの】を発動すると、片手に携えた大鎌"過去を刻むもの"の元に、周囲に漂う霊魂や呪詛が集まってくる。武具を依代にした降霊術の一種のようだ。
「……私は声なき声、音なき嘆きを聞き届け、汝ら衆生を解き放つもの。地の底に縛られ未だ鎮まらぬ魂達よ。私の声に耳を傾けよ」
 大鎌の刃に闇の魔力が溜まっていくのを感じながら、彼女は降ろした魂に呼びかける。
 この地の亡霊たちは生前に受けた苦しみから怨嗟に染まっていたが、呪いをも恐れない少女の強い精神と意志に触れて、微かに反応を示した。

「悪戯に生命を奪われ、死後の安息すら踏みにじられる……その無念は察するに余りある」
 死者の境遇に理解を示し、その想いを慮った上で、リーヴァルディは彼らに提案する。
 自分の力があれば、死してなお敵に利用されているその怨念を別の目的に用いれると。
「……汝らが真に魂の安息を願うならばその怨嗟、その憎悪、その憤怒を私に預けるがいい」
 "過去を刻むもの"はヴァンパイアの犠牲となった者達の怨嗟を取り込むことで無限の力を発揮する。その力は必ずや『暗夜卿』を討つ刃になるだろう――そして彼女に怨嗟を預けた魂も、憎き仇に復讐を果たすことができる。

「……この大鎌は、貴方達の遺志を力と為して刃とするもの。貴方達が闇夜卿に正しき復讐を望むならば我が下に集え……!」
 闇色に輝く大鎌を掲げ、まだ周囲を漂っている亡霊にも聞こえるよう高らかに告げる。
 この世界の明日の為に吸血鬼を狩らんとするリーヴァルディの意志は、亡霊の復讐心と共鳴するに十分だった。呪詛と怨嗟が渦を巻き、"過去を刻むもの"に吸い込まれていく。
『復讐ヲ……アノ吸血鬼ニ、我等ノ怒リト報イヲ……!』
 一区画だけとっても夥しい数の怨念が、闇の魔力としてリーヴァルディの元に集まる。
 質量に変化はないはずだが、彼らが宿った大鎌は、普段よりずしりと重く感じられた。

「……感謝するわ。この力、決して無駄にはしない」
 怨みと想いを託してくれた死者のためにも、決意を新たにしてリーヴァルディは進む。
 地下墓所の最深部となる『紋章の祭壇』は、もうすぐそこまで迫っているはずだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
地上のも大概でしたが…
第五の貴族ってのは、更に悪趣味というか。
血肉に屍、怨念、呪詛の類は兎も角として、
この悪臭は何とも…ねぇ。

照明使用が問題無いなら、ランタンを手に。
足元の視界確保、滑落の危険回避は当然に。
炎の揺らぎで風の向き、大小で空気の淀みを感知。
万一にも足場が崩れる、或いは陥没等あった場合は、
ワイヤーを放ち登る、又は二点に掛け足場に。

平然?
当然。
例えば、街の小悪党。
雇われ相対した敵兵。
腐敗し財に権力に溺れた連中。
…数え切れぬ、無辜の民。

『なぜ』『どうして』『『自分は死ななければならなかったのか』』

常にそんな怨嗟を背負い…
それを何とも思えない、己ですから。
このくらい、微風みたいなものですよ



「地上のも大概でしたが……第五の貴族ってのは、更に悪趣味というか」
 暗鬱な雰囲気に包まれた地下墓所の様子を眺め、やれやれと肩をすくめるのはクロト・ラトキエ(TTX・f00472)。傭兵として多くの戦地を渡り、相応の惨状を見てきたであろう彼でも、ここは不快な場所のようだ。
「血肉に屍、怨念、呪詛の類は兎も角として、この悪臭は何とも……ねぇ」
 鉄錆と肉が腐る匂いに紛れて、微かに漂う薔薇の香り。それらが混然となって生じる異臭は筆舌に尽くしがたい。服や肌にまで染み付く前に、さっさと抜けてしまいたい所だ。

「照明使用は問題無いようですね」
 持ち込んだランタンを手に、暗い地下墓所を進むクロト。足元の視界確保と滑落の危険回避は当然として、さらに炎の揺らぎで風の向きを、その大小で空気の淀みを感知する。優男風の柔和な笑みを浮かべながらも、その所作や目配りは傭兵らしく無駄がない。
「地下にこれだけ大きな空洞があれば、どこで崩落が起きてもおかしくないでしょうね」
 彼が特に警戒しているのは足元だ。万一にも足場が崩れるような事が起これば、即座に空中に離脱できるようにワイヤーを操作するグローブの感触を確かめる。彼が操る鋼糸は極めて細く頑丈で、天井に繋げば命綱にも、又は二点に掛ければ足場にもなる。

「おっと、こんなところに陥没が」
 ランタンの明かりが崩れた地面を照らすと、クロトはすぐにワイヤーを張り巡らせる。
 蜘蛛が巣を編むように迅速かつ丁寧に。地面に開いた穴の上に糸の橋を渡し、変わらぬ足取りで通り過ぎる。当然のように並外れたバランス感覚である。
『ウウウゥゥゥゥゥ……』
 そんな彼の元に何かを訴えるように近寄ってくるのは、この地に葬られた幾多の亡霊。
 生贄として『紋章の祭壇』に捧げられ、死してなお怨嗟の塊となった魂の嘆きの声は、呪いとなって墓所を渦巻いている。彼もそれに気付いていないはずはないのだが――。

(平然? 当然)
 涼風のように怨念を受け流し、冷や汗ひとつかかぬまま、クロトはただ探索を続ける。
 この場において普通ならば崩落以上に警戒すべき死者の呪いは、彼にとって何ら恐れるものでは無かった。今更恐れを抱くにしては、彼はそれに馴染みすぎていたから。
(例えば、街の小悪党。雇われ相対した敵兵。腐敗し財に権力に溺れた連中。……数え切れぬ、無辜の民)
 この手で殺めてきた命の数だけ、人の怨みを背負う。人を殺す生業はそういうものだ。
 仕事のため、生き残るため、様々な理由はあれど、殺された側はそんなことで許してはくれないだろう。彼らもこの地の亡霊達と同じように叫びたいはずだ。

『なぜ』『どうして』『『自分は死ななければならなかったのか』』

(常にそんな怨嗟を背負い……それを何とも思えない、己ですから)
 過去は過去と、身勝手など呑み下し、思う侭現在を生きる。それがクロトのあり方だ。
 咎められようとも変えようのない本性を自覚しているからこそ、彼の歩みは迷わない。すでに過去となった者達に止められるものか。
(このくらい、微風みたいなものですよ)
 対抗策の【零式】を発動するまでもなく、彼は悠然と怨嗟の渦を抜けてその奥に進む。
 最初から感じていた悪臭はさらに強まっていき――ついに彼は最深部へと辿り着いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『その地に縛り付けられた亡霊』

POW   :    頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 怨念に満ちた地下墓所を攻略し、その最深部たる『紋章の祭壇』に辿り着いた猟兵達。
 そこは今まで通ってきた墓所よりも遥かに闇が深く、土と風に染み付いた死臭も濃く。それを押し隠そうとする薔薇の香りが、かえって異臭を際立たせている。

『アアァぁぁ……苦シイ……苦シイ……』

 墓と屍と薔薇で築かれた祭壇の周りで蠢くのは、その地に縛り付けられた亡霊の群れ。
 これまでに遭遇した亡霊よりも強い怨念を抱え、苦痛や嘆きの言葉を繰り返しながら、呪いを撒き散らしている――おそらく『紋章』の素体とするために選ばれた個体だろう。

『痛イ……憎イ……許サナイ……』
『助ケテ……誰カ……オ願イ……』

 一体生前にどれだけ凄惨な体験をしたのか、彼らの悲鳴と怨嗟は鳴り止むことがない。
 この強大な怨念こそが紋章を作り出すための素材になるのだろう。『暗夜卿』の陰謀を挫くためには、ここで彼らを倒すか――或いは怨念から解放してやらなければならない。

『憎イ……憎イ……アアアアァァァァァ―――!!!!!』

 おぞましき『紋章の祭壇』に囚われた亡霊の群れが、生者の気配に引かれて動き出す。
 対する猟兵もそれぞれの臨戦態勢を取る――暗夜の墓所の攻略は、ここからが本番だ。
朱酉・逢真
心情)呪詛も、悲鳴も。珍しいモンじゃない。いつだって夜は、声にもならねェ絶叫でいっぱいだからなァ。聞き入るだって? まさか。俺はいつだって誰かの言葉を聴いてるが、それ以上のこたァせん。神は博愛、平等でなけりゃア。感情移入なンざ以てのほかさ。
行動)そうさ、誰にもこころ寄せやしない。だから、こンなこともできる。お前さんらがどんな過去背負って、どんな苦痛を受けただか与えただか知らねェが…皆等しく慈しむばかりさ。かみさまが来たよ、お前さんたちの夜はここで終わりだ。お眠り、子らよ。次生はきっとお天道様の下さ。



「呪詛も、悲鳴も。珍しいモンじゃない。いつだって夜は、声にもならねェ絶叫でいっぱいだからなァ」
 その地に縛り付けられた亡霊達が叫ぶ【呪われた言葉と過去】を、逢真は涼しい顔して受け流していた。もしもその呟き声に聞き入ってしまったら、亡霊自らが体験した凄惨な過去を、幻覚にて体験させられる恐ろしい精神攻撃なのだが――。
(聞き入るだって? まさか)
 逢真は飽くまでそれを「聞いている」だけで、深く心を動かされることはない様子だ。
 思わず哀れを感じてしそうになる嘆きの声も、同情せずにはいられないような悲劇も、普段と変わらない笑みを口元に張り付かせたまま、聞いているだけ。

「俺はいつだって誰かの言葉を聴いてるが、それ以上のこたァせん」
 出会った生者や死者の言葉にいちいち心動かされていては、いったい何億何兆の訴えに心乱されなければならないのか。逢真はいのちを慈しむ神だが、その慈愛は個の生命体に向けられるべきではなく、飽くまで生命全般に対するものだ。
「神は博愛、平等でなけりゃア。感情移入なンざ以てのほかさ」
 超越者の視座を以て、全てのいのちを等しく扱う。彼は正しく畏怖すべき神であった。
 故にこそ、彼はこの地にいる全ての死者にとっての救いとなる。背負った過去や悲劇の重さを問わず、すくい上げる命の選別など行わず、皆を彼岸へと導くだろうから。

「そうさ、誰にもこころ寄せやしない。だから、こンなこともできる」
 逢真が行使するのは【十六の一番】。絶え間なく浴びせられる亡霊達の未練や呪詛を、己の神威をもって喰らう。忌まわしき『祭壇』により縛り付けられた彼らの呪縛を解き、輪廻に戻すために。
「お前さんらがどんな過去背負って、どんな苦痛を受けただか与えただか知らねェが……皆等しく慈しむばかりさ」
『アァァァァ……わたしは……わた、しは……』
 どんなに深い呪詛も慨嘆も、神は底知れぬ慈しみにて食い尽くす。苦痛を受ける事なく未練を消された亡霊達は、それ以上紡ぐ言葉を失い、本来あるべきところに還っていく。
 さながら『来たれ、汝甘き死の時よ』といったところか。《死》はドットに過ぎない。全てのいのちに等しく待ち受け、そして受け入れる終止符だ。

「かみさまが来たよ、お前さんたちの夜はここで終わりだ」
 ただそこに在るだけで、周囲の亡霊達が呪縛から解き放たれていく。その光景を見れば彼に崇敬、あるいは畏敬の念を抱く者もいるかもしれない。生者からは虞れ遠ざけられる病毒に戯ぶ神は、その威信をここぞと発揮して、終わりなき夜の囚人に終焉をもたらす。
「お眠り、子らよ。次生はきっとお天道様の下さ」
『アリ……がとう……ございます……』
 慈しみはあれど共感はなくとも、それは亡霊にとっては紛れもない救いの御手だった。
 もはや未練を口にすることもなく、死者はただ来世への希望だけを抱いて死に微睡む。
 その様子を最後までしかと見届けながら、逢真はやはり変わりなく微笑み続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

塩崎・曲人
「けっ、解放しに来たっつったろ」
お望み通り、この辛気臭い場所から解き放ってやんよ
――否が応でも、な

実際のとこ、ガチモンの成仏専門家でもないオレじゃあそこまで濃度が高まった怨霊を穏便に祓うのは無理だわ
なんでまぁ、もうちょい強引な手段で行かせてもらうぜ
「実体のない幽霊だろうが、呪術的に保護されてる祭壇だろうが……“気合”ブチ込んだ魔術でまとめて吹き飛ばしてやるよ」
天まで届くといいなぁオイ

【最後の手札】でアルダワ式の精霊魔法を起動
暴走気味に膨れ上がった火炎球で、祭壇ごと亡霊たちを薙ぎ払ってやるぜ
「次に生まれ変わるときには、この世界ももうちょいマシになってると思うぜ!あばよ!」



「けっ、解放しに来たっつったろ」
 これまで以上に喧しく、口々に自らの未練や怨嗟を訴えかけようとする亡霊達に、曲人は慌てんじゃねえよと毒づく。そんなに必死にならなくても言いたい事は分かっている、端からこちらはそのつもりで、わざわざこんな地の底までやって来たのだから。
「お望み通り、この辛気臭い場所から解き放ってやんよ――否が応でも、な」
『助けテ……オ願い……ウアァァアァアアァ……!!』
 声色を低めてそう告げると、その強気な言葉や態度に反応して亡霊達が群がってくる。
 死してなお『紋章の祭壇』に縛り付けられた彼らはもう、ただ解放と復讐を求めて呪いを撒き散らす怨嗟の塊。時には手荒な方法を取ってでも解放してやるのが慈悲だろう。

(実際のとこ、ガチモンの成仏専門家でもないオレじゃあそこまで濃度が高まった怨霊を穏便に祓うのは無理だわ)
 亡霊達の【呪われた言葉と過去】を聞きながら、曲人は冷静にそう判断を下していた。
 浄化や解呪に長けた者ならば、ここまで強力になった怨霊でも鎮められるのだろうが、そうでない自分は持っている手札で勝負するしかない。
「なんでまぁ、もうちょい強引な手段で行かせてもらうぜ」
 呪詛を聞き入りすぎないようにするのは今まで通り。亡霊と対峙する曲人の手の中に、赤い火の玉が出現する。いかにも喧嘩上等な格好をしているが、これでも彼はアルダワの魔法科コースは履修済み。意志と詠唱にて精霊を使役するその実力は錆びついていない。

「実体のない幽霊だろうが、呪術的に保護されてる祭壇だろうが……“気合”ブチ込んだ魔術でまとめて吹き飛ばしてやるよ」
『おオオォォォ……?!』
 どよめく亡霊達の目の前で、曲人が灯した火炎球はみるみる大きく膨れ上がっていく。
 古来から火炎には穢れを焼き祓い、死者を葬る"浄化"の属性がある。自然界に存在する火の精霊達は、その役割を狂いなく遂行してくれるだろう。
「天まで届くといいなぁオイ」
 これが彼の【最後の手札】。普段はあまり使っていない魔力を全力で注ぎ込むことで、火炎球はやや暴走気味に膨張を続け、本人よりも巨大になる。それは墓所の闇に夜明けを告げる、小さな太陽の如く『紋章の祭壇』を照らしだした。

「次に生まれ変わるときには、この世界ももうちょいマシになってると思うぜ! あばよ!」
 今にも破裂しそうな熱量の塊を、気合いを込めてブンと亡霊目掛けて投げつける曲人。
 誘導弾としての特性も備えたそれは、この地に縛り付けられた亡霊に吸い込まれる様に着弾し――直後に大爆発を起こして、『紋章の祭壇』ごと彼らを薙ぎ払った。
『グオオォォォォォォ……―――!!!!』
 彼らが痛みや熱を感じたのは一瞬だったろう。魂をも焼き焦がす精霊の炎は、亡霊達の呪いや未練もまとめて焼却して現世から葬り去る。炎の中から上がった亡霊の断末魔は、火の粉が爆ぜる音に紛れてすぐに分からなくなった。

「こんなもんか」
 火の手が多少収まってくる頃には、曲人の視界から亡霊たちは綺麗に一掃されていた。
 同時に火炎球を食らった『紋章の祭壇』も、あちこちが焦げて破損している。その戦果を確認した青年はニヤリと満足げな笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
引き続き1章で召喚した「神龍教派のクレリック」「光の断罪者」と共に戦闘。
再び、それぞれ【神罰の吐息】【光の断罪者】で亡霊達の浄化を指示し、自身は【ブラッド・オブリビオン】を発動。

「徒花の下には常に死の影が踊る」の「『姉桜』紅桜華」と「それが徒花となる前に、白よ白で在れよと」の「『妹桜』白桜華」の姉妹を召喚。
彼女達の【紅桜手鞠】【相枝相遭】や【白桜吹雪】等と桜の精としての力で亡霊達の浄化と癒しをお願いするわ。

【念動力】の防御壁と聖属性の結界【属性攻撃、結界術】で怨念達の攻撃の防御や呪いを弱めたりして、桜の姉妹や眷属達のサポート。

姉妹二人で呼び出してごめんなさいね。少し、手伝いをお願いするわ。



「貴女達は引き続き、亡霊達の浄化をお願い」
「かしこまりました」「全力を尽くします」
 フレミアの指示を受けたクレリックと断罪者達は、これまでと同様に【神罰の吐息】や【光の断罪者】の力を放った。聖なるブレスが『紋章の祭壇』に漂う瘴気を吹き飛ばし、破壊の光が闇を照らしだす。並大抵の怨霊であればこれで浄化できるのは証明済みだ。
『嗚呼……マダ……まだ……アァァァァ!!』
 だが、流石に『紋章』の素体としてこの地に縛り付けられた亡霊達の怨念は、彼女達の力だけでは浄化しきれない。【繰り返される怨嗟】は一度消してもすぐにまた同じ亡霊が現れ、嘆きと怨みの合唱を地下墓所に響かせる。幾らやってもこれではキリがない。

「血の隷属を用いて命ずる……。フレミア・レイブラッドの名の下に、嘗ての力を以て骸の海より戻り、わたしに力を貸しなさい」
 眷属だけでは浄化の力が足りないと判断したフレミアは、【ブラッド・オブリビオン】を発動してさらなる手勢を骸の海から召喚する。過去に血や体液を摂取したオブリビオンであれば、彼女のユーベルコードは一時的な使役が可能だ。
「「……だあれ? 私達を目覚めさせるのは」」
 現れたのは紅と白の桜の精の姉妹。姉である「紅桜華」がとんと手鞠をつき、妹である「白桜華」は桜吹雪をふわりと散らす。いと美しき二人の桜は、かつて影朧として帝都に災いをもたらし、そしてフレミアたち猟兵の尽力によって鎮められた御霊である。

「姉妹二人で呼び出してごめんなさいね。少し、手伝いをお願いするわ」
 転生の時を待つはずだった桜の姉妹に謝罪しつつ、フレミアは状況を手短に説明する。
 故あって成仏する事ができず、現世を彷徨い苦しみ続ける亡霊達。そうした者を癒やし転生させることが、桜の精に与えられた使命である。たとえ生まれた世界が異なっても、彼女達は傷ついた死者を見捨てはしない。
「わかりました。やりましょう」
「はい、姉様」
 事情を聞いた姉桜が静かに首肯すると、妹桜もこくんと頷く。かつて離れ離れになった紅白の花は、並び立って手を取り合うと、呻き声を上げる亡霊達に向けて枝を伸ばした。

『アァァぁぁ……? なに……この花は……?』
 桜の姉妹が放つ【相枝相遭】は、対象の罪と後悔を吸って花開く。未練を吸い取られた亡霊達はふと我に返ったように叫ぶのを止めて、呆然としながら枝と桜に包まれていく。
「私達があなた達の怨嗟を浄化します」
「どうか私達の桜にその身を委ねて……」
 そこに妹桜の放つ【白桜吹雪】が亡霊達を眠りへと誘い、姉桜の【紅桜手鞠】が彼らを吸い込んでいく。それは罪と記憶を浄化する揺り籠であり、取り込まれた死者はまどろみの中で生前の苦しみを全て癒やされ、安らかに転生の時を待つこととなる。
『あぁ……温かい……』
 手鞠の中からそれまでとは違う、安らぎに包まれた死者のささやきが微かに聞こえた。

「姉妹揃うと大した能力ね」
 桜の精としての本分を取り戻した姉妹の手並みに感心しつつ、フレミアは念動力と魔術で聖属性の防御結界を張る。亡霊の浄化は彼女らに任せ、自身は支援に専念する構えだ。
 亡霊達が放つ怨嗟の攻撃は結界に守られているフレミアの仲間には届かず。逆に結界から放たれる聖なる気が呪いを弱めて亡霊の力を失わせる。
「この調子で全員眠らせてあげましょう」
「「はい、フレミア様」」
 眷属達も桜の姉妹に負けじと、主人の支援を受けながら浄化の光と風を浴びせていく。
 世界を超えて結集した眷属と桜の精の共同作戦により『紋章の祭壇』に囚われた亡霊の救済は迅速に進められていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
引き続き【ソウル・リベリオン】で亡霊達の呪いと怨念を喰らい、自身の力へと変えて吸収…。

霊魔のレンズで透明化したり、憑依して潜んでいる亡霊達の居場所を探知して【ソウル・リベリオン】で魂を元に戻し、「破魔の髪飾り」による鈴の音で周囲一帯を浄化し、みんなを怨念から解放するよ…。

ヴェルペ…この悲しい魂達を救う為に、今一度、わたしに【破魔】の力を貸して…。
祓いましょう。封じましょう。奉じましょう…貴方達の強い無念、怨み、憎しみ、呪い…。
全てを受け止め、祓いましょう…。

これ以上、貴方達が苦しむ必要はないから…。
さぁ、その魂に、救いと安らかな眠りを…。



「呪詛喰らいの魔剣よ……また力を貸してもらうよ……」
 『紋章の祭壇』周辺をさまよう亡霊達と対峙した璃奈は、再び【ソウル・リベリオン】を振るって彼らの呪いと怨念を喰らい、自身の力へと変えて吸収していく。呪詛が強力になったという事は、そのぶん魔剣の糧としても効率が良くなったわけだ。
『グオオォォォぉぉぉ……憎い……憎い憎い憎イ……!』
 されど押し寄せる亡霊の数はまだ多く、数体を斬り祓ってもすぐに新手が湧いてくる。正面だけでなく壁や床からも突如現れる怨霊の攻撃に、彼女は対処を迫られる事となる。

「どこに隠れていても、わたしには視えているよ……」
 璃奈は見えないものを見せる霊魔のレンズの効力で、透明化したり憑依して潜んでいる亡霊達の居場所を探りあて、不意打ちを受ける前にソウル・リベリオンで斬り掛かった。闇に閃くその太刀筋は美しく、一度捉えた標的を決して逃しはしない。
『オアぁァァァあ……?! なゼ……』
 霞のような身体から呪いそのものへと変わり果てた亡霊を、魔剣の力が喰らっていく。
 それは死や破滅ではなく救済をもたらす刃。呪いの塊から在るべき姿に戻された魂は、もはや戦う力も意志もなく、ただ呆然とその場を漂う。

「力はもう十分集まったかな……」
 ソウル・リベリオンが喰らった呪詛の量を確かめてから、璃奈は魔剣を一度地面に突き立てて、身に着けた「破魔の鈴飾り」に手をそえる。この地に縛り付けられた膨大な数の亡霊を解き放つには、この鈴に宿る真の力が必要だ。
「ヴェルペ……この悲しい魂達を救う為に、今一度、わたしに破魔の力を貸して……」
 この鈴のかつての持ち主だった魔鏡の巫女の名を呼んで、少女は祈るように目を瞑る。
 すると、りん、と涼やかで澄みきった音色が響き、地下墓所の空気を微かに震わせた。
 さざ波のような反響音はけして大きくはなく、しかし闇に消えることなく響き続ける。

「祓いましょう。封じましょう。奉じましょう……貴方達の強い無念、怨み、憎しみ、呪い……。全てを受け止め、祓いましょう……」
 魔鏡の巫女が遺した破魔の力を、救いたいという一途な願いで魔剣の巫女が行使する。
 祝詞と共に響く鈴の音は『紋章の祭壇』の周囲一帯から呪いを浄化し、死者を怨念から解放する。辺りに満ちた忌まわしい呪詛は祓い清められ、漂う悪臭までもが消え去った。
『あぁ……わたしは、いったい……』
 呪縛から解き放たれた亡霊は生前の姿に戻り、悪夢から覚めたようにまばたきをする。
 長い長い苦しみからようやく救われた彼らに、璃奈は優しい声でそっと呼びかけた。

「これ以上、貴方達が苦しむ必要はないから……。さぁ、その魂に、救いと安らかな眠りを……」
『ぁ……ありがとう……』
 自分達を救ってくれた少女に感謝を伝えて、現世から去っていく亡霊達。彼らの安息が誰かに妨げられることはもう二度とないだろう。それが本来あるべき生と死の理なのだ。
 光の粒となって消えていく彼らの姿を、璃奈は最後までじっと見守り続けていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「よし、ラヴラビ53作目、作るか!」とかセフィ姉が言い出したので、当初カビパンはすこぶる機嫌が良かったのだが…

更にセフィ姉が「ただし路線変更」とかやる気満々にヌカシだしたので、カビパンは唐突に冷めた。
「カレー素材ないから無理です」とか
「か、恰好いいですね(うわダッセー)」
ギャグキャラが急に冷静になり、ノリに合わせたツッコミ役に冷たくなるアノ現象が起きた。

一人ハッスルしているセフィ姉を尻目に、カビパンと魔剣とエキストラ役の亡霊達は冷めた対応をしながら談笑していた。
「ごめんねぇ、貴方達を巻き込んじゃって…亡霊、大変でしょう?」
『イェイェ…そちらこそォ』
いつになくのほほんとして平和な雰囲気になった。


セフィリカ・ランブレイ
カビィちゃんと(f24111)と

貴方達の無念は絶対に晴らすよ
『早く楽にしてやる事ね。それが優しさよ』

魔剣と言葉を交わし
でも……
よし、ラヴラビ53作目、作るか!
ただし路線変更、ディアンドラと祝杯はヤメ
騙して悪かったな!をする方向で!
祝杯のメイン、マグロ寿司に仕込む具材の相談をしよう!

ヤバいカレーの用意、お願いね

炸裂するマグロ寿司、会心のドヤ顔キメ台詞、『チェックメイト』
これは格好いいぞ、私!
トリのスカイツリーダイブはディアンドラが!

『色々センスが限界じゃない?』
空元気もあるけど
カビィちゃんの勢いは悪霊だって巻き込めるさ
どうせ滅ぼすなら楽しい中でね

『…最終的に僅かでも和めば良しとしておくかしらね』



「貴方達の無念は絶対に晴らすよ」
『早く楽にしてやる事ね。それが優しさよ』
 尽きぬ怨念に囚われた亡霊達を前にして言葉を交わす、セフィリカと魔剣シェルファ。その表情は真剣で、想いも目的も共通している。『紋章』の素体としてこれ以上この地に縛り付けられるくらいなら、一思いに昇天させてやるほうが彼らにとって救いだろう。
「でも……」
 と、しかしセフィリカは何やら思案顔。ちらりと視線を向けた先にはカビパンがいる。
 彼女がいる限りこの場もどうせギャグ化する。だったら自分から飛び込んでいった方が良いのではないか? 予測不可能なカオスを少しでもコントロールできるという意味で。
 それに、ここの怨霊の雰囲気は余りに陰鬱が過ぎる。だったらギャグのほうがマシだ。

「よし、ラヴラビ53作目、作るか!」
「やる気になったんですねセフィ姉!」
 かくして唐突にセフィリカが宣言すると、目を輝かせたのはもちろんカビパンである。
 いつもは巻き込まないと乗ってこないのに、相手から制作協力を言い出してきたのだ。すこぶる機嫌が良くなったようで、紋章をピカピカと変な色に光らせるが――。
「ただし路線変更、ディアンドラと祝杯はヤメ」
「え?」
「騙して悪かったな! をする方向で!」
 さらにセフィリカがやる気満々にそんな事をヌカシだした途端、彼女は唐突に冷めた。
 自分の作った脚本を他人にイジられるのが好きじゃないタイプだったのかもしれない。しらーっと急に目から光が消えたその様子に、セフィリカはまだ気付いていない。

「祝杯のメイン、マグロ寿司に仕込む具材の相談をしよう!」
 セフィリカが考えたのは、ディアンドラが食べる寿司に変なものを入れて驚かせようというドッキリ作戦。作品のクライマックスを締めるオチとしては悪くないかもしれない。あくまでギャグだと割り切ってしまえばの話だが。
「ヤバいカレーの用意、お願いね」
「カレー素材ないから無理です」
 だがカビパンの方はまるで気のない生返事。仮にも自分が最初に提案した「ラヴラビ」シーズン53なのに、まったくと言って良いほどやる気が感じられない。気がつけば完全に熱量が逆転している。

「炸裂するマグロ寿司、会心のドヤ顔キメ台詞、『チェックメイト』。これは格好いいぞ、私!」
「か、恰好いいですね(うわダッセー)」
 何かが乗り移ったようにハイテンションなセフィリカに、相槌を打ちつつ内心で冷めたツッコミを入れるカビパン。ギャグキャラが急に冷静になり、ノリに合わせたツッコミ役に冷たくなるアノ現象が起きている。
「トリのスカイツリーダイブはディアンドラが!」
 と一人ハッスルしているセフィリカを尻目にカビパンはスーッとその場を離れていき、エキストラ役の亡霊達(勝手に決定)の横に体育座りする。さっきまで怨念や呪いを撒き散らしていた彼らも、このノリに付いていけずに困惑顔であった。

「ごめんねぇ、貴方達を巻き込んじゃって……亡霊、大変でしょう?」
『イェイェ……そちらこそォ』
 なおもノリノリなセフィリカに冷めた対応をしながら談笑する、紋章の悪霊カビパンとこの地に縛り付けられた亡霊達。本来ならこんな風に話せる関係では無いはずなのだが、【ハリセンで叩かずにはいられない女】による世界のギャグ化はしっかり作用していた。
『色々センスが限界じゃない?』
「……空元気もあるけど。カビィちゃんの勢いは悪霊だって巻き込めるさ」
 一方でセフィリカもこんな展開を予想していたようで、シェルファと小声で話し合う。
 ここが怨念の最深部たる『紋章の祭壇』とは思えないほど、いつになくのほほんとして平和な雰囲気がカビパンを中心として亡霊達に伝播している。これで結果的に怨嗟や呪詛が和らぐながら、彼女がギャグ担当になった意味もあるのかもしれない。

「どうせ滅ぼすなら楽しい中でね」
『……最終的に僅かでも和めば良しとしておくかしらね』
 懐疑的ながらも一理あるかと認めるシェルファ。セフィリカがハイテンションにネタを出し、カビパンがはいはいと冷めきった対応をし、亡霊達がやれやれと肩をすくめる――そんなコントのような空間が気付けば出来上がっていた。
『久しぶりダ……こんナ気分ニなっタのは……』
 最終的にはセフィリカの【月詠ノ祓】により一閃の下に葬り去られた亡霊達だったが、その時の彼らの表情もどこか穏やかだった。若干呆れが混じっていたようにも見えたが。
 無事に怨念をギャグでふっ飛ばし、ついでにディアンドラを迎え撃つ作戦もできた一同は、本番ギリギリまで「ラヴラビ」最新作の内容について話し合う(?)のだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
対処が容易となる理由が、半ば実体化する程の怨嗟とは…
遣り切れません

亡霊達を電脳剣や大盾殴打で迎撃
繰り返す儘に暫し応戦

…頃合いでしょう

飛翔UCで亡霊達を纏めて釘付け
攻撃動作強制停止

悍ましき儀式の首魁を討ち滅ぼす為、私達はこの地を訪れました
その力は先程示した通りです

皆様の無念がどれ程の物か、私には想像も及ばぬものでしょう
ですが騎士として、しかと受け取りました
皆様の仇を討ち、新たな悲劇を生み出さぬ為に…お下がり下さい

もし納得出来ぬというならば…
(電脳空間に●物を隠していた義護剣ブリッジェシー(破魔)引き抜き)
ダンピールの死霊術士鍛えたこの剣で、祓わせて頂きます!

(…これは最後の手段、出来れば…)



「対処が容易となる理由が、半ば実体化する程の怨嗟とは……遣り切れません」
 これまでよりも深い怨念をたたえた亡霊達を前にして、トリテレイアは皮肉な現実を噛みしめる。純粋な霊的現象に対して彼ができるのは「避ける」か「耐える」くらいだが、相手が半ば実体を得たことで「物理攻撃」という選択肢が新たに生まれている。
『アァァァァ……辛い、苦シい、痛イ……!!』
 口々に嘆きや怨みを訴えながら襲い掛かる亡霊を、騎士は電脳剣と大盾を構えて迎え撃った。黒い靄のような相手を剣で斬り払い、盾で殴り倒す――単純な戦闘技術で言えば、生前は非戦闘員だった亡霊と歴戦の騎士とでは明らかな隔たりがあった。

『憎イ……憎イ……』
 だが【繰り返される怨嗟】により、瀕死となった亡霊は消滅したかと思えばすぐに復活する。この地下墓所に縛り付けられている限り、安易な消滅すら許されないというのか。戦力差は歴然でありながら、決着のつくことのない戦いが暫し繰り返される。
「……頃合いでしょう」
 トリテレイアは繰り返す儘に暫し応戦を続けていたが、なにも復活する敵に攻めあぐねていた訳ではなかった。怨嗟の矛先が集まってきたところで【電脳禁忌剣・通常駆動機構:抑止兵装『守護の花』】を起動――無数のブローディア型の誘導兵器を射出する。

『おオオォォォぉ……!!?』
 千を超える『守護の花』は複雑な軌道を描いて戦場を飛び回り、標的を包囲攻撃する。
 亡霊達の体に花の鋭利な茎の根本が突き刺さり、攻撃動作が強制的に中断させられる。纏めて釘付けにされた彼らに向けて、トリテレイアは静かに語りかけた。
「悍ましき儀式の首魁を討ち滅ぼす為、私達はこの地を訪れました。その力は先程示した通りです」
 自分達は決してあなた達に仇なす者ではなく、本当の敵は別にいる。その者を倒すことはあなた達の怨嗟と無念を晴らすことにも繋がっている。望みは一致しているはずだと、真摯な言葉と態度で停戦を訴えかける。

「皆様の無念がどれ程の物か、私には想像も及ばぬものでしょう。ですが騎士として、しかと受け取りました」
 終わりの見えない怨嗟の深さは、応戦を通じて体感した。死してなお晴らすことのできない生前の悲劇と苦痛――その凄惨な過去をもたらした元凶を討ち倒せる実力ある者は、猟兵をおいて他にいない。亡霊達もその強さはしかと身に沁みたはずだ。
「皆様の仇を討ち、新たな悲劇を生み出さぬ為に……お下がり下さい」
 穏やかな、しかし堂々とした態度の騎士を前にして、亡霊達は誰も動く事ができない。
 感じ入っているのか、あるいは攻めあぐねているだけか。ここで不退転の決意を明確に示す為に、トリテレイアは電脳空間に隠していた「義護剣ブリッジェシー」を引き抜く。

「もし納得出来ぬというならば……ダンピールの死霊術士鍛えたこの剣で、祓わせて頂きます!」
 薄紫の壮麗な装飾で彩られた、その白銀の騎士剣はトリテレイアが持つ霊体への貴重な対抗手段だった。この破魔の剣であれば強制的に怨嗟を断ち切り、亡霊に滅びをもたらす事も可能なはずだ。
(……これは最後の手段、出来れば……)
 固唾を呑むような思いでじっと相手の出方を待っていると、亡霊達は呻くのを止め――道を開けるようにすうっと後ろに下がった。騎士の力と意志を認めたということだろう。

「……感謝致します」
 トリテレイアは剣を納めると亡霊達に一礼し、『紋章の祭壇』に向かって歩きだす。
 この祭壇と『暗夜卿』ディアンドラこそ、この地にまつわる全ての悲劇の元凶である。誓いを新たにした機械騎士の炉心には、静かなる闘志が燃え盛っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
嵐さん(f03812)と

亡霊さん達は罪なき犠牲者。
彼らの苦痛と悲嘆を受け止め、せめて怨念から解放してあげなくては。

亡霊さん達を傷つけない様、UCによる防御力強化+オーラ防御で呪いと精神攻撃に耐える力だけを強化します。
そして嵐さんが襲われないよう、除霊+結界術による亡霊除けの結界を展開します。

詩乃は前に進んで亡霊たちの中に入り、呪いに耐えつつ彼らに話しかけます。
「助けられなくてごめんなさい。せめて、貴方達をこのようにした者は私達が倒します。だから、どうか安らかに眠って下さい。」とお願いします。
そして先程と同様に慰め・浄化・祈りを基本に、楽器演奏と神楽舞(ダンス)を以って優しく慰霊を執り行います。


鏡島・嵐
詩乃(f17458)と

怨念が残っちまうくらいに酷え目に遭わされた、か。
救うって言ってもおれに大したことが出来るわけじゃねえし、恨みつらみを他の奴にぶつけるしか無い奴までは救ってやれねえ。儘ならねえモンだ。
……まあ、やれるだけのことはやるか。正直怖ぇけど。

詩乃が出来る限り怨念を慰めるつもりらしいんで、おれはその手伝い。
ぶつけられる怨念に〈呪詛耐性〉で抵抗しながら、攻撃的な奴を〈マヒ攻撃〉を撃ち込んで足止めか、最悪倒すようにする。
繰り返される怨嗟は、《逆転結界・魔鏡幻像》で可能な限り打ち消す。

おれは詩乃ほど器用じゃねえし慈悲深くもねえって言ってるだろうが! 向かってくるなら、力ずくだ!



「怨念が残っちまうくらいに酷え目に遭わされた、か」
 生前に受けた凄惨な体験のほどが偲ばれる、見るも哀れな姿で墓所をさまよう亡霊達を見て、ぽつりと呟いたのは嵐。できることなら苦しみから解放してやりたいが、彼一人にできることには限界がある。
「救うって言ってもおれに大したことが出来るわけじゃねえし、恨みつらみを他の奴にぶつけるしか無い奴までは救ってやれねえ。儘ならねえモンだ」
 怨念が強すぎるあまり聞く耳を持たないような輩は、どんなに哀れでも力尽くで退けるしかない。それでもなるべくは救ってやりたいという想いは彼と、その傍らにいる詩乃に共通する意志であった。

「亡霊さん達は罪なき犠牲者。彼らの苦痛と悲嘆を受け止め、せめて怨念から解放してあげなくては」
 謂れなき悪意によってこの地に縛り付けられた亡霊達を見捨てれば、女神の威信も地に落ちよう。ここまでの道中と何ら変わりなく、詩乃はできる限り怨念を慰めるつもりだ。
「……まあ、やれるだけのことはやるか。正直怖ぇけど」
 彼女の決意が堅いことを知った嵐は、震えを抑えこんでその手伝いに回る。浄化の妨げになるものを処理する、こちらも道中と同じ役割だ。ただ少し、この場にいる亡霊は墓所のトラップよりも危険で攻撃的なだけで。

「これより神としての務めを果たします」
 【神事起工】を宣言した詩乃の身体が神気のオーラに包まれ、天地に宿りし力が彼女の防御力を高める。さらに彼女が紙垂を振れば、亡霊除けの結界が嵐の周囲に展開される。
「これで嵐さんは襲われないはずです」
「助かる。けど詩乃も気をつけろよ」
 嵐はお手製のスリングショットに弾を込めつつ、前に進んでいく詩乃の背中を見守る。
 呪いや精神攻撃に耐える力は自分よりも彼女のほうが強化されているはず。それでも、あれだけの数の怨霊相手に気を抜けば、たとえ神であろうと取り殺されかねない。

『憎イ……絶対ニ……許さナイ……』
 亡霊達の中に入った詩乃を襲う【頭に鳴り響く止まない悲鳴】。靄のような見た目から呪いそのものへと変化した怨嗟の暴風雨に耐えつつ、彼女は慈しみをこめて話しかける。
「助けられなくてごめんなさい。せめて、貴方達をこのようにした者は私達が倒します。だから、どうか安らかに眠って下さい」
 取り出したのは敵を討ち滅ぼすための武器ではなく、鎮魂の音色を奏でるための龍笛。
 先程までと同様に傷ついた御霊を慰め、呪いを浄化する祈りの調べを墓所に響かせる。

『なンだ……こノ音は……心が、洗われるような……』
 女神が執り行う慰霊の儀は、これまでよりも強力な亡霊が相手でも効果は覿面だった。
 魂に染み入る浄化の音色は、怨嗟に衝き動かされていた彼らを我に返らせる。しかし、中でも攻撃的な一部の霊は、それでも正気に戻らず襲い掛かってくる。
『ウアアァァァァァ――……ッ!?』
「落ち着けっての!」
 それを止めたのは、後方で慰霊の様子を見守っていた嵐からの援護射撃だった。仄かに霊力の宿った弾丸を撃ち込まれた亡霊は、全身がマヒしたようにピタリと動きを止める。

『グアァ……!!』
 攻撃を受けた亡霊達は怨念の矛先を嵐に変えて襲いかかるが、亡霊除けの結界と本人の耐性が呪いに抵抗する。彼は聞き分けのない連中を仕置きするように、矢継ぎ早に弾丸を撃ち込んで足止めしつつ、語調を荒げて一喝する。
「おれは詩乃ほど器用じゃねえし慈悲深くもねえって言ってるだろうが! 向かってくるなら、力ずくだ!」
 これで聞かなければ倒すしかないが、それは本当に最後の手段だ。あくまで慰霊に拘る詩乃の意志を尊重したいのもある。急所を外されてマヒした亡霊は【繰り返される怨嗟】で復活しようとするが――。

「鏡の彼方の庭園、白と赤の王国、映る容はもう一つの世界。彼方と此方は触れ合うこと能わず。……幻遊びはお終いだ」
 嵐の発動した【逆転結界・魔鏡幻像】が、亡霊のユーベルコードを相殺・無効化する。
 彼が召喚した魔鏡に映し出された相手の姿は、怨念や呪いのせいで酷く歪んでいて――それを見せつけられた亡霊達に、微かな動揺が走る。
「どうか怨みを鎮めてください……貴方達の魂が歪みきってしまう前に……」
 その小さな心の隙にすっと染み込むように、優しさと悲哀のこもった詩乃の声が届く。
 音曲だけで癒やしきれぬ怨みならばと、彼女は戦巫女装束の袖をふって神楽舞を踊り、蔓延した呪詛の浄化を試みる。

『アァァぁぁ……コの気持ちは……あたたかい……』
 諦めない詩乃の想いはとうとう怨念の浄化を成し遂げ、亡霊たちの心の闇を晴らした。
 神気の輝きをまとって美しく舞う巫女に送られ、開放された魂は在るべき場所に還る。彼らの安息が現し世の者の手によって妨げられる事は、もう二度と無いだろう。
「なんとかなりました……」
「お疲れさん。良かったな」
 神楽を舞い終えてほっと胸をなでおろす詩乃に、優しく笑いかけながら嵐がねぎらう。
 危うい場面もありはしたが、結果は一人も倒すことなく亡霊を鎮められた。慰霊の儀は大成功と言って良いだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
指定UC発動は1章から継続

…この、呟きは
どれだけ苦しめられ、惨たらしく殺されたのか
しかも死してなお、紋章の素体とされるべく解き放たれないなんて

…皆(纏っている魂たち)も同じ想いか
そう、だよな…
(※敬輔の意に関係なく、魂魄の想いが口から出ても可)

呪詛が耳に入る前に、彼らを怨念から解放しよう
彼らを恩讐から解放するとの想いを籠めて「2回攻撃、優しさ、属性攻撃(聖)」を乗せた「衝撃波」を連射し弱体化
怨念が弱まったら亡霊たちの同意を取り付けた上で黒剣で斬りつけ吸収しつつ祭壇も破壊

俺も手を貸すから、暗夜卿とやらに復讐しよう
…そのためなら、一時的に俺の身体を使ってもいいから



「……この、呟きは。どれだけ苦しめられ、惨たらしく殺されたのか」
 『紋章の祭壇』に辿り着いた敬輔は、そこにいた亡霊達の呪詛のような呟きを聞いて、少なからず動揺を受けた。彼らが語る過去はそれ程までに凄惨であり、耳を塞ぎたくなるような悲嘆と怨嗟と絶望に満ちていた。
「しかも死してなお、紋章の素体とされるべく解き放たれないなんて」
 命だけではなく魂や怨みすらも憎き敵に利用され、復讐を遂げることも昇天することも叶わない、この地に縛り付けられた亡霊達――話には聞いていたものの、その悍ましさは実際に目の当たりにすれば想像以上であった。

『あのひとたちも……わたしたちと同じ……』
 敬輔の意に関係なく、身にまとった魂魄の想いが口から出てくる。かつて「かみさま」にされた少女たちの魂や、これまでの道中で受け入れた犠牲者の怨念が、亡霊達の呟きに強く共感している。
「……皆も同じ想いか。そう、だよな……」
 その気持ちは敬輔にも痛いほどよく分かった。或いは誰よりも亡霊達の無念に共感しているのは彼かもしれない。一度耳にしてしまった以上、その嘆きを聞かなかった事にして無情に斬り捨てるなどできはしない。彼もまたオブリビオンへの復讐を誓った者なれば。

「彼らを怨念から解放しよう」
 【呪われた言葉と過去】に聞き入ってしまい、凄惨な過去に取り込まれてしまう前に、敬輔は行動を開始した。【魂魄解放】によって得た魂の力を黒剣に集め、彼らを恩讐から解放するとの想いを籠めて、斬撃と共に衝撃波を放つ。
『オオォォォぉぉ……!!!?』
 その衝撃波は亡霊達を傷つけることはなく、彼らが放つ呪いや怨念のみを吹き飛ばす。
 闇に覆われた『紋章の祭壇』を照らす聖なる波動。そこには復讐心に押し込められて、普段は表に出ることのない敬輔の優しさも込められていた。

『ぁ、あ……私達は……何を……』
 怨念が弱まり話ができる状態まで亡霊達が落ち着いたところで、敬輔は前に進み出る。
 片手には黒剣を携えたまま、もう片方の手をすっと差し伸べ、青目赤目のオッドアイで彼らひとりひとりの顔を見渡しながら。
「俺も手を貸すから、暗夜卿とやらに復讐しよう……そのためなら、一時的に俺の身体を使ってもいいから」
 望むならば力尽くで怨霊を取り込むことも可能だが、そんなことをする気は一切ない。
 あくまで合意の上で――彼らが自らの意志で復讐を求めるのなら、自分はそれを叶えるために剣を振るおう。同じ絶望を味わった復讐者として。

『……分かった……君と共に行こう……』
『私達の怨みを……あいつに思い知らせて……!』
 その提案を真剣だと受け取った亡霊達は、怨みを晴らせるならばと迷いなく合意した。
 敬輔はそれを確認してから改めて黒剣で彼らを斬りつけ、怨念と魂魄を吸収していく。
「……ありがとう。ではまず、最初の一撃だ」
 想いと魂を喰らって力を増した剣を、『紋章の祭壇』に向かって勢いよく振り下ろす。
 放たれた衝撃波はこれまでとは比べ物にならないほどの規模と威力で、薔薇を散らし、死臭を吹き飛ばす。そうして祭壇に刻まれた斬撃痕は"彼ら"復讐者の宣戦の印であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
臭い物には蓋をする。
…いえ、全然し切れて無いですけど。
ここの主人のお里が知れますことで。

さて…
目下、すべきことはシンプル。
“救う”だなんて驕った事は申しませんよ。
僕は只の、“殺す者”ですから。

性質から鑑みるに、遠距離からの攻撃が主か…
挙動を視。特性、行動の前兆…
見切る全てを攻防に活かし。
多方向から来る様であれば、数体へと鋼糸を絡げダメージを与えつつ、
己は上へ巻き取るリールの力を利用しぶつけ合ったり。
壁や柱を登り、此方も遠距離から喉より上狙いでナイフ投擲。

敵の声を遮る様、音はまぁ派手に。
呪詛でも恨み辛みでも、序でに持ってっても良いが…
それでも、俺は、救わないから。
鋼糸が行き渡ったら、放つ
――拾式



「臭い物には蓋をする。……いえ、全然し切れて無いですけど」
 ここの主人のお里が知れますことで。と、まだ見ぬ『暗夜卿』への皮肉を呟くクロト。
 ここまでも散々悪臭を嗅がされてきたが、その"発生源"ともなれば鼻が曲がりそうだ。随分と溜め込んだものだと、目の前の惨状に恐れより呆れや厭気が先立つのは彼らしい。
「さて……目下、すべきことはシンプル」
 立ちはだかるのは新たな『紋章』の素体として、この地に縛り付けられた亡霊の群れ。
 元が哀れな犠牲者だろうが、『紋章の祭壇』を破壊するためには退けなければいけない障害なのは事実であり――彼らを"解放"する方法など、クロトは1つしか知らない。

「"救う"だなんて驕った事は申しませんよ。僕は只の、"殺す者"ですから」
『憎い、憎い、憎イ……ウゥウゥァアアアァァ―――ッ!!』
 ワイヤーを操るグローブを構え、明確な殺意を示したクロトに亡霊の群れも反応する。
 彼らの武器は【呪われた言葉と過去】。呪詛のような呟きに聞き入ってしまった者は、亡霊自らが体験した凄惨な過去を追体験させられてしまう。
(性質から鑑みるに、遠距離からの攻撃が主か……)
 言い換えれば呟きが聞こえない「射程外」から戦えば、殺しの腕前ではクロトが勝る。
 敵の挙動を視て、特性、行動の前兆、見切る全てを攻防に活かし、糸を張り巡らせる。衝動的に喚く亡霊と、冷徹な理性を備えたクロトでは、見事に対照的な戦い方となった。

「ようこそ、僕の間合いへ」
『ギャッ!?』
 呪詛を聞かせようと多方向から迫ってくる亡霊達を、クロトの張った鋼糸が絡げ斬る。
 周囲に張った鋼糸の陣を、十指の動きや手首の返しで精緻に制御する。道中でも見せた技法を戦闘に活用すれば――否、元は殺しの技なのだから、効果の程は問うまでもなく。
「捕まりませんよ、それでは」
『うギャッ?!』
『グエっ!!』
 彼がリールを巻き取って上に昇っていくと、鋼糸に絡まった亡霊はそれに引きずられてぶつかり合う。派手な衝突音と悲鳴が『紋章の祭壇』に木霊し、呪いの呟き声を遮った。

「呪詛でも恨み辛みでも、序でに持ってっても良いが……それでも、俺は、救わないから」
 右往左往する亡霊達を見下ろして、壁や柱を登るクロト。その眼差しは冷たく、鋭く、普段の軽妙な敬語ではなく、時折みせる毒の空言が滲み出している。彼も彼なりに思う所はあるのかもしれないが、傭兵の胸の内は余人が容易に探れるものではない。
『ギェ……――!!』
 なおも呪詛を吐こうとした亡霊の喉の上を、黒染めのスローイングナイフが切り裂く。
 一体いつ抜いたのだろう。鋼糸の操作中も放たれる投刃は、標的から的確に声を奪う。反撃らしい反撃もできぬまま、気付けば亡霊達は鋼糸の檻の中に誘い込まれており――。

「――拾式」
 鋼糸が行き渡れば、クロトは断裁のユーベルコードを放つ。遍く張り巡らされた無数の糸は、この世で最も細い死神の鎌――敵に逃げ場を与えず、多方向から同時に切り裂く。
『……―――!!!!!』
 断末魔の絶叫を上げる暇もなく、細切れになるまで切り刻まれた亡霊は人の形を失い、黒い靄になって散っていく。天井から降り立った彼の周りに、もはや敵の姿はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
前章から【代行者の羈束・過去を刻むもの】の呪言詠唱を維持し、
あえて憑依させた亡霊達を左眼の聖痕に受け流して吸収、捕縛しUCを発動
亡霊達の精神攻撃を自前の呪詛耐性と救世の誓いを強く祈り精神を賦活する事で耐え、
逆に降霊した彼らの呪詛に同調して協力を要請する

"…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…"

…私には果たすべき使命が、受け継いだ誓いがある
そして、死んでいった多くの人達から託されてきた想いがある

…貴方達がその涙を、その憎悪を、その怒りを忘れる事ができないのなら、このまま私に憑いてきなさい

…生者に害為す事を止められ無いその怨嗟を刃にして、
貴方達の遺志を正しき相手に叩き付けてあげるから



「黒き咎人に断罪の刃を……」
 猟兵達による『紋章の祭壇』の浄化作戦が進む中、リーヴァルディは道中から引き続き【代行者の羈束・過去を刻むもの】の呪言詠唱を維持していた。取り込んだ亡霊達の怨嗟の声がそれに重なり、凄まじい呪力が彼女の周りに溢れ出している。
『ウゥゥゥゥゥ………!』
 その呪力に引かれて集まってきたか、この地に縛り付けられた亡霊達が呪いそのものと化して襲い掛かって来る。本来ならば避けられるはずの奇襲――だが彼女はそれを回避しようとせずに、聖痕の刻まれた左眼でじっと彼らを見つめる。

「……汝ら、この瞳をくぐる者、一切の望みを棄てよ」
 "名も無き神"との契約の証であるリーヴァルディの聖痕は、怨念を喰らい力に変える。
 彼女は亡霊達の憑依をあえて受け入れることで、その能力――【代行者の羈束・断末魔の瞳】を発動させた。
『助けテ、痛イ痛痛イ、いや嫌イヤイヤ嫌……』
 【頭に鳴り響く止まない悲鳴】が精神を侵食していく。だが彼女は持ち前の耐性で呪詛に耐え、さらに救世の誓いを心に強く祈り、悲鳴に呑み込まれないよう精神を賦活する。これしきの呪いに耐えられずして、どうして世界に救いをもたらせようか。

「"……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……"」
 魂に刻んだ誓いを言葉にすると、亡霊は呪いと共に"代行者の羈束"に吸収されていく。
 リーヴァルディはそのまま意志を保ちつつ、今度は逆に彼らの呪詛との同調を図った。
「……私には果たすべき使命が、受け継いだ誓いがある。そして、死んでいった多くの人達から託されてきた想いがある」
 背負ってきた想いの数が、自分を前進させる力になった。彼女の望みはここにいる亡霊にも想いを託してもらうこと。ただ怨念から力を搾取するのではなく、取り込んだ死者と心を通わせられた時にこそ、【断末魔の瞳】は最大の効果を発揮するのだから。

「……貴方達がその涙を、その憎悪を、その怒りを忘れる事ができないのなら、このまま私に憑いてきなさい」
 無理強いはしない。しかし、ここでただ彷徨っていても亡霊達の怨念は敵に利用され、新たな『紋章』を作り出すための素体にされるだけだ。どれだけ憎くとも恨めしくとも、彼らには無念を晴らすことができない。だが、リーヴァルディならば――。
「……生者に害為す事を止められ無いその怨嗟を刃にして、貴方達の遺志を正しき相手に叩き付けてあげるから」
 無軌道な怨念と届かぬ怨嗟に、彼女は意味を与えてやれる。本懐を果たさせてやれる。
 やり場のない想いを抱え続けてきた亡霊達にとって、その要請は福音にも等しかった。

『我らの無念……ドウカ……奴に……』
「……ええ。約束するわ」
 かくして亡霊達はリーヴァルディに自らの怨嗟を託し、聖痕に宿り続ける事を選んだ。
 左眼に疼く熱と力を感じながら、彼女はぐっと大鎌を握り直す。この地に縛られていた亡霊達を味方につけた今、『紋章の祭壇』の破壊を阻む障害はあと1人だけ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『暗夜卿』ディアンドラ・ノアーヴェ』

POW   :    黒の息吹よ、我が血を讃えよ
【冷たい眼差しで死刑宣告を呟いて】から、戦場全体に「敵味方を識別する【漆黒の血霧】」を放ち、ダメージと【視界不良】の状態異常を与える。
SPD   :    小さき子らよ、我が夜に遊べ
【敵の血を吸った使い魔のコウモリ】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[敵の血を吸った使い魔のコウモリ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
WIZ   :    薔薇の夜よ、我が身を呪え
自身の【黒薔薇のイヤリング】を捨て【吸血種としての真の姿】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はジュリア・ホワイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……亡霊どもが騒がしいと思えば。こんな所にまで来ておったか、猟兵よ」

 猟兵が亡霊の対処を終えてから休む間もなく、新たな気配が『紋章の祭壇』に現れる。
 幼さを感じさせる声に振り返れば、黒いドレスに身を包んだ可憐な少女が立っていた。あどけない見た目とは裏腹に、その所作や口調には年経た者の落ち着きと気品を感じる。

「すまぬが、そなたらには興味がない。我が気にしておるのは『闇の救済者』とやらよ。特別な力も持たぬか弱き人間であるあやつらが、必死にあがく様は見ていて飽きぬでな」

 『暗夜卿』ディアンドラ・ノアーヴェは、猟兵達に厭世的な視線を向けつつ語りだす。
 彼女は長らく吸血鬼同士での勢力争いや、同族殺しのような脅威との戦いなどには何ら興味を示さなかったという。それが重い腰を上げて『紋章』の創造という形で地上に干渉するようになったのは、『闇の救済者』の活動が拡大しはじめた時期からだ。

「果たして彼奴らの執念はこの紋章の祭壇に辿り着くのか? あるいは我が紋章を与えた辺境伯に滅ぼされるのが先か。どちらに転んでも面白いものが見られそうではないか」

 地上の民をもてあそぶ陰謀も暗躍も、全ては悠久の時の退屈を埋めるための暇つぶし。
 飽く程に生きた彼女にとっては、またたく間に死んでしまう弱き命の必死の足掻きが、そんなに愉快なものなのか。定命の者にその心理を理解することは難しいだろう。

「ゆえに、まだここを壊させる訳にはいかぬ。招かれざる客にはお帰り願おうか」

 すっとディアンドラが僅かに目を細めた瞬間、凄まじいプレッシャーが猟兵達を襲う。
 彼女が胸に宿している紋章は、この中に目にした者もいるだろう『辺境伯の紋章』だ。
 宿主を強化する以外に特殊な効果はないが、地上のオブリビオンと第五の貴族とでは、根本的な力の差ゆえに「強化」といっても雲泥の差が生じる。

「逃げるならば追わぬよ。せいぜい楽しませておくれ」

 常に厭世的ゆえに老獪で不遜。そしてそれに見合うだけの実力が『暗夜卿』にはある。
 最後にして最大の障害である彼女を討たねば『紋章の祭壇』を破壊する事はできない。
 暗夜の地下墓所の最深部にて、猟兵達の戦いはいよいよクライマックスの時を迎えた。
朱酉・逢真
心情)マ・気になるのンはわかるがね。俺なら人間が勝つのに賭けるし。だがそれは〈いま〉同士ならでは、お前さんら〈過去〉だろう。過ぎたる時に脱落した者が、いまなお走り続けるものに手をかけるのは赦されていないのだよ。
行動)使い魔たちは俺の血を吸いたいのかね。いいとも、おいで。この指とまれ。この宿(*からだ)は病毒のカタマリ、血なぞどこにも流れちゃいない。みィんな腐り落ちるだけさ。暗がりに裏切られたことはあるかね? 戦場を真の闇で覆おう。周囲すべての闇を実体化し枷としよう。槍と変え、胸の紋章ごと祭壇を貫こう。使い魔らを握りつぶそう。10年も1000年も大差ない。幼子よ、生くるに飽いたならお眠り。



「マ・気になるのンはわかるがね。俺なら人間が勝つのに賭けるし」
 悠久の時を生きた吸血鬼の理屈に、永劫の時を生きる神は同意するようなことを言う。猟兵でもないただの人間達が、『闇の救済者』としてこの世界に変革をもたらせるのか。たしかに興味深い事象ではあるだろう。
「だがそれは〈いま〉同士ならでは、お前さんら〈過去〉だろう。過ぎたる時に脱落した者が、いまなお走り続けるものに手をかけるのは赦されていないのだよ」
 それが病毒に戯ぶ神、逢真が語る道理であった。いかに興味をそそられる題材だろうがオブリビオンに生者を玩ぶ権利はない。勝手にこちらの「仕事」を増やすようであれば、敵として始末するのみだ。

「残念だ、禍つ神よ。そなたであれば我が乾きを理解できるかと思ったが」
 『暗夜卿』ディアンドラは言葉とは裏腹にさして気にも留めていない態度で、逢真へと視線を向ける。すると暗闇から無数のコウモリの群れが現れ、靄のように彼女を囲んだ。
「小さき子らよ、我が夜に遊べ」
 卿の号令と共に使い魔たるそれらは飛び立ち、獲物の血を吸い尽くさんと襲いかかる。
 バサバサと地下墓所に響き渡る羽ばたきの音は、不吉を告げる夜からの呼び声だった。

「使い魔たちは俺の血を吸いたいのかね。いいとも、おいで。この指とまれ」
 だが逢真は臆したふうもなく、避けぬどころか誘うように指までひとつ立ててみせる。
 その次の瞬間、彼の姿は餓えた使い魔の群れに取り囲まれて見えなくなる。鋭く尖った牙が彼の腕に、脚に、胸に、首筋に、一斉に突き立てられ――。
『――ギ、ギィッ!!』
 直後にそれらはぱたぱたと落下し、地面の上でぎいぎい鳴き声を上げてもがき苦しむ。
 病毒の神の肉体に牙を立てたのだ、それは当然の報い。逢真の体内を満たす毒と病が、使い魔どもを蝕んだのである。

「この宿(*からだ)は病毒のカタマリ、血なぞどこにも流れちゃいない。みィんな腐り落ちるだけさ」
「ふむ、やはり猟兵は一筋縄ではいかんか。面倒な」
 平然とした様子でぱっぱとコウモリを払う逢真。使い魔の攻撃が失敗したディアンドラは、しかしこちらも想定のうちだと落ち着いた様子。何方もまだ、相手を驚かせるような事はやってはいない――本番はここからだ。

「暗がりに裏切られたことはあるかね?」
 次に動いたのは逢真からだった。《影》を発動した彼を中心にして、戦場が暗黒に覆われていく。これまでも地下墓所は暗くはあったが、彼が放ったのは光を拒む真なる闇だ。
「お隠れだ」
「む……?」
 それはかつて墜ちた際に削られた権能の残滓。神の意思ひとつで闇は実体化し、不定形の枷となってディアンドラの身動きを封じる。もはや周囲すべての闇が彼女の敵であり、障害であると同時に脅威であった。

「10年も1000年も大差ない。幼子よ、生くるに飽いたならお眠り」
 悠久の吸血鬼も永劫の神にとっては、他の定命の者らと変わりない。闇の中で唯一輝く赤い瞳が、捕らわれし者を見つめた時――闇は枷から槍に変化して『暗夜卿』を貫いた。
「むぅ……ッ。これは、なかなか……」
 胸に宿した『辺境伯の紋章』を穿たれ、さらに背後にある『紋章の祭壇』まで貫かれたディアンドラの表情が険しくなる。同時に、もがいていた使い魔らが闇に握り潰される。
 闇に生きる者が、闇に牙を剥かれるとは。古き吸血鬼にとっても初となる体験だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
カビィちゃん(f24111)と

懇願してないけど流そう

脚本は…働かず一銭稼いだ事もない父とその生き様に惚れ込んだ母
その両親の下大らかに育ったカビパン、そんな姉の全てに憧れる弟ドミ!
ヤベー一家の生活の支えるのが超出来た妹のベルリーナ
彼女が家計を支え生活を存続させていく主人公奔走型の理不尽ファミリードラマ!

私彼女に味方するべきでは?

何処がシリアス?あ、ファミリーネームがシリアス?
それで通るとでも!?

私この父役を演じる自信がないよ勤勉だもん
『他ならできるというのか。全部地雷原でしょ』

ベルリーナ、運命を破壊しろ…!シリアス家を分からせて…!
応援するよ、君の事
君が勝った後で……改めて、決着をつける!


カビパン・カピパン
セフィ姉が最後はシリアスでいきたいと懇願してきたので折れたカビパン。

ラヴ・ラビリンス シーズン53
~シリアス家のハートフルな日常~

製作総指揮 戌MS
出演 ベルリーナ:ディアンドラ(主役)
   カビパン:カビパン紋章
   カビ父:セフィリカ
   カビ母:シェルファ
   ドミ:トリッピー
   ナレーション:キートン戌

それはボケとボケとボケとボケと唯一のツッコミ役とツッコミナレーターが贈る、シリアス家の日常理不尽ギャグストーリー。
第五の貴族ディアンドラのツッコミセンスをいつもなら使われている側の紋章が鍛え上げていく。
あまりのツッコミ所の多さと心労でベルリーナ役は撮影終了後、過重労働の果て倒れた。



「セフィ姉が最後はシリアスでいきたいと懇願してきたので今回は折れました」
 地下墓所の最深部で『暗夜卿』と対峙したカビパンは、シリアスな顔をしてそう語る。
 一緒にいるセフィリカはそんな懇願した覚えはなかったが、ツッコまずに流しておく。いつものボケボケな脚本にちょっとでもシリアスを混入させられるなら僥倖である。
「ラヴ・ラビリンス シーズン53~シリアス家のハートフルな日常~、開演よ!」
「ふむ、演劇は嫌いではない。どうせ時は飽くるほどあるし、戯れてやっても良いぞ」
 何やら妙なことを言い始めた二人に、ディアンドラは意外にも乗り気な態度を見せる。
 長過ぎる生に飽きた者としては、どんな茶番劇も暇つぶしになると思ったのだろうか。もっとも彼女も、それがただの余興としてはカオス過ぎることにすぐに気付くのだが。

「脚本は……働かず一銭稼いだ事もない父とその生き様に惚れ込んだ母。その両親の下大らかに育ったカビパン、そんな姉の全てに憧れる弟ドミ!」
 セフィリカはカビパンから渡された脚本を読み上げ、内容をディアンドラに説明する。
 どうやら今回の「ラヴラビ」は家族をメインに据えた作品らしい。もちろんと言うか、一般的な家族の日常を描くつもりはなく、両親を筆頭にだいぶネジが外れた家庭らしい。
「ヤベー一家の生活の支えるのが超出来た妹のベルリーナ。彼女が家計を支え生活を存続させていく主人公奔走型の理不尽ファミリードラマ!」
 出演キャスト一覧には「ベルリーナ:ディアンドラ(主役)」「カビ父:セフィリカ」と書かれている。敵であるディアンドラに主役を任せたり、家族の中で一番ヤバそうな役がセフィリカに押し付けられていたりと、この時点でも割とツッコミ所が多い。

「ボケとボケとボケとボケと唯一のツッコミ役とツッコミナレーターが贈る、シリアス家の日常理不尽ギャグストーリーよ」
 それが本人曰く「折れた」カビパンが書き上げた、シリアス度マシマシの脚本だった。
 何も知らずに主役を任されたディアンドラよりも、むしろ半端に事前情報を与えられていたセフィリカのほうが、受けた衝撃は大きかった。
「何処がシリアス? あ、ファミリーネームがシリアス? それで通るとでも!?」
 蓋を開けてみると以前の「ラヴラビ」とノリは変わらないし、主役があらゆる意味で理不尽な目にあう脚本に、セフィリカは「私彼女に味方するべきでは?」と思う程だった。

「私この父役を演じる自信がないよ勤勉だもん」
『他ならできるというのか。全部地雷原でしょ』
 娘に一番理不尽を与えそうな役に乗り気でないセフィリカに、シェルファが冷静なツッコミを入れる。ちなみに、こちらの魔剣の配役は「カビ母:シェルファ」となっている。カビパン役はもちろんカビパンで、弟のドミは使い魔のトリッピーが演じる。
「役者が足りておらんのではないか?」
 剣や鳥までメインキャストを任せる人選に、流石にディアンドラも変だと思いだした。
 が、ここまで来るともう【ハリセンで叩かずにはいられない女】は止まらない。ボケの嵐が吹き荒れた世界はギャグに染め上げられ、強行的に舞台の幕は上がってしまう。

「ベルリーナ、運命を破壊しろ……! シリアス家を分からせて……!」
「う、うむ……? おぬし、配役では分からされる側ではなかったか?」
 かくして始まった「ラヴラビ」シーズン53の内容は、なんかもう色々とヒドかった。
 とにかくボケが多い。多すぎる。主役以外の全員が誰彼構わずボケ倒すので、ツッコミは常に大渋滞。どんなに家計が火の車でも頑なに働かない父親にツッコミを入れる前に、それを全肯定する母親が家事を放棄しはじめ、カビパンが晩ごはんの食材をまずいカレーうどんに変え、弟がそれをむさぼり喰う、という具合である。
「まずい! もう一杯!」
「いや青汁ではなかろうて!」
 ディアンドラ扮するベルリーナは、そんなフリーダムな家族に懸命にツッコミまくる。
 第五の貴族には役者の才能もあったのだろうか。さらに普段は使われている側のはずの『辺境伯の紋章』が、彼女のツッコミセンスを強化して鍛え上げていく。

「応援するよ、君の事」
 セフィリカはそんなディアンドラの事を励ましつつ、父役としてはベルリーナに面倒をかけまくる。根が真面目な彼女がぐうたらで働かない父親を演じるには苦労もあったが、一度ノッてくると調子の上がるタイプなのか、なんやかんやで上手くやれている。
「君が勝った後で……改めて、決着をつける!」
「そういう格好いいセリフは別の機会に取っておかんか……?」
 ディアンドラからすれば応援されつつ理不尽も押し付けられるという、脳みその配線がバグりそうな立場である。あまりのツッコミ所の多さに、さしもの『暗夜卿』の精神的な疲労を隠せない。これがもし全部作戦だったのなら、大した精神攻撃である。

「いつもありがとうベルリーナ」「これは今までのお礼よ」
「なんと、寿司とな? 一体我が家のどこにそんなお金が……いや、ありがたく頂こう。嬉しいぞ父様、カビパン姉様」
 そうしてなんやかんやでクライマックス。ベルリーナは家族から振る舞われた初めての料理であるマグロ寿司を口にして、中に仕込まれていた激ヤバなカレーを食べてしまう。
「ごはっ……なんだこれは……ま、不味い……」
「「チェックメイト」」
 炸裂したマグロ寿司にノックアウトされるベルリーナ、会心のドヤ顔でキメ台詞を言う家族。スカイタワーの背景をバックに流れるエンドロールとコミカルなBGM――記念すべき(?)ラヴラビ53作目はこうして幕を閉じた。

「あんな一家を分からせろとか運命を破壊しろとか、無茶振りにも程があろう……!」
 撮影終了後、ツッコミの過重労働を強いられたディアンドラは息も絶え絶えにぼやく。
 だが茶番が終わったとしても戦いはまだ終わっていない。当初から宣言していた通り、魔剣シェルファを構えたセフィリカが、本当のシリアス顔で斬り掛かる。
「一式改・隠神」
「まて、ちと休ませ――がはッ!!」
 魔力を込めた鞘より抜き放たれし魔剣。あるはずの刃が隠(み)えぬ程の神速の一閃。
 一日一度の使用が限度の、全身全霊を込めた一刀が、心労困憊の『暗夜卿』を捉えた。

「……確かに、退屈しのぎにはなった……だがもう、二度とはやらぬ……」
 変な劇に巻き込まれた後でぶった斬られるという最高の理不尽を味わったディアンドラは、漆黒のドレスを血に染めながら膝を突く。どんなに退屈が極まっていようと、この世には決して関わってはならない物があることを、彼女は身をもって理解したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
辺境伯には紋章を、闇の救済者は見てるだけ。
一方には肩入れして、どちらに転ぶかなんて戯言…
貴女の様な同族、此方は見飽きましたが。

煽って冷静さを僅かでも欠けば幸運程度。
身振り手振りに交え備える極細の鋼糸。

僕の血、安くないんで。

視て…見切る。
全てを以て防ぎ、吸血鬼に接近を。
蝙蝠の数、位置、陣形、攻撃に移る際の癖…
獲物から来るなら糸の網を張り、飛び込み切れてくれりゃいい。
吸血鬼が他の手を用いるなら、視線、挙動、方法や威力…
ワイヤーで宙も駆け、その頸に鋼糸を

…なんてブラフ。

眼鏡は外した。
ダメージは織り込み済み。
邪魔なのは…端から、其れ(紋章)
手刀で胸ごと貫くが如く
――拾壱式

性悪も不遜も、負ける気無いんで



「辺境伯には紋章を、闇の救済者は見てるだけ。一方には肩入れして、どちらに転ぶかなんて戯言……」
 『暗夜卿』からの言い分をひと通り聞いたところで、クロトはふうとため息を吐いた。
 随分とまあ手前勝手な理由で他者を弄んでくれるものだ。そのくせ結果への責任を取る気もない――例えるなら池の中に石を投げ込み、慌てふためく魚を眺めるような所業だ。
「貴女の様な同族、此方は見飽きましたが」
「ふん。そなたらの不興なぞどうでも良いわ」
 歯に衣着せぬ物言いに、ディアンドラはやや気分を害した様子で幼い顔立ちを歪める。
 口先ひとつで僅かでも敵が冷静さを欠けば僥倖だろう。煽りの身振り手振りに交えて、クロトは極細の鋼糸を張り巡らせる。

「小さき子らよ、我が夜に遊べ」
 ディアンドラが一声発すると再び無数のコウモリの群れが現れ、侵入者に襲いかかる。
 闇よりも暗い黒雲の如き大群の動きを、クロトはじっと目を凝らして見極めんとする。
(視て……見切る)
 蝙蝠の数、位置、陣形、攻撃に移る際の癖――あらゆる情報を計算に入れて罠を張る。
 獲物から来てくれるなら糸の網を張り、飛び込み切れてくれればいい。迂闊なコウモリが細切れになるのを横目に、動かない吸血鬼へとこちらから接近を図る。

「糸か。なかなか面白い技を使う」
 使い魔を切り裂きながら近づいてくるクロトに、ディアンドラはなおもコウモリの群れを差し向ける。流石に第五の貴族ほどの実力者なれば、召喚できる使い魔の数の限界などあってなきが如しなのだろう。
「僕の血、安くないんで」
 対するクロトは敵の視線や挙動を観察し、他の手段を用いてくる可能性にも警戒する。
 現状、敵の攻撃手段は使い魔をけしかけるだけ。なら厄介ではあっても対処はできる。四方八方に張り巡らせた糸を足場にして宙も駆け、使い魔をかい潜ってその主人の元に。
 そのままグローブから鋼糸を操り、無防備に晒されたその頸にかけようとするが――。

「視えておるよ」
 あと少しで頸を切断するはずだった鋼糸を、ディアンドラはそっと掴み取ってみせた。
 見れば、その糸にはコウモリの血がべったりと付着している。これまで使い魔を闇雲にけしかけていたのは張られた糸の視認性を高め、対処を容易にする為だったようだ。
「種の割れた手品ほどつまらんものは無いわ」
 彼女は掴んだ糸をそのままぐっと引き寄せ、もう一方の手指をそろえてぴんと伸ばす。
 見た目は幼い童女でも、『辺境伯の紋章』で強化された吸血鬼の手刀は、脆弱な人間の頸を刎ねるのに十分過ぎる切れ味だろう。

「……なんてね」
 だが、糸ごと引き寄せられたクロトの口元には笑みがある。鋼糸による斬首を狙ったのはただのブラフ。この程度の手技で第五の貴族の首を取れるとは最初から思っていない。
「邪魔なのは……端から、其れ」
「ぬぅっ?」
 吸血鬼の胸に寄生する『紋章』に視線を向ける、彼の顔に眼鏡はかかっていなかった。
 彼の眼鏡は視力を矯正する物でなく、解放できる魔力の上限を制限する拘束具である。その封印を解いた今、抑制される事なき魔力と生命力は蒼炎となって彼の身を包み込む。

「――拾壱式」
 体にかかる代償も織り込み済みで、全力を解放したクロトは敵の手刀を紙一重で躱す。
 直後に、自らの手刀に蒼炎を纏わせ――その胸ごと貫く勢いで『紋章』へと突き放つ。
「かは……ッ!」
 宝石のような紋章が手刀に穿たれ、破滅をもたらす蒼炎がディアンドラを焼き焦がす。
 それまで退屈そうだった彼女のすまし顔は、苦痛によって歪む。"禁じ手"とされた一手まで使ったのだ、それくらい効いて貰わなければ困ると、クロトはまた薄く笑み。

「性悪も不遜も、負ける気無いんで」
 柔和な表情と軽妙な言葉の裏に、隠しきれぬ棘を秘めた戦場傭兵は、戦果を確認すると即座に離脱する。反撃を受ける前に糸伝いに距離を取る様もまた、軽妙かつ軽快だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…そう。お前は力無き者達の執念が第五の貴族に届くか否か知りたいのね?

…喜びなさい。今からお前の望みを叶えてあげるわ、暗夜卿

敵がUCを発動したら「陽光の精霊結晶」を投擲して太陽光を放つ事で敵の体勢を崩し、
【断末魔の瞳】に取り込んだ怨霊達も大鎌に降霊してUCを完全解放

…開け、断末魔の瞳。過去を刻むものよ、その神髄を顕現せよ

限界突破して闇の魔力を溜めた大鎌を武器改造して騎士剣の柄に変型させて、
極限まで呪詛を凝縮した闇の光刃を形成して懐に切り込み紋章ごと敵を貫き、
565m先まで切断する巨大な闇属性攻撃の斬擊波による追撃を行う

…さあ、約束の時は来た。とくと味わうがいい。これがお前に殺された者達の魂の力よ



「……そう。お前は力無き者達の執念が第五の貴族に届くか否か知りたいのね?」
 『辺境伯の紋章』を作り出した敵の目的を知ったリーヴァルディは、普段より低い声色で静かに言う。地の底からわざわざ地上へと干渉し、闇の救済者の拠点や人類の生存圏を脅かし続けて理由がそれだというのなら――。
「……喜びなさい。今からお前の望みを叶えてあげるわ、暗夜卿」
「ほう? なにやら面白い手札を持っているようだのう」
 彼女の宣言にディアンドラは少し興味を引かれたらしく、赤い瞳が妖しげな光を放つ。
 猟兵という存在にはさして気に留めていなかったが、この退屈を紛らわす何かを持っているのであれば話は別だ。

「では、我もそれに相応しい姿で応じねばな……薔薇の夜よ、我が身を呪え」
 耳に着けていた黒薔薇のイヤリングを捨てると、ディアンドラの身体は夜闇に包まれ、吸血種としての真の姿へと変身する。普段は抑制していた能力を解放し、いよいよ本気で戦う気になったという事か。
「……それがお前の真の姿ね。だけど、私の前でその姿を晒したのは命取りよ」
 敵がユーベルコードを発動すると、リーヴァルディは即座に手元の「陽光の精霊結晶」を投擲する。それは自然現象の力を極限まで凝縮した魔力結晶体で、使用すると一度だけその現象の力を――今回なら陽光の力を解放する事ができる。

「ぬぅ……これは面倒なものを……」
 精霊結晶から解き放たれた太陽光を浴びせられ、ディアンドラは思わず体勢を崩した。
 真の姿を見せたことで吸血種としての性質も顕著になったためか、今の彼女は太陽光でダメージを受けてしまう。そこに生じる隙をリーヴァルディは逃さなかった。
「……開け、断末魔の瞳。過去を刻むものよ、その神髄を顕現せよ」
 これまで取り込んできた怨霊達の怨嗟と嘆きと呪詛の力を、今こそ解放する時が来た。
 聖痕に宿した全ての怨霊を大鎌に降霊させ、彼女は【代行者の羈束・過去を刻むもの】を完全解放する。

「……黒剣覚醒。闇の極光をここに」
 膨大なる闇の魔力を宿した大鎌は騎士剣の柄に変形し、極限まで凝縮された呪詛が闇の光刃を形成する。これこそ力なき者の無念が作り上げた、黒き咎人への断罪の刃である。
「これは……!」
 夜の闇よりも暗く、日の光よりも眩いその輝きに、はっと目を奪われるディアンドラ。
 その直後にリーヴァルディは極光の騎士剣を構えて疾走し、吸血鬼の懐へ切り込んだ。

「……さあ、約束の時は来た。とくと味わうがいい。これがお前に殺された者達の魂の力よ」
 歴戦の吸血鬼狩人の手で振るわれた"過去を刻むもの"の剣は、過たずに獲物を捉え――ディアンドラの胸元の『辺境伯の紋章』が、それを宿した本体ごと闇の光刃に貫かれる。
 直後に刃から解き放たれる巨大な闇の斬撃波が、一直線に戦場を切り裂きながら標的を追撃する。準備に十分な時間と説得を要しただけあって、その破壊力は絶大であった。
「は、は……これが、我が贄としてきた者達の底力か……! ああ、面白い……!!」
 半身をほぼ真っ二つに切断されながら、ディアンドラは初めて愉しそうに笑っていた。
 肉体の負傷や欠損は吸血種の力で再生するが、完全にとはいかない。リーヴァルディが束ねた死者達の想いは、『暗夜卿』に決して消えることのない傷を刻みつけたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオ・ウィンディア
お前が、あの者たちを苦しめた元凶か
ここで絶たせてもらおう
人の命を魂を縛り安らぎの墓所を騒がせた罪をとくと知るがいい

プレッシャーにも引けを劣らない鬼気を発して
冷たく宣言する
私は逃げない。お前を打つ。

紋章で強化され用途も、こちらもUCで自己強化を図り
天使の姿で肉薄する
太陽光はここにはない
けれども、私の翼には太陽の輝きが宿っている!
追い風よ私に力を
この死者を冒涜する輩に鉄槌を!

防御力が上がったって、再生能力が繰り返されたって、何度でも何度でも切り刻む
私には風が吹いている!



「お前が、あの者たちを苦しめた元凶か。ここで絶たせてもらおう」
 ここまでの道中で遭遇した死者達の嘆きの声を思い出し、リオははっきりと宣言する。
 かの『暗夜卿』が重ねてきた罪と生贄の連鎖に、ついに終止符を打つ時が訪れたのだ。
「人の命を魂を縛り安らぎの墓所を騒がせた罪をとくと知るがいい」
「罪か。我に罪があったとして、そなたらに裁かれる理由がどこにある?」
 対してディアンドラは退屈げな視線を返して、淡々とした調子で悪びれもせずに言う。
 厭世的な雰囲気ながらも彼女が発する威圧感は凄まじく、否応なく強大さを実感する。

「私は逃げない。お前を討つ」
 だがリオはプレッシャーにも引けを取らない鬼気を発して、もう一度冷たく宣言する。
 第五の貴族が『紋章』の力で強化されようと、こちらにはユーベルコードの力がある。高らかな詠唱と共に、彼女が発動するのは【翼に追い風を】。
「この大空を駆け抜ける勇気を、この手に希望を。この背に翼を! 私はどこまでも怯まない!」
 白い翼を持つ白き衣の少女に変身し、水と風の精霊ダガー・ロータスを抜き放つリオ。
 その背を後押しするように吹いた風に乗って、少女の身体はふわりと宙に舞い上がる。

「ふむ。まるで天使のような姿よな」
 既に黒薔薇のイヤリングを外し、吸血種として真の姿を解放しているディアンドラは、飛行する少女の姿を眩しそうに見上げる。光届かぬ筈の地下墓所の最深部にありながら、その姿は燦然と輝いていた。
「太陽光はここにはない。けれども、私の翼には太陽の輝きが宿っている!」
 この地から光が失われたのなら、私自身がこの地を照らす光となろう。その心に宿した勇気と希望の輝きは、闇の住人たる吸血鬼の身体を灼く。いかに第五の貴族といえど――否、吸血種としての力が強大であればあるほど、己の種族的弱点からは逃れられない。

「追い風よ私に力を。この死者を冒涜する輩に鉄槌を!」
 太陽の輝きによりディアンドラが怯んだ隙を突いて、リオはまっすぐに敵と肉薄する。
 追い風に乗った加速に合わせて、放たれるダガーの一閃。精霊の加護を受けた刃は非常に鋭く、真なる吸血鬼がまとう闇の守護すら貫いて敵を切り裂いた。
「なかなかやるようだな。だが、浅いぞ」
 腕に刃を受けたディアンドラだったが、その傷はすぐに吸血鬼の力で塞がってしまう。
 太陽光という弱点はあるとはいえ、この再生力は非常に厄介である。少々のダメージはすぐに回復されてしまい、致命傷を与えるには至らない。

「なら、何度でも何度でも切り刻む」
 一撃で仕留められないのなら手数で勝負。リオは休む間もなく精霊のダガーを振るい、戦場を飛び回りながら連続攻撃を放つ。何度再生が繰り返されようとも彼女の瞳に宿った意志は挫けず、羽ばたくたびに攻撃も飛行も速度を増していく。
「私には風が吹いている!」
 追い風を受けた心理的な強さは、実際に速さとして彼女の動きに影響を及ぼしていた。
 今や煌めく烈風と化したリオの動きは、吸血鬼の目にすらはっきりとは捉えきれない。

「口だけの小娘では、なかったか……猟兵もなかなかやるようだ」
 反撃の暇すらない猛攻を受け、ディアンドラの再生は徐々に追いつかなくなっていく。
 これまで興味すらなかった相手だが、実際にその力と意志を目の当たりにすることで、彼女の認識にも少しずつ変化が生まれ始めていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

塩崎・曲人
クソっ、やっぱとんでもねぇ威圧感だな!
生物としての基礎スペックがダンチだぜ
「だがそれを小細工でどうにかするのが人間サマってね!見せてやるよ、オレ様の驚きの隠し芸って奴を!」

相手は吸血鬼
だから当然、血を吸おうとしてくる
仕掛け筋がわかれば対策はできるわな

亡霊を始末した後飲んだポーションが3本
ブッパした魔力を補給する魔力ポーション
墓地だからって持ち込んだ浄化回復ポーション
そして最後
「自壊寸前まで肉体を活性化する強化ポーション。人間のオレはなんとか耐えるが、体の小さいコウモリは耐えられるかね?」
わざと血を吸わせ、ポーションをコウモリにも吸わせることで相手の自己強化を封じつつ
強化されたパワーでぶん殴るぜ



「クソっ、やっぱとんでもねぇ威圧感だな! 生物としての基礎スペックがダンチだぜ」
 遂に現れた『暗夜卿』ディアンドラと実際に対峙して、その存在の強さを肌で実感した曲人は悪態を吐く。知ってはいたがこうして相対すると人間との実力差が嫌でも分かる。向こうが人間を虫ケラかせいぜい玩具程度にしか思っていないのも納得だ。
「だがそれを小細工でどうにかするのが人間サマってね! 見せてやるよ、オレ様の驚きの隠し芸って奴を!」
「ほう。ならばせいぜい我の退屈を紛らわすような芸を披露してみせよ」
 ここで怯んでたまるかと威勢を示す曲人に、ディアンドラは少し興味を持ったようだ。
 【小さき子らよ、我が夜に遊べ】と唱えれば、暗闇から現れた使い魔のコウモリ達が、一斉に翼を羽ばたかせて襲いかかる。

(相手は吸血鬼。だから当然、血を吸おうとしてくる。仕掛け筋がわかれば対策はできるわな)
 あの召喚された使い魔も、おそらく主の元に血を運ぶのが役目だろう。曲人はこうなる展開を予測して、『紋章の祭壇』にいた亡霊を始末した後すぐに3本の【ドーピングマジカルポーション】を服用していた。
「こいつがオレのとっておき……。出来れば永遠にとっておきたかった手だ……」
 どのポーションも普通にかなり不味いのであまり飲みたくはなかったのだが、強敵相手にそんな事を言ってもいられない。彼はにやりと悪そうな笑みを浮かべながらコウモリの群れの前に立ち――殴りかかるかに見せて、そのままあえて敵の牙にかかった。

「むぅ? 何のつもりだ」
 大した反撃もせず使い魔に取り囲まれた曲人を見て、ディアンドラは怪訝な顔をする。
 あれだけの啖呵を切っておいて無策とは考えがたい。長命ゆえに警戒心の強い彼女は、そのまま血を吸い尽くさせる前に使い魔達を引き上げさせようとするが――。
『ギ……ギギッ! ギギギギッ!!』
 曲人の血を吸ったコウモリは突然狂ったように叫びだし、地面に落ちてのたうち回る。
 まともに飛ぶことすらできない程の異常な興奮と痙攣。明らかに何かの薬物の影響だ。

「もしや、体に毒を仕込んでおったのか?」
「惜しいな、ちょっと違う」
 纏わりついていたコウモリどもを払いのけて、曲人は"隠し芸"の種明かしを披露する。
 彼がわざと血を吸わせたのは、服用していたポーションをコウモリにも吸わせるため。使用した3本の内訳は、ぶっ放した魔力を補給する魔力増強ポーションに、墓地だからと持ち込んだ浄化回復ポーション。そして最後の1本は――。
「自壊寸前まで肉体を活性化する強化ポーション。人間のオレはなんとか耐えるが、体の小さいコウモリは耐えられるかね?」
 結果はご覧の有り様だ。強すぎる薬効に耐えきれず、使い魔達はみなオーバードーズの症状を引き起こしている。これで相手の吸血・自己強化手段は一時的に封じられた訳だ。

「これで後はお前さんをぶん殴るだけってわけだ」
 動かなくなった使い魔どもを踏みつけて、親玉の吸血鬼へとダッシュで接近する曲人。
 自身の限界寸前まで強化された身体能力は、瞬間的には吸血鬼すら凌駕しうるもので。驚く敵の顔面めがけて、フルパワーの喧嘩パンチを叩き込む。
「かふ……ッ?!」
 見た目が童女だろうと容赦はない。したたかに殴りつけられたディアンドラの体は後方にある『紋章の祭壇』まで吹っ飛び、薔薇と屍と墓標の破片を撒き散らしながら倒れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
人と吸血鬼達を観劇する時間は終わり、貴女も舞台に上がる時ですよ
先の墓地で死者と交わした約定…騎士として果たす為、討たせて頂きます

装甲が融けて…!
只の霧ではありませんか

電脳剣を居合の構えの様に●怪力で振り抜き風を起こし血霧を僅かでも払い

嗤うも結構、見つけるまで続けるまで…!

再度構え…腕部格納銃器展開
脇の下から●騙し討ちスナイパー射撃
UCで紋章撃ち抜き凍結
(センサーの情報収集と瞬間思考力で熱源・動体探知)
乱れ撃ちの追撃で動きを封じ

紋章の力は一筋縄ではいきませんので
芝居を打たせて頂きました

電脳空間から義護剣取り出し電脳剣と二刀流

ダンピールの力には吸血鬼殺しの伝承がありましたね
…確かめさせて頂きます



「はぁ……我はただ、ここで上の連中が踊りまわる様を見ていたかったというのに……」
「人と吸血鬼達を観劇する時間は終わり、貴女も舞台に上がる時ですよ」
 まるで観客か裏方のような物言いをする『暗夜卿』に、剣を突きつけるトリテレイア。
 墓所の探索と戦いを通じて彼は多くの亡霊達の無念を聞いてきた。これほどの犠牲者を出しておきながら、素知らぬ顔で隠遁を決め込むなど認められるはずもない。
「先の墓地で死者と交わした約定……騎士として果たす為、討たせて頂きます」
「やれやれ。見た目も中身も随分と堅物そうな輩が来たものよ……」
 騎士らしい清廉で毅然とした態度を取る彼に、ディアンドラは小さなため息をひとつ。
 そして凍えるように冷たい視線を向けて、幼い声色で吸血鬼らしい厳かな言葉を発す。

「なれば、そなたも此処で死者の仲間入りをするがよい」
 ディアンドラが死刑宣告を呟くと、彼女を中心とした戦場に漆黒の血霧が立ち込める。
 その血霧に包まれた途端、トリテレイアの装甲表面の塗装がどろりと流れ落ちていく。
「装甲が融けて……! 只の霧ではありませんか」
 危険を感じた彼は電脳剣を居合のように腰だめに構え、怪力任せに勢いよく振り抜く。
 斬撃が巻き起こす剣風は周囲の血霧を僅かに払ったものの、霧の奥からディアンドラの冷ややかな声が聞こえてくる。

「黒の息吹よ、我が血を讃えよ」
 この血霧はディアンドラが敵と識別した者に視界不良とダメージをもたらす処刑領域。
 一度囚われたが最後、己の所在も相手の位置も分からぬまま、霧に蝕まれて命尽きる。耐久性では人間を上回るウォーマシンでも、長く耐えることは不可能だろう。
「我が霧の中でせいぜい愉快に踊り狂うがよい、鋼の人形よ」
「嗤うも結構、見つけるまで続けるまで……!」
 トリテレイアは焦りを声に滲ませながら、再度霧を払おうと剣を構える――と同時に、腕部に格納されていた銃器を静かに展開する。光学感知による視界こそ奪われたものの、熱源や動体を探知するセンサーの機能は正常。まだ彼の"目"は奪われてはいなかった。

「……そこです」
「なに……っ?」
 居合の構えのまま、脇の下を通すように放たれた銃撃は、狙い過たずにディアンドラの『辺境伯の紋章』にヒットする。相手はこちらの姿をすっかり見失っていると思っていた彼女にとって、それは完全な不意討ちであった。
「紋章の力は一筋縄ではいきませんので、芝居を打たせて頂きました」
 正攻法では分が悪いと踏んだトリテレイアの計略は、見事に第五の貴族を欺いた訳だ。
 さらに彼が紋章に撃ち込んだのは、物体の分子運動を低下させて急速凍結に至らしめる【超低温化薬剤封入弾頭】。これにより凍りついた紋章は一時的にその機能を停止した。

「氷の剣や魔法ほど華はありませんが……武骨さはご容赦を」
 トリテレイアは同様の薬剤封入弾頭を連発して乱れ撃ち、敵の身動きを封じにかかる。
 突如として紋章の加護を失ったディアンドラは、それまであった強化とのギャップへの対応が追いつかず、避けそこなった弾丸の幾つかが彼女の体で氷の華を咲かせた。
「く……この我が、こんな芝居に引っかかるとは……」
 猟兵とて所詮は定命の存在、第五の貴族たる我に敵うはずがないという傲りが、彼女を窮地に陥らせた。そこから状況を打開する暇を与えず、機械騎士はさっと距離を詰める。

「ダンピールの力には吸血鬼殺しの伝承がありましたね……確かめさせて頂きます」
 電脳空間よりトリテレイアが取り出したのは義護剣ブリッジェシー。ダンピールの死霊術士に鍛えられたその剣と電脳剣とを両手に握り、二刀の構えにて吸血鬼に斬り掛かる。
「ッ、その剣は……ぐあぁッ!!」
 伝承の真偽は定かならずとも、破魔の力を有した刃は闇の魔性には効果覿面であった。
 双剣に斬り裂かれたディアンドラの口から苦痛の悲鳴が漏れ、血飛沫が刃を濡らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
貴女の興味も都合も知った事では無いわ。
くだらない紋章を作って神様気取りも大概にする事ね。

【吸血姫の覚醒】を発動。
【念動力】の防御膜で血霧を防御しつつ、真祖の魔力で氷結の竜巻【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法】を発動し、散布された空気中の血霧を凍結し、風で吹き飛ばして対策。
コウモリ達は同じく氷結の竜巻や凍結の魔力弾で凍結させて始末し、真の姿には真向から対峙するわ!

超高速飛行と聖属性と凍結属性【属性攻撃】を付与した魔槍の連撃【切断、串刺し、早業、怪力、2回攻撃】で敵の防御を貫き、傷を凍らせる事で再生を妨害して攻撃し、紋章へ【神槍グングニル】を炸裂させるわ!

後付けの弱点である紋章への傷は再生難しいわよね



「貴女の興味も都合も知った事では無いわ」
 人々には迷惑でしかないディアンドラの望みを、フレミアはばっさりと切って捨てる。
 こんな地の底で大勢の死者と怨嗟を弄び、紋章によって地上の生者の暮らしを脅かす。それがただ厭世観を紛らわすための暇つぶしだとは、まったくふざけている。
「くだらない紋章を作って神様気取りも大概にする事ね」
「ふ。これは手厳しいことよ」
 半分とはいえ同族からの糾弾を、『暗夜卿』は老獪に笑いながら涼しげに受け流した。
 誰になんと責められようと、彼女はこの陰謀を止めるつもりはないのだろう。民を弄ぶ邪悪さにおいて、この者もまた他のヴァンパイア達となんら変わりはない。

「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
 ならば純然たる実力を以って討ち取るまでよと、フレミアは【吸血姫の覚醒】を発動。
 真祖の血とともに受け継いだ爆発的な魔力を解放し、背中に4対の真紅の翼を生やし、背丈も伸びて17~8歳ほどの外見まで変化を遂げる。
「それが、そなたの真の姿か。上の連中よりもよほどヴァンパイアらしいではないか」
 ディアンドラはその姿を冷たい眼差しで見つめると、【黒の息吹よ、我が血を讃えよ】と唱えて漆黒の血霧を放つ。だが、全ての敵対者を蝕むはずの血霧はフレミアの体を覆う念動力の防御膜に阻まれ、彼女を害することはできない。

「こんなもの、ただの目くらましよ」
 真祖の魔力を込めてフレミアが詠唱を行うと、肌を切るような冷たい風が吹きすさび、竜巻となって戦場を巻き込んでいく。空気中に散布された血霧はその冷気により氷結し、黒いダイヤモンドダストとなって吹き飛ばされた。
「ふむ。ダンピールとは思えぬ規模の魔力よな」
 霧を無効化されたディアンドラは使い魔の群れを差し向けるが、それもまた氷結の竜巻に押し返されるか、フレミアの放つ凍結の魔力弾に始末されていく。凍りついて飛べなくなったコウモリの屍が、地下墓所に無為に積み重なるだけだ。

「霧やコウモリなんかでわたしは止められないわ。次は貴女の番よ」
 使い魔共を始末したフレミアは真紅の翼を広げ、爆発的な加速でディアンドラに迫る。
 瞬間移動と見紛う程の速度に反応できたのは、相手が紋章で強化された第五の貴族で、拘束具たるイヤリングを捨てて吸血種としての真の姿を晒していたからだった。
「真っ向勝負ということか。プライドの高いことよ」
 互いに真の姿で激突する2体の吸血鬼。フレミアが真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」に凍結と聖光の属性を付与して突きかかると、ディアンドラは闇の防御と吸血種の再生力で対抗する。単純な力比べであれば、より年経たヴァンパイアである後者が勝るだろう。

「貴女の能力は吸血鬼なら珍しいものではないわ。対策は万全よ」
 だがフレミアが槍に込めた聖属性は闇の防御を貫き、凍結された傷は再生を阻害する。
 一度だけではなく二度三度と、覚醒した吸血姫のパワーとスピードを全開にした連撃を繰り出すうちに、敵の肉体には徐々にダメージが蓄積されていく。
「ふ……良いな。少しだけ面白くなってきた……!」
 それまで受け身であったディアンドラが反撃の構えを見せた刹那。僅かな隙を見極めてフレミアは胸元の『辺境伯の紋章』目掛けて魔槍を突き放ち――全開の魔力を注ぎ込んだ【神槍グングニル】を炸裂させた。

「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……。消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」

 極限まで超圧縮された魔力が巨大な真紅の槍を形成し、『辺境伯の紋章』を突き穿つ。
 神槍の名を冠したその一撃の破壊力は、フレミアの技の中でも最大級。直撃を受ければ『暗夜卿』とて無事ではすまず、魔力の爆発にて彼方まで吹き飛ばされた。
「後付けの弱点である紋章への傷は再生難しいわよね」
「っ……これは、してやられたようだな」
 神槍に貫かれた『紋章』は修復もままならないほど大きく破損している。ディアンドラ自身もかなりのダメージを負ったようで、すぐに体勢を整えながらも肩で息をしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
人間達だけじゃなく、紋章を与えた同胞達まで玩具扱い…。
多くの命を弄ぶのもここまでだよ…!

【unlimitedΩ】で敵のコウモリ達を近づけずに一斉斉射で仕留め、真の姿を現したらこちらも【九尾化・天照】による太陽の光で敵を照らし、光を集束したレーザーで攻撃…。
敵をレーザーで牽制し、撃ち抜きつつ、光速化を行い、刀身に光を集束させた凶太刀と神太刀の二刀による連続攻撃を仕掛けて追い詰めるよ…。

神太刀は不死再生を封じる神殺しの妖刀…。
そして、わたしのこの力は太陽の神の力を持ち、光を操る…貴女に勝ち目は無いよ…。

後は敵が攻撃を仕掛けた隙を掻い潜り、敵の紋章に神太刀を突き立て、刀身から光を叩き込んで滅するよ…



「人間達だけじゃなく、紋章を与えた同胞達まで玩具扱い……」
 人民も同族も対等のものとして扱わず、ただ暇つぶしに玩弄する『暗夜卿』の態度に、璃奈は静かな怒りを覚えていた。これまでに出会ってきた死者に対する所業のみならず、地上にまで乱をもたらすその陰謀、許すわけにはいかない。
「多くの命を弄ぶのもここまでだよ……!」
「御託は十分。我を止めたくば力を示してみせよ」
 魔剣の巫女に刃を突きつけられたディアンドラは、【小さき子らよ、我が夜に遊べ】と唱える。すると暗闇から無数のコウモリの群れが現れ、巫女に牙を剥いて襲い掛かった。

「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……! 『unlimited curse blades 』……!!」
 血に飢えた使い魔を仕留めるために、璃奈は数百本の魔剣・妖刀の現身を顕現させる。
 一本一本を極限まで呪力を強化した"終焉"の魔剣達の一斉斉射は、恐るべき破滅の豪雨となってコウモリ達を近付けさせない。
「やはり使い魔程度では相手にならぬか」
 あっさりと散らされた使い魔を見て、ディアンドラは自ら相手をすると決めたようだ。
 吸血種としての真の姿を解放した彼女は、生来の力に加えて防御力や再生能力まで強化されている。だがヴァンパイアとしての性質が強まった分、弱点もまた顕著であった。

「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 暗夜卿の真の姿に対抗して、璃奈は【九尾化・天照】の封印を解く。妖狐の証である尾が九尾に分かれ、毛並みは銀から金に変化し――その身から燦然たる太陽の光が放たれ、『紋章の祭壇』を照らしだした。
「これは……っ?!」
 この世界で、それも地底で目にすることは無いはずの太陽の光。それは吸血鬼の天敵。
 純然たる闇の住人と化したディアンドラの肌が灼ける。この陽光のダメージに対しては自慢の再生能力も機能しないようだ。

「迂闊に真の姿を見せたのが仇になったね……」
 璃奈は敵を照らしながら周囲の光を集束させ、太陽の力を込めたレーザーとして放つ。
 天照の封印を解いた璃奈は自在に光を操る力と、さらに光速に達するスピードを得る。牽制のレーザーに撃たれて敵が怯めば、彼女はその隙を突いて閃光の如く距離を詰めた。
「くぅ、ッ! なんなのだ、この力は……」
 放つは妖刀"九尾乃凶太刀"と"九尾乃神太刀"による連撃。刀身に光を集束した斬撃が、闇を祓って敵を切り裂く。その疾さと鋭さもさることながら、受けた傷の再生の遅さに、ディアンドラは動揺している様子だった。

「神太刀は不死再生を封じる神殺しの妖刀……。そして、わたしのこの力は太陽の神の力を持ち、光を操る……貴女に勝ち目は無いよ……」
 璃奈の使用するユーベルコードと装備は、吸血鬼の能力を完全に封殺するものだった。
 いかに地力の差があろうとも、これだけの相性の差を覆すのは難しい。光速の連続攻撃に切り刻まれるディアンドラの身体は、みるみるうちに火傷と鮮血に染まっていく。
「く……まだ、勝ち誇るには早いぞ……!」
 それでも第五の貴族の矜持にかけて、反撃を仕掛ける暗夜卿であったが。璃奈はそれも光の速さでかい潜ると、がら空きとなった胸の『辺境伯の紋章』に神太刀を突き立てた。

「貴女を滅するのは太陽の光……」
「やめよ……ッ、ぐああぁぁぁぁっ!!!」
 刀身から直に叩き込まれた天照の力が、紋章ごとディアンドラの身体を焦がしていく。
 全身から煙が上がり、灰化した体組織の一部がさらさらと崩れ落ちる。取るに足らない存在だと目にもくれていなかった者達に今、暗夜卿は追い詰められつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
嵐さん(f03812)と

彼女の言い方にムッと来ましたが、嵐さんが言い返してくれたので自分は戦闘準備を。
UCを発動して千本を超える煌月の複製を作って包囲攻撃。
しかし、相手のUCの前に傷を与えられず防戦に。

第六感で予測し、見切りで躱したり、オーラ防御を纏った天耀鏡で受けたり、結界術・高速詠唱で生み出した防御壁で防いだりして耐えます。
でも嵐さんが相手のUCを相殺してくれたら反撃です!

煌月の複製の半分で逃げ道を塞ぐように包囲し、残りの半分で胸の紋章を狙い、更に詩乃が残像を複数作り出しつつ接敵して、煌月に雷の属性攻撃・神罰を宿しての貫通攻撃を狙います。
これらは全て囮。

後は嵐さんの紋章攻撃に繋げますよ。


鏡島・嵐
詩乃(f17458)と

そーかよ。要はテメェの娯楽を取り上げられるんがヤだから帰れってか。
ンな言い分が通るかよ。あんだけ犠牲出して紋章なんての作ってる時点で、傍観者気取りが許されるもんか。
そもそも、危なくない戦い、なんてのはどこにも無えんだからな!
(内心の怯懦を押し殺しながら、精一杯の挑発)

吸血鬼としての真の姿か……初撃はなんとか〈第六感〉活かして〈見切る〉しか無えな。最悪〈オーラ防御〉で耐えねえと。
何合か打ち合って能力の全貌を掴んだら《逆転結界・魔鏡幻像》で打ち消しが効くはずだ。
詩乃がディアンドラに接近戦挑んで、向こうに隙が出来たら、〈スナイパー〉ばりの精度で〈破魔〉の魔弾を撃ち込む――!



「そーかよ。要はテメェの娯楽を取り上げられるんがヤだから帰れってか」
 猟兵に向けた『暗夜卿』ディアンドラの言い分を、嵐は端的に要約する。つまるところあの吸血鬼は我儘であり、傲慢で、自分以外の全てを見下している。暇つぶしのタネには飢えているくせに、自分が当事者になるのは面倒くさいときたものだ。
「ンな言い分が通るかよ。あんだけ犠牲出して紋章なんての作ってる時点で、傍観者気取りが許されるもんか」
 内心の怯懦を押し殺しながら、怒りを露わにして精一杯の挑発を。こんないけ好かない相手でも自分より遥かに強いのは事実なのだ、対峙するだけでも震えが走りそうになる。それでも、退けない理由となけなしの勇気をかき集めて、彼はこの場所に立っていた。

「そもそも、危なくない戦い、なんてのはどこにも無えんだからな!」
「……ふふ、然り。我としたことが、定命の者らに教えられるとはな」
 猟兵達との戦いを通して、ディアンドラは久方ぶりとなる"生命の危機"を感じていた。
 嵐の言う通り、戦いは常に危険と隣り合わせ。そんな事すら倦怠の中で忘れてしまっていたのかと、彼女は自嘲するような笑みを見せた。
「よく言ってくれました、嵐さん」
 彼女の言い方に内心でムッときていた詩乃も、嵐の言い返しには胸のすく思いだった。
 そして彼が敵を挑発している間にこちらの戦闘準備は万端。【煌月舞照】で複製した、千本を超える薙刀「煌月」の切っ先は、既に目標をロックオンしている。

「煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
 詩乃の号令により放たれた煌月の複製は、複雑な幾何学模様を描きながらディアンドラを包囲攻撃する。神力を帯びたオリハルコンの刃が戦場を蹂躙し、『紋章の祭壇』に光の嵐が吹き荒れる――。
「……薔薇の夜よ、我が身を呪え」
 だが。戦塵の中から姿を現したディアンドラの身体には、ほとんど傷が増えていない。
 彼女の周りを覆う夜闇の障壁が刃を防ぎ、僅かに付けた傷も再生されてしまったのだ。

「残念だったな。月の光で我を滅することは叶わぬよ」
 吸血種としての真の姿を見せたディアンドラは、冷たく笑いながら二人に襲いかかる。
 その視線には塵芥を払うのとは違う、"敵"と認めた者への明確な殺意が籠もっていた。
「吸血鬼としての真の姿か……初撃はなんとか見切るしか無えな」
「耐えてみせます、何としても」
 相談する暇もそこそこに、本気の暗夜卿の攻撃が来る。嵐と詩乃は第六感を研ぎ澄ませて動きを予測し、各自オーラや防具を使って身を守る。だが果たして耐えきれるのか――手負いとはいえ『紋章』で強化されたオブリビオンの力は絶大である。

「まさか、これほど興が乗るとは思っていなかったぞ。感謝しよう、猟兵よ」
 たおやかな童女の腕がふっと横に振られる。戯れのようなその仕草だけで周囲に暴風が吹き荒れた。詩乃が盾として宙に浮かべていたヒヒイロカネの「天耀鏡」が衝撃で軋み、ナイフのような爪が嵐の頬をかすめる。
(一発でもまともに喰らったら終わりだな)
 背筋が凍りつきそうなほどの恐怖と緊張感に耐えて、嵐は必死に敵の動きを見極める。
 自分も詩乃もこの猛攻を長くは耐えられない。早く反撃の緒を掴まなければ二人揃ってお陀仏だ。

(信じています、嵐さん)
 詩乃は嵐が反撃のチャンスを作ってくれると信じ、鏡の盾と結界による守りに徹する。
 神力を込めた彼女の防御壁は第五の貴族と言えども簡単には破れない。だが闇を纏った腕や爪が振るわれるたび、その守りも徐々に削がれているのが実情だった。
「どうした。亀のように首を引っ込めておらんで、もっと我を楽しませてみせよ」
 ディアンドラの攻撃は止まらない。真の姿となった彼女にダメージを与えるためには、太陽光などの特殊な手段か、防御や再生を上回る攻撃力が必要になる。生半可な攻撃では傷一つ付かないと本人も知っているからこそ、身を守ることなく攻めに徹しているのだ。

「……なるほど。だいたい把握できた」
 だが何合か打ち合ううちに、嵐はディアンドラのユーベルコードの全貌を掴んでいた。
 どんなに強大な力も、道理が分かれば無効化できる――【逆転結界・魔鏡幻像】発動。
「鏡の彼方の庭園、白と赤の王国、映る容はもう一つの世界。彼方と此方は触れ合うこと能わず。……幻遊びはお終いだ」
「何だと……?!」
 ディアンドラの目の前に召喚された鏡から、夜明けの太陽を思わせる閃光が放たれる。
 その輝きは夜闇を祓い、吸血種の力を弱める。変身を維持できなくなった彼女の姿は、真の姿から平常時の姿に戻った。

「今だ!」
「はいっ!」
 嵐がディアンドラのユーベルコードを相殺した瞬間、詩乃が即座に反撃に打って出る。
 まだ残っていた煌月の複製のうち、半分で敵の逃げ道を塞ぐように包囲し、残りの半分で『辺境伯の紋章』を狙う。先程は弾かれたが、防御力も低下した今ならば効くはずだ。
「お覚悟を!」
「くっ……やってくれる」
 ディアンドラが手刀で薙刀を打ち払っても、さらには詩乃自身が接近戦を挑んでくる。
 残像を複数作り出して敵を幻惑しながら、オリジナルの煌月に神罰の雷を宿して突く。まさに稲妻の如き怒涛の攻め――だが、それすらも敵は紙一重で躱してみせた。

「惜しかったな」
 手札はこれで終いかと、ディアンドラは笑みを見せる。ひやりとはさせられたものの、彼女はまだ決定打は受けぬまま。渾身の一突きも避けられた今、詩乃にはそれ以上の手が残っていないのも事実だった――。
「いいえ、十分です。私の役目は果たしました」
「なに? まさか……!」
 ――そう、詩乃に打つ手は残っていない。だが、ここにはまだもうひとり猟兵がいる。
 はっとふり返ったディアンドラの視界に映ったのは、スリングショットを引き絞る嵐。

「ありがとな、詩乃」
 まず詩乃が接近戦を仕掛け、隙が出来たら嵐が撃つ。それが二人の立てた作戦だった。複製による包囲攻撃も含めて、詩乃の行動は全て嵐の狙撃に繋げるための囮だったのだ。
 一度は危機に陥りつつも掴み取ったチャンスを逃さず、狙い澄ました一射が放たれる。ただの弾丸ではない、破魔の力を込めた魔弾を――敵の力の源たる『紋章』に向けて。

「がぁ……ッ!!」
 最大の弱点へと撃ち込まれた破魔の魔弾は、ディアンドラに大きなダメージを与えた。
 もはや言葉を吐く余裕もなく、小柄な体躯がよろめく。破損の著しい『辺境伯の紋章』を中心に、その姿はもはや満身創痍の有様であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
指定UC発動は2章から継続
怨霊たちの想いが勝手に口から出ても支障なし

暗夜卿、貴様は『闇の救済者』を気にしているようだが
ここにいる怨霊たちも
生前は『闇の救済者』同様、生きるために足掻いたはず
貴様はそれを嘲笑いながら踏み躙った!

俺は怨霊たちと約束したからな
彼らと共に貴様を討つ!

使い魔のコウモリが迫る前に「範囲攻撃、属性攻撃(炎)、衝撃波、なぎ払い」
黒剣に炎を宿し近づくコウモリを一気に薙ぎ払って焼き尽くす
焼き尽くされるコウモリを蹴散らしながら高速移動で暗夜卿に接近
「2回攻撃、怪力」で一気に叩き切る!
彼らの怨念を存分に浴びて逝け!!

撃破後は祭壇破壊
…皆の復讐、やり遂げたよ


御堂・伽藍
アドリブ、即興連携歓迎

にげる?にげる?
手遅れだぞ、夜鷹

衣裳は「白」

存在感誘き寄せ陽動で自らに攻撃を釣り
第六感で攻撃を見切り落ち着いてカウンターUCで返す

かごめ かごめ
夜明けの晩に
つると かめが
後ろの正面
あっち こっち
此方は何方?

ひたすら皆をかばい援護射撃


敵がWIZのUCを使った瞬間リミッター解除
咄嗟に念動怪力光炎空属性第六感宝探し
すてぜにで紋章をスナイプ

歪なブラッドストーンを全力で撃ち込む

このほうせき しってる?
血玉石…またの名をヘリオトロープ
血の力を!たいようにかえる石!

さようなら
さようなら
御休み
御休み


銭湯終了の後
残った血の力を全部すてぜにに込め
念動怪力で投げつけて祭壇を地形破壊

これで
仕舞い



「まさかこんな場所で、斯様な輩に不覚を取るとは……ここは一時退くもやむなしか」
 『暗夜卿』ディアンドラ・ノアーヴェにとって、今夜の出来事は予想外の連続だった。重要施設である『紋章の祭壇』に進入された挙げ句、自らも窮地に追い詰められている。それも目をかけていた闇の救済者ではなく、猟兵という興味もなかった存在によって。
「にげる? にげる? 手遅れだぞ、夜鷹」
 そして、ここまで追い詰めた敵を猟兵達が逃がすはずもない。満身創痍の暗夜卿の前に立ちはだかったのは、聖者のような白き衣装を身にまとった伽藍と、さらにもう一人――漆黒の鎧と亡霊達の怨念を身に着けた敬輔である。

「暗夜卿、貴様は『闇の救済者』を気にしているようだが。ここにいる怨霊たちも、生前は『闇の救済者』同様、生きるために足掻いたはず」
 【魂魄解放】を使用中の敬輔には、彼らの無念が、嘆きが、そして怒りが、自分の事のように伝わってくる。誰もが生きたいと願ったはずだ、死にたくないと抵抗したはずだ。
「貴様はそれを嘲笑いながら踏み躙った!」
 彼らの儚い抵抗を摘み取り、『紋章』を創造する贄とした張本人が今、目の前にいる。
 ともすれば意識を呑み込まれてしまいかねない程に、怨霊たちの意志は昂ぶっていた。

「ふ……勘違いしておるようだな。我はただの有象無象の人間どもに興味などない」
 敬輔が連れてきた復讐に燃える霊達を見ても、ディアンドラは冷笑を浮かべるばかり。
 踏み躙られる程度の塵芥ならばそれまで。絶対的な力の差にも関わらずヴァンパイアの支配に抵抗している『闇の救済者』の意外性にこそ、彼女は興味を惹かれていた。
「そなたらも『闇の救済者』と同じだと言うならば……我を倒し、証明してみせよ」
 【小さき子らよ、我が夜に遊べ】と唱えた彼女の周りから、無数のコウモリが現れる。
 己の生命すらも倦怠を癒やすためのチップに変えて、暗夜卿は血に飢えた使い魔どもを猟兵達に差し向けた。

「かごめ かごめ 夜明けの晩に つると かめが 後ろの正面」
 無数の羽ばたきが戦場を覆うなか、歌いながら前に飛び出したのは伽藍。仲間をかばう様なその動きと、不思議と目を引く存在感に釣られて、使い魔の攻撃は彼女に殺到する。
「あっち こっち 此方は何方?」
 コウモリの群れに囲まれても彼女は無邪気に歌い続けたまま、無防備に噛みつかれる。
 だが我楽多より生じた彼女の体に血は流れておらず、裡にあるのは空虚ながらんどう。どんなに凶暴な力でもただ受け入れては排出するのみ。

「伽藍洞と人の言う。はいって、とおって、さようなら」
 伽藍に牙を突き立てたコウモリは、がらんどうの中に取り込まれ、そして排出される。
 四方八方から襲われようと彼女は落ち着いてその全てを見切り、【境界の内側と外側】で返す。かくして起こるのは盛大な同士討ちだ。
「いくぞ、怨霊たち」
 そこに敬輔が黒剣を大きく振りかぶり、伽藍にたかる使い魔達を一網打尽に薙ぎ払う。
 怨霊達の怒りの炎を宿した剣は、灼熱の衝撃波を巻き起こし、有象無象の群れを一瞬で焼き尽くした。

「やるではないか……だが、まだだ。まだ足りぬ!」
 使い魔を蹴散らされたディアンドラは残された全ての力を振り絞って、吸血種としての真の姿を取る。夜闇の加護による強固な防御力、部位欠損すら修復可能な再生力、そして『辺境伯の紋章』による強化。この瞬間の彼女はまさしく最強クラスの吸血鬼だろう。
「薔薇の夜よ、我が身を呪え――ッ!?」
 だが。暗夜卿が真の姿をさらけ出した瞬間、一発の弾丸が彼女の胸元に撃ち込まれた。
 弾丸を放ったのは伽藍。この機会を最初から狙っていたのか、所蔵する「すてぜに」のひとつに念動力を作用させ、銃弾をも超えるスピードで撃ち出したのだ。

「このほうせき しってる?」
「なん、だと?」
 ディアンドラはふらりとよろめきながら、自身の『紋章』に撃ち込まれた弾丸を見る。
 それは歪なブラッドストーン。宝飾品としての価値は低く、それ故に打ち捨てられて、伽藍の手に渡ったのだろう。だが、その石にはまた異なる名前と意味がある。
「血玉石……またの名をヘリオトロープ。血の力を! たいようにかえる石!」
 ディアンドラから血の力を吸い取って、赤い石が目も眩むほどの燦然たる輝きを放つ。
 標的が強大なヴァンパイアならばこそ、変換された光量も凄まじいものとなる。まるで小さな太陽のようにヘリオトロープは輝き、闇に閉ざされた地下墓所を照らし出した。

「ぐ……あぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
 太陽の輝きを至近距離で浴びたディアンドラの体は、急速に灰となって崩壊していく。
 真の姿に変身した今の彼女にとって、太陽は最大の天敵。灼熱の苦痛に悶え苦しむ間、完全に隙だらけの状態となる。
「……ここだ!」
 この機を逃さず駆けるは敬輔。喰らった魂を力に替えて、疾風のごとく敵に接近する。
 その手には燃え盛る業火をまとった黒剣。怨念を焚べる事でその熱量は激しさを増し、巨大な紅蓮の刃を形作った。

「俺は怨霊たちと約束したからな。彼らと共に貴様を討つ!」
「ッ……そう、容易くは……!」
 太陽の力に苦しめられながら、なおも諦めずに反撃を繰り出そうとするディアンドラ。
 だが暗夜の爪が敬輔を引き裂くより、彼が束ねた怨霊の力が振り下ろされる方が速い。
「彼らの怨念を存分に浴びて逝け!!」
 真っ向から放たれた灼熱の斬撃波が、暗夜卿の肉体を頭頂から真っ二つに斬り伏せる。
 積み重なった死者の呪詛――皮肉にもそれは生み出した本人にすら防ぎきれなかった。

「――……まさか、このような幕引きとはな……だが、なかなかに楽しめた……」

 自らが贄とした怨霊達と、天敵たる太陽によって、『暗夜卿』ディアンドラは斃れた。
 砕けた紋章もろとも灰となって崩れ去っていく吸血鬼に、伽藍が最後の言葉をかける。
「さようなら さようなら 御休み 御休み」
 血玉石の輝きが収まり、地下墓所は再び闇に包まれる。そこにもう敵の姿はなかった。



 ――戦いを終えた後、猟兵達は残された『紋章の祭壇』を二度と使えぬよう破壊する。
 伽藍が血玉石に残された力を全てすてぜにに込めて、祭壇の中心へ念動力で投げ込む。同時に敬輔が怨念の全てを込めて黒剣を振るうと、忌まわしき実験場は砕け散っていく。
「これで 仕舞い」
「……皆の復讐、やり遂げたよ」
 地形ごと破壊された『紋章の祭壇』の跡地を眺めて、ふたりは静かに思いの丈を呟く。
 これでもう、この地に新たな死者が増えることも、怨念が渦を巻くこともないだろう。

 かくして暗夜の墓所を攻略した猟兵達は『紋章の祭壇』の破壊にまたひとつ成功した。
 1つ1つは小さな戦果でも、その積み重ねは第五の貴族にとっても無視できない損害となるはず。それはやがて世界の真実に迫るピースともなるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月10日


挿絵イラスト